シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

574 星暦555年 翠の月 25日 映像魔道具の進歩形?

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「僕が帰ってくるまで待ってなくっても良かったのに~」
新婚旅行から帰り、お土産を持ってきたシャルロにこれからの仕事(見た記憶を映像に出力する魔道具の開発)について、明日からでも魔術院で特許の検索をしょうと話したら・・・シャルロがちょっと口をとがらせて文句を言った。

まあねぇ。
調べものは別にシャルロの閃きが無くても関係ないから俺達だけでやっても良かったんだけどさ。

それなりにアレクも王太子の結婚パレードの映像集の出版とかその他諸々の手伝いが実家であったんだよね。
そんでもって俺一人で特許の記録を調べるのは絶対に嫌だったので、この際シャルロが帰ってくるまで待とうということでここ10日ちょっと、ヴァルージャの遺跡に行ってシェイラ(とその他遺跡発掘隊)の手伝いをしていたのだ。

「いや~特許記録を探すのってただでさえ大変な作業なのに、あるかどうかも怪しい魔術回路を一人で探すのなんて、絶対無理!
だからアレクが色々忙しいと分かった時点で、3人が集まるまで待とうということになったのさ」
3人で調べれば、直接今回の開発に関係なくても何かに使えそうな面白い特許があったら気分転換のお茶の際にでもそれについて話し合えるし、なんと言っても自分一人が退屈な思いをしている訳ではないと感じれば何とか作業を続けられる。

反対に、俺一人で作業を続けるなんて絶対に無理だから。

「それなりに収入も入るようになったから、若い魔術学院の学生でも雇ってこういう地味な検索作業を任せたい気もするが・・・外部の人を雇ったらそこから情報が漏れてしまう可能性が高いからねぇ」
ため息をつきながらアレクが言った。

そうなんだよなぁ。
以前の移転箱のように、アイディアをちょっと漏らしただけであっさり盗作(というのは違うか。あっちが自分で作ったんだから)というか乗っ取りというかされてしまったことを考えると、俺達の強みは新しいものを作る着想力であって、実際に開発能力そのものは平均程度かそれよりちょっと上というところな気がする。

そう考えると、何を開発しようとしているのかが漏れたらあっさり魔術院の開発部の連中に先取りされてしまいそうで危険だ。

「俺たちが造りたいと思うものを開発部の連中とかが造りたいと思うかは微妙な気がするが・・・それなりにあそこも新規開発のノルマが厳しいみたいだからな。
若い学生に下調べをさせて、時間をかけて開発し終わってやっと登録しようとしたら既に開発部が同じようなものを造って登録していましたなんてことになったら踏んだり蹴ったりだから、諦めて自分たちで探す方が無難だろうな」
転移箱のアイディアを盗られた際に、なんで開発部がそんな外からぽっと出てきたアイディアに飛びついたのかについてアンディが後から説明してくれた。

まあ、あの時は王宮の役人から話が行ったので最初からあまり疑う余地もなかったかもしれないし、あったとしてもどうやったらアイディアの源を探れたかは微妙なところだけどさ。

「で、苦しくって地道な作業を3人で平等に分けましょうと待っていた訳なんだね・・・。
僕の取り分が少なくて良いから、先に調べておいてくれても良かったのにぃ」
残念そうにシャルロが呟いた。

「あの面倒くささと辛さは金で補えるもんじゃあないのはお前だって分かってるだろ」
そう突っ込みを入れたら、シャルロが舌を出して肩を竦めた。

「まあ、しょうがない。
取り敢えず、開発目標を纏めるとしたら、最終的には記憶を読み取る術の映像を魔石に記録して、紙なり映像なりとして出力できる魔道具を造ろうという話だったよね?」
シャルロが黒板モドキの上部に書きながら振り返った。

「そう。
想定としては、記憶から映像を魔石に移す魔道具が造れれば記録用魔道具を応用して最終形にたどり着けると思っているのだが、どうだろう?」
アレクがお茶を淹れながら答えた。

「どうしても記憶から直接魔石へ出力できなかったら、記録を映像にして出す術を使って、それを記録用魔道具で記録するというのもありだが・・・何度も出力・記録する形になると大分魔力が無駄になるだろうし、映像がどのくらい劣化するかも心配なところだな」
お土産の焼き菓子を手に取りながら俺が付け加える。

そうなんだよなぁ。
シャナが誘拐されて幼児たちの記憶を読み取った際にはバタバタしていて思いつけなかったが、実は現存の術で記憶を読み取り、それを映像として出力し、魔石に記録することは不可能ではない。
ただ、人の記憶を読み取った姿を自分の記憶として映像に映し出すのがどのくらいうまくいくのか微妙なところだから、実際には人の記憶をそのまま魔石に出力できればその方が良い。

「まあ、取り敢えず理想形でなんとか開発できないか試してみて、どうしてもダメだったら遠回りした形での開発を考えよう。
まずは特許を調べないとね」
ため息をつきながらアレクがこれからの予定を纏めた。

あ~。
面倒だ!!

数年かかっても良いから、俺たちが開発した修正可能な記録用魔道具を使って特許の目録を魔術院で整理してくれるとありがたいんだけど・・・どうなんだろ?
そんな人員も暇もないと言われそうな気もしないでもない。
・・・今度アンディにそこら辺の予定について、確認してみよう。
予算が足りなかったら少し寄付するのも有りかも知れない。



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シャルロが新婚旅行できゃっきゃうふふしている間、アレクはがっつり実家で働き、ウィルは遺跡に行って楽しく遊びながら手伝ってました。
アレクが一番損したかもw
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