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卒業後
644 星暦556年 紺の月 12日 清掃は重要(15)
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アレクの母親視点です。
【本文】
>>>サイド:キラ・シェフィート
新商品を説明したいと息子が言ってきたので、時間通りに下の応接間に行ったら長男のホルザックが既に部屋の壁際に立っていた。
「ああ、母さんも呼ばれたんだ。
まあ、清掃用の魔具だったらそちらの方が売れるかも知れないしね」
こちらを見た長男が肩を竦めながら呟いた。
アレクとその仲間で開発した台車型魔具に関してはかなり興奮していたが、どうやら彼らの本来の目的であった清掃用の魔具に関してはあまり売れると思っていないのか、おざなりだ。
「まず、家具を動かすのはこちらの魔道具で」
アレクがメイドに合図を送る。
台車用魔具をローテーブルの下に押し込み、ボタンを握ったら台車が持ち上がってローテーブルごと持ち上がった。
「形によっては台車を差し込むだけでも動かせるので、今回はそう言う使い方も見せます」
アレクが説明する。
次のソファに関しては下にスペースが無かったせいか、台車型魔具の取っ手に収納してあったケーブルをソファの四つ隅に付着させて持ち上げていた。
あのソファがあっさり動くなんて、思っていた以上に便利そうだ。
時折応接間の模様替えをする際に動かすあのソファは、重くて気を付けないと使用人の腰を痛めてしまうので実はかなり不評な家具なのだ。
ケーブルさえつければあっさり一人で動かせるなんて素晴らしい。
これだったら掃除をするメイドが一人で家具も動かせる。
ソファとローテーブル、そしてもう一つ安楽椅子を動かしたら応接間の中央に敷いてある絨毯があらわになる。
「まず、絨毯の下も掃除した方が良いでしょうからどけましょう」
アレクが更に合図を送ると、家具を動かし終わったメイドが絨毯を巻き取って部屋の端に動かす。
相変わらず、絨毯の下は細かい砂埃が溜まっている。
アレクの仲間が『甥が汚い絨毯の上で遊び回るのが嫌』と言って開発し始めたこの清掃用魔具だが、確かに孫の健康の為にも良いかも知れない。
まあ、息子たちはこの汚い絨毯の上で遊び回ってちゃんと健康に育ったのだから、人間というのは意外と頑丈なのだろうが。
でも、気分的なものはあるのだ。
やはり可愛い孫には不潔な環境から離れていてもらいたい。
「絨毯用の掃除の魔具なので普通のフローリングに使うとちょっと煩いですが、まあ用は為すので我慢してください」
そうコメントしたアレクがメイドに持ってきた魔具を動かす様指示する。
今度のはちょっと縦長な直方形のバケツぐらいのサイズの箱の下にブラシ、上に押す用の取っ手が付いている魔具だ。
取っ手を握るとブラシが床をこする音と共に何やらプワー!という空気が流れるような音が聞こえる。
確かにちょっと煩いが、まあどうという事はない。
それよりも、その魔具が通り過ぎた後の床が綺麗になっているのは驚きだ。
砂埃も糸屑も綺麗に消えている。
砂埃が溜まった床はブラシでは綺麗に出来ず、塵取りと箒で掃いた後に雑巾がけが必要なのにこの道具を押して動かすだけで綺麗になっている。
びっくりだ。
「・・・これは便利そうかも知れないな」
ホルザックもそう呟く。
家では掃除なんぞしたことが無い息子だったが、支店に出て下働きの仕事をした頃に掃除も経験したのだろう。
綺麗になった床の上に絨毯が広げられ、使用人が先ほどの清掃用魔具を押していく。
「・・・凄いじゃない」
埃だけではない。
絨毯についていた髪の毛や糸まで取れている。
元々、アレクに頼まれてここ5日程絨毯の掃除をやらせていなかったので普段よりも汚れが目立っている状態だったが、それでもこれほど綺麗になるとは。
大掃除をして複数人で外に運び出して叩いてもここまで綺麗にはならない。
「取り終わった埃や砂、髪の毛と言ったゴミは最後にこちらの箱に出して、捨てるのですが・・・出す際にちょっと埃が舞うので、これは出来れば外でやる方が良いでしょう」
アレクがそう言ってホルザックと私に外へ出るように身振りで誘った。
裏のごみ収集コーナーの傍に来たところで、使用人がアレクに言われて清掃用魔具の本体についているボタンを押したら、バケツの様な部分がブラシごとグイッと持ち上がり、横にせり出した。
あら面白い。
これってホルザックの息子あたりが見たら、夢中になって遊びそう。
横にせり出したバケツモドキの下にアレクが持ってきた箱を置き、別のボタンを押したところ、がたんとバケツの底が開いて大量の砂埃と・・・半ハド位に切り刻まれた髪の毛が箱へ落ちてきた。
あらま。
こんなに大量の髪の毛があの絨毯には絡まっていたの???
ちょっと微妙だわ・・・。
それはさておき。
「素晴らしいじゃない、アレク。
これは売れるわよ~~!!」
思わず興奮してアレクの手を取る。
「・・・そう?
魔具を買うような貴族や豪商だったら使用人に働かせればいいと考えるかもと思ったんだけど・・・」
驚いたようにアレクが呟く。
ホルザックの表情も同じことを考えていたことを示す。
これだから男は。
「何を言っているの、ギルドの建物や王宮や軍の拠点とかの掃除を請け負う業者だったらこういう便利な道具があるなんて知ったらすぐさま買い占めるわよ!!!
貴族だってここまで綺麗に汚れが落ちると知れば家政婦が即座に当主を説得するわ!」
どこにまず売りつけて恩を売るか、よく考えなくっちゃ!
【後書き】
業者は欲しがると言う指摘を受けて気が付きましたが、たしかに中世っぽい時代でも専門業者はいてもおかしく無いですよね。
そして業者にとってはこれは画期的な商売効率化道具なので即買いw
【本文】
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新商品を説明したいと息子が言ってきたので、時間通りに下の応接間に行ったら長男のホルザックが既に部屋の壁際に立っていた。
「ああ、母さんも呼ばれたんだ。
まあ、清掃用の魔具だったらそちらの方が売れるかも知れないしね」
こちらを見た長男が肩を竦めながら呟いた。
アレクとその仲間で開発した台車型魔具に関してはかなり興奮していたが、どうやら彼らの本来の目的であった清掃用の魔具に関してはあまり売れると思っていないのか、おざなりだ。
「まず、家具を動かすのはこちらの魔道具で」
アレクがメイドに合図を送る。
台車用魔具をローテーブルの下に押し込み、ボタンを握ったら台車が持ち上がってローテーブルごと持ち上がった。
「形によっては台車を差し込むだけでも動かせるので、今回はそう言う使い方も見せます」
アレクが説明する。
次のソファに関しては下にスペースが無かったせいか、台車型魔具の取っ手に収納してあったケーブルをソファの四つ隅に付着させて持ち上げていた。
あのソファがあっさり動くなんて、思っていた以上に便利そうだ。
時折応接間の模様替えをする際に動かすあのソファは、重くて気を付けないと使用人の腰を痛めてしまうので実はかなり不評な家具なのだ。
ケーブルさえつければあっさり一人で動かせるなんて素晴らしい。
これだったら掃除をするメイドが一人で家具も動かせる。
ソファとローテーブル、そしてもう一つ安楽椅子を動かしたら応接間の中央に敷いてある絨毯があらわになる。
「まず、絨毯の下も掃除した方が良いでしょうからどけましょう」
アレクが更に合図を送ると、家具を動かし終わったメイドが絨毯を巻き取って部屋の端に動かす。
相変わらず、絨毯の下は細かい砂埃が溜まっている。
アレクの仲間が『甥が汚い絨毯の上で遊び回るのが嫌』と言って開発し始めたこの清掃用魔具だが、確かに孫の健康の為にも良いかも知れない。
まあ、息子たちはこの汚い絨毯の上で遊び回ってちゃんと健康に育ったのだから、人間というのは意外と頑丈なのだろうが。
でも、気分的なものはあるのだ。
やはり可愛い孫には不潔な環境から離れていてもらいたい。
「絨毯用の掃除の魔具なので普通のフローリングに使うとちょっと煩いですが、まあ用は為すので我慢してください」
そうコメントしたアレクがメイドに持ってきた魔具を動かす様指示する。
今度のはちょっと縦長な直方形のバケツぐらいのサイズの箱の下にブラシ、上に押す用の取っ手が付いている魔具だ。
取っ手を握るとブラシが床をこする音と共に何やらプワー!という空気が流れるような音が聞こえる。
確かにちょっと煩いが、まあどうという事はない。
それよりも、その魔具が通り過ぎた後の床が綺麗になっているのは驚きだ。
砂埃も糸屑も綺麗に消えている。
砂埃が溜まった床はブラシでは綺麗に出来ず、塵取りと箒で掃いた後に雑巾がけが必要なのにこの道具を押して動かすだけで綺麗になっている。
びっくりだ。
「・・・これは便利そうかも知れないな」
ホルザックもそう呟く。
家では掃除なんぞしたことが無い息子だったが、支店に出て下働きの仕事をした頃に掃除も経験したのだろう。
綺麗になった床の上に絨毯が広げられ、使用人が先ほどの清掃用魔具を押していく。
「・・・凄いじゃない」
埃だけではない。
絨毯についていた髪の毛や糸まで取れている。
元々、アレクに頼まれてここ5日程絨毯の掃除をやらせていなかったので普段よりも汚れが目立っている状態だったが、それでもこれほど綺麗になるとは。
大掃除をして複数人で外に運び出して叩いてもここまで綺麗にはならない。
「取り終わった埃や砂、髪の毛と言ったゴミは最後にこちらの箱に出して、捨てるのですが・・・出す際にちょっと埃が舞うので、これは出来れば外でやる方が良いでしょう」
アレクがそう言ってホルザックと私に外へ出るように身振りで誘った。
裏のごみ収集コーナーの傍に来たところで、使用人がアレクに言われて清掃用魔具の本体についているボタンを押したら、バケツの様な部分がブラシごとグイッと持ち上がり、横にせり出した。
あら面白い。
これってホルザックの息子あたりが見たら、夢中になって遊びそう。
横にせり出したバケツモドキの下にアレクが持ってきた箱を置き、別のボタンを押したところ、がたんとバケツの底が開いて大量の砂埃と・・・半ハド位に切り刻まれた髪の毛が箱へ落ちてきた。
あらま。
こんなに大量の髪の毛があの絨毯には絡まっていたの???
ちょっと微妙だわ・・・。
それはさておき。
「素晴らしいじゃない、アレク。
これは売れるわよ~~!!」
思わず興奮してアレクの手を取る。
「・・・そう?
魔具を買うような貴族や豪商だったら使用人に働かせればいいと考えるかもと思ったんだけど・・・」
驚いたようにアレクが呟く。
ホルザックの表情も同じことを考えていたことを示す。
これだから男は。
「何を言っているの、ギルドの建物や王宮や軍の拠点とかの掃除を請け負う業者だったらこういう便利な道具があるなんて知ったらすぐさま買い占めるわよ!!!
貴族だってここまで綺麗に汚れが落ちると知れば家政婦が即座に当主を説得するわ!」
どこにまず売りつけて恩を売るか、よく考えなくっちゃ!
【後書き】
業者は欲しがると言う指摘を受けて気が付きましたが、たしかに中世っぽい時代でも専門業者はいてもおかしく無いですよね。
そして業者にとってはこれは画期的な商売効率化道具なので即買いw
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