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卒業後
618 星暦555年 桃の月 14日 とばっちり(5)
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「で?
結局黒幕とかって分かったん?」
昨晩は『他にも確認するギルドがあるんだったらさっさと周らないと終わらないんじゃないのか?』と主張した俺は陶磁器《ポッターズ》ギルドでの調査にそれ以上巻き込まれることなく、ファルナの部下に街にある他のギルドを順繰りに連れまわされた。
他のギルドは陶磁器《ポッターズ》ギルドほど手当たり次第には被害にあっていなかったが、それでも3割から半数強ぐらいが被害にあっていた。数人の被害に遭っていない人間を指差せば良いだけの状況でなくなった為、かえって被害者をより分けるのに時間が掛かってやっと全部のギルドが終わって宿に帰ろうと帰路についた時には薄っすらと空が色づいていた。
まあ、昔の仕事だったら夜通し働いて金貨1枚の収益でも十分満足していたから、5枚貰っておいて文句を言うのは贅沢かもしれないが・・・これだったら普通に夜は寝て、もう1日この街で過ごして金貨4枚貰う方が良かった。
ふらふらになりながら部屋に戻った俺はベッドに倒れ込み、爆睡。
ぎりぎり宿の食事処で昼食が食べられる時間に目が覚めて下に降りてきたら、目の下に一晩で巨大な隈を作ったファルナがいた訳だ。
昨晩(もしくは今朝)に少しでも寝ているのかね、これ?
どうやら突然大量発生した仕事をこなすために宿の食事処を貸し切ったのか、昨日は街の人間がそこそこ入っていたウチの1階分まるまる入るぐらいの大きさがあるスペースが軍人と役人であふれかえっていた。
「どの国が黒幕なのかはまだ確定していないけど、呪具を使っていた人間を手引きした内部の者の大部分は捕まえられたと思うわ。
この街の領主は機密保持に必要十分以上に神経質で、やたらと誓約魔術を使いまくるって密かに悪評が高かったんだけど、それが幸いしたようね」
殆ど黒いお茶を啜りながらファルナが答えた。
そんな濃くしたお茶なんて、腹に良くないんじゃないか???
「なんだったらもう数日ここに残るか?
俺だけ王都に帰って2~3日適当に年末に向けて残っている作業をやっていても良いぜ?」
日割りで報酬は貰っているので、数日程度休みを入れても俺は構わない。
そう思って親切心(ある程度は)から提案したのだが、ぎろっとファルナに睨まれた。
隈と血走った目が相まって、かなり怖い形相だ。
普段はそこそこ美人なんだが、台無しだな。
「冗談じゃない。
本当にぎりぎりだったのよ!?
あと数日で重要な技能を持っている職人が誓約魔術の負荷で心臓をやられて死んでいたか、情報がどこかに漏れていたかも知れなかったのよ。
休みを取るどころか、これからは休息日も働いてちょうだい!
あと、視て回る街ももう3つほど増やしたいという王都からの要請を、援軍で来た人間が持ってきたわよ」
ぺらりと何やら重要そうな印《シール》が押された書類が渡された。
ちらりと見てみるとお役所らしいもったいぶった言い回しがしてあるが、要は追加で3つの街を周ってくれ、1日金貨5枚でと書いてある。
まあ、良いんだけどさぁ。
アファル王国の収入源が減ったら回り回ったら俺たちに掛けられる税を増やされる可能性があるから、こういう経済的な国防関連の案件や、脱税調査関係の仕事は出来るだけ協力した方が良いとアレクに言われているしな。
確かに大陸に2か所しかない白磁生産の情報が洩れたら将来的には税収が大幅に減ってお偉いさんがそれをカバーする為に俺たち一般市民への増税を言い出す可能性だってある。
とは言え。
俺だけが犠牲になるつもりは無いぞ。
「まあ、良いが。
どうせここまで時間が掛かっているんだ。
休息日は今まで通り休むし、年末年始は最初の予定通り6日休むぞ」
これだけの人数に呪具を使っているのだ。
どう考えても王太子の結婚式が終わって王都の探索網が解除されてからという訳ではないだろう。
としたら、ここで数日頑張って切り詰めたところで大して違いは無いだろうし、違いがあっても不幸な事故として諦めてもらうしかない。
「そうね、休憩は適度に取らないと効率が下がると上には言っておきましょう。
じゃあ、昼食が終わったら次の街に行くわよ」
俺の提案が許容範囲内だったのか、ファルナはあっさり頷いてお茶を飲み干した。
まあ、どうも俺担当になっているみたいだから、本人だって休みは欲しいところだろう。
「この街の調査はどうするんだ?」
確かに明日の朝からまた調査をするなら次の街に移動する為にもうそろそろ出た方が良いだろうが、あれだけ大規模な検挙騒ぎだったのだ。
まだ終わっていないだろう。
「元々、現地での調査は人員が足りなかったら王都からの援軍で熟すことになっているのよ。もうそろそろ領主邸での話し合いも終わってここからも引き払えるんじゃないかしら?」
肩を竦めながらファルナが答えた。
なるほど。
どれだけ被害者を見つけても人が足りなくならないな~と思っていたら、随時王都から援軍が来ていたのか。
確かに俺と一緒に調査人員が全員ついて回るんじゃあ効率は悪いよな。
ほぼ全く被害がない街だってあったんだ。
被害が多い街に王都から人員を集める形にして、俺の担当は数人で必要な魔道具を運ぶだけなのかな?
昼食を頼みながら、ふとファルナに声をかける。
「そうだ、追加契約を受ける代わりに、もう一か所どっか美味しい食事処での予約を要求する!」
この機会にドリアーナ以外の美味しい場所も開拓しちまおう。
結局黒幕とかって分かったん?」
昨晩は『他にも確認するギルドがあるんだったらさっさと周らないと終わらないんじゃないのか?』と主張した俺は陶磁器《ポッターズ》ギルドでの調査にそれ以上巻き込まれることなく、ファルナの部下に街にある他のギルドを順繰りに連れまわされた。
他のギルドは陶磁器《ポッターズ》ギルドほど手当たり次第には被害にあっていなかったが、それでも3割から半数強ぐらいが被害にあっていた。数人の被害に遭っていない人間を指差せば良いだけの状況でなくなった為、かえって被害者をより分けるのに時間が掛かってやっと全部のギルドが終わって宿に帰ろうと帰路についた時には薄っすらと空が色づいていた。
まあ、昔の仕事だったら夜通し働いて金貨1枚の収益でも十分満足していたから、5枚貰っておいて文句を言うのは贅沢かもしれないが・・・これだったら普通に夜は寝て、もう1日この街で過ごして金貨4枚貰う方が良かった。
ふらふらになりながら部屋に戻った俺はベッドに倒れ込み、爆睡。
ぎりぎり宿の食事処で昼食が食べられる時間に目が覚めて下に降りてきたら、目の下に一晩で巨大な隈を作ったファルナがいた訳だ。
昨晩(もしくは今朝)に少しでも寝ているのかね、これ?
どうやら突然大量発生した仕事をこなすために宿の食事処を貸し切ったのか、昨日は街の人間がそこそこ入っていたウチの1階分まるまる入るぐらいの大きさがあるスペースが軍人と役人であふれかえっていた。
「どの国が黒幕なのかはまだ確定していないけど、呪具を使っていた人間を手引きした内部の者の大部分は捕まえられたと思うわ。
この街の領主は機密保持に必要十分以上に神経質で、やたらと誓約魔術を使いまくるって密かに悪評が高かったんだけど、それが幸いしたようね」
殆ど黒いお茶を啜りながらファルナが答えた。
そんな濃くしたお茶なんて、腹に良くないんじゃないか???
「なんだったらもう数日ここに残るか?
俺だけ王都に帰って2~3日適当に年末に向けて残っている作業をやっていても良いぜ?」
日割りで報酬は貰っているので、数日程度休みを入れても俺は構わない。
そう思って親切心(ある程度は)から提案したのだが、ぎろっとファルナに睨まれた。
隈と血走った目が相まって、かなり怖い形相だ。
普段はそこそこ美人なんだが、台無しだな。
「冗談じゃない。
本当にぎりぎりだったのよ!?
あと数日で重要な技能を持っている職人が誓約魔術の負荷で心臓をやられて死んでいたか、情報がどこかに漏れていたかも知れなかったのよ。
休みを取るどころか、これからは休息日も働いてちょうだい!
あと、視て回る街ももう3つほど増やしたいという王都からの要請を、援軍で来た人間が持ってきたわよ」
ぺらりと何やら重要そうな印《シール》が押された書類が渡された。
ちらりと見てみるとお役所らしいもったいぶった言い回しがしてあるが、要は追加で3つの街を周ってくれ、1日金貨5枚でと書いてある。
まあ、良いんだけどさぁ。
アファル王国の収入源が減ったら回り回ったら俺たちに掛けられる税を増やされる可能性があるから、こういう経済的な国防関連の案件や、脱税調査関係の仕事は出来るだけ協力した方が良いとアレクに言われているしな。
確かに大陸に2か所しかない白磁生産の情報が洩れたら将来的には税収が大幅に減ってお偉いさんがそれをカバーする為に俺たち一般市民への増税を言い出す可能性だってある。
とは言え。
俺だけが犠牲になるつもりは無いぞ。
「まあ、良いが。
どうせここまで時間が掛かっているんだ。
休息日は今まで通り休むし、年末年始は最初の予定通り6日休むぞ」
これだけの人数に呪具を使っているのだ。
どう考えても王太子の結婚式が終わって王都の探索網が解除されてからという訳ではないだろう。
としたら、ここで数日頑張って切り詰めたところで大して違いは無いだろうし、違いがあっても不幸な事故として諦めてもらうしかない。
「そうね、休憩は適度に取らないと効率が下がると上には言っておきましょう。
じゃあ、昼食が終わったら次の街に行くわよ」
俺の提案が許容範囲内だったのか、ファルナはあっさり頷いてお茶を飲み干した。
まあ、どうも俺担当になっているみたいだから、本人だって休みは欲しいところだろう。
「この街の調査はどうするんだ?」
確かに明日の朝からまた調査をするなら次の街に移動する為にもうそろそろ出た方が良いだろうが、あれだけ大規模な検挙騒ぎだったのだ。
まだ終わっていないだろう。
「元々、現地での調査は人員が足りなかったら王都からの援軍で熟すことになっているのよ。もうそろそろ領主邸での話し合いも終わってここからも引き払えるんじゃないかしら?」
肩を竦めながらファルナが答えた。
なるほど。
どれだけ被害者を見つけても人が足りなくならないな~と思っていたら、随時王都から援軍が来ていたのか。
確かに俺と一緒に調査人員が全員ついて回るんじゃあ効率は悪いよな。
ほぼ全く被害がない街だってあったんだ。
被害が多い街に王都から人員を集める形にして、俺の担当は数人で必要な魔道具を運ぶだけなのかな?
昼食を頼みながら、ふとファルナに声をかける。
「そうだ、追加契約を受ける代わりに、もう一か所どっか美味しい食事処での予約を要求する!」
この機会にドリアーナ以外の美味しい場所も開拓しちまおう。
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