249 / 1,038
卒業後
248 星暦553年 青の月 3日 お祭り騒ぎ
しおりを挟む
ジェスラン氏に色々言いつかった俺は、翌日アンディを連れて這々の体で帰宅してシャルロとアレクに泣き付いた。
「助けてくれ~~~」
修理した自鳴琴の魔道具に耳を傾けていたシャルロが、ソファに倒れ込むように身を投げ出した俺たちに目を丸くしている。
「どうしたの?」
「ここのところ暫く、アンディに頼まれて幽霊屋敷を調べていただろ?
で、幽霊の代わりに面白い仕掛けがあったんだよ。聞いてみたら、この屋敷の持ち主だったメルタル師っていうのは魔術師や金持ちに縁が無くても魔術師になれるよう才能のある子供を教育してきた人で、俺が利用した奨学金にも色々援助してくれた人だって話でさぁ。
この際、俺も少し恩返しをしようかな~なんて思ってメルタル師の名前で基金を作って、もっと王都や地方の子供での魔術の才能がある子供を探すのをきっちり効果的にやろうって提案したんだよ」
紅茶を淹れながらアレクが左眉を上げて見せた。
「ほおう。中々良心的と言うか親切と言うか、会った頃のお前さんから考えると想像も付かないほどお人好しな提案だな」
「まあねぇ。
最近は色々上手くいっているから金に困ってないしさ。
運が味方している間に善行しておけば、運が逃げたときにそれが助けになるって言うじゃん?
まあ、それはともかく。
才能のある子供を探す効果的な方法として、まず魔術師っていうのを子供達にもっとよく知ってもらって魅力的な職業だって思わせて、向こうから寄ってくるようにお祭りでもしたらどうかって提案したんだよ。
・・・メルタル師の弟子で基金作りに協力してくれるって紹介されたジェスランっていう魔術師に」
アレクから紅茶を受け取りながらシャルロが楽しげに微笑んだ。
「いいねぇ。学院祭の出し物みたいなのをお祭りでやるの?」
「まあ、そんなことを漠然と考えていたんだけど・・・。
学院祭に来るのって結局近所の人間か、生徒の縁故だろ?もっと一般の人の目に触れるように普通のお祭りでの出し物としてやったら良いと思ったんだ。
基金を設置したり、何をするかを決めたり、色々手配するのに半年ぐらいゆっくり時間を掛けるかなぁなんて漠然と考えていたら、ジェスラン氏に今月末の休養日に祭りをするって言われて。
夜の花火や日中の召喚の見世物は彼が手配するから、3刻分ぐらい、何か考えて準備しろって言われちゃって」
少なくとも、年に4回という提案は大変すぎるということで魔術院の上層部に却下された。
で、お祭りそのものの告知や手配はジェスラン氏がやると張り切っている。
お祭りで王都の子供達の注意を引いた後に、神殿でのクラスなどで子供達に魔術師が接触して才能がある子供を探すことの手配に関してはアプレス氏が動いてくれることになった。
だけど。
急にお祭りでの出し物を考えろって言われたって・・・!!!!
「学院祭みたいに問答無用で生徒全員参加、しかもちゃんと準備用の時間も与えられているっていうならまだしも、いくら準備期間があれの倍あると言っても、何をやるのか、誰が参加するのか、いつ練習するのかも何も決まってないのに・・・もの凄い無茶ぶりだろ?」
無茶ぶり、と言いながらもけろりとした顔でアンディが付け足した。
「確かにね。ちなみに、予算とかはどうなってるんだ?
ウィルの言い出したことだからね。私達は手伝いに時間を掛けても構わない。
だが、流石に他の魔術師にも無償で手伝えというでは、今回はお祭り騒ぎだから楽しんで参加する人間がいるとしても長期的には続かないぞ?」
チラリとシャルロに目をやって、彼が頷いているのを見たアレクが苦笑いしながら答えた。
「まあ、メルタル師関係の魔術師や相続人からそれなりに資金が集まりそうだから、若手魔術師を雇う程度の日当は出せそうだ。
だから、取り敢えず魔術学院卒業後間もない若手を捕まえて、同窓会を兼ねた学院祭モドキなお祭りとしてやっていってはどうかな?
もっと経験豊かな魔術師の方による善意の参加も有りという形で」
アンディが提案する。
流石、元寮長。
学院祭でグリフォン寮を仕切っていただけある。
この調子で頑張ってくれ。
俺は大勢の人間を動かすっていうのは苦手なんだよ。
「助けてくれ~~~」
修理した自鳴琴の魔道具に耳を傾けていたシャルロが、ソファに倒れ込むように身を投げ出した俺たちに目を丸くしている。
「どうしたの?」
「ここのところ暫く、アンディに頼まれて幽霊屋敷を調べていただろ?
で、幽霊の代わりに面白い仕掛けがあったんだよ。聞いてみたら、この屋敷の持ち主だったメルタル師っていうのは魔術師や金持ちに縁が無くても魔術師になれるよう才能のある子供を教育してきた人で、俺が利用した奨学金にも色々援助してくれた人だって話でさぁ。
この際、俺も少し恩返しをしようかな~なんて思ってメルタル師の名前で基金を作って、もっと王都や地方の子供での魔術の才能がある子供を探すのをきっちり効果的にやろうって提案したんだよ」
紅茶を淹れながらアレクが左眉を上げて見せた。
「ほおう。中々良心的と言うか親切と言うか、会った頃のお前さんから考えると想像も付かないほどお人好しな提案だな」
「まあねぇ。
最近は色々上手くいっているから金に困ってないしさ。
運が味方している間に善行しておけば、運が逃げたときにそれが助けになるって言うじゃん?
まあ、それはともかく。
才能のある子供を探す効果的な方法として、まず魔術師っていうのを子供達にもっとよく知ってもらって魅力的な職業だって思わせて、向こうから寄ってくるようにお祭りでもしたらどうかって提案したんだよ。
・・・メルタル師の弟子で基金作りに協力してくれるって紹介されたジェスランっていう魔術師に」
アレクから紅茶を受け取りながらシャルロが楽しげに微笑んだ。
「いいねぇ。学院祭の出し物みたいなのをお祭りでやるの?」
「まあ、そんなことを漠然と考えていたんだけど・・・。
学院祭に来るのって結局近所の人間か、生徒の縁故だろ?もっと一般の人の目に触れるように普通のお祭りでの出し物としてやったら良いと思ったんだ。
基金を設置したり、何をするかを決めたり、色々手配するのに半年ぐらいゆっくり時間を掛けるかなぁなんて漠然と考えていたら、ジェスラン氏に今月末の休養日に祭りをするって言われて。
夜の花火や日中の召喚の見世物は彼が手配するから、3刻分ぐらい、何か考えて準備しろって言われちゃって」
少なくとも、年に4回という提案は大変すぎるということで魔術院の上層部に却下された。
で、お祭りそのものの告知や手配はジェスラン氏がやると張り切っている。
お祭りで王都の子供達の注意を引いた後に、神殿でのクラスなどで子供達に魔術師が接触して才能がある子供を探すことの手配に関してはアプレス氏が動いてくれることになった。
だけど。
急にお祭りでの出し物を考えろって言われたって・・・!!!!
「学院祭みたいに問答無用で生徒全員参加、しかもちゃんと準備用の時間も与えられているっていうならまだしも、いくら準備期間があれの倍あると言っても、何をやるのか、誰が参加するのか、いつ練習するのかも何も決まってないのに・・・もの凄い無茶ぶりだろ?」
無茶ぶり、と言いながらもけろりとした顔でアンディが付け足した。
「確かにね。ちなみに、予算とかはどうなってるんだ?
ウィルの言い出したことだからね。私達は手伝いに時間を掛けても構わない。
だが、流石に他の魔術師にも無償で手伝えというでは、今回はお祭り騒ぎだから楽しんで参加する人間がいるとしても長期的には続かないぞ?」
チラリとシャルロに目をやって、彼が頷いているのを見たアレクが苦笑いしながら答えた。
「まあ、メルタル師関係の魔術師や相続人からそれなりに資金が集まりそうだから、若手魔術師を雇う程度の日当は出せそうだ。
だから、取り敢えず魔術学院卒業後間もない若手を捕まえて、同窓会を兼ねた学院祭モドキなお祭りとしてやっていってはどうかな?
もっと経験豊かな魔術師の方による善意の参加も有りという形で」
アンディが提案する。
流石、元寮長。
学院祭でグリフォン寮を仕切っていただけある。
この調子で頑張ってくれ。
俺は大勢の人間を動かすっていうのは苦手なんだよ。
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる