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卒業後
184 星暦552年 黄の月 10日 仲良し3人組
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2,3話ほど、ウィルたち3人組を他人の視点から。
今回はシャルロ君の恋人、ケレナさんです
------------------------------------------------------------------------
「ねえ、彼って私のこと嫌いなのかしら?」
・・・こういうセリフを自分が言うことになるとは、想像したことも無かったなぁ。
「別にそんなことは無いと思うが?」
アレクがお茶を注ぎながら答える。
今日は空滑機で空の散歩にシャルロと行く予定なので朝早くからこちらの宅に遊びに来ていた。シャルロは朝食の準備をするパディン夫人を手伝いに台所に詰めていて、ウィルはまだ起きてきていなかったのでダイニングルームには私とアレクだけ。
ついでだったのでここのところ気になっていたことをアレクに聞くことにしたのだ。
それが、さっきの質問。
『私のこと、好き?』とか『私のこと、嫌い?』なんていうのはベタベタな女の典型的台詞で私は好きじゃないんだけどねぇ。でも、大切な恋人の親友の片割れが自分のことを嫌っていたら・・・辛いじゃない?
何か嫌われるようなことをやっているんだったら知っておきたい。
「だって、私と殆ど話そうとしないじゃない。別に内気でも無口でもないのに。それに・・・」
彼って私のことを女として見ていないのよね。
別に、『女』として見て欲しい訳じゃない。
でも、私は美しい。
自惚れている訳じゃないのよ?客観的な話として、私は『絶世の美女』と言われた母そっくりだし、舞踏会でもお茶会でも、男性(特に私のことを知らない男)の目が部屋に入った途端、私に吸いつけられるのは、事実。
まあ、会話をしたら大抵の男性は微妙な顔をして離れていくことが多いけど。
私の場合、異性に好かれる見た目をしているんだけど、性格はあんまり貴族社会で男性に好まれるタイプじゃないのよね。
ま、お陰で気の合う人との会話に邪魔が入らなくっていいんだけど。
「それに?」
「私のことまるでモノのように見ているような気がするの」
くすり。
アレクが笑った。
「『モノのように見ている』ではなく、『美女として見ていない』と言う方がより正確ではないかね?君を見る彼の目は、パディン夫人や学院の時の同級生を見る目と殆ど変わりは無いよ。同級生たちよりも君の方が好かれていると思うし」
「彼って・・・男性の方が好きなの?」
シャルロが男性相手に浮気するとは思わないけど・・・親友が彼のことを好きなら同居はちょっと止めて欲しいかも。
ぶっ。
アレクが小さくお茶を噴出した。
「君ねぇ。自分のことを美人として扱わないからって男好きにするなんていうのは酷いぞ」
そうは言っても、私のことを女として見ない人ってかなりの確率で男性好きな男が多いんだけどなぁ。
あなただって私のことを見ると、一瞬『お、目の保養』っていう表情をするんだから。
「男好きでも私のこと嫌いでもないとしたら・・・じゃあ何なの?」
「一応の為に言っておくけど、私もウィルもそれなりに親しくしている女性はいるよ。シャルロと君のように深みのある関係じゃあないけどね」
食卓の上を拭きながらアレクが答えた。
「ウィルが君と話すのを苦手としているのは・・・やはり、貴族に対して敬語を使わなくっていいと言うのは難しいみたいだね」
「シャルロのこと、平気で叩いたりしているのに?」
アレクが肩を竦める。
「私もシャルロも、ウィルの同級生として会った。学院では同級生は対等の相手として付き合うように指導されてきたし、生まれで相手を立てることを要求するような同級生をウィルは完全に無視してきたからね。
だけど、君は違う。貴族との付き合いにあまり慣れていない彼にとって、『同級生』という存在でもない伯爵令嬢と対等に話すっていうのは中々やりにくいんだよ。それで面倒だから、あまり何もケレナに話しかけない訳だ。彼の敬語じゃない言葉使いってそれなりに・・・砕けているし」
「・・・面倒だから?」
「面倒だから」
何かちょっと、ムカツク。
これでも私、それなりに悩んだんだけど。
「あと、ウィルの場合人間の外見ってあまり見ていないと思う。彼って集中しないと人間の外見よりも気を見てしまうぐらい心眼の能力が強いらしくてね。他の人間と会話が合うように、基本的に外見がどんなものかは見てはいるけど、半ば表面よりもその下を見ていることの方が多いらしい」
気ねぇ・・・。
何か、視界の色が派手そう。それとも気って意外と地味なのかしら?
「美しさって本当に表皮一枚の話なのねぇ・・・。なんかちょっと、女としてのプライドをぷしゅっと潰された気分だわ」
「何を言っているんだか。全然気にしていない癖に」
アレクが笑いながら突っ込みを入れた。
「まあ、ね。じゃあ、とりあえずウィルには私と話すのを慣れてもらうために、積極的に話しかけていくとしますか!」
「んぁ?」
寝ぼけ眼でふらふらと部屋に入ってきたウィルが私の台詞を聞いたのか、はっきりしない声を上げた。
「私のことは、伯爵令嬢ではなく、シャルロの友達として見て頂戴って話」
説明するが・・・殆ど目が閉じているウィルは私の話を聞いているのか微妙に不明。
「そんなに眠いなら、無理して起きて来なくてもいいのに」
アレクが呆れたようにウィルに声をかける。
「食事は作りたてが美味しいじゃん」
お茶を自分にも注ぎながらウィルが答える。
「あ、ウィルおはよ」
朝食の皿を運んできたシャルロがウィルに声をかける。
「今日は良い天気だから、きっと空も奇麗そう!」
嬉しそうにシャルロが私に笑いかけた。
朝、家を出た時はちょっと雲があったんだけどどうやら無駄話をしている間にすっかり空が晴れ渡ったようだ。
「あぁ?風邪引きはじめに空に行くなんて駄目だろが」
微妙に柄が悪くウィルが異議を唱えた。
「「「風邪??」」」
お茶を一杯飲んでやっと目が普通に開いたウィルが私の方を指差した。
「あんた、風邪気味だろ?引きはじめは気をつけた方がいいぜ?」
シャルロとアレクに凝視されて、思わず居心地が悪くなった。
朝起きた時にちょっと喉の奥が渇いていたような気がしたけど、別に風邪なんて引いていないと思ったんだけどなぁ。
「本当だ、ちょっと具合が悪くなりかけてるじゃない。駄目だよ、気をつけなきゃ。生姜があったから、生姜湯を作ってくるね!」
止める間もなく、シャルロが部屋を出て言ってしまった。
「・・・風邪って見えるの?」
思わず残った二人に尋ねる。
「まあね。気の色が悪くなるし、反対に普段より熱っぽい部分も出てくるし。
とは言っても私やシャルロだったらそれなりに注意しないと視えないから、これだけ話していたのに気が付かなかったんだけど」
アレクが答える。
台所からシャルロが声を上げる。
「ウィルの食い意地に感謝だね!」
シャルロ~。
あんまり感謝っていう言葉と台詞が合っていない気がするんだけど。
今回はシャルロ君の恋人、ケレナさんです
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「ねえ、彼って私のこと嫌いなのかしら?」
・・・こういうセリフを自分が言うことになるとは、想像したことも無かったなぁ。
「別にそんなことは無いと思うが?」
アレクがお茶を注ぎながら答える。
今日は空滑機で空の散歩にシャルロと行く予定なので朝早くからこちらの宅に遊びに来ていた。シャルロは朝食の準備をするパディン夫人を手伝いに台所に詰めていて、ウィルはまだ起きてきていなかったのでダイニングルームには私とアレクだけ。
ついでだったのでここのところ気になっていたことをアレクに聞くことにしたのだ。
それが、さっきの質問。
『私のこと、好き?』とか『私のこと、嫌い?』なんていうのはベタベタな女の典型的台詞で私は好きじゃないんだけどねぇ。でも、大切な恋人の親友の片割れが自分のことを嫌っていたら・・・辛いじゃない?
何か嫌われるようなことをやっているんだったら知っておきたい。
「だって、私と殆ど話そうとしないじゃない。別に内気でも無口でもないのに。それに・・・」
彼って私のことを女として見ていないのよね。
別に、『女』として見て欲しい訳じゃない。
でも、私は美しい。
自惚れている訳じゃないのよ?客観的な話として、私は『絶世の美女』と言われた母そっくりだし、舞踏会でもお茶会でも、男性(特に私のことを知らない男)の目が部屋に入った途端、私に吸いつけられるのは、事実。
まあ、会話をしたら大抵の男性は微妙な顔をして離れていくことが多いけど。
私の場合、異性に好かれる見た目をしているんだけど、性格はあんまり貴族社会で男性に好まれるタイプじゃないのよね。
ま、お陰で気の合う人との会話に邪魔が入らなくっていいんだけど。
「それに?」
「私のことまるでモノのように見ているような気がするの」
くすり。
アレクが笑った。
「『モノのように見ている』ではなく、『美女として見ていない』と言う方がより正確ではないかね?君を見る彼の目は、パディン夫人や学院の時の同級生を見る目と殆ど変わりは無いよ。同級生たちよりも君の方が好かれていると思うし」
「彼って・・・男性の方が好きなの?」
シャルロが男性相手に浮気するとは思わないけど・・・親友が彼のことを好きなら同居はちょっと止めて欲しいかも。
ぶっ。
アレクが小さくお茶を噴出した。
「君ねぇ。自分のことを美人として扱わないからって男好きにするなんていうのは酷いぞ」
そうは言っても、私のことを女として見ない人ってかなりの確率で男性好きな男が多いんだけどなぁ。
あなただって私のことを見ると、一瞬『お、目の保養』っていう表情をするんだから。
「男好きでも私のこと嫌いでもないとしたら・・・じゃあ何なの?」
「一応の為に言っておくけど、私もウィルもそれなりに親しくしている女性はいるよ。シャルロと君のように深みのある関係じゃあないけどね」
食卓の上を拭きながらアレクが答えた。
「ウィルが君と話すのを苦手としているのは・・・やはり、貴族に対して敬語を使わなくっていいと言うのは難しいみたいだね」
「シャルロのこと、平気で叩いたりしているのに?」
アレクが肩を竦める。
「私もシャルロも、ウィルの同級生として会った。学院では同級生は対等の相手として付き合うように指導されてきたし、生まれで相手を立てることを要求するような同級生をウィルは完全に無視してきたからね。
だけど、君は違う。貴族との付き合いにあまり慣れていない彼にとって、『同級生』という存在でもない伯爵令嬢と対等に話すっていうのは中々やりにくいんだよ。それで面倒だから、あまり何もケレナに話しかけない訳だ。彼の敬語じゃない言葉使いってそれなりに・・・砕けているし」
「・・・面倒だから?」
「面倒だから」
何かちょっと、ムカツク。
これでも私、それなりに悩んだんだけど。
「あと、ウィルの場合人間の外見ってあまり見ていないと思う。彼って集中しないと人間の外見よりも気を見てしまうぐらい心眼の能力が強いらしくてね。他の人間と会話が合うように、基本的に外見がどんなものかは見てはいるけど、半ば表面よりもその下を見ていることの方が多いらしい」
気ねぇ・・・。
何か、視界の色が派手そう。それとも気って意外と地味なのかしら?
「美しさって本当に表皮一枚の話なのねぇ・・・。なんかちょっと、女としてのプライドをぷしゅっと潰された気分だわ」
「何を言っているんだか。全然気にしていない癖に」
アレクが笑いながら突っ込みを入れた。
「まあ、ね。じゃあ、とりあえずウィルには私と話すのを慣れてもらうために、積極的に話しかけていくとしますか!」
「んぁ?」
寝ぼけ眼でふらふらと部屋に入ってきたウィルが私の台詞を聞いたのか、はっきりしない声を上げた。
「私のことは、伯爵令嬢ではなく、シャルロの友達として見て頂戴って話」
説明するが・・・殆ど目が閉じているウィルは私の話を聞いているのか微妙に不明。
「そんなに眠いなら、無理して起きて来なくてもいいのに」
アレクが呆れたようにウィルに声をかける。
「食事は作りたてが美味しいじゃん」
お茶を自分にも注ぎながらウィルが答える。
「あ、ウィルおはよ」
朝食の皿を運んできたシャルロがウィルに声をかける。
「今日は良い天気だから、きっと空も奇麗そう!」
嬉しそうにシャルロが私に笑いかけた。
朝、家を出た時はちょっと雲があったんだけどどうやら無駄話をしている間にすっかり空が晴れ渡ったようだ。
「あぁ?風邪引きはじめに空に行くなんて駄目だろが」
微妙に柄が悪くウィルが異議を唱えた。
「「「風邪??」」」
お茶を一杯飲んでやっと目が普通に開いたウィルが私の方を指差した。
「あんた、風邪気味だろ?引きはじめは気をつけた方がいいぜ?」
シャルロとアレクに凝視されて、思わず居心地が悪くなった。
朝起きた時にちょっと喉の奥が渇いていたような気がしたけど、別に風邪なんて引いていないと思ったんだけどなぁ。
「本当だ、ちょっと具合が悪くなりかけてるじゃない。駄目だよ、気をつけなきゃ。生姜があったから、生姜湯を作ってくるね!」
止める間もなく、シャルロが部屋を出て言ってしまった。
「・・・風邪って見えるの?」
思わず残った二人に尋ねる。
「まあね。気の色が悪くなるし、反対に普段より熱っぽい部分も出てくるし。
とは言っても私やシャルロだったらそれなりに注意しないと視えないから、これだけ話していたのに気が付かなかったんだけど」
アレクが答える。
台所からシャルロが声を上げる。
「ウィルの食い意地に感謝だね!」
シャルロ~。
あんまり感謝っていう言葉と台詞が合っていない気がするんだけど。
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