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卒業後
656 星暦556年 青の月 18日 空滑機改
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「へぇぇ、やっと空滑機《グライダー》を改造するのか。
あれも世に出てから4年ってところだろ?
もうそろそろ改造版が出ても良い時期だよな」
空滑機《グライダー》と転移門の経済的影響について確認したいとアンディに連絡したところ、2日後にウチの方に遊びに来た。
別に魔術院に行っても構わなかったんだが、アンディとしても郊外にあるウチの工房に来るという口実で半日ゆったりしたかったようだ。
乗合馬車を使うならまだしも、魔術院の空滑機《グライダー》でなくても普通に馬に乗ってくれば半日なんて必要ないんだけどね。
魔術院のお偉いさんの頭の中では『王都の城壁の外』となると自動的に『遠い田舎町』と変換されるらしい。
「そんなものか?
魔具も魔術回路も何十年も前のを使っているのも多いじゃないか」
ゆったりと工房のソファでお茶を楽しむアンディの言葉にちょっと首を傾げる。
「商業ギルドや軍部が使うような魔具っていうのはそれなりの頻度で改善されているぜ?
その方が特許の収入も増えるしな。
空滑機《グライダー》だってもっと使い勝手を良くして欲しいという要望は上がっていただろ?」
まあ、確かにね。
「色々と忙しかったし、あれは僕達的には遊びに行くための魔具という位置づけだったから、あまり言われたような変更に興味が湧かなかったんだよねぇ」
シャルロが肩を竦めながら答えた。
金に困らない育ちのせいか、意外な事にシャルロが俺たちの中では一番モノづくりに関しては頑固だ。
作りたい物を造る。
あったら便利だと思えるような物を造りたいけど、興味を感じなければ人の要望に必ずしも耳を傾けない。
金の為に要求があったら何でも応じるっていうのは嫌という姿勢だ。
一旦開発を始めたらちょっと想定外の方向に魔具の内容が変わる時はあるし、そう言う場合は想定使用者の希望を聞くこともあるが。
空滑機《グライダー》は特に遊びに行くための魔具という位置づけだったせいで、商業用や軍事用の利用の為に便利にしたいという要望はほぼ全て無視してきたのだ。
それが甥姪が増えたお蔭で空滑機《グライダー》の改造版を造ろうという流れになったのは、商業ギルドとか軍部にとっては喜ばれそうだ。
それはさておき。
「ちなみに、空滑機《グライダー》の積載量を増やして使い勝手を良くした場合、転移門の利用が減ったりして魔術院で問題が起きたりはしないか?
通信機で言ったように、それを確認しておきたかったんだが」
アレクがアンディに尋ねた。
ふふんとアンディがアレクの懸念を鼻で笑った。
「元々、転移門は魔術師用の魔具なんだぜ?
空いた時間にどうしてもというから貴族や商家に使わせてやっているだけだ。
第一、多少空滑機が便利になったところで、距離と時間を考えると急ぐ場合はどうしたって転移門を使うだろう」
まあ、確かに。
荷物があるような移動以外だと富裕層は基本的に転移門を使い、そうでない場合は馬車だ。
そう考えると、たいていの人が空滑機《グライダー》を使うのは移動よりも遊びが多いかな?
土砂崩れの様な事案で空滑機《グライダー》改を使うにしても、それは最寄りの街に転移門が無いか、何らかの理由で転移門の魔力補填が間に合わないからだろう。
「狭い空滑機《グライダー》の中に数刻寝転がって、落ちて死ぬかも知れない魔具で移動したいと考える奇特な人間はそれ程多くは無い。
だから瞬時に移動できる魔具を開発しない限り、魔術院への影響は限定的だよ」
「安全装置があるから、空滑機《グライダー》が落ちても死ぬどころか大怪我した人だっていないよ!」
アンディの言葉にシャルロが抗議の声を上げる。
「安全な筈な空滑機《グライダー》が壊れるんだ。
安全装置がちゃんと機能しない可能性だってゼロじゃあない・・・って普通の人間は心配するんだぜ?」
アンディが肩を竦めながら応じた。
なるほど。
「人数を増やした際の安全対策については十分注意しておこう。
あとは・・・乗る姿勢が寝転がる一択ではなく座れるように出来るかも考えてみようか」
アレクが言った。
「確かにな。
今までは空を飛んで景色を楽しむ為の遊び道具だったから下を見やすい寝転がり体勢以外は考えてこなかったが、積載量を増やして飛ぶことに興味がない人間も乗せる可能性が高くなるとしたら、そこら辺の利便性も考える必要があるな」
女性の服なんかはあまり寝転がるのに向いていないし。
シェイラも服に皺が寄ると文句を言っていたな、そう言えば。
改善点は色々とありそうだ。
今まで上がってきて無視していた改善要望について、見直してみるか。
【後書き】
うつ伏せに寝転がったまま寝返りもうたずに数時間って実はキツそうw
あれも世に出てから4年ってところだろ?
もうそろそろ改造版が出ても良い時期だよな」
空滑機《グライダー》と転移門の経済的影響について確認したいとアンディに連絡したところ、2日後にウチの方に遊びに来た。
別に魔術院に行っても構わなかったんだが、アンディとしても郊外にあるウチの工房に来るという口実で半日ゆったりしたかったようだ。
乗合馬車を使うならまだしも、魔術院の空滑機《グライダー》でなくても普通に馬に乗ってくれば半日なんて必要ないんだけどね。
魔術院のお偉いさんの頭の中では『王都の城壁の外』となると自動的に『遠い田舎町』と変換されるらしい。
「そんなものか?
魔具も魔術回路も何十年も前のを使っているのも多いじゃないか」
ゆったりと工房のソファでお茶を楽しむアンディの言葉にちょっと首を傾げる。
「商業ギルドや軍部が使うような魔具っていうのはそれなりの頻度で改善されているぜ?
その方が特許の収入も増えるしな。
空滑機《グライダー》だってもっと使い勝手を良くして欲しいという要望は上がっていただろ?」
まあ、確かにね。
「色々と忙しかったし、あれは僕達的には遊びに行くための魔具という位置づけだったから、あまり言われたような変更に興味が湧かなかったんだよねぇ」
シャルロが肩を竦めながら答えた。
金に困らない育ちのせいか、意外な事にシャルロが俺たちの中では一番モノづくりに関しては頑固だ。
作りたい物を造る。
あったら便利だと思えるような物を造りたいけど、興味を感じなければ人の要望に必ずしも耳を傾けない。
金の為に要求があったら何でも応じるっていうのは嫌という姿勢だ。
一旦開発を始めたらちょっと想定外の方向に魔具の内容が変わる時はあるし、そう言う場合は想定使用者の希望を聞くこともあるが。
空滑機《グライダー》は特に遊びに行くための魔具という位置づけだったせいで、商業用や軍事用の利用の為に便利にしたいという要望はほぼ全て無視してきたのだ。
それが甥姪が増えたお蔭で空滑機《グライダー》の改造版を造ろうという流れになったのは、商業ギルドとか軍部にとっては喜ばれそうだ。
それはさておき。
「ちなみに、空滑機《グライダー》の積載量を増やして使い勝手を良くした場合、転移門の利用が減ったりして魔術院で問題が起きたりはしないか?
通信機で言ったように、それを確認しておきたかったんだが」
アレクがアンディに尋ねた。
ふふんとアンディがアレクの懸念を鼻で笑った。
「元々、転移門は魔術師用の魔具なんだぜ?
空いた時間にどうしてもというから貴族や商家に使わせてやっているだけだ。
第一、多少空滑機が便利になったところで、距離と時間を考えると急ぐ場合はどうしたって転移門を使うだろう」
まあ、確かに。
荷物があるような移動以外だと富裕層は基本的に転移門を使い、そうでない場合は馬車だ。
そう考えると、たいていの人が空滑機《グライダー》を使うのは移動よりも遊びが多いかな?
土砂崩れの様な事案で空滑機《グライダー》改を使うにしても、それは最寄りの街に転移門が無いか、何らかの理由で転移門の魔力補填が間に合わないからだろう。
「狭い空滑機《グライダー》の中に数刻寝転がって、落ちて死ぬかも知れない魔具で移動したいと考える奇特な人間はそれ程多くは無い。
だから瞬時に移動できる魔具を開発しない限り、魔術院への影響は限定的だよ」
「安全装置があるから、空滑機《グライダー》が落ちても死ぬどころか大怪我した人だっていないよ!」
アンディの言葉にシャルロが抗議の声を上げる。
「安全な筈な空滑機《グライダー》が壊れるんだ。
安全装置がちゃんと機能しない可能性だってゼロじゃあない・・・って普通の人間は心配するんだぜ?」
アンディが肩を竦めながら応じた。
なるほど。
「人数を増やした際の安全対策については十分注意しておこう。
あとは・・・乗る姿勢が寝転がる一択ではなく座れるように出来るかも考えてみようか」
アレクが言った。
「確かにな。
今までは空を飛んで景色を楽しむ為の遊び道具だったから下を見やすい寝転がり体勢以外は考えてこなかったが、積載量を増やして飛ぶことに興味がない人間も乗せる可能性が高くなるとしたら、そこら辺の利便性も考える必要があるな」
女性の服なんかはあまり寝転がるのに向いていないし。
シェイラも服に皺が寄ると文句を言っていたな、そう言えば。
改善点は色々とありそうだ。
今まで上がってきて無視していた改善要望について、見直してみるか。
【後書き】
うつ伏せに寝転がったまま寝返りもうたずに数時間って実はキツそうw
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