647 / 1,038
卒業後
646 星暦556年 紺の月 13日 次は?
しおりを挟む
「渡河用魔具とオモチャ用魔具って売り先も用途も全然違うよなぁ」
次の開発に関して話し合うことになり、珍しく俺がお茶の準備をしながら呟く。
お茶を淹れるのは実はシャルロが1番上手いのだが、基本的に俺たちはポットに1番近い場所に立っている人間が淹れることにしている。
そんでもって淹れる人間が固定しない様に、パディン夫人にはポットの位置を出来るだけ適当に変えるようにも言ってある。
なので時折俺が淹れる事もあるのだ。
注意を払えば避けられるけど、それは違うと思うし。
「甥っ子にはオモチャの方を期待されているのだが・・・兄は渡河用魔具を推していた」
小さく苦笑しながらアレクが付け足す。
どうやらホルザック氏は息子を裏切ってオモチャよりも渡河用魔具を優先して欲しいとこっそりアレクに頼んだようだ。
「う~ん、僕としては渡河用魔具を先にやりたいかな。
子供用のオモチャってどんな使い方されるか分からないから、この結界を使った魔具に思いがけない癖があるなら先にそれを出し尽くしておいて、安全性を高めておきたい」
シャルロが珍しく真面目な顔で言った。
「まあ、確かに使用上の注意や安全装置をつけておいても、無視されたらどうしようもないからなぁ」
大人相手にだったら注意事項を読まなかったり、安全装置をつけなかったりした使用者が悪いと云う事で誰も文句を言わない(多分)が、子供相手だとどれ程言い聞かせたところで遊びに気を取られていたら忘れられる可能性は高い。
大人もそれを分かっているから、どれだけ使用説明書通りに使えば安全な物であろうと、子供の不注意で怪我をするようなオモチャだったら買うのを躊躇してしまうだろう。
「そうだな。
子供向けというのは我々には馴染みが無いし、甥っ子には恨まれるかもしれないが後回しにしよう」
アレクも頷いた。
元々、俺たちはちょっと便利な魔具を開発してきた。だから遊びに使うオモチャとはそれ程縁がない。
せいぜいが空滑機《グライダー》ぐらいのところだが、あれだって実用性の方が高いだろう。
だからオモチャの販売ルートにもあまり名前が売れていないだろうし、注意すべき点も分かっていない。
そう考えるとオモチャに手を出すこと自体が微妙なのだ。
先に渡河用魔具を開発するのが正解だろう。
アレクの甥っ子用のオモチャは・・・まあ、費用を度外視した、絶対にケガを出来ないぐらい安全な魔具を親戚用に幾つか造っても良いだろう。
シャルロの姪甥もオモチャを欲しがるだろうし。
誰かがそれを真似たくなったら、それは好きにしてくれといったところだな。
「渡河用となったら、馬車を載せられる大きさと頑丈さと出力が必要、それに推進用の装置もつけないとだな」
必要そうな条件を挙げていく。
「そうだな。
馬車を上に載せる形にしたら、先に渡河した後に戻って来た馬も載せてもう一度渡れば良いだろうし。
まあ、浅い川だったら馬はそのまま歩いて渡らせる方が早いし無難だろうが」
アレクが頷く。
「ちなみに、国内の渡河用魔具が便利に使えそうなルートの川って深さはどの位なんだ?」
元々、川の深さなんぞ知らんし、どの程度の深さなら馬が安全に渡れるのかも知らないが、基本的に馬が自力で渡れるなら渡河用魔具に馬を載せることを考慮せずに設計できるだろう。
馬が乗ることが多いなら、子供と同じで何をするか分かったもんじゃないということで色々と安全装置をつける必要がある。
「色々だな。
とは言え、ある意味切実に何が何でも渡らなければいけない状況として、増水で橋が水に流された場合なんかも考えられる。
そう言う状況では馬に川の中を渡らせるのも無理だろう」
腕を組んで考え込んだアレクが俺の問いに答えた。
「うげ~。
それって要は普通に穏やかに流れている川だけじゃなくって、増水して荒れている川でも渡れるように作らなくちゃいけない訳?
テストが大変そうだな」
川が増水する季節って決まってるんだっけ?
何かただでさえ川の中になんて落ちたら危険そうなのに、増水中の川に落ちるかも知れないテストをするなんて、嫌すぎる・・・。
「しかもそう言う氾濫した川なんかだったら折れた枝とか下手したら上流で伐採して運び出す準備をしていた丸太とかが流されてくる可能性もあるから、それの対応も考えておかないと」
シャルロが付け加える。
マジか。
丸太???
流れてくるの???
【後書き】
増水した川は危険すぎて近づかないの一択と言う気もしますけどね~。
次の開発に関して話し合うことになり、珍しく俺がお茶の準備をしながら呟く。
お茶を淹れるのは実はシャルロが1番上手いのだが、基本的に俺たちはポットに1番近い場所に立っている人間が淹れることにしている。
そんでもって淹れる人間が固定しない様に、パディン夫人にはポットの位置を出来るだけ適当に変えるようにも言ってある。
なので時折俺が淹れる事もあるのだ。
注意を払えば避けられるけど、それは違うと思うし。
「甥っ子にはオモチャの方を期待されているのだが・・・兄は渡河用魔具を推していた」
小さく苦笑しながらアレクが付け足す。
どうやらホルザック氏は息子を裏切ってオモチャよりも渡河用魔具を優先して欲しいとこっそりアレクに頼んだようだ。
「う~ん、僕としては渡河用魔具を先にやりたいかな。
子供用のオモチャってどんな使い方されるか分からないから、この結界を使った魔具に思いがけない癖があるなら先にそれを出し尽くしておいて、安全性を高めておきたい」
シャルロが珍しく真面目な顔で言った。
「まあ、確かに使用上の注意や安全装置をつけておいても、無視されたらどうしようもないからなぁ」
大人相手にだったら注意事項を読まなかったり、安全装置をつけなかったりした使用者が悪いと云う事で誰も文句を言わない(多分)が、子供相手だとどれ程言い聞かせたところで遊びに気を取られていたら忘れられる可能性は高い。
大人もそれを分かっているから、どれだけ使用説明書通りに使えば安全な物であろうと、子供の不注意で怪我をするようなオモチャだったら買うのを躊躇してしまうだろう。
「そうだな。
子供向けというのは我々には馴染みが無いし、甥っ子には恨まれるかもしれないが後回しにしよう」
アレクも頷いた。
元々、俺たちはちょっと便利な魔具を開発してきた。だから遊びに使うオモチャとはそれ程縁がない。
せいぜいが空滑機《グライダー》ぐらいのところだが、あれだって実用性の方が高いだろう。
だからオモチャの販売ルートにもあまり名前が売れていないだろうし、注意すべき点も分かっていない。
そう考えるとオモチャに手を出すこと自体が微妙なのだ。
先に渡河用魔具を開発するのが正解だろう。
アレクの甥っ子用のオモチャは・・・まあ、費用を度外視した、絶対にケガを出来ないぐらい安全な魔具を親戚用に幾つか造っても良いだろう。
シャルロの姪甥もオモチャを欲しがるだろうし。
誰かがそれを真似たくなったら、それは好きにしてくれといったところだな。
「渡河用となったら、馬車を載せられる大きさと頑丈さと出力が必要、それに推進用の装置もつけないとだな」
必要そうな条件を挙げていく。
「そうだな。
馬車を上に載せる形にしたら、先に渡河した後に戻って来た馬も載せてもう一度渡れば良いだろうし。
まあ、浅い川だったら馬はそのまま歩いて渡らせる方が早いし無難だろうが」
アレクが頷く。
「ちなみに、国内の渡河用魔具が便利に使えそうなルートの川って深さはどの位なんだ?」
元々、川の深さなんぞ知らんし、どの程度の深さなら馬が安全に渡れるのかも知らないが、基本的に馬が自力で渡れるなら渡河用魔具に馬を載せることを考慮せずに設計できるだろう。
馬が乗ることが多いなら、子供と同じで何をするか分かったもんじゃないということで色々と安全装置をつける必要がある。
「色々だな。
とは言え、ある意味切実に何が何でも渡らなければいけない状況として、増水で橋が水に流された場合なんかも考えられる。
そう言う状況では馬に川の中を渡らせるのも無理だろう」
腕を組んで考え込んだアレクが俺の問いに答えた。
「うげ~。
それって要は普通に穏やかに流れている川だけじゃなくって、増水して荒れている川でも渡れるように作らなくちゃいけない訳?
テストが大変そうだな」
川が増水する季節って決まってるんだっけ?
何かただでさえ川の中になんて落ちたら危険そうなのに、増水中の川に落ちるかも知れないテストをするなんて、嫌すぎる・・・。
「しかもそう言う氾濫した川なんかだったら折れた枝とか下手したら上流で伐採して運び出す準備をしていた丸太とかが流されてくる可能性もあるから、それの対応も考えておかないと」
シャルロが付け加える。
マジか。
丸太???
流れてくるの???
【後書き】
増水した川は危険すぎて近づかないの一択と言う気もしますけどね~。
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる