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卒業後
640 星暦556年 紫の月 15日 清掃は重要(11)
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「どうせなら、空滑機《グライダー》についている推進器でも流用して、馬で引かなくても動く様にしてはどうじゃ?」
色々試行錯誤して、なんとか隣町まで行く程度での魔石消費量を『中型魔石を1辺1.5ハドの立法形の箱一杯』からその半分ぐらいに削れた俺たちだったが、シャルロのウォレンおじさんに見せたところ、思いがけない提案をされた。
「馬無し?
推進力に加えて本体に御者を載せるとしたら、魔石消費量がぐっと上がるよ?」
首を傾げてシャルロが尋ねる。
「普段は畳んで荷馬車の上にでも載せておけばいい。
川や沼を渡らねばならない時に取り出して、数十メタ《メートル》を動く分だけ使うのだったら魔石消費量もそこまで大したもんではないじゃろ?
利用する側にとっても、渡河や沼を越えるために大幅に遠回りすることを考えたら、多少の魔石の消費位十分使う価値があると思うのではないかの?」
ウォレン爺が更に説明した。
なるほど。
ずっと動かすのに使うのではなく、道が無いけど突っ切ったら移動距離を大幅に削減できる湿地帯とか、都合がいい場所に橋が無い川を越える場合なんか用にするのか。
確かにそれだったら魔石の消費量は抑えられる。
輸送ルートを大幅に短縮できるんだったら高価な魔具でも買う価値があると考えられる可能性もそこそこありそうだ。
「確かにそれは良いですね。
なんだったら船の桟橋の代替品としても突発的にだったら使えるかも知れないし。
ちょっとやそっと揺れてもひっくり返らないように安定性の確保には気を付ける必要がありますが」
アレクが大きく頷きながら更にアイディアを足していく。
「桟橋代りにして人間が使うのはまだしも、馬が大人しく動かずにゆらゆら揺れる魔具の上に静止してくれるかどうかは微妙な気もするがな」
まあ、よっぽど深いとか流れが早い川じゃない限り、馬は水の中を泳いで渡らせるのもありか?
沼だとちょっと微妙な気はするが。
「場合によっては薄っぺらい板でもいいから馬を閉じ込める箱を作ってそれごと動かす必要があるかもね。
2往復するのと、サイズを倍にするのとどっちが魔石消費が少ないかは要確認かな」
魔具というのはサイズや強度の変化が必ずしも魔石消費量と比例しない。
倍のサイズにして動かす方が2往復するよりも魔石消費が増える可能性もあるのだ。
「桟橋代わりの利用法だったら水面すぐ傍から上に持ち上げる別の仕組みが必要だな。
船の甲板までの高さで浮かそうとしたら魔石消費量が半端なくなるぞ」
それに人間や荷物を高く上げるとその分重心が上になってバランスが崩れやすくなるから、荷物を上に動かす際に何らかの形で下での重さを増やして重心を出来るだけ動かさないで済むようにしなければ。
「まあ、桟橋代わりは後回しで良いじゃろ。
まずは馬に歩いてか泳いで川を渡らせて荷物だけ宙を動ける魔具を開発してから機能を増やしていけば良いのではないかの?」
俺たちが更に色々とアイディアを投げかけようとしたところへウォレン爺が口を挟んだ。
・・・渡河用の魔具が欲しいんかね?
まあ、軍の移動なんて都合よく道や橋沿いという訳にはいかないから、渡河の制約がなくなるだけでも軍にとっては便利なのかな?
馬をしっかり訓練出来れば早馬なんかでも川や沼の上を突っ切れるかも知れないし。
まあ、早馬だったら馬を使わずに空滑機《グライダー》を使う方が確実だし早いか。
・・・というか、馬の脚に家具移動用のケーブルをつけて走らせたらどうなるんだろ?
馬と言わず、俺たちの手足につけてみて、宙を歩けるのか実験してみたら面白いかも知れない。
地面を踏みしめられないから推進用の魔具が別に必要かも知れないが、浮遊《レヴィア》とはまた違った形の空中移動の手段になるかも?
まあ、完全にオモチャか泥棒用の道具になりそうだから、まずは先に商業用か軍事用に利用できそうな渡河用魔具から始めよう。
【後書き】
掃除機からどんどん乖離してますね~。
サブタイ変えるべきかな?
色々試行錯誤して、なんとか隣町まで行く程度での魔石消費量を『中型魔石を1辺1.5ハドの立法形の箱一杯』からその半分ぐらいに削れた俺たちだったが、シャルロのウォレンおじさんに見せたところ、思いがけない提案をされた。
「馬無し?
推進力に加えて本体に御者を載せるとしたら、魔石消費量がぐっと上がるよ?」
首を傾げてシャルロが尋ねる。
「普段は畳んで荷馬車の上にでも載せておけばいい。
川や沼を渡らねばならない時に取り出して、数十メタ《メートル》を動く分だけ使うのだったら魔石消費量もそこまで大したもんではないじゃろ?
利用する側にとっても、渡河や沼を越えるために大幅に遠回りすることを考えたら、多少の魔石の消費位十分使う価値があると思うのではないかの?」
ウォレン爺が更に説明した。
なるほど。
ずっと動かすのに使うのではなく、道が無いけど突っ切ったら移動距離を大幅に削減できる湿地帯とか、都合がいい場所に橋が無い川を越える場合なんか用にするのか。
確かにそれだったら魔石の消費量は抑えられる。
輸送ルートを大幅に短縮できるんだったら高価な魔具でも買う価値があると考えられる可能性もそこそこありそうだ。
「確かにそれは良いですね。
なんだったら船の桟橋の代替品としても突発的にだったら使えるかも知れないし。
ちょっとやそっと揺れてもひっくり返らないように安定性の確保には気を付ける必要がありますが」
アレクが大きく頷きながら更にアイディアを足していく。
「桟橋代りにして人間が使うのはまだしも、馬が大人しく動かずにゆらゆら揺れる魔具の上に静止してくれるかどうかは微妙な気もするがな」
まあ、よっぽど深いとか流れが早い川じゃない限り、馬は水の中を泳いで渡らせるのもありか?
沼だとちょっと微妙な気はするが。
「場合によっては薄っぺらい板でもいいから馬を閉じ込める箱を作ってそれごと動かす必要があるかもね。
2往復するのと、サイズを倍にするのとどっちが魔石消費が少ないかは要確認かな」
魔具というのはサイズや強度の変化が必ずしも魔石消費量と比例しない。
倍のサイズにして動かす方が2往復するよりも魔石消費が増える可能性もあるのだ。
「桟橋代わりの利用法だったら水面すぐ傍から上に持ち上げる別の仕組みが必要だな。
船の甲板までの高さで浮かそうとしたら魔石消費量が半端なくなるぞ」
それに人間や荷物を高く上げるとその分重心が上になってバランスが崩れやすくなるから、荷物を上に動かす際に何らかの形で下での重さを増やして重心を出来るだけ動かさないで済むようにしなければ。
「まあ、桟橋代わりは後回しで良いじゃろ。
まずは馬に歩いてか泳いで川を渡らせて荷物だけ宙を動ける魔具を開発してから機能を増やしていけば良いのではないかの?」
俺たちが更に色々とアイディアを投げかけようとしたところへウォレン爺が口を挟んだ。
・・・渡河用の魔具が欲しいんかね?
まあ、軍の移動なんて都合よく道や橋沿いという訳にはいかないから、渡河の制約がなくなるだけでも軍にとっては便利なのかな?
馬をしっかり訓練出来れば早馬なんかでも川や沼の上を突っ切れるかも知れないし。
まあ、早馬だったら馬を使わずに空滑機《グライダー》を使う方が確実だし早いか。
・・・というか、馬の脚に家具移動用のケーブルをつけて走らせたらどうなるんだろ?
馬と言わず、俺たちの手足につけてみて、宙を歩けるのか実験してみたら面白いかも知れない。
地面を踏みしめられないから推進用の魔具が別に必要かも知れないが、浮遊《レヴィア》とはまた違った形の空中移動の手段になるかも?
まあ、完全にオモチャか泥棒用の道具になりそうだから、まずは先に商業用か軍事用に利用できそうな渡河用魔具から始めよう。
【後書き】
掃除機からどんどん乖離してますね~。
サブタイ変えるべきかな?
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