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卒業後
223 星暦553年 紫の月 23日 船探し(6)
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「うあぁあぁぁぁゃあぁぁ~~!!」
シャルロの空滑機が宙に上がった瞬間に響き渡った叫び声を聞いて、思わず軽く吹き出してしまった。
「高いところが苦手なのかな?」
通信機をアレクに対してスイッチを入れてコメントする。
「船乗りならマストに登ったりしなければならないだろうから、高所恐怖症では務まらないと思うんだがなぁ」
通信機から笑いをこらえたようなアレクの声が聞こえる。
気を失ってしまったとか失禁してしまったとかなら航海士の人に確認作業に付き合って貰うのは諦めなければならないが、ちょっと怖い程度なら我慢して慣れてもらう。
ノンビリやりたいところに見張り役なんて無粋な横やりを入れるのだから、少しは役に立たないとね。
・・・あれ?
「そう言えば、アレクも高いところ苦手だって以前言ってなかったっけ?」
「私は頭脳派人間なんだ。自分の肉体能力なんて信頼できない物を使って高いところで動き回るのは苦手だが、自分たちで開発、テストして作った魔道具なら大丈夫さ」
なるほど。
アレクは運動そのものが苦手なのか。
上手く立ち回っていたのか、魔術学院の授業では特に目立っていなかったが。
取り敢えず、シャルロが捜索範囲の南端にたどり着き、何やら航海士と相談してから沖に進んで彼の血を1滴混ぜた水と錘を入れた瓶を海に落とす。
蒼流なら海全体を横断するような氷の障壁も作れるらしいのだが、流石にそんなことはして貰う必要は無いし、どんな弊害が起きるか分かったものではないので蒼流に分かりやすい目印をまず終点に落とすことにしたのだ。
その後は、海岸寄りの始点に戻る。
シャルロが蒼流に頼んだのか、一瞬海が輝いたと思ったら下に氷の壁と思われる力の塊が出来ていた。
精霊の力の発現というのは人間の魔術とは違うのだが、それでも魔力の一種ではあるので心眼《サイト》には光って見える。
それが何千ナタもにわたって一瞬で構築されるのは凄い。
今回は操作領域の南端と北端の区切りを蒼流に作って貰い、海中を進む際のサポートを清早に頼むことにしたのだが・・・相変わらず常識を越えた威力だな。
◆◆◆◆
何だかんだで時間が掛ったので、北端の壁を作って貰った後は一度宿に戻って空滑機を片づけた後に昼食を食べてから海に出た。
「じゃあ、ここら辺かな?」
下に氷の壁が見えてきたところでシャルロとアレクに確認し、二人が頷いたのを見てから航海士へ注意事項を伝えることにした。
「これから海中に潜るけど、ちゃんと濡れないし空気も循環して貰えるから安心してくれ。
下手に暴れて船から落ちたらどうなるか分からないから、出来れば立ち上がらないで貰えるとありがたい」
「???
潜る?」
航海士はイマイチ何の話なのか理解していない顔をしていたが、まあ取り敢えず警告はしたと言うことで無視してさっさと清早にお願いした。
「じゃ、下げるのと空気をよろしく~」
「了解!」
海での作業と言うことで張り切っていた清早が姿を現したと思ったら直ぐさまボートが沈み始めた。
どこかの屋根から自力で重力に任せて飛び降りるよりは遅いが、空滑機で先程高度を下げた時よりは早いぐらいの速度でボートが沈み始め、航海士の顔が面白いほど真っ青になった。
一体こいつは俺たちがどうやってアドリアーナ号を探すと思っていたのだろうか?
海上から船で探せる範囲は既にダルム商会でやっているのに、俺たちが海上から探すと思っていたのか?
深くまで潜っていくと、だんだん辺りが暗くなってくる。
灯りを付ければ氷の壁が見えるぐらいのところまで降りてきた。
「光」
ぽうっと光が浮かび上がったのを、半日程度持つだけの魔力を込め東側の海底に設置する。
「なんだあれは?!」
航海士がずっと海底に続く白く光を反射している氷の壁を見て驚いていた。
「シャルロが精霊に頼んで作って貰った氷の壁さ。
これがあれば、北端まで届いたことが分かるだろう?最初はロープでも張ろうかと思ったんだが、長さが半端ないから・・・氷の壁を海底に作って貰うことにしたんだ。
さっき南端でも同じ事をしたから、このままコンパスで方向を確認しながら北と南の氷の壁の間を往復しながら探す」
「じゃあ、よろしくね」
シャルロがコンパスと舵を航海士に渡した。
「まっすぐ北に進むように舵を動かしてね。一応後ろからまっすぐ一定の速度で進むよう力を加えて貰ってるから勝手に変な方向には進まないとは思うけど」
ボートの周りの空気の壁(水の壁?)を居心地悪そうに見ながら航海士がコンパスと舵を弄っている間に、俺たちは光源を設置して左右を確認し続ける。
最初は何も無かったが、2刻ぐらいした後に最初の塊が目に入った。
「お、何かあるぞ。水打《ヒタン》!」
アレクが術を放つ。
砂が舞い上がり・・・光が乱反射して辺り一面真っ白になった。
「あ~。
これじゃあ砂が落ち着くまで時間が掛りそうだね。
どこで水打《ヒタン》を打ったか記録しておいて帰りに全部纏めて見て回ろうか?」
シャルロがため息をつきながら紙を取り出した。
以前の探険の際は歩いていたので、砂が落ち着くまで待つのは良い休憩になった。しかし今回は船に乗っているだけなので特に休みは必要が無い。
捜査する範囲を考えると、ノンビリ一つ一つの岩や沈没船で砂が落ち着くまで待っている暇は無いかもしれない。
俺たちだったらちょっとおしゃべりして休憩しても良かったんだけどねぇ。
お目付役がいるし。
「じゃあ、とりあえず魔力が切れた人が記録係ね。
最初はシャルロがやっといて」
さて、一体幾つ沈没船が見つかるかな?
シャルロの空滑機が宙に上がった瞬間に響き渡った叫び声を聞いて、思わず軽く吹き出してしまった。
「高いところが苦手なのかな?」
通信機をアレクに対してスイッチを入れてコメントする。
「船乗りならマストに登ったりしなければならないだろうから、高所恐怖症では務まらないと思うんだがなぁ」
通信機から笑いをこらえたようなアレクの声が聞こえる。
気を失ってしまったとか失禁してしまったとかなら航海士の人に確認作業に付き合って貰うのは諦めなければならないが、ちょっと怖い程度なら我慢して慣れてもらう。
ノンビリやりたいところに見張り役なんて無粋な横やりを入れるのだから、少しは役に立たないとね。
・・・あれ?
「そう言えば、アレクも高いところ苦手だって以前言ってなかったっけ?」
「私は頭脳派人間なんだ。自分の肉体能力なんて信頼できない物を使って高いところで動き回るのは苦手だが、自分たちで開発、テストして作った魔道具なら大丈夫さ」
なるほど。
アレクは運動そのものが苦手なのか。
上手く立ち回っていたのか、魔術学院の授業では特に目立っていなかったが。
取り敢えず、シャルロが捜索範囲の南端にたどり着き、何やら航海士と相談してから沖に進んで彼の血を1滴混ぜた水と錘を入れた瓶を海に落とす。
蒼流なら海全体を横断するような氷の障壁も作れるらしいのだが、流石にそんなことはして貰う必要は無いし、どんな弊害が起きるか分かったものではないので蒼流に分かりやすい目印をまず終点に落とすことにしたのだ。
その後は、海岸寄りの始点に戻る。
シャルロが蒼流に頼んだのか、一瞬海が輝いたと思ったら下に氷の壁と思われる力の塊が出来ていた。
精霊の力の発現というのは人間の魔術とは違うのだが、それでも魔力の一種ではあるので心眼《サイト》には光って見える。
それが何千ナタもにわたって一瞬で構築されるのは凄い。
今回は操作領域の南端と北端の区切りを蒼流に作って貰い、海中を進む際のサポートを清早に頼むことにしたのだが・・・相変わらず常識を越えた威力だな。
◆◆◆◆
何だかんだで時間が掛ったので、北端の壁を作って貰った後は一度宿に戻って空滑機を片づけた後に昼食を食べてから海に出た。
「じゃあ、ここら辺かな?」
下に氷の壁が見えてきたところでシャルロとアレクに確認し、二人が頷いたのを見てから航海士へ注意事項を伝えることにした。
「これから海中に潜るけど、ちゃんと濡れないし空気も循環して貰えるから安心してくれ。
下手に暴れて船から落ちたらどうなるか分からないから、出来れば立ち上がらないで貰えるとありがたい」
「???
潜る?」
航海士はイマイチ何の話なのか理解していない顔をしていたが、まあ取り敢えず警告はしたと言うことで無視してさっさと清早にお願いした。
「じゃ、下げるのと空気をよろしく~」
「了解!」
海での作業と言うことで張り切っていた清早が姿を現したと思ったら直ぐさまボートが沈み始めた。
どこかの屋根から自力で重力に任せて飛び降りるよりは遅いが、空滑機で先程高度を下げた時よりは早いぐらいの速度でボートが沈み始め、航海士の顔が面白いほど真っ青になった。
一体こいつは俺たちがどうやってアドリアーナ号を探すと思っていたのだろうか?
海上から船で探せる範囲は既にダルム商会でやっているのに、俺たちが海上から探すと思っていたのか?
深くまで潜っていくと、だんだん辺りが暗くなってくる。
灯りを付ければ氷の壁が見えるぐらいのところまで降りてきた。
「光」
ぽうっと光が浮かび上がったのを、半日程度持つだけの魔力を込め東側の海底に設置する。
「なんだあれは?!」
航海士がずっと海底に続く白く光を反射している氷の壁を見て驚いていた。
「シャルロが精霊に頼んで作って貰った氷の壁さ。
これがあれば、北端まで届いたことが分かるだろう?最初はロープでも張ろうかと思ったんだが、長さが半端ないから・・・氷の壁を海底に作って貰うことにしたんだ。
さっき南端でも同じ事をしたから、このままコンパスで方向を確認しながら北と南の氷の壁の間を往復しながら探す」
「じゃあ、よろしくね」
シャルロがコンパスと舵を航海士に渡した。
「まっすぐ北に進むように舵を動かしてね。一応後ろからまっすぐ一定の速度で進むよう力を加えて貰ってるから勝手に変な方向には進まないとは思うけど」
ボートの周りの空気の壁(水の壁?)を居心地悪そうに見ながら航海士がコンパスと舵を弄っている間に、俺たちは光源を設置して左右を確認し続ける。
最初は何も無かったが、2刻ぐらいした後に最初の塊が目に入った。
「お、何かあるぞ。水打《ヒタン》!」
アレクが術を放つ。
砂が舞い上がり・・・光が乱反射して辺り一面真っ白になった。
「あ~。
これじゃあ砂が落ち着くまで時間が掛りそうだね。
どこで水打《ヒタン》を打ったか記録しておいて帰りに全部纏めて見て回ろうか?」
シャルロがため息をつきながら紙を取り出した。
以前の探険の際は歩いていたので、砂が落ち着くまで待つのは良い休憩になった。しかし今回は船に乗っているだけなので特に休みは必要が無い。
捜査する範囲を考えると、ノンビリ一つ一つの岩や沈没船で砂が落ち着くまで待っている暇は無いかもしれない。
俺たちだったらちょっとおしゃべりして休憩しても良かったんだけどねぇ。
お目付役がいるし。
「じゃあ、とりあえず魔力が切れた人が記録係ね。
最初はシャルロがやっといて」
さて、一体幾つ沈没船が見つかるかな?
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