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卒業後
666 星暦556年 翠の月 23日 空滑機改(11)
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「取り敢えず、生地に防風の術を掛けてから適当な枠で口を開けておくようにすればいいよね?」
袋を開いてみながらシャルロが言う。
「口を開いた形に輪っかを嵌めてそれに籠を吊るす形にしたら重量も意図的に増やせて良いんじゃないか?
俺が針金でそこら辺の加工はするから、防風の術は任せた。
アレクはその熱風用の魔術回路の魔石がちょっとぐらい動いても外れないようにしておいてくれ」
適当な鉄片を工房の不要物置き場から取り出し、袋の口のサイズに合わせて変形させながら二人に残りの作業を頼んでおく。
口を開けるだけでなく、中も開くように二重の輪を繋ぐような形が良いかな?
ついでに籠も薄い鉄板で造っておくか。
確かあの熱風の魔術回路は改善する前だったからそれなりに回路自体も熱くなったはずだから、発火したりしたら困る。
・・・いや、普通の籠に防火の術を掛けた方が良いか。
そんなことを考えながら針金を適当に細工して袋に固定し、シャルロが見つけて来た籠に繋いで防火の術を掛ける。
「これって口が開いているけど空気が抜けないのかなぁ?」
シャルロが適当に造った熱気球モドキの縮小版を見ながら首を軽く傾げた。
「俺たちが乗った熱気球がこの形だったんだから、良いんじゃないか?
上昇気流は上に向かって動くから機体を持ち上げられるんだ。
袋の下が開いていても大丈夫なんだろ?」
上向きに空いた袋に物を入れるのではなく、下向きに空いた袋に溜めるというのも何とはなしに不思議な気分だが。
普通の状態の空気より軽くなった空気を集めているのだから、口が上を向いていたら軽い空気が逃げてしまうと言うのは理論としては分かるのだが・・・やはり見た目的には違和感満載だ。
「さて。
まずは熱してみよう」
魔石を固定した熱風の魔術回路を籠の上に載せて、アレクがそれを起動する。
横向きになっているので本当にこれで良いのかとちょっと不安になるが、熱気球も最初は横向きだったのが上の部分の空気が熱せられるに伴って立ち上がっていたから、これで良い筈。
ぽてん。
「・・・お!」
暫く見つめていてたら袋が浮き上がり、それに引っ張られる形で横向きになっていた籠も縦になった。
「本当に浮いたね・・・」
ちょっとびっくりしたようにシャルロが囁く。
普通の声を出しても模型は動きを変えないと思うぞ?
考えてみたら天井まで飛んでしまったらどうなるか分からないので、慌てて紐を取ってきて防火の術を掛け、籠に括り付けて工作机の脚に固定しておく。
丁度タイミングが良かったようで、紐を結んでいる間にゆっくりと熱気球モドキが浮き上がった。
「意外とあっさり浮いたな?」
朝1で見に行った熱気球よりも早い。
「小さいからかな?
取り敢えずこのサイズだったら4ミル程度で浮く、と。
今度は重量軽減の術を掛けてみよう」
熱風の魔術回路からひょいっと魔石を外しながらアレクが言った。
熱源をどけたら1ミル程度で熱気球モドキは机の上に戻り、倒れていた。
浮き上がってすぐに加熱を止めたから、空気があまり熱くなっていなかったのか?
まあ、それはともかく。
「それ!」
シャルロが袋を一度ペシャンコに潰して空気を出し、再度膨らませてから中の空気に向かって術を掛ける。
ちょっと袋が揺れたが、動きはない。
「もう一度!」
シャルロが更に術を重ね掛けしたら・・・袋の部分が机の上で立ち上がった。
だが籠を立てるほどは持ち上がっていない。
「これでどう?」
更にもう一度掛けたが・・・変化は無し。
「う~ん、どうも重量軽減の術って対象に掛けられる術の強度に上限がある感じだね」
術を掛けた反応にちょっと首を傾げていたシャルロが言った。
「あ~。
なんか、固定化の術とかでも対象物にどれだけ術を掛けまくっても限界を超えたらそれ以上は固くならないって授業で習ったっけ?」
漠然と以前聞いた記憶があった事を口にする。
「確かに。
素材によって掛けられる上限が違うから建物の柱や城壁とかに使う素材はケチると後悔するって話だったね。
空気に術を掛けるなんて考えたことは無かったけど、意外と掛かりやすいのか?」
アレクが熱気球モドキを手で持ち上げて重量を確認する。
「元々の重量と嵩に対して掛けられる重量軽減の上限の関係によって何が一番良いのかが変わるんだろうけど・・・空気ほど軽い物はないから、それを軽くできたら一番良いのかもね。
とは言え、もっと袋を大きくしないと籠すら持ち上げられないんだから、空滑機《グライダー》改を持ち上げようと思ったらかなり大量の空気に術を掛ける必要が出てくるから物凄い魔力消費量になるかも」
そうなんだよなぁ。
この袋だって籠のサイズに比べたらかなり大きい。
軽い籠ではなく、それなりに重い機体(と中の人間)を持ち上げられるだけの空気がどれだけになるか、想像もしたくないぞ。
【後書き】
重量軽減の術を掛けた空気を熱したら変な反応が起きないといいんだけど・・・。
袋を開いてみながらシャルロが言う。
「口を開いた形に輪っかを嵌めてそれに籠を吊るす形にしたら重量も意図的に増やせて良いんじゃないか?
俺が針金でそこら辺の加工はするから、防風の術は任せた。
アレクはその熱風用の魔術回路の魔石がちょっとぐらい動いても外れないようにしておいてくれ」
適当な鉄片を工房の不要物置き場から取り出し、袋の口のサイズに合わせて変形させながら二人に残りの作業を頼んでおく。
口を開けるだけでなく、中も開くように二重の輪を繋ぐような形が良いかな?
ついでに籠も薄い鉄板で造っておくか。
確かあの熱風の魔術回路は改善する前だったからそれなりに回路自体も熱くなったはずだから、発火したりしたら困る。
・・・いや、普通の籠に防火の術を掛けた方が良いか。
そんなことを考えながら針金を適当に細工して袋に固定し、シャルロが見つけて来た籠に繋いで防火の術を掛ける。
「これって口が開いているけど空気が抜けないのかなぁ?」
シャルロが適当に造った熱気球モドキの縮小版を見ながら首を軽く傾げた。
「俺たちが乗った熱気球がこの形だったんだから、良いんじゃないか?
上昇気流は上に向かって動くから機体を持ち上げられるんだ。
袋の下が開いていても大丈夫なんだろ?」
上向きに空いた袋に物を入れるのではなく、下向きに空いた袋に溜めるというのも何とはなしに不思議な気分だが。
普通の状態の空気より軽くなった空気を集めているのだから、口が上を向いていたら軽い空気が逃げてしまうと言うのは理論としては分かるのだが・・・やはり見た目的には違和感満載だ。
「さて。
まずは熱してみよう」
魔石を固定した熱風の魔術回路を籠の上に載せて、アレクがそれを起動する。
横向きになっているので本当にこれで良いのかとちょっと不安になるが、熱気球も最初は横向きだったのが上の部分の空気が熱せられるに伴って立ち上がっていたから、これで良い筈。
ぽてん。
「・・・お!」
暫く見つめていてたら袋が浮き上がり、それに引っ張られる形で横向きになっていた籠も縦になった。
「本当に浮いたね・・・」
ちょっとびっくりしたようにシャルロが囁く。
普通の声を出しても模型は動きを変えないと思うぞ?
考えてみたら天井まで飛んでしまったらどうなるか分からないので、慌てて紐を取ってきて防火の術を掛け、籠に括り付けて工作机の脚に固定しておく。
丁度タイミングが良かったようで、紐を結んでいる間にゆっくりと熱気球モドキが浮き上がった。
「意外とあっさり浮いたな?」
朝1で見に行った熱気球よりも早い。
「小さいからかな?
取り敢えずこのサイズだったら4ミル程度で浮く、と。
今度は重量軽減の術を掛けてみよう」
熱風の魔術回路からひょいっと魔石を外しながらアレクが言った。
熱源をどけたら1ミル程度で熱気球モドキは机の上に戻り、倒れていた。
浮き上がってすぐに加熱を止めたから、空気があまり熱くなっていなかったのか?
まあ、それはともかく。
「それ!」
シャルロが袋を一度ペシャンコに潰して空気を出し、再度膨らませてから中の空気に向かって術を掛ける。
ちょっと袋が揺れたが、動きはない。
「もう一度!」
シャルロが更に術を重ね掛けしたら・・・袋の部分が机の上で立ち上がった。
だが籠を立てるほどは持ち上がっていない。
「これでどう?」
更にもう一度掛けたが・・・変化は無し。
「う~ん、どうも重量軽減の術って対象に掛けられる術の強度に上限がある感じだね」
術を掛けた反応にちょっと首を傾げていたシャルロが言った。
「あ~。
なんか、固定化の術とかでも対象物にどれだけ術を掛けまくっても限界を超えたらそれ以上は固くならないって授業で習ったっけ?」
漠然と以前聞いた記憶があった事を口にする。
「確かに。
素材によって掛けられる上限が違うから建物の柱や城壁とかに使う素材はケチると後悔するって話だったね。
空気に術を掛けるなんて考えたことは無かったけど、意外と掛かりやすいのか?」
アレクが熱気球モドキを手で持ち上げて重量を確認する。
「元々の重量と嵩に対して掛けられる重量軽減の上限の関係によって何が一番良いのかが変わるんだろうけど・・・空気ほど軽い物はないから、それを軽くできたら一番良いのかもね。
とは言え、もっと袋を大きくしないと籠すら持ち上げられないんだから、空滑機《グライダー》改を持ち上げようと思ったらかなり大量の空気に術を掛ける必要が出てくるから物凄い魔力消費量になるかも」
そうなんだよなぁ。
この袋だって籠のサイズに比べたらかなり大きい。
軽い籠ではなく、それなりに重い機体(と中の人間)を持ち上げられるだけの空気がどれだけになるか、想像もしたくないぞ。
【後書き】
重量軽減の術を掛けた空気を熱したら変な反応が起きないといいんだけど・・・。
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