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卒業後
586 星暦555年 緑の月 25~29日 虫除け(6)
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「考えてみたらさ、対象のサイズを指定した防御結界で虫を排除できるなら、虫除け結界は無くても良くね?」
地中に結界を展開するのに必要な魔力が妙に大きい事に関して調べようと話している最中に、俺はふと思いついた事を口にした。
元々、地中の結界魔力消費量が問題になったのは結界型の虫除けでは完全に虫を排除出来なかったからだ。
で、防御結界を一緒に展開する形と、虫除け結界を厚くしたり地中まで続く球形にしたりと言った形とを試した結果、同じ効果を得る為には防御結界を薄い膜状の虫除け結界と一緒に展開するのが一番経済的だと分かった訳だ。
何故に球形の結界展開の魔力消費量が大きいのかは調べる価値がある。
だが。
根本的な話として、防御結界で虫を排除できるなら虫除けの魔術回路は必要ないのでは??
「・・・確かに、どうせ防御結界を展開するならそれだけでも良さそうな気がするね」
アイディアを書き留めていたシャルロが手を止めて首を傾けた。
「確か、防御結界だけにすると魔力消費がかなり多くなるんじゃなかったかな?
以前、洞窟に入る時なんかに虫を排除出来るよう対象のサイズを指定した防御結界を携帯して行けばどうだろうかと専門家に聞いてみた際に、虫除け魔道具の方が魔力消費が少ないと言われたよ」
アレクが首を横に振りながら言った。
へぇぇ、そんな事を聞いたんだ?
洞窟って事は・・・あの化け物ゴキブリもどきに襲われた後かね?
防御結界は一度展開したら後は基本的に接触してきた対象を排除する際に追加で魔力を消費する。
それに対し、虫除けの魔道具は虫が嫌がる波動の様な何かを常時放出する事で虫を近寄らせない為、虫が沢山居ようが居まいが消費する魔力量は同じだ。
お陰で薄っぺらい結界型にすると鈍感な虫なんかは『嫌な何か』に気づく前に虫除け結界を通り過ぎてしまって効果が足りないと言う事になる。
つまり。
「虫除け結界を併用しないと防御結界にぶつかる虫の量が多くなって魔力消費が激増するのかな?」
俺が言おうとした事をシャルロに先取りされた。
「多分ね。
防御結界に当たって一度足止めされると、鈍いタイプの虫でも虫除け結界から齎される忌避感に気付いて自発的に離れるんだろうね。
虫除け結界だけだと通り抜ける前に忌避感を感じさせるだけの厚みが必要になるから、鈍感らしいゴキブリや百足を確実に排除するのに魔力消費が増えると言う訳だ。
防御結界を併用するとそちらで足を止められた後は自発的に離れるから、虫除け結界が薄くても効果が出るようだな。
まあ、それとは別に球形にすると何故ああも消費魔力量が増えるのかはこれから調べたいところだが」
アレクがクッキーに手を伸ばしながら情報を纏めた。
「ついでに、防御結界を球形に展開したら魔力消費量が増えるのかも試してみようぜ」
虫除け結界よりも防御結界の方が使用頻度が多い。
そう考えると、地下まで展開する球形の結界にすると魔力消費量が増えるか否かの情報は重要だ。
「そうだね。
防御結界の方が使用頻度も高いし馴染みもあるし。
なんと言ってもついこないだ詳細に調べまくったしね。
とは言え、防御結界を地中に展開する事ってあまりない気もするけど」
シャルロが頷きながら言った。
「だったら探知結界を地中に展開したら魔力消費量が増えるのかを調べるか?
あれの方がまだ地下にも展開する可能性が高いだろ?」
防御結界よりも魔力消費量の少ない探知結界の方が、『もしかしたら地下から穴を掘って侵入されるかも知れない』なんて言う場合に使う。
確かに地下道や下水管でもあるんじゃない限り防御結界を地下に展開する事はあまり無いだろうから、まずはもっと現実的なタイプの結界で地中での展開における魔力消費量の違いを確認すべきだ。
探知結界を地下に展開しても魔力使用量が目立って増えないという結果が出たら、その時点で防御結界の球形展開の魔力消費量を調べれば良い。
「そうだな。
小型の球形な探知結界用魔具を作って、展開場所によって消費魔力量がどの位変わる確認してみよう」
アレクが頷く。
探知結界だったら魔具でなく直に俺たちの誰かが展開しても良いのだが、自分で展開するとどうしても魔力の消費量が感覚的にしか分からない為、魔力消費量の確認作業には向かない。
なので、腕の長さぐらいのサイズの探知結界用魔具を作成して、まずは1メタ程度の高さの壁の上に置いて展開してみた。
「屑魔石一個で1刻もったね。
意外と探知結界って魔力を使わないんだなぁ。
これだったら防犯の為に家の周りに常時展開させても良いかも」
お茶を飲みながら結果を確認したシャルロがコメントした。
「いや、お前の家の場合、どうせ蒼流が常時警戒しているんじゃないか?」
まあ、家族であるケレナはまだしも、使用人しかいない時まで守ってくれるかは知らないが。
シャルロが首を傾げて横にいた蒼流に目を向けて無言で何やらやり取りしていたが、やがて肩を竦めてお茶のお代わりを注いだ。
「そうみたいだ。
ついでに今後はゴキブリだけじゃなくて百足も排除するよう頼んでおいた」
・・・つまり、シャルロの虫除け用魔道具に対する必要性が一気に下がったと。
まあ、それでも他の一般人に対する需要は十分あるだろうから開発を続ける価値は十分にある。
俺も家に百足が出なくなるのは嬉しいし。
それはさておき。
「そう言えば、これを半球形にして展開したらどうなる?」
元々、球形に展開すると魔力消費量が増えるのか、地面の中にも展開すると消費量が増えるのか、それを確認しようと思って始めた事なのだ。
地面にある石や水などの素材によって違いが生じるか興味があるが、まずは半球だと体積が減った分だけ魔力消費量が減るのか、興味がある。
と言う事で試したら・・・屑魔石で2刻もった。
球形の半分である。
「つまり、探知結界だったら形に関係なく、地上で展開する分には体積に比例するっぽいね。
虫除け結界でも同じ結果になるか、試してみよう」
アレクの提案通りテストしたら、消費量そのものには差が出たものの、1メタの高さで展開する分にはやはり体積に比例していた。
「じゃあ、最初に虫除け結界を球形に展開してやたらと魔力消費量が多かったのってやっぱり地面の中に展開したからなのか」
もしくは地面と空中と言う違う素材を跨がる形で展開したらからか。
色々とテストする事がありそうだ。
地中に結界を展開するのに必要な魔力が妙に大きい事に関して調べようと話している最中に、俺はふと思いついた事を口にした。
元々、地中の結界魔力消費量が問題になったのは結界型の虫除けでは完全に虫を排除出来なかったからだ。
で、防御結界を一緒に展開する形と、虫除け結界を厚くしたり地中まで続く球形にしたりと言った形とを試した結果、同じ効果を得る為には防御結界を薄い膜状の虫除け結界と一緒に展開するのが一番経済的だと分かった訳だ。
何故に球形の結界展開の魔力消費量が大きいのかは調べる価値がある。
だが。
根本的な話として、防御結界で虫を排除できるなら虫除けの魔術回路は必要ないのでは??
「・・・確かに、どうせ防御結界を展開するならそれだけでも良さそうな気がするね」
アイディアを書き留めていたシャルロが手を止めて首を傾けた。
「確か、防御結界だけにすると魔力消費がかなり多くなるんじゃなかったかな?
以前、洞窟に入る時なんかに虫を排除出来るよう対象のサイズを指定した防御結界を携帯して行けばどうだろうかと専門家に聞いてみた際に、虫除け魔道具の方が魔力消費が少ないと言われたよ」
アレクが首を横に振りながら言った。
へぇぇ、そんな事を聞いたんだ?
洞窟って事は・・・あの化け物ゴキブリもどきに襲われた後かね?
防御結界は一度展開したら後は基本的に接触してきた対象を排除する際に追加で魔力を消費する。
それに対し、虫除けの魔道具は虫が嫌がる波動の様な何かを常時放出する事で虫を近寄らせない為、虫が沢山居ようが居まいが消費する魔力量は同じだ。
お陰で薄っぺらい結界型にすると鈍感な虫なんかは『嫌な何か』に気づく前に虫除け結界を通り過ぎてしまって効果が足りないと言う事になる。
つまり。
「虫除け結界を併用しないと防御結界にぶつかる虫の量が多くなって魔力消費が激増するのかな?」
俺が言おうとした事をシャルロに先取りされた。
「多分ね。
防御結界に当たって一度足止めされると、鈍いタイプの虫でも虫除け結界から齎される忌避感に気付いて自発的に離れるんだろうね。
虫除け結界だけだと通り抜ける前に忌避感を感じさせるだけの厚みが必要になるから、鈍感らしいゴキブリや百足を確実に排除するのに魔力消費が増えると言う訳だ。
防御結界を併用するとそちらで足を止められた後は自発的に離れるから、虫除け結界が薄くても効果が出るようだな。
まあ、それとは別に球形にすると何故ああも消費魔力量が増えるのかはこれから調べたいところだが」
アレクがクッキーに手を伸ばしながら情報を纏めた。
「ついでに、防御結界を球形に展開したら魔力消費量が増えるのかも試してみようぜ」
虫除け結界よりも防御結界の方が使用頻度が多い。
そう考えると、地下まで展開する球形の結界にすると魔力消費量が増えるか否かの情報は重要だ。
「そうだね。
防御結界の方が使用頻度も高いし馴染みもあるし。
なんと言ってもついこないだ詳細に調べまくったしね。
とは言え、防御結界を地中に展開する事ってあまりない気もするけど」
シャルロが頷きながら言った。
「だったら探知結界を地中に展開したら魔力消費量が増えるのかを調べるか?
あれの方がまだ地下にも展開する可能性が高いだろ?」
防御結界よりも魔力消費量の少ない探知結界の方が、『もしかしたら地下から穴を掘って侵入されるかも知れない』なんて言う場合に使う。
確かに地下道や下水管でもあるんじゃない限り防御結界を地下に展開する事はあまり無いだろうから、まずはもっと現実的なタイプの結界で地中での展開における魔力消費量の違いを確認すべきだ。
探知結界を地下に展開しても魔力使用量が目立って増えないという結果が出たら、その時点で防御結界の球形展開の魔力消費量を調べれば良い。
「そうだな。
小型の球形な探知結界用魔具を作って、展開場所によって消費魔力量がどの位変わる確認してみよう」
アレクが頷く。
探知結界だったら魔具でなく直に俺たちの誰かが展開しても良いのだが、自分で展開するとどうしても魔力の消費量が感覚的にしか分からない為、魔力消費量の確認作業には向かない。
なので、腕の長さぐらいのサイズの探知結界用魔具を作成して、まずは1メタ程度の高さの壁の上に置いて展開してみた。
「屑魔石一個で1刻もったね。
意外と探知結界って魔力を使わないんだなぁ。
これだったら防犯の為に家の周りに常時展開させても良いかも」
お茶を飲みながら結果を確認したシャルロがコメントした。
「いや、お前の家の場合、どうせ蒼流が常時警戒しているんじゃないか?」
まあ、家族であるケレナはまだしも、使用人しかいない時まで守ってくれるかは知らないが。
シャルロが首を傾げて横にいた蒼流に目を向けて無言で何やらやり取りしていたが、やがて肩を竦めてお茶のお代わりを注いだ。
「そうみたいだ。
ついでに今後はゴキブリだけじゃなくて百足も排除するよう頼んでおいた」
・・・つまり、シャルロの虫除け用魔道具に対する必要性が一気に下がったと。
まあ、それでも他の一般人に対する需要は十分あるだろうから開発を続ける価値は十分にある。
俺も家に百足が出なくなるのは嬉しいし。
それはさておき。
「そう言えば、これを半球形にして展開したらどうなる?」
元々、球形に展開すると魔力消費量が増えるのか、地面の中にも展開すると消費量が増えるのか、それを確認しようと思って始めた事なのだ。
地面にある石や水などの素材によって違いが生じるか興味があるが、まずは半球だと体積が減った分だけ魔力消費量が減るのか、興味がある。
と言う事で試したら・・・屑魔石で2刻もった。
球形の半分である。
「つまり、探知結界だったら形に関係なく、地上で展開する分には体積に比例するっぽいね。
虫除け結界でも同じ結果になるか、試してみよう」
アレクの提案通りテストしたら、消費量そのものには差が出たものの、1メタの高さで展開する分にはやはり体積に比例していた。
「じゃあ、最初に虫除け結界を球形に展開してやたらと魔力消費量が多かったのってやっぱり地面の中に展開したからなのか」
もしくは地面と空中と言う違う素材を跨がる形で展開したらからか。
色々とテストする事がありそうだ。
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