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卒業後
655 星暦556年 青の月 16日 渡河用魔具(9)
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「土砂崩れが起きた脆い土壌の上を進める魔具??」
軍部から渡河用魔具について話し合う為に呼び出されていたアレクが帰って来た。
アレクによると、結局勾配のキツイ谷や山越え用の魔具は不要とのこと。
それなりに量を運べないのだったら空滑機《グライダー》で用は足り、量を運ぶためには荷馬車を動かす必要があり、荷馬車を動かすにはそれなりの道を整備する必要がある為に費用と需要が合わないとのことだった。
まあ、確かに。
元々、空滑機《グライダー》は2人の成人男性を運んで飛べるのだ。
そう考えると、成人男性1人分の重量の貨物を運べるという意味であり、それ以上を運ぶとなったら地滑橇《ラングライダー》でも荷馬車用の道の整備が必要になるだろう。
大量に貨物の運搬が想定される鉱山などでは、最初から荷馬車が通れる経路の整備も開発する際の費用として含めて計算されると言う話だし、普通の山村に道のりの大部分を魔石で動かす魔具で運ぶ様な高額な物を定期的に購入する資金力は無い。
が。
土砂崩れの時用というのはちょっと想定外だったな。
「確かに、それなりに利用頻度が高くて道幅のある街道だって地形によっては土砂崩れで道が塞がれることはあるよね。
そういう時に足止めされちゃった貴族や商人は移動を続ける為にそれなりのお金を払うだろうから、軍部がやらなくても需要はあるかも?」
アレクの言葉を聞いてちょっと考えていたシャルロが意見を述べた。
なるほど。
「だったら、現場まで空滑機《グライダー》で持って行けるぐらい軽くて小さくできる機体にした方が良いだろうな」
最近は転移箱のお蔭で書類の連絡が長距離でも素早く取れるようになった。街道が通るレベルの街だったら町長か商業ギルドに一つは転移箱が設置されているので、土砂崩れの連絡はすぐに王都へ届くだろう。
その連絡を受けて空滑機《グライダー》で土砂崩れ時用の地滑橇《ラングライダー》を持って行き、足止めされた貴族や商人の荷物を動かすサービスをしたらいいかも知れない。
馬も同時に動かせるよう、2機以上を一気に持って行く方が良さそうだ。
「ふむ。
どこかの商会がやるよりも、そう言うサービスを有事に提供する契約を会員に提案したらどうだと商業ギルドに売りつけるのが一番現実的かな?
まあ、貴族の場合だったら余程何か希少な物を運んでいるというのでない限り、人間だけ空滑機《グライダー》でそのまま王都なり領都まで運ぶことを希望する可能性も高いが」
アレクが頷きながら言った。
「おお~。
久しぶりに空滑機《グライダー》の大量販売が起きそうだな。
何だったら一人じゃなくって3人ぐらい追加で人間を運べる大型版を開発してみるか?
その方が地滑橇《ラングライダー》の修正も最小限で済みそうだ」
貴族は基本的に一人では移動しない。
最低でも従者を一人は一緒に運ばないと、後で周囲が大変な思いをする羽目になるだろう。
「そうだな。
湖沼地域のルートや距離の調査はまだまだ時間が掛かりそうだから、先にそっちの改造をやろうか」
アレクが頷く。
「良いね~。
やっぱり子供を連れて飛ぶとなったら子供を見張る大人が最低でももう一人は欲しいから、少なくとも3人乗りの空滑機《グライダー》は必要だな~とは思っていたんだよね」
シャルロも熱心に頷いた。
なるほど。
シャルロの場合は家族が領地の方へ飛べたら便利なのだろうが、姪や甥が増えたお蔭で大人2人しか運べない空滑機《グライダー》ではちょっと使い勝手が悪くなってきていたのか。
将来的にはシャルロ達にだって子供が出来る可能性は高いだろうし。
運転者に追加して大人3人分運べるとなったら大人2人と荷物の運搬も出来そうだから、ちょっとした旅行に二人で出かけるのにも良さそうだし。
「ふむ。
成人男性3人もしくは同等の荷物も運べるとなると利便性がかなり上がりそうだな。
一応、アンディの方に転移門の使用率が減って何か問題が起きるか聞いておこう」
アレクがちょっと考えてから言った。
確かに。
俺的には転移門は自分で魔力を供給して一気に遠くへ移動できる便利な魔具だが、魔術院はがっつり金をとることで商人や国の人間の移動も請け負っている。
これが空滑機《グライダー》の改造版のせいで収入が減って転移門の維持に問題が起き、数を減らすなんてことになったら俺たちは他の魔術師たちに睨まれるだろうし、長期的には想定外な影響が出る可能性だってある。
転移門の運営がデリケートな損益のバランスの上に成立しているとかではないことを確認しておく方が無難そうだ。
【後書き】
社会が徐々に変わっていきそうw
軍部から渡河用魔具について話し合う為に呼び出されていたアレクが帰って来た。
アレクによると、結局勾配のキツイ谷や山越え用の魔具は不要とのこと。
それなりに量を運べないのだったら空滑機《グライダー》で用は足り、量を運ぶためには荷馬車を動かす必要があり、荷馬車を動かすにはそれなりの道を整備する必要がある為に費用と需要が合わないとのことだった。
まあ、確かに。
元々、空滑機《グライダー》は2人の成人男性を運んで飛べるのだ。
そう考えると、成人男性1人分の重量の貨物を運べるという意味であり、それ以上を運ぶとなったら地滑橇《ラングライダー》でも荷馬車用の道の整備が必要になるだろう。
大量に貨物の運搬が想定される鉱山などでは、最初から荷馬車が通れる経路の整備も開発する際の費用として含めて計算されると言う話だし、普通の山村に道のりの大部分を魔石で動かす魔具で運ぶ様な高額な物を定期的に購入する資金力は無い。
が。
土砂崩れの時用というのはちょっと想定外だったな。
「確かに、それなりに利用頻度が高くて道幅のある街道だって地形によっては土砂崩れで道が塞がれることはあるよね。
そういう時に足止めされちゃった貴族や商人は移動を続ける為にそれなりのお金を払うだろうから、軍部がやらなくても需要はあるかも?」
アレクの言葉を聞いてちょっと考えていたシャルロが意見を述べた。
なるほど。
「だったら、現場まで空滑機《グライダー》で持って行けるぐらい軽くて小さくできる機体にした方が良いだろうな」
最近は転移箱のお蔭で書類の連絡が長距離でも素早く取れるようになった。街道が通るレベルの街だったら町長か商業ギルドに一つは転移箱が設置されているので、土砂崩れの連絡はすぐに王都へ届くだろう。
その連絡を受けて空滑機《グライダー》で土砂崩れ時用の地滑橇《ラングライダー》を持って行き、足止めされた貴族や商人の荷物を動かすサービスをしたらいいかも知れない。
馬も同時に動かせるよう、2機以上を一気に持って行く方が良さそうだ。
「ふむ。
どこかの商会がやるよりも、そう言うサービスを有事に提供する契約を会員に提案したらどうだと商業ギルドに売りつけるのが一番現実的かな?
まあ、貴族の場合だったら余程何か希少な物を運んでいるというのでない限り、人間だけ空滑機《グライダー》でそのまま王都なり領都まで運ぶことを希望する可能性も高いが」
アレクが頷きながら言った。
「おお~。
久しぶりに空滑機《グライダー》の大量販売が起きそうだな。
何だったら一人じゃなくって3人ぐらい追加で人間を運べる大型版を開発してみるか?
その方が地滑橇《ラングライダー》の修正も最小限で済みそうだ」
貴族は基本的に一人では移動しない。
最低でも従者を一人は一緒に運ばないと、後で周囲が大変な思いをする羽目になるだろう。
「そうだな。
湖沼地域のルートや距離の調査はまだまだ時間が掛かりそうだから、先にそっちの改造をやろうか」
アレクが頷く。
「良いね~。
やっぱり子供を連れて飛ぶとなったら子供を見張る大人が最低でももう一人は欲しいから、少なくとも3人乗りの空滑機《グライダー》は必要だな~とは思っていたんだよね」
シャルロも熱心に頷いた。
なるほど。
シャルロの場合は家族が領地の方へ飛べたら便利なのだろうが、姪や甥が増えたお蔭で大人2人しか運べない空滑機《グライダー》ではちょっと使い勝手が悪くなってきていたのか。
将来的にはシャルロ達にだって子供が出来る可能性は高いだろうし。
運転者に追加して大人3人分運べるとなったら大人2人と荷物の運搬も出来そうだから、ちょっとした旅行に二人で出かけるのにも良さそうだし。
「ふむ。
成人男性3人もしくは同等の荷物も運べるとなると利便性がかなり上がりそうだな。
一応、アンディの方に転移門の使用率が減って何か問題が起きるか聞いておこう」
アレクがちょっと考えてから言った。
確かに。
俺的には転移門は自分で魔力を供給して一気に遠くへ移動できる便利な魔具だが、魔術院はがっつり金をとることで商人や国の人間の移動も請け負っている。
これが空滑機《グライダー》の改造版のせいで収入が減って転移門の維持に問題が起き、数を減らすなんてことになったら俺たちは他の魔術師たちに睨まれるだろうし、長期的には想定外な影響が出る可能性だってある。
転移門の運営がデリケートな損益のバランスの上に成立しているとかではないことを確認しておく方が無難そうだ。
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社会が徐々に変わっていきそうw
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