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卒業後
552 星暦555年 紺の月 26日 総動員(9)
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「ランチどうだった~?」
アンディとのランチから帰ってきた俺に、シャルロがソファから声をかけてきた。
「すっげ~!!!旨かった!
食べ物なんて最低限のレベルさえ達していれば腹が膨れればそれでいいと思っていたんだけど、ああも美味しい食事があるなんて・・・なんか新しい世界を発見したような気分だぜ」
アンディに連れていかれた店は一見食事処なのか宝石か何か上流階級向けの高級品を売っている店なのか分からないようなお洒落な建物だった。
中に入ったら体に完璧にフィットした制服を来た給仕に個室に案内され、丁寧にメニューを説明されたが・・・幾ら丁寧に説明されたも聞いたこともない高級料理なんぞ全く分からなかったのでシェフのおすすめコースにした。
アンディも似たり寄ったりな状態だったのか、同じものを頼んでいた。
あいつは魔術師の家系出身のはずだから、たまには家族とこういうところに来ていそうなもんだけどね。
・・・それにしたらあいつも興奮していたか。
「どこに行ったんだ?」
アレクがお茶の準備を始めながら聞いてきた。
「え~と・・・ドリーナ?いや、ドリアーナかな?
なんか食事処には見えないようなお洒落な建物の中の個室で食べさせてもらった」
ひゅ~。
シャルロとアレクがそろって口笛を吹いた。
「凄いね。
どうやら魔術院は本気でウィルを繋ぎ止めておこうと思っているようだな」
アレクが茶葉をポットに入れながら呟いた。
「あそこはね~、ものすごくお得意様になる条件が厳しい上に、『お得意様』になっても他の人の為に予約できるようになるには更にレベルアップしなくちゃいけない、滅茶苦茶厳しいところなんだよ。
王宮の料理長だった人が自分が作りたい料理を自分が食べさせたい人に出したいと思って趣味で開いた店だから、王家の人間や高位貴族の人間でも頼み込んでやっと認めてもらえるかもしれないって感じなの。
一度でも店の雰囲気を壊すようなことをしたら二度と入らせてもらえないし」
シャルロが付け加えた。
へぇ~。
王族でも頼み込まなきゃいけない趣味の店ねぇ。
想像を絶するな。
「そんなに凄いの?
よくぞそんなところでアンディが予約を取れたな。
あいつの親ってそんなに偉かったっけ?」
「魔術院の長老クラスが予約を入れたんだろうな。
言っただろ、ウィルを繋ぎ止めたがっているようだって。
軍部から誘われて迷っている様子を見せたりしたら、きっとアンディが来て『軍部に入ったら二度とドリアーナで食事をできなくなるぞ』って囁くぞ」
アレクが答えた。
う~ん?
なんで長老クラスが出てくるんだ?
軍部に誘われることとの関係もイマイチ見えないが。
「軍部に入るつもりはないが、美味しい食事処と軍部とどう関係があるんだ??」
「要は、前回の王都汚染の問題とか、今回の精霊による探知網の薙ぎ払いの件をさっさと見つけて魔術院に報告してくれてありがとうということさ。
そして今後も大きな問題を見つけて解決の手助けになってくれたら、またドリアーナで食事を奢ってくれる・・・かもしれないというところだな。
軍属になったら魔術院の正規職員よりも基本給が良くなるかもしれないが、ドリアーナで食べることはまず不可能だろうから、食べ物でウィルを繋ぎ止めておこうとしているというところだな」
へぇぇ。
またあそこに行けるかもしれないのか。
それは嬉しいな。
どちらにせよ、軍属になる気はこれっぽっちもないし。
「アレクやシャルロもあそこに行ったことあるのか?
滅茶苦茶うまかったから、それこそシャルロの結婚祝いにあそこで食事をするのなんてどうだろう?
色々ボーナスが溜まっているから1回分ぐらいなら払えないか?」
前回の汚染騒動でも金一封を貰ったので、今回のと合わせたらそれなりの金額になる。
他の売上とかも合わせたら、ちょっとおめでたいことにがっつりお金を使っても大丈夫なぐらい余裕があると思うんだが。
「ありがとね~。
でも、無理。
言ったでしょ、あそこは滅茶苦茶お得意様の条件が厳しいって。
侯爵家当主である父上なら他の人の為に予約を取れるし、兄上も次期当主として自分が食べたければ行けるけど、僕は行ったことはあるけど自分で予約を取れるお客様じゃないんだよね」
シャルロが肩を竦めながら答えた。
マジか。
侯爵家の次期当主でも他人の為に予約を取れないなんて。
・・・つうか、魔術院の長老って侯爵家の当主クラスなんだ???
ちょっと意外だ。
下町の人間から見たら魔術師は遥か彼方に上の人間だが、俺みたいな孤児でも魔術師になれることを考えると高位貴族と同じレベルで社会的地位が高いとは思っていなかった。
「ウチは父でも予約は取れない。
商業ギルドの枠を使えば接待に使えることは使えるけど、物凄い大金をギルドに払わなければならない」
アレクも肩を竦めながら答えた。
「うへぇ・・・。
美味しかったけど、なんかそう聞くと怖いな。
無理にシャルロの親父さんに頼み込んで予約を取ろうとしないほうが良いか。
いつか俺たちの誰かがあそこに行けるようになったら3人・・・と家族で行こうぜ」
まだまだ先の話になるけどな。
・・・というか、シェフィート商会の当主でも駄目だとしたら、一生無理かも?
そう考えると、あそこでまた食べたかったら出来るだけ魔術院の役に立つようにしたほうが良さそうだな。
もしくは元王宮料理長とやらが喜ぶような魔道具を開発するとか?
アンディとのランチから帰ってきた俺に、シャルロがソファから声をかけてきた。
「すっげ~!!!旨かった!
食べ物なんて最低限のレベルさえ達していれば腹が膨れればそれでいいと思っていたんだけど、ああも美味しい食事があるなんて・・・なんか新しい世界を発見したような気分だぜ」
アンディに連れていかれた店は一見食事処なのか宝石か何か上流階級向けの高級品を売っている店なのか分からないようなお洒落な建物だった。
中に入ったら体に完璧にフィットした制服を来た給仕に個室に案内され、丁寧にメニューを説明されたが・・・幾ら丁寧に説明されたも聞いたこともない高級料理なんぞ全く分からなかったのでシェフのおすすめコースにした。
アンディも似たり寄ったりな状態だったのか、同じものを頼んでいた。
あいつは魔術師の家系出身のはずだから、たまには家族とこういうところに来ていそうなもんだけどね。
・・・それにしたらあいつも興奮していたか。
「どこに行ったんだ?」
アレクがお茶の準備を始めながら聞いてきた。
「え~と・・・ドリーナ?いや、ドリアーナかな?
なんか食事処には見えないようなお洒落な建物の中の個室で食べさせてもらった」
ひゅ~。
シャルロとアレクがそろって口笛を吹いた。
「凄いね。
どうやら魔術院は本気でウィルを繋ぎ止めておこうと思っているようだな」
アレクが茶葉をポットに入れながら呟いた。
「あそこはね~、ものすごくお得意様になる条件が厳しい上に、『お得意様』になっても他の人の為に予約できるようになるには更にレベルアップしなくちゃいけない、滅茶苦茶厳しいところなんだよ。
王宮の料理長だった人が自分が作りたい料理を自分が食べさせたい人に出したいと思って趣味で開いた店だから、王家の人間や高位貴族の人間でも頼み込んでやっと認めてもらえるかもしれないって感じなの。
一度でも店の雰囲気を壊すようなことをしたら二度と入らせてもらえないし」
シャルロが付け加えた。
へぇ~。
王族でも頼み込まなきゃいけない趣味の店ねぇ。
想像を絶するな。
「そんなに凄いの?
よくぞそんなところでアンディが予約を取れたな。
あいつの親ってそんなに偉かったっけ?」
「魔術院の長老クラスが予約を入れたんだろうな。
言っただろ、ウィルを繋ぎ止めたがっているようだって。
軍部から誘われて迷っている様子を見せたりしたら、きっとアンディが来て『軍部に入ったら二度とドリアーナで食事をできなくなるぞ』って囁くぞ」
アレクが答えた。
う~ん?
なんで長老クラスが出てくるんだ?
軍部に誘われることとの関係もイマイチ見えないが。
「軍部に入るつもりはないが、美味しい食事処と軍部とどう関係があるんだ??」
「要は、前回の王都汚染の問題とか、今回の精霊による探知網の薙ぎ払いの件をさっさと見つけて魔術院に報告してくれてありがとうということさ。
そして今後も大きな問題を見つけて解決の手助けになってくれたら、またドリアーナで食事を奢ってくれる・・・かもしれないというところだな。
軍属になったら魔術院の正規職員よりも基本給が良くなるかもしれないが、ドリアーナで食べることはまず不可能だろうから、食べ物でウィルを繋ぎ止めておこうとしているというところだな」
へぇぇ。
またあそこに行けるかもしれないのか。
それは嬉しいな。
どちらにせよ、軍属になる気はこれっぽっちもないし。
「アレクやシャルロもあそこに行ったことあるのか?
滅茶苦茶うまかったから、それこそシャルロの結婚祝いにあそこで食事をするのなんてどうだろう?
色々ボーナスが溜まっているから1回分ぐらいなら払えないか?」
前回の汚染騒動でも金一封を貰ったので、今回のと合わせたらそれなりの金額になる。
他の売上とかも合わせたら、ちょっとおめでたいことにがっつりお金を使っても大丈夫なぐらい余裕があると思うんだが。
「ありがとね~。
でも、無理。
言ったでしょ、あそこは滅茶苦茶お得意様の条件が厳しいって。
侯爵家当主である父上なら他の人の為に予約を取れるし、兄上も次期当主として自分が食べたければ行けるけど、僕は行ったことはあるけど自分で予約を取れるお客様じゃないんだよね」
シャルロが肩を竦めながら答えた。
マジか。
侯爵家の次期当主でも他人の為に予約を取れないなんて。
・・・つうか、魔術院の長老って侯爵家の当主クラスなんだ???
ちょっと意外だ。
下町の人間から見たら魔術師は遥か彼方に上の人間だが、俺みたいな孤児でも魔術師になれることを考えると高位貴族と同じレベルで社会的地位が高いとは思っていなかった。
「ウチは父でも予約は取れない。
商業ギルドの枠を使えば接待に使えることは使えるけど、物凄い大金をギルドに払わなければならない」
アレクも肩を竦めながら答えた。
「うへぇ・・・。
美味しかったけど、なんかそう聞くと怖いな。
無理にシャルロの親父さんに頼み込んで予約を取ろうとしないほうが良いか。
いつか俺たちの誰かがあそこに行けるようになったら3人・・・と家族で行こうぜ」
まだまだ先の話になるけどな。
・・・というか、シェフィート商会の当主でも駄目だとしたら、一生無理かも?
そう考えると、あそこでまた食べたかったら出来るだけ魔術院の役に立つようにしたほうが良さそうだな。
もしくは元王宮料理長とやらが喜ぶような魔道具を開発するとか?
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