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卒業後
612 星暦555年 橙の月 18日 忠誠心?(13)
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「合法な解除用魔具の特許が切れる頃になると微妙に変わって新しいのが必要になる違法な呪具?
どう考えてもグルだろ、それ??」
ずらりと陳列された諸々のショボい呪具、安価版ともう少し高い単体用解除用魔具、そして高額な複合用解除用魔具を見ながらアンディが口元を引き攣らせた。
「そうだろうな。
そこそこのサイズの都市国家に打撃を与えられるような危険な呪具を少数高く売る商売よりも、報復を招かないショボくて安いのを大量に売って、足りない収入は解除用魔具も売ることで稼ぐ事業モデルに20年ぐらい前に転換したらしい。
誰かとっても賢い人間がいたんだろうな」
20年前だったらまだ生きているかな?
ある意味、その賢い奴が死んだ後にどうなるかが興味深いところだが。
まあ、危険度が少ないのにそれなりに儲かる事業モデルだから、考えた賢い奴が死んでも暫くは続くだろうが・・・そのうち欲をかいて高くて凄い呪具に手を出して叩かれる可能性が高い気がする。
ショボい魔具ばっかり造っても飽きるからな。
そのうち凝り性な職人がヤバいのを作り始め、どっかのバカがそれをこっそり売って、大騒ぎになるんじゃないか?
「・・・考えてみたら、特許って50年もつだろ?
20年前に始まったんだったらまだ特許切れ対策が必要な時期じゃないと思うが」
呪具を手に取って調べながらアンディが聞いてきた。
「なんでも、あっちでは比較的知られた術回路にちょっと工夫を加えた程度だと特許期間が5年なんだってさ。
アファル王国では特許申請が通りさえすれば50年、そのかわり特許の内容に革新性が無ければ申請その物が却下されるだろ?
そう言う微妙なレベルの新規特許の扱いはどうなるんだ?」
アファル王国では特許として認められない技術でも東大陸で特許の認定を受ければ魔術院同士の相互規約で保護されるとなったら、大したことのない開発でもどんどん東大陸の魔術師に売り払ってあちらで特許申請させればウハウハになりそうだ。
5年で切れるから特許の総収入は少ないかも知れないが、5年間は競争相手を締め出せる、もしくは使用料をふんだくれるとなったら悪くは無いだろう。
元々、革新的な大きな発見なんていう物は難しいんだ。
ちょろっと小手先だけの改善で5年間儲けられるなら、その制度の違いを利用する人間は絶対に出てくる。
下手をすると俺たちの特許で造った商品も微妙に手を加えて『新製品』として5年間東大陸の特許で邪魔されちまう危険もあるから、変な制度運用はやめて欲しいところだ。
「なんか面倒な話になりそうだな・・・」
アンディが机に顎を乗せて頭を抱え込んだ。
「まあ、まずは話し合いの決着がつくまでの間、解除用魔具を東大陸から買うか、特許を差し止めたままこちらで自作させるかをお偉いさんが決めなきゃな。
それが決まったら解除用魔具の特許がこの国の既存の魔術回路と重複していないかの確認といったところか。
普通に特許が認められる程度に革新的だったら、取り敢えず50年程特許を認めている間に更に検討すれば良いんだから」
新規特許として認められなかった場合は・・・こちらの解除用魔具を作っている工房に火を放たれないよう要注意ってやつだろうな。
まあ、アファル王国で造るだけで東大陸に輸出したりしなければ、向うも態々海を渡って嫌がらせに来ない可能性も高いか?
元々魔術関連の技術革新と保護に力を入れている国だから、呪具関係はすぐに摘発される関係から解除用魔具なんてものが今まで特許申請されていない可能性は高い。そうなると十分安価版でも斬新性があるかもだし。
そう考えるんだったら、呪具っぽい人の精神に影響を与える魔具は全て禁止として(あれ、もしかして既に禁止されているのか?)、港や国境でがっつり探知網を張って国内への流入を防ぐのもありか。
ショボい呪具にそれだけの労力を割く価値があるかが微妙なところなんだろうなぁ・・・。
「なんとも微妙過ぎて真面目に大問題化するのはアホらしいけど放置するには弊害が大きすぎる、面倒な問題だな」
ため息を吐きながらアンディが今度は高額版解呪用魔具を手に取った。
「まあなぁ。
その貧しくて呪具を作るしか食っていけない街とやらも、ショボ過ぎて真面目に攻め滅ぼそうと誰も考えないレベルを狙ってやっているらしいし」
この事業モデルを始めた頃だったら、その街の人間がしっかり食っていける様に何らかの形で経済支援をしてやれば止められた話かも知れない。
だが比較的安全に儲けられる事が証明されてしまった今となっては・・・例えそのザッファとか言う街の人間が呪具作りをしなくても食っていけるように手を貸してやっても、金の為に誰かが続けるだろう。
つまり諸悪の根源で潰すのは無理。
なので対応策で工夫しなければならなくなる。
中々頭の痛い問題だろうが、魔術院や国のお偉いさんはこう言う問題を解決する為に高い報酬と地位を貰っているんだ。頑張って貰おうじゃないか。
どう考えてもグルだろ、それ??」
ずらりと陳列された諸々のショボい呪具、安価版ともう少し高い単体用解除用魔具、そして高額な複合用解除用魔具を見ながらアンディが口元を引き攣らせた。
「そうだろうな。
そこそこのサイズの都市国家に打撃を与えられるような危険な呪具を少数高く売る商売よりも、報復を招かないショボくて安いのを大量に売って、足りない収入は解除用魔具も売ることで稼ぐ事業モデルに20年ぐらい前に転換したらしい。
誰かとっても賢い人間がいたんだろうな」
20年前だったらまだ生きているかな?
ある意味、その賢い奴が死んだ後にどうなるかが興味深いところだが。
まあ、危険度が少ないのにそれなりに儲かる事業モデルだから、考えた賢い奴が死んでも暫くは続くだろうが・・・そのうち欲をかいて高くて凄い呪具に手を出して叩かれる可能性が高い気がする。
ショボい魔具ばっかり造っても飽きるからな。
そのうち凝り性な職人がヤバいのを作り始め、どっかのバカがそれをこっそり売って、大騒ぎになるんじゃないか?
「・・・考えてみたら、特許って50年もつだろ?
20年前に始まったんだったらまだ特許切れ対策が必要な時期じゃないと思うが」
呪具を手に取って調べながらアンディが聞いてきた。
「なんでも、あっちでは比較的知られた術回路にちょっと工夫を加えた程度だと特許期間が5年なんだってさ。
アファル王国では特許申請が通りさえすれば50年、そのかわり特許の内容に革新性が無ければ申請その物が却下されるだろ?
そう言う微妙なレベルの新規特許の扱いはどうなるんだ?」
アファル王国では特許として認められない技術でも東大陸で特許の認定を受ければ魔術院同士の相互規約で保護されるとなったら、大したことのない開発でもどんどん東大陸の魔術師に売り払ってあちらで特許申請させればウハウハになりそうだ。
5年で切れるから特許の総収入は少ないかも知れないが、5年間は競争相手を締め出せる、もしくは使用料をふんだくれるとなったら悪くは無いだろう。
元々、革新的な大きな発見なんていう物は難しいんだ。
ちょろっと小手先だけの改善で5年間儲けられるなら、その制度の違いを利用する人間は絶対に出てくる。
下手をすると俺たちの特許で造った商品も微妙に手を加えて『新製品』として5年間東大陸の特許で邪魔されちまう危険もあるから、変な制度運用はやめて欲しいところだ。
「なんか面倒な話になりそうだな・・・」
アンディが机に顎を乗せて頭を抱え込んだ。
「まあ、まずは話し合いの決着がつくまでの間、解除用魔具を東大陸から買うか、特許を差し止めたままこちらで自作させるかをお偉いさんが決めなきゃな。
それが決まったら解除用魔具の特許がこの国の既存の魔術回路と重複していないかの確認といったところか。
普通に特許が認められる程度に革新的だったら、取り敢えず50年程特許を認めている間に更に検討すれば良いんだから」
新規特許として認められなかった場合は・・・こちらの解除用魔具を作っている工房に火を放たれないよう要注意ってやつだろうな。
まあ、アファル王国で造るだけで東大陸に輸出したりしなければ、向うも態々海を渡って嫌がらせに来ない可能性も高いか?
元々魔術関連の技術革新と保護に力を入れている国だから、呪具関係はすぐに摘発される関係から解除用魔具なんてものが今まで特許申請されていない可能性は高い。そうなると十分安価版でも斬新性があるかもだし。
そう考えるんだったら、呪具っぽい人の精神に影響を与える魔具は全て禁止として(あれ、もしかして既に禁止されているのか?)、港や国境でがっつり探知網を張って国内への流入を防ぐのもありか。
ショボい呪具にそれだけの労力を割く価値があるかが微妙なところなんだろうなぁ・・・。
「なんとも微妙過ぎて真面目に大問題化するのはアホらしいけど放置するには弊害が大きすぎる、面倒な問題だな」
ため息を吐きながらアンディが今度は高額版解呪用魔具を手に取った。
「まあなぁ。
その貧しくて呪具を作るしか食っていけない街とやらも、ショボ過ぎて真面目に攻め滅ぼそうと誰も考えないレベルを狙ってやっているらしいし」
この事業モデルを始めた頃だったら、その街の人間がしっかり食っていける様に何らかの形で経済支援をしてやれば止められた話かも知れない。
だが比較的安全に儲けられる事が証明されてしまった今となっては・・・例えそのザッファとか言う街の人間が呪具作りをしなくても食っていけるように手を貸してやっても、金の為に誰かが続けるだろう。
つまり諸悪の根源で潰すのは無理。
なので対応策で工夫しなければならなくなる。
中々頭の痛い問題だろうが、魔術院や国のお偉いさんはこう言う問題を解決する為に高い報酬と地位を貰っているんだ。頑張って貰おうじゃないか。
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