252 / 1,038
卒業後
251 星暦553年 青の月 5日 お祭り騒ぎ(4)
しおりを挟む
「ある程度は工夫してみたんだけど、どうしても近くで見るとぼんやりした印象になるんだよね。
だからもう作ったら直ぐに上空に上げて、客引き用の風船みたいなものにしようと思うんだけど、どうかな?」
シャルロが雲で出来た俺モドキを上空へ浮かせながら、見に来たアンディと協力してくれることになった元同期で今日時間があった数人に聞いた。
雲に関しては、術で条件付けとして『水にならない』を『高濃度』と付け合わせ、更に表面の光反射を高める術を別に掛けることで少しははっきり近くでも目に見えやすいようになった。
軽く浮力を付与して空滑機で飛ぶ程度の高さに漂うように設定し、上に浮くにつれて大きくなるようにしてあるのでそれなりに見応えがある仕上がりになったと思う。
また、下手に高濃度なのでそのまま術を解くと下にべしゃっと水が落ちてくることもあるので(君の尊い犠牲は忘れないよ、アレク・・・)、20ミルしたら雨にならない濃度で空気中に拡散するようにも条件付けもした。
後はこの術にどのくらい人気が出るかにもよるが、それなりの数の雲像を造った場合は当日の上空に空気中の水分を取り去る術でも掛けないと雲が出てくるかにわか雨になる可能性があるかも知れないので要観察ということになっている。
「うわぁ、ウィルの雲が空を飛んでるってちょっと不気味な感じ・・・」
カルスが空を見上げながらつぶやいた。
おい。
久しぶりに会ったというのに、不気味とはなんじゃい。
「不気味???
え、お祭りの見世物には向いてない??」
シャルロが慌ててアンディや他に集まった人間に問いかける。
ぶふっとタニーシャが吹き出した。
「違う違う、あの雲が不気味なんじゃなくって、雲みたいなほわほわなある意味夢のある存在がウィルの顔をしているのがちょっと印象として合わないってだけよ。
大丈夫、お祭りに来るような子供にはきっと大人気になると思うわ。
確かに近くではちょっと見づらいけど、上空にあるのは何とはなしにウィルっぽく見えるから、子供にとっては楽しさ満載でしょう」
「あれって風に乗って20ミルほど適当に動き回るのか?下手にそれを追いかけて子供が迷子にならないように、親には注意しておいた方が良いな」
アンディがメモを取りながらつぶやいた。
確かにね。
ついでに、あまりお祭りの場所からも離れないようにした方がいいかな・・・。
でも、20ミルだったらそんなに遠くまでは行かないかな?
少しそれに関しても何度か実験して確認しておいた方がいいな。
「まあ、それはともかく。
後で術の詳細は他にも手伝ってくれる皆に伝えるけど、それとは別に何か地上で子供を楽しませる物を提供した方が良いかも知れない」
アレクが声を上げた。
そう、雲を作ったらそれはそれで楽しいかも知れないが、それは上空だけの話。
他にも魔術剣士の剣舞モドキやジェスラン氏の考えている何らかの見世物があるのだから、俺たちの時間に子供が地上で楽しむ物も提供しておかないと帰ってしまうかも知れない。
「もうすぐ暑くなるし、折角暇な魔術師が集まるんだから、氷菓子でも作って売るとか?
じゃなきゃ、小さな噴水機でも作って虹が出来ますよ~って売り出すのも面白いかも?」
カルスがしゅわっと水蒸気を空に向けて吹き出し、虹を作って見せながら提案した。
「噴水機は魔道具だろうが、魔術ではなく。
でも、魔術師が大きな虹をあちこちに作っている側で、噴水機を売り出して自分で小さな虹を作れるよ~って売り出すのも悪くないかもな」
アンディがつぶやいた。
「氷菓子もついでに出そうよ。
量を少な目にして、果物とでも一緒に出せばお腹を壊さないでしょう」
シャルロが目を輝かせて提案した。
流石、甘い物には詳しいね~。
確か去年の夏だっけ、自分で作るんだから良いじゃないと氷菓子を大量に食べてお腹を壊していたもんね。
まあ、お祭りと言えば食べ物もあった方が良いよな。
だからもう作ったら直ぐに上空に上げて、客引き用の風船みたいなものにしようと思うんだけど、どうかな?」
シャルロが雲で出来た俺モドキを上空へ浮かせながら、見に来たアンディと協力してくれることになった元同期で今日時間があった数人に聞いた。
雲に関しては、術で条件付けとして『水にならない』を『高濃度』と付け合わせ、更に表面の光反射を高める術を別に掛けることで少しははっきり近くでも目に見えやすいようになった。
軽く浮力を付与して空滑機で飛ぶ程度の高さに漂うように設定し、上に浮くにつれて大きくなるようにしてあるのでそれなりに見応えがある仕上がりになったと思う。
また、下手に高濃度なのでそのまま術を解くと下にべしゃっと水が落ちてくることもあるので(君の尊い犠牲は忘れないよ、アレク・・・)、20ミルしたら雨にならない濃度で空気中に拡散するようにも条件付けもした。
後はこの術にどのくらい人気が出るかにもよるが、それなりの数の雲像を造った場合は当日の上空に空気中の水分を取り去る術でも掛けないと雲が出てくるかにわか雨になる可能性があるかも知れないので要観察ということになっている。
「うわぁ、ウィルの雲が空を飛んでるってちょっと不気味な感じ・・・」
カルスが空を見上げながらつぶやいた。
おい。
久しぶりに会ったというのに、不気味とはなんじゃい。
「不気味???
え、お祭りの見世物には向いてない??」
シャルロが慌ててアンディや他に集まった人間に問いかける。
ぶふっとタニーシャが吹き出した。
「違う違う、あの雲が不気味なんじゃなくって、雲みたいなほわほわなある意味夢のある存在がウィルの顔をしているのがちょっと印象として合わないってだけよ。
大丈夫、お祭りに来るような子供にはきっと大人気になると思うわ。
確かに近くではちょっと見づらいけど、上空にあるのは何とはなしにウィルっぽく見えるから、子供にとっては楽しさ満載でしょう」
「あれって風に乗って20ミルほど適当に動き回るのか?下手にそれを追いかけて子供が迷子にならないように、親には注意しておいた方が良いな」
アンディがメモを取りながらつぶやいた。
確かにね。
ついでに、あまりお祭りの場所からも離れないようにした方がいいかな・・・。
でも、20ミルだったらそんなに遠くまでは行かないかな?
少しそれに関しても何度か実験して確認しておいた方がいいな。
「まあ、それはともかく。
後で術の詳細は他にも手伝ってくれる皆に伝えるけど、それとは別に何か地上で子供を楽しませる物を提供した方が良いかも知れない」
アレクが声を上げた。
そう、雲を作ったらそれはそれで楽しいかも知れないが、それは上空だけの話。
他にも魔術剣士の剣舞モドキやジェスラン氏の考えている何らかの見世物があるのだから、俺たちの時間に子供が地上で楽しむ物も提供しておかないと帰ってしまうかも知れない。
「もうすぐ暑くなるし、折角暇な魔術師が集まるんだから、氷菓子でも作って売るとか?
じゃなきゃ、小さな噴水機でも作って虹が出来ますよ~って売り出すのも面白いかも?」
カルスがしゅわっと水蒸気を空に向けて吹き出し、虹を作って見せながら提案した。
「噴水機は魔道具だろうが、魔術ではなく。
でも、魔術師が大きな虹をあちこちに作っている側で、噴水機を売り出して自分で小さな虹を作れるよ~って売り出すのも悪くないかもな」
アンディがつぶやいた。
「氷菓子もついでに出そうよ。
量を少な目にして、果物とでも一緒に出せばお腹を壊さないでしょう」
シャルロが目を輝かせて提案した。
流石、甘い物には詳しいね~。
確か去年の夏だっけ、自分で作るんだから良いじゃないと氷菓子を大量に食べてお腹を壊していたもんね。
まあ、お祭りと言えば食べ物もあった方が良いよな。
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる