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卒業後
280 星暦553年 萌葱の月 4日 調査(4)
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何やらガヴァーラ氏が隠し部屋の発見に興奮しているようだったので、金庫をあけたらさっさと次に向かうことにした。
一々後から挙動を見張られて隠し場所を『発見』したふりをするよりも、いないところでさっさと開いて後から案内する方が楽だ。
・・・と思っていたのだが、直ぐにガヴァーラ氏がついてきた。
どうやら隠し部屋の詳細の調査は部下に任せ、俺の見張りを優先したようだ。
ちっ。
しょうがないので、隣の部屋へ入り、さっきと同じように床を踏みしだいて音を確認しながら、壁にもどこか違和感が無いかを確認する。
さっきの地下室への入り口があった部屋はそれなりの立場にある事務職の人間の執務室という感じだった。
こちらはその部下の部屋かね。
床には特に何もなかったが、壁に掛けてある小さ目のタペストリーの後ろ側に何やら隠し場所があるっぽい。
ガヴァーラ氏が見ているので、壁に掛けてある絵やら盾やらを順番に調べて、タペストリーをめくった。
一応普通の壁になっているが、不自然な切り口があり、開く構造になっているのが分かる。
取っ手が無いから、こういうのってどっかを押すと開くんだよな。
視たところ開閉の仕組みは右上にあるようなので、取り敢えず右下から押しはじめ、適当に何箇所か押してから仕組みの場所を押したら板が前に落ちてきた。
「お!
今度は何だ?」
ガヴァーラ氏が後ろから覗き込みながら聞いてきた。
「どうぞ」
今開けたところなの、見ていたでしょうに。
まあ、実は視ていて宝石数個とナイフだというのは分かっていたけどさ。
中身を確認したガヴァーラ氏はちょっと失望した顔をしていたが、中身を取り出さずにそのまま隠し場所を戻してタペストリーも元の位置にかけなおした。
その間に机を調べていたのだが・・・。
一応、全ての机の鍵は調査員が預かって既に中身を調べているのか、鍵はかかっていなかった。
が。
3つ目の引き出しが妙に重い。
引き出して下から見上げてみたら、薄い板を張り付けることで下を半分ほど二重底にしていて、そこに封筒が挟まっていた。
「何やら書類がありましたよ」
この二重底は後から素人が足した物だな。
薄い板を使っているものの、元からの引き出すための空間を使っている為に、蝋を塗っていても引き出しが引きずらないと開かない感じになり、『重さ』として違和感の原因になっていた。
こういうのは直接封筒を貼付けるか、でなければ丈夫な薄い紙を使って二重底にすればいいんだ。
さっきの隠し部屋の精密さを考えると、こちらは部下が勝手に作った隠し場所かな?
上司に承認されていない隠しものならば、職場の机になんぞ隠さずに、家に持って帰って隠せばいいのに。
薄い封筒の中身を確認したガヴァーラ氏は何やら考え込んでいたが、ささっとメモを取ったら封筒を元の場所に戻した。
あとは1階には何もないんだけどなぁ。
他の部屋を調べないと怪しいから、全部の部屋で似たようなことをしなくちゃダメだろう。
ああ、面倒くさい。
◆◆◆◆
「いやぁ、本当に助かったよ。
これからも何かあったら是非手伝ってもらえると嬉しいな!」
今にも俺の手を取って握手をしたげな顔をしながらガヴァーラ氏が嬉しそうにお礼を言ってきた。
3階建ての全ての部屋を一応調べて、何箇所か隠し場所や隠し金庫をさらに暴いていたら夕方までかかってしまった。
昼過ぎには全ての隠し場所は分かっていたんだけどね。
調べもせずに隠し場所へ直行したら怪しすぎるから、全ての部屋を徹底的に調べているふりをしたら時間がかかったのなんのって。
何か見つけてもガヴァーラ氏はメモを取ってすぐに元に戻してしまうか、部下を呼び出してそちらに任せるかしてずっと俺の後をついてきたから手を抜けなかったし。
余程俺のことを信頼していないのかとも思ったが、考えてみたら軍がこっそり雇った盗賊《シーフ》ギルドの人間が商会の物を盗んだりしたら大問題だからな。
目を離すわけなんぞ無いか。
が。
俺にとってはいい迷惑だった。
「こういう仕事は俺の本職ではないので」
ぼそぼそと答える。
つうか、盗賊の本職って普通は泥棒じゃん。
なんかそれを軍の人間に公言するのって本来ならばヤバいことだ。
実際の所は俺の本職は魔術師だけどさ。
長、頑張って次にこんな話が来たら断ってくれよ。
じゃなきゃ、本職のギルドの人間を使えよ。俺じゃなくったって隠し場所なんてプロが探せば大体見つかる。
隠し場所のアイディアなんてそこまで独創的な訳ではない。
場合によっては開けるのに多少時間がかかるかもしれないが。
まあ、普通の盗賊ギルドの人間だって当局の人間(軍や税務調査局)と働くのは嫌がる。
というか、人数が増えればそれだけ見つかるリスクも高くなるので、基本的に盗賊ギルドの人間は他者と働くのを嫌がる。
誰に頼もうと嫌がられるなら、俺に任せちまった方が後から情報を悪用するリスクが低くて長にとっては気軽に頼みやすいのかもしれない。
だけど!!!
俺は都合よく使われる安い人間じゃないんだぞ!
あんまり頼まれるようになったら、依頼主の情報を暴くような嫌がらせでもしてやろうかなぁ・・・。
一々後から挙動を見張られて隠し場所を『発見』したふりをするよりも、いないところでさっさと開いて後から案内する方が楽だ。
・・・と思っていたのだが、直ぐにガヴァーラ氏がついてきた。
どうやら隠し部屋の詳細の調査は部下に任せ、俺の見張りを優先したようだ。
ちっ。
しょうがないので、隣の部屋へ入り、さっきと同じように床を踏みしだいて音を確認しながら、壁にもどこか違和感が無いかを確認する。
さっきの地下室への入り口があった部屋はそれなりの立場にある事務職の人間の執務室という感じだった。
こちらはその部下の部屋かね。
床には特に何もなかったが、壁に掛けてある小さ目のタペストリーの後ろ側に何やら隠し場所があるっぽい。
ガヴァーラ氏が見ているので、壁に掛けてある絵やら盾やらを順番に調べて、タペストリーをめくった。
一応普通の壁になっているが、不自然な切り口があり、開く構造になっているのが分かる。
取っ手が無いから、こういうのってどっかを押すと開くんだよな。
視たところ開閉の仕組みは右上にあるようなので、取り敢えず右下から押しはじめ、適当に何箇所か押してから仕組みの場所を押したら板が前に落ちてきた。
「お!
今度は何だ?」
ガヴァーラ氏が後ろから覗き込みながら聞いてきた。
「どうぞ」
今開けたところなの、見ていたでしょうに。
まあ、実は視ていて宝石数個とナイフだというのは分かっていたけどさ。
中身を確認したガヴァーラ氏はちょっと失望した顔をしていたが、中身を取り出さずにそのまま隠し場所を戻してタペストリーも元の位置にかけなおした。
その間に机を調べていたのだが・・・。
一応、全ての机の鍵は調査員が預かって既に中身を調べているのか、鍵はかかっていなかった。
が。
3つ目の引き出しが妙に重い。
引き出して下から見上げてみたら、薄い板を張り付けることで下を半分ほど二重底にしていて、そこに封筒が挟まっていた。
「何やら書類がありましたよ」
この二重底は後から素人が足した物だな。
薄い板を使っているものの、元からの引き出すための空間を使っている為に、蝋を塗っていても引き出しが引きずらないと開かない感じになり、『重さ』として違和感の原因になっていた。
こういうのは直接封筒を貼付けるか、でなければ丈夫な薄い紙を使って二重底にすればいいんだ。
さっきの隠し部屋の精密さを考えると、こちらは部下が勝手に作った隠し場所かな?
上司に承認されていない隠しものならば、職場の机になんぞ隠さずに、家に持って帰って隠せばいいのに。
薄い封筒の中身を確認したガヴァーラ氏は何やら考え込んでいたが、ささっとメモを取ったら封筒を元の場所に戻した。
あとは1階には何もないんだけどなぁ。
他の部屋を調べないと怪しいから、全部の部屋で似たようなことをしなくちゃダメだろう。
ああ、面倒くさい。
◆◆◆◆
「いやぁ、本当に助かったよ。
これからも何かあったら是非手伝ってもらえると嬉しいな!」
今にも俺の手を取って握手をしたげな顔をしながらガヴァーラ氏が嬉しそうにお礼を言ってきた。
3階建ての全ての部屋を一応調べて、何箇所か隠し場所や隠し金庫をさらに暴いていたら夕方までかかってしまった。
昼過ぎには全ての隠し場所は分かっていたんだけどね。
調べもせずに隠し場所へ直行したら怪しすぎるから、全ての部屋を徹底的に調べているふりをしたら時間がかかったのなんのって。
何か見つけてもガヴァーラ氏はメモを取ってすぐに元に戻してしまうか、部下を呼び出してそちらに任せるかしてずっと俺の後をついてきたから手を抜けなかったし。
余程俺のことを信頼していないのかとも思ったが、考えてみたら軍がこっそり雇った盗賊《シーフ》ギルドの人間が商会の物を盗んだりしたら大問題だからな。
目を離すわけなんぞ無いか。
が。
俺にとってはいい迷惑だった。
「こういう仕事は俺の本職ではないので」
ぼそぼそと答える。
つうか、盗賊の本職って普通は泥棒じゃん。
なんかそれを軍の人間に公言するのって本来ならばヤバいことだ。
実際の所は俺の本職は魔術師だけどさ。
長、頑張って次にこんな話が来たら断ってくれよ。
じゃなきゃ、本職のギルドの人間を使えよ。俺じゃなくったって隠し場所なんてプロが探せば大体見つかる。
隠し場所のアイディアなんてそこまで独創的な訳ではない。
場合によっては開けるのに多少時間がかかるかもしれないが。
まあ、普通の盗賊ギルドの人間だって当局の人間(軍や税務調査局)と働くのは嫌がる。
というか、人数が増えればそれだけ見つかるリスクも高くなるので、基本的に盗賊ギルドの人間は他者と働くのを嫌がる。
誰に頼もうと嫌がられるなら、俺に任せちまった方が後から情報を悪用するリスクが低くて長にとっては気軽に頼みやすいのかもしれない。
だけど!!!
俺は都合よく使われる安い人間じゃないんだぞ!
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