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卒業後
685 星暦556年 緑の月 5日 人(+盗品)探し(9)
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睡眠《スレプ》の術にあっさり墜ちてくれた襲撃者だったが、残念ながら暗号用魔術回路は持っていなかった。
どこかに隠したのだろう。
どうやら役人たちが王宮に戻って仕事に就けるのはもう少し先になりそうだ。
「どこに隠したのか、聞けないんですか?」
どこから捜索を再開するかを確認する為にウォレン爺の所へ行った際についでに尋ねる。
どうせ王宮全部で通信機を探索するんで俺にとっての手間は大して違わないが、俺の作業が終わるのをじりじりと待っている人間が何十人(何百人かも?)もいると思うとかなり圧力を感じて嫌なんだけど。
「情報漏洩が出来ない誓約魔術が掛かっているから、死なさずに情報を得るには時間が掛かる」
ため息をつきながらウォレン爺が答えた。
あ~。
拷問に耐えられる訓練をしたり、家族を人質に取ったりして裏切らないようにするよりも、しっかり強い誓約魔術を掛ける方が確実だし手間も省けるか。
誓約魔術だって完璧ではないので大抵は抜け穴があるのだが、抜け穴は掛けた術者ごとに違うし、術を解除するのにも時間と魔力が掛かる。
相手が協力的じゃない可能性も高い事を考えると、俺が王宮を探索し終わる方が早そうだな。
「ちなみに、嫌がらせの為に粉砕して捨てたなんて可能性は?」
これだけ大騒ぎになっているのだ。
元々『こっそり盗む』のではなく『襲撃』したことからも、知られずに密かに持ち出すことよりも騒ぎを起こすことの方が目的なんじゃないかという気がする。
だとしたら結界を張られて抜け出せないことが判明した時点で暗号用魔術回路を粉砕して盗んだブツが絶対に見つからないようにした可能性だってある。
襲撃者を捕まえた隠し通路の奥にも何やら魔術回路の残骸が残っていたし。
ただ、魔術回路っていうのは素材にはそれ程の独自性はない。
残骸だけ見ても元が本当に暗号用魔術回路だったかを確認するのはほぼ不可能だ。
内部に伝手があるならば前もって下調べして素材と大体の形を調べておき、捕まった時に粉々にして盗んだ暗号用魔術回路を壊したように見せかけ、本物は後で回収する為に隠しておくのも可能だ。
隠されているなら俺が見つけると思うが、粉砕されているならさっさと役人たちを王宮に戻してあげれば良いのにという気もする。
王宮の業務を滞らせるのが襲撃者たちの目的だった可能性だってあるんだし。
「無きにしもあらずだな。
真っ先にそれを確認する様、尋問係に銘じておく。
取り敢えずは・・・北棟から探索作業を始めてくれ」
ジジイが指示した。
おやぁ?
一階部分を既に調べ終わった西棟でもなく、謁見の間とかがある中央棟でもなく、最後に逃げ込んだ南棟でもなく、大臣たちの執務室がある北棟を優先するんだ?
大臣の仕事ってやっぱりそれ程重要なのか。
まあ、権力と金をたっぷり享受しているんだ。
それなりに重要なことをやってくれてなきゃ一般市民としてはやってられんか。
ついでにちょっと気になった点について確認しておく。
「ちなみに、王宮の隠し通路の場所ってお偉いさんはちゃんと知っているんですかね?
時間を掛ければ俺以外の魔術師でも心眼《サイト》で建物の構造が分かるのに、王宮外へ繋がる隠し通路がある南棟に一般市民が長時間居座れる申請関連の部署があるのってあまり良くないように思うんですけど、そこら辺ってちゃんと警備関係のお偉いさんも把握しているんですか?」
というか、王宮に王族も情報を逸失してしまった隠し通路があったりして、国の上層部が暗殺されまくってアファル王国が混乱に陥って他国に攻められたりしたら迷惑なんだけど。
今回の事件を見る限り、王宮のそれなりの地位にいる人間が好ましくない集団に協力しているようだし。
「・・・隠し通路の場所が全部分かるのか?
お主でなくても??」
ウォレン爺が嫌そうな顔をして聞き返してきた。
「精霊に聞けば大体わかるから、精霊の加護持ちなら誰でも調べられるよ~。
それ以外の魔術師だったら、それなりに心眼《サイト》を使うのが得意じゃないと範囲に限界があるから申請して待っている待合室が隠し通路の真上でもない限り難しいかも?
でも確かに、時間を掛けて歩き回れるなら少なくとも地下にある空間は把握できる魔術師はそれなりにいるかな?」
シャルロが口を挟んだ。
基本的に精霊は加護持ちに対して友好的だ。
だから地や風の精霊から加護を貰っていなくても、適当にそこら辺にいる精霊に聞いたら俺でも色々と教えて貰える。
まあ、精霊の加護持ちが他国の情報を盗むのに協力する可能性は低いだろうが、普通の魔術師で心眼《サイト》の能力が高い人間を買収して時間をじっくりかければそれなりに調べようはある。
王宮内で魔術を使うのは制限されるが、心眼《サイト》は基礎能力的なものなので問題なく使えるし、王宮内に魔術師が出歩いているのを調べる仕組みも無い。
王宮内で働く人間は清掃員であろうと色々と調査されるかもしれないが、申請をする為に待っているだけの人間の調査はせいぜい武器や危険物を持ち込んでいないかのおざなりな身体検査程度だ。
・・・そう考えると、意外と王宮って危なくねぇ?
どこかに隠したのだろう。
どうやら役人たちが王宮に戻って仕事に就けるのはもう少し先になりそうだ。
「どこに隠したのか、聞けないんですか?」
どこから捜索を再開するかを確認する為にウォレン爺の所へ行った際についでに尋ねる。
どうせ王宮全部で通信機を探索するんで俺にとっての手間は大して違わないが、俺の作業が終わるのをじりじりと待っている人間が何十人(何百人かも?)もいると思うとかなり圧力を感じて嫌なんだけど。
「情報漏洩が出来ない誓約魔術が掛かっているから、死なさずに情報を得るには時間が掛かる」
ため息をつきながらウォレン爺が答えた。
あ~。
拷問に耐えられる訓練をしたり、家族を人質に取ったりして裏切らないようにするよりも、しっかり強い誓約魔術を掛ける方が確実だし手間も省けるか。
誓約魔術だって完璧ではないので大抵は抜け穴があるのだが、抜け穴は掛けた術者ごとに違うし、術を解除するのにも時間と魔力が掛かる。
相手が協力的じゃない可能性も高い事を考えると、俺が王宮を探索し終わる方が早そうだな。
「ちなみに、嫌がらせの為に粉砕して捨てたなんて可能性は?」
これだけ大騒ぎになっているのだ。
元々『こっそり盗む』のではなく『襲撃』したことからも、知られずに密かに持ち出すことよりも騒ぎを起こすことの方が目的なんじゃないかという気がする。
だとしたら結界を張られて抜け出せないことが判明した時点で暗号用魔術回路を粉砕して盗んだブツが絶対に見つからないようにした可能性だってある。
襲撃者を捕まえた隠し通路の奥にも何やら魔術回路の残骸が残っていたし。
ただ、魔術回路っていうのは素材にはそれ程の独自性はない。
残骸だけ見ても元が本当に暗号用魔術回路だったかを確認するのはほぼ不可能だ。
内部に伝手があるならば前もって下調べして素材と大体の形を調べておき、捕まった時に粉々にして盗んだ暗号用魔術回路を壊したように見せかけ、本物は後で回収する為に隠しておくのも可能だ。
隠されているなら俺が見つけると思うが、粉砕されているならさっさと役人たちを王宮に戻してあげれば良いのにという気もする。
王宮の業務を滞らせるのが襲撃者たちの目的だった可能性だってあるんだし。
「無きにしもあらずだな。
真っ先にそれを確認する様、尋問係に銘じておく。
取り敢えずは・・・北棟から探索作業を始めてくれ」
ジジイが指示した。
おやぁ?
一階部分を既に調べ終わった西棟でもなく、謁見の間とかがある中央棟でもなく、最後に逃げ込んだ南棟でもなく、大臣たちの執務室がある北棟を優先するんだ?
大臣の仕事ってやっぱりそれ程重要なのか。
まあ、権力と金をたっぷり享受しているんだ。
それなりに重要なことをやってくれてなきゃ一般市民としてはやってられんか。
ついでにちょっと気になった点について確認しておく。
「ちなみに、王宮の隠し通路の場所ってお偉いさんはちゃんと知っているんですかね?
時間を掛ければ俺以外の魔術師でも心眼《サイト》で建物の構造が分かるのに、王宮外へ繋がる隠し通路がある南棟に一般市民が長時間居座れる申請関連の部署があるのってあまり良くないように思うんですけど、そこら辺ってちゃんと警備関係のお偉いさんも把握しているんですか?」
というか、王宮に王族も情報を逸失してしまった隠し通路があったりして、国の上層部が暗殺されまくってアファル王国が混乱に陥って他国に攻められたりしたら迷惑なんだけど。
今回の事件を見る限り、王宮のそれなりの地位にいる人間が好ましくない集団に協力しているようだし。
「・・・隠し通路の場所が全部分かるのか?
お主でなくても??」
ウォレン爺が嫌そうな顔をして聞き返してきた。
「精霊に聞けば大体わかるから、精霊の加護持ちなら誰でも調べられるよ~。
それ以外の魔術師だったら、それなりに心眼《サイト》を使うのが得意じゃないと範囲に限界があるから申請して待っている待合室が隠し通路の真上でもない限り難しいかも?
でも確かに、時間を掛けて歩き回れるなら少なくとも地下にある空間は把握できる魔術師はそれなりにいるかな?」
シャルロが口を挟んだ。
基本的に精霊は加護持ちに対して友好的だ。
だから地や風の精霊から加護を貰っていなくても、適当にそこら辺にいる精霊に聞いたら俺でも色々と教えて貰える。
まあ、精霊の加護持ちが他国の情報を盗むのに協力する可能性は低いだろうが、普通の魔術師で心眼《サイト》の能力が高い人間を買収して時間をじっくりかければそれなりに調べようはある。
王宮内で魔術を使うのは制限されるが、心眼《サイト》は基礎能力的なものなので問題なく使えるし、王宮内に魔術師が出歩いているのを調べる仕組みも無い。
王宮内で働く人間は清掃員であろうと色々と調査されるかもしれないが、申請をする為に待っているだけの人間の調査はせいぜい武器や危険物を持ち込んでいないかのおざなりな身体検査程度だ。
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