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卒業後
638 星暦556年 紫の月 4日 清掃は重要(9)
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「うん、やっぱりもう一本取っ手を付けたのは正解かも。
動かしやすいや」
階段を登る用の工夫だが、単に全体的に高く浮かせるよりも、前方部だけ1.5ハド浮かせ、後方部は半ハドのままにした方が角度が付いて押し上げやすい事が判明。
全体的に高く浮かせると階段を押し上げる角度をつけるのが意外に大変だったのだ。
最初は取っ手の所に新しくつけたスイッチを押したら前方が1ハド余分に持ちあがる仕組みにしたのだが、うっかりスイッチを握り込んでしまって急に台車の角度が変わって驚くことが何度か。
どうせ押し上げる時は水平に動かす時よりも取っ手の位置が低い目の方が動かしやすいということになって、今の取っ手より手前の低い位置にもう一本追加で取っ手を付けたのだ。
手前とは言っても拳一個分程度前に出ている程度なので、それ程邪魔にはならないが、1ハド近く下げているのでうっかり間違って握ることはほぼ無い。
「あとは・・・小さな子供が急に握ったりしないよう、一応階段用取っ手の起動はロックを外して使う形にしておくか」
アレクが母親が押している乳母車にちょっかいを出している子供を見ながら呟いた。
「あぁ~。
仕事用の台車に子供が纏わりつくかは不明だけど、商会の子供とかが手伝いたいとか言ってついて来る可能性はあるのか?
まあ、便利だから普通の個人が買う可能性だってあるし、子供がオモチャとして拝借しないように本体その物に関してもロック機能を付けた方が良いんじゃないか?」
なんと言ってもオモチャ用の台車はまだ作っていないのだ。
それこそアレクの甥っ子が待ちきれなくって納入された台車で代用しようとする可能性は高そうだ。
「目端が利く子だったら簡単に付けられる程度のロック機能なんてあっという間に出し抜くんだが・・・まあ、そういう賢い子だったら危険に目にあうような使い方はしないと期待しておくか」
ため息をつきながらアレクが呟く。
う~ん。
悪戯をする賢さと、危険回避の能力は必ずしも同じじゃあないとは思うが。
「取り敢えず、甥っ子たちには、この台車で遊んでいて人にぶつかったら大怪我をさせてしまうかも知れないし、道に飛び出したら馬に蹴られて大怪我した上に台車が壊される可能性が高いぞって脅しておいたらどうだ?」
自分にとって危険と教えるよりも、他人にケガを負わせるかもとか、折角のオモチャが壊れるかもと言っておく方が効果がありそうだ。
とは言え、子供対策はもう少し本格的に考えた方が良いのかもなぁ。
まあ、台車側からは取っ手が板で遮られるし、取っ手の高さをそれなりに高くした。取っ手を握り続けないと浮かないので子供が乗って遊ぶのには大分都合が悪くなってきたと思う。
この高さの取っ手を握って走れるだけ育っている子供だったら、それなりに危険について説明しておけば理解できるだけの知性があると期待したい。
「台車を開発したんだから、ついでに荷馬車っぽいのも開発しておく?
大きいのだったら衝突防止みたいな機能も付けやすいかも知れないし」
シャルロが提案する。
「荷馬車よりも橇っぽい感じの方が良くないか?
馬車の高さまで持ち上げるとかなり魔力の消費量が増える。
人間を乗せるんじゃなくって荷物メインだったら橇でもいいだろ?」
橇だって馬で引ける筈だから、荷馬車代わりにならそれで十分じゃないだろうか?
人間を乗せる用だと周りの馬車から見下ろされるのは嫌だと金持ち連中は言いそうだが。
「・・・確かに荷物の運搬だったら橇形態でも良いか。
埃を被りそうだからカバーは必須だが。
御者には埃避けのちょっとした保護結界を設置するか?」
アレクが腕を組んで考え込んだ。
「流石に荷馬車代わりの長距離運搬だったらずっと取っ手を握っている訳にはいかないし、本体に乗っていなくても良くない?
御者は馬に乗って直接移動して、後ろに橇を引っ張る形でどうかな?」
シャルロが提案する。
「ちなみに御者って基本的に乗馬できるのか?」
馬車に繋がれた馬って、重い荷物が後ろにあるせいか比較的言う事を聞きやすいので御者として指示するのも楽というイメージがある。
馬に乗って直接動かすとなると・・・馬の我儘や気まぐれに付き合わねばならない。
それとも、御者だったらちゃんと馬にいう事を聞かせられるのか?
俺はイマイチ乗馬が苦手なんで、そこら辺のところが微妙だ。
「一応大丈夫じゃないか?
・・・多分。
・・・・・・台車を納入する際に商会の方でも確認しておくよ」
ちょっと自信なさげにアレクが答えた。
ある意味、普通に常識として馬が乗れたアレクには俺みたいに乗馬を習って来なかった人間の苦手意識って分からないんだよな~。
それとも商売で荷馬車を動かすような御者だったら馬の扱いに慣れているから、問題なく乗りこなせるのかな?
【後書き】
子供用オモチャは安全性と軽さや小ささなど求められる物が多い上、シャルロの姪はまだそこまで大きく無いので熱意も足りず、後回しw
動かしやすいや」
階段を登る用の工夫だが、単に全体的に高く浮かせるよりも、前方部だけ1.5ハド浮かせ、後方部は半ハドのままにした方が角度が付いて押し上げやすい事が判明。
全体的に高く浮かせると階段を押し上げる角度をつけるのが意外に大変だったのだ。
最初は取っ手の所に新しくつけたスイッチを押したら前方が1ハド余分に持ちあがる仕組みにしたのだが、うっかりスイッチを握り込んでしまって急に台車の角度が変わって驚くことが何度か。
どうせ押し上げる時は水平に動かす時よりも取っ手の位置が低い目の方が動かしやすいということになって、今の取っ手より手前の低い位置にもう一本追加で取っ手を付けたのだ。
手前とは言っても拳一個分程度前に出ている程度なので、それ程邪魔にはならないが、1ハド近く下げているのでうっかり間違って握ることはほぼ無い。
「あとは・・・小さな子供が急に握ったりしないよう、一応階段用取っ手の起動はロックを外して使う形にしておくか」
アレクが母親が押している乳母車にちょっかいを出している子供を見ながら呟いた。
「あぁ~。
仕事用の台車に子供が纏わりつくかは不明だけど、商会の子供とかが手伝いたいとか言ってついて来る可能性はあるのか?
まあ、便利だから普通の個人が買う可能性だってあるし、子供がオモチャとして拝借しないように本体その物に関してもロック機能を付けた方が良いんじゃないか?」
なんと言ってもオモチャ用の台車はまだ作っていないのだ。
それこそアレクの甥っ子が待ちきれなくって納入された台車で代用しようとする可能性は高そうだ。
「目端が利く子だったら簡単に付けられる程度のロック機能なんてあっという間に出し抜くんだが・・・まあ、そういう賢い子だったら危険に目にあうような使い方はしないと期待しておくか」
ため息をつきながらアレクが呟く。
う~ん。
悪戯をする賢さと、危険回避の能力は必ずしも同じじゃあないとは思うが。
「取り敢えず、甥っ子たちには、この台車で遊んでいて人にぶつかったら大怪我をさせてしまうかも知れないし、道に飛び出したら馬に蹴られて大怪我した上に台車が壊される可能性が高いぞって脅しておいたらどうだ?」
自分にとって危険と教えるよりも、他人にケガを負わせるかもとか、折角のオモチャが壊れるかもと言っておく方が効果がありそうだ。
とは言え、子供対策はもう少し本格的に考えた方が良いのかもなぁ。
まあ、台車側からは取っ手が板で遮られるし、取っ手の高さをそれなりに高くした。取っ手を握り続けないと浮かないので子供が乗って遊ぶのには大分都合が悪くなってきたと思う。
この高さの取っ手を握って走れるだけ育っている子供だったら、それなりに危険について説明しておけば理解できるだけの知性があると期待したい。
「台車を開発したんだから、ついでに荷馬車っぽいのも開発しておく?
大きいのだったら衝突防止みたいな機能も付けやすいかも知れないし」
シャルロが提案する。
「荷馬車よりも橇っぽい感じの方が良くないか?
馬車の高さまで持ち上げるとかなり魔力の消費量が増える。
人間を乗せるんじゃなくって荷物メインだったら橇でもいいだろ?」
橇だって馬で引ける筈だから、荷馬車代わりにならそれで十分じゃないだろうか?
人間を乗せる用だと周りの馬車から見下ろされるのは嫌だと金持ち連中は言いそうだが。
「・・・確かに荷物の運搬だったら橇形態でも良いか。
埃を被りそうだからカバーは必須だが。
御者には埃避けのちょっとした保護結界を設置するか?」
アレクが腕を組んで考え込んだ。
「流石に荷馬車代わりの長距離運搬だったらずっと取っ手を握っている訳にはいかないし、本体に乗っていなくても良くない?
御者は馬に乗って直接移動して、後ろに橇を引っ張る形でどうかな?」
シャルロが提案する。
「ちなみに御者って基本的に乗馬できるのか?」
馬車に繋がれた馬って、重い荷物が後ろにあるせいか比較的言う事を聞きやすいので御者として指示するのも楽というイメージがある。
馬に乗って直接動かすとなると・・・馬の我儘や気まぐれに付き合わねばならない。
それとも、御者だったらちゃんと馬にいう事を聞かせられるのか?
俺はイマイチ乗馬が苦手なんで、そこら辺のところが微妙だ。
「一応大丈夫じゃないか?
・・・多分。
・・・・・・台車を納入する際に商会の方でも確認しておくよ」
ちょっと自信なさげにアレクが答えた。
ある意味、普通に常識として馬が乗れたアレクには俺みたいに乗馬を習って来なかった人間の苦手意識って分からないんだよな~。
それとも商売で荷馬車を動かすような御者だったら馬の扱いに慣れているから、問題なく乗りこなせるのかな?
【後書き】
子供用オモチャは安全性と軽さや小ささなど求められる物が多い上、シャルロの姪はまだそこまで大きく無いので熱意も足りず、後回しw
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