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卒業後
556 星暦555年 青の月 7日 台所用魔道具(4)
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ぼふん!
「うわぁぁ!!」
パディン夫人がケーキを作る時に混ぜるのに使っているボウルぐらいのサイズの容器の上にファンを設置し、それに少し平べったい長めのスプーンのような物を固定して粉と水を混ぜようとしたのだが・・・動かしたら粉が爆発した。
いや、爆発したのではなくファンに舞い上げられただけだが、覗き込んでいた俺たちは全員粉を頭からかぶって真っ白になっていた。
まるで白いお化けだ。
白い粉をがっつり被ると、金髪でも黒髪でも似たような見た目になるんだな・・・。
「・・・上にファンがあると粉を吹き上げちゃうんだね」
庭に出て服や髪に掛かった粉を払いながらシャルロが呟いた。
「容器の上を密封させるか?」
少なくとも密封すればファンの風で吹き上げられた粉が飛び出すことは無いだろう。
とは言え、粉が上に飛び、混ぜる対象である水や牛乳やバターが下に残っているのでは混ざるという現象そのものが起きない気がするが。
嵐の時のように水や牛乳まで吹き上げるようにしたらかなり圧力がかかるから、蓋の固定もしっかりしないと。
そうなると、そういう場合はバターを混ぜるのは解かしておかないと無理だな。
なんかそれはそれで味に影響が出そうな気がするが・・・大丈夫かな?
「風を起こすこと自体が問題なんだから、蓋の上にファンが来るようにして、容器の中に風が入らないようにしたらどうだ?」
アレクが提案した。
確かに。
「それだったらまだ混ざりそうだけど・・・ファンに固定しているスプーンを動かすのに蓋が邪魔だな」
スプーンが回れるように蓋に穴をあけておいたら結局そこから風が吹き込んでしまうだろう。
「じゃあ、ファンを小さ目のスプーンで作る形にして容器の底に設置してそれで直接混ぜるようにしたらどう?
それだったら蓋をして密封してもちゃんと混ざるよね?」
ファンの形状は一番風を送り込むのに効率的になるように色々と試行錯誤されてきたが、別に風を起こさずに混ぜるための形状に変えたって魔術回路はちゃんと機能して動くはずだ。
ファンそのもので混ぜようとしても問題はないだろう。
ということで再度挑戦。
「・・・何が起きているか、見えないな」
何やら音がしている容器を眺めながらアレクが呟いた。
そう。
風を起こす為ではなく混ぜるためのファンに形状を変えたところで、ある程度の粉が舞い上がることは想定で来たので蓋をつけて試作品を作ったのだが・・・魔道具を止めて中を覗いてみたらそれなりに混ざっているようだったが、蓋を閉めると魔道具の中でどんな感じに混ぜている物が動いていたのか、全く見えないのだ。
考えてみたら当然のことだが。
「・・・ガラスの容器にする?」
シャルロが提案した。
「いや、ガラスでは十分な強度を持たせようとしたら金属製のボウルに比べるとかなり重くなるし、高くつくから現実的ではない。
しかもガラスだったら落としたら割れてしまうし。
出来るだけ風が起きなくて上を密封しなくて済む構造を考えた方が良いだろう」
アレクが首を横に振りながら答えた。
う~ん。
風が起きない、ねぇ。
「ボウル全体を一気に混ぜるのではなく、小さ目のファンに上半分を覆うようなカバーをつけてボウルの中に突っ込んで混ぜるっていうのはどうだ?」
「う~ん、それで混ぜられるのかなぁ?
取り敢えず、試してみようか。
ファンの動きをゆっくり目にして、出来るだけ風が起きないようにしてみよう」
シャルロが少し疑わし気ながらも合意した。
う~ん。
いかに効率よく風(というか水)を動かすかという方向でファンの研究も船の開発の際にやったが、今度はいかに風を動かさないかという研究が必要か・・・。
取り敢えず、まずは前回の船の開発の際にやったファンの研究で失敗作として却下されたデザインを探してみよう。
「うわぁぁ!!」
パディン夫人がケーキを作る時に混ぜるのに使っているボウルぐらいのサイズの容器の上にファンを設置し、それに少し平べったい長めのスプーンのような物を固定して粉と水を混ぜようとしたのだが・・・動かしたら粉が爆発した。
いや、爆発したのではなくファンに舞い上げられただけだが、覗き込んでいた俺たちは全員粉を頭からかぶって真っ白になっていた。
まるで白いお化けだ。
白い粉をがっつり被ると、金髪でも黒髪でも似たような見た目になるんだな・・・。
「・・・上にファンがあると粉を吹き上げちゃうんだね」
庭に出て服や髪に掛かった粉を払いながらシャルロが呟いた。
「容器の上を密封させるか?」
少なくとも密封すればファンの風で吹き上げられた粉が飛び出すことは無いだろう。
とは言え、粉が上に飛び、混ぜる対象である水や牛乳やバターが下に残っているのでは混ざるという現象そのものが起きない気がするが。
嵐の時のように水や牛乳まで吹き上げるようにしたらかなり圧力がかかるから、蓋の固定もしっかりしないと。
そうなると、そういう場合はバターを混ぜるのは解かしておかないと無理だな。
なんかそれはそれで味に影響が出そうな気がするが・・・大丈夫かな?
「風を起こすこと自体が問題なんだから、蓋の上にファンが来るようにして、容器の中に風が入らないようにしたらどうだ?」
アレクが提案した。
確かに。
「それだったらまだ混ざりそうだけど・・・ファンに固定しているスプーンを動かすのに蓋が邪魔だな」
スプーンが回れるように蓋に穴をあけておいたら結局そこから風が吹き込んでしまうだろう。
「じゃあ、ファンを小さ目のスプーンで作る形にして容器の底に設置してそれで直接混ぜるようにしたらどう?
それだったら蓋をして密封してもちゃんと混ざるよね?」
ファンの形状は一番風を送り込むのに効率的になるように色々と試行錯誤されてきたが、別に風を起こさずに混ぜるための形状に変えたって魔術回路はちゃんと機能して動くはずだ。
ファンそのもので混ぜようとしても問題はないだろう。
ということで再度挑戦。
「・・・何が起きているか、見えないな」
何やら音がしている容器を眺めながらアレクが呟いた。
そう。
風を起こす為ではなく混ぜるためのファンに形状を変えたところで、ある程度の粉が舞い上がることは想定で来たので蓋をつけて試作品を作ったのだが・・・魔道具を止めて中を覗いてみたらそれなりに混ざっているようだったが、蓋を閉めると魔道具の中でどんな感じに混ぜている物が動いていたのか、全く見えないのだ。
考えてみたら当然のことだが。
「・・・ガラスの容器にする?」
シャルロが提案した。
「いや、ガラスでは十分な強度を持たせようとしたら金属製のボウルに比べるとかなり重くなるし、高くつくから現実的ではない。
しかもガラスだったら落としたら割れてしまうし。
出来るだけ風が起きなくて上を密封しなくて済む構造を考えた方が良いだろう」
アレクが首を横に振りながら答えた。
う~ん。
風が起きない、ねぇ。
「ボウル全体を一気に混ぜるのではなく、小さ目のファンに上半分を覆うようなカバーをつけてボウルの中に突っ込んで混ぜるっていうのはどうだ?」
「う~ん、それで混ぜられるのかなぁ?
取り敢えず、試してみようか。
ファンの動きをゆっくり目にして、出来るだけ風が起きないようにしてみよう」
シャルロが少し疑わし気ながらも合意した。
う~ん。
いかに効率よく風(というか水)を動かすかという方向でファンの研究も船の開発の際にやったが、今度はいかに風を動かさないかという研究が必要か・・・。
取り敢えず、まずは前回の船の開発の際にやったファンの研究で失敗作として却下されたデザインを探してみよう。
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