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卒業後
544 星暦555年 紺の月 22日 総動員
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「明日は1日魔術院の下で働くことになったよ」
記録用魔道具の開発も終わったので工房を一通り整理し、これまでの記録などを折角作った記録用魔道具でどのように整理するかアレクと相談していたら、通信機に連絡が来たと呼ばれていたシャルロが戻ってきた。
「はぁ?
随分と急だな。
第一、今年の分の魔術院当番は既に金で済ませたはずだろ?」
思わず聞き返したら、アレクがため息をついて伸びをした。
「魔術院当番じゃないだろう。
多分、王都に居る魔術院全員に呼び出しがかかっているはずだ。
やっと結婚式の日付が公表されるのか」
ますますわからん。
王都に居る魔術師全員なんて言ったらものすごい数になるぞ?
なんでそれと結婚式が関係あるんだ??
「説明は何もされなかったけど、多分王太子の結婚式に向けて一気に王都の周りに探知網を設置するんじゃないかな?
明後日に蒼流に頼んで王都に雨を降らせてざっと建物を水洗いするついでに怪しげな魔道具や爆発物が置いてある場所が無いか確認してくれって依頼が僕に来ているから」
肩を竦めながらシャルロが付け加えた。
マジか。
「王都全体に探知網を一気に設置って・・・可能なのか??
どんだけ高機能な探知魔道具があるんだ?」
まあ、切り札的な魔道具の魔術回路は魔術院でも公開されていないという話だから、俺が知らなくても不思議は無いっちゃあ無いが、王都は全部となったら相当広いぞ??
「王都をぐるっと囲む形で魔道具や危険物を持ち込もうとしたら分かる探知機の警戒線を設置してこれから結婚式までの間に物を運び込まれないようにして、そんでもって王都の中を蒼流に確認させて既に現時点で持ち込まれていないか確認する予定なんだろうね。
勿論パレードが行われる大通りとか王宮の周りは更に探知網を張って警備体制を整えるんだろうけど。
王太子の結婚式とか国王の戴冠式の時にしか使わない秘蔵の魔道具だって話だよ」
シャルロが説明してくれた。
うへぇぇ。
結婚式と戴冠式だけっすか。
まあ、しょっちゅう使っていたら機能とか限界がばれちゃって効果が落ちるかもしれないからなぁ。
しっかし。
「随分と急だな。
まだ結婚式の日付だって『夏』ってだけで正式公表されてないよな?」
「そりゃあ、正式発表しちゃったらそれに向けて色々悪い人たちが準備を始めちゃうかもしれないでしょ?
だから先に抜き打ちで警戒態勢を設定してから発表するんだよ。
魔術院だってそれなりに準備はしてきていただろうけど、今日になるまでいつやることになるかは言われてなかったと思うよ」
シャルロが俺の愚痴に答えた。
なるほどねぇ、徹底してるな。
まあ、王太子の結婚式でもしものことがあったら国の面目が丸つぶれだからな。
それにシャルロと蒼流という常識はずれな手段で王都の中にある危険そうな魔道具や爆破物が分かるのだったら一気に探知網を設置しちまうというのも正解だろう。
爆破物ではない、単なる可燃物による放火だったらそれこそ当日にシャルロに見張っといてもらえばあっという間に消火できるだろうし。
しっかし。
これ程強力な精霊の加護持ちがいない世代の時期はどうしているんだろう?
俺だって清早に頼んだらある程度のことは出来るが、王都全体のチェックなんて出来ないぜ?
人海戦術で魔術院を総動員して虱潰しに調べていくのかね?
・・・シャルロがいて本当に良かったぜ。
「結局、結婚式はいつになるんだ?
幾ら皆もうそろそろだと思って色々準備していたとは言っても、明日発表して10日後とかいう訳にはいかないだろ?」
それとも何とかなるのか??
流石に神殿とかは既に抑えてあるだろうし、パレードは予行演習を既に何度かしているらしいし、パーティの食事とかは1か月だろうか10日だろうが大して違いは無いだろうし。
ファルータの祭りの時のように虱潰しに危険物が無いか調べる必要が無いとしたら、意外と時間は必要ないのか?
まあでも、転移門を使うほど裕福ではないが一生に一度 (かもしれない)王太子の結婚式は是非見たいという地方の人間が王都まで出てくるのには時間が必要だよな?
それとも、そんな人間は治安的に面倒になるから邪魔なのか?
「光の神殿が青の月の20日から5日程抑えられているから、その時期だと思うよ?」
シャルロがあっさりと答えた。
え?
「なんだよ、これだけ機密保持っぽくやってるのに実は光の神殿の予約状況を調べれば結婚式の日付ってわかったの??」
思わず馬鹿らしくなって笑いが漏れた。
「まさか。
シェフィート商会だってそれなりに頑張って光の神殿の情報源に色々探らせたが、夏一杯の予定が不明だったぞ。
シャルロは自分の結婚式の予定があるからオレファーニ侯爵家のコネで分かったんじゃないか?」
アレクが言った。
「それこそまさかだよ。
侯爵家程度のコネで王太子の結婚式に関する情報が漏らされたりする訳ないよ~。
アファル王国に侯爵家や公爵家がいくつあると思ってるの。
貴族なんて自分にとって都合のいい機密管理しかしないんだから、情報を伝えたら商業ギルドのロビーで公表するのと同じことだよ?
今回は、蒼流にお仕事をお願いしたいって言ってきたから、光の神殿がいつなら開いているか教えて貰えないと結婚式の計画が色々固まらなくって忙しいからお仕事請けられないな~と言ったら教えてくれたの」
シャルロがにこやかに教えてくれた。
脅したのかよ!!??
記録用魔道具の開発も終わったので工房を一通り整理し、これまでの記録などを折角作った記録用魔道具でどのように整理するかアレクと相談していたら、通信機に連絡が来たと呼ばれていたシャルロが戻ってきた。
「はぁ?
随分と急だな。
第一、今年の分の魔術院当番は既に金で済ませたはずだろ?」
思わず聞き返したら、アレクがため息をついて伸びをした。
「魔術院当番じゃないだろう。
多分、王都に居る魔術院全員に呼び出しがかかっているはずだ。
やっと結婚式の日付が公表されるのか」
ますますわからん。
王都に居る魔術師全員なんて言ったらものすごい数になるぞ?
なんでそれと結婚式が関係あるんだ??
「説明は何もされなかったけど、多分王太子の結婚式に向けて一気に王都の周りに探知網を設置するんじゃないかな?
明後日に蒼流に頼んで王都に雨を降らせてざっと建物を水洗いするついでに怪しげな魔道具や爆発物が置いてある場所が無いか確認してくれって依頼が僕に来ているから」
肩を竦めながらシャルロが付け加えた。
マジか。
「王都全体に探知網を一気に設置って・・・可能なのか??
どんだけ高機能な探知魔道具があるんだ?」
まあ、切り札的な魔道具の魔術回路は魔術院でも公開されていないという話だから、俺が知らなくても不思議は無いっちゃあ無いが、王都は全部となったら相当広いぞ??
「王都をぐるっと囲む形で魔道具や危険物を持ち込もうとしたら分かる探知機の警戒線を設置してこれから結婚式までの間に物を運び込まれないようにして、そんでもって王都の中を蒼流に確認させて既に現時点で持ち込まれていないか確認する予定なんだろうね。
勿論パレードが行われる大通りとか王宮の周りは更に探知網を張って警備体制を整えるんだろうけど。
王太子の結婚式とか国王の戴冠式の時にしか使わない秘蔵の魔道具だって話だよ」
シャルロが説明してくれた。
うへぇぇ。
結婚式と戴冠式だけっすか。
まあ、しょっちゅう使っていたら機能とか限界がばれちゃって効果が落ちるかもしれないからなぁ。
しっかし。
「随分と急だな。
まだ結婚式の日付だって『夏』ってだけで正式公表されてないよな?」
「そりゃあ、正式発表しちゃったらそれに向けて色々悪い人たちが準備を始めちゃうかもしれないでしょ?
だから先に抜き打ちで警戒態勢を設定してから発表するんだよ。
魔術院だってそれなりに準備はしてきていただろうけど、今日になるまでいつやることになるかは言われてなかったと思うよ」
シャルロが俺の愚痴に答えた。
なるほどねぇ、徹底してるな。
まあ、王太子の結婚式でもしものことがあったら国の面目が丸つぶれだからな。
それにシャルロと蒼流という常識はずれな手段で王都の中にある危険そうな魔道具や爆破物が分かるのだったら一気に探知網を設置しちまうというのも正解だろう。
爆破物ではない、単なる可燃物による放火だったらそれこそ当日にシャルロに見張っといてもらえばあっという間に消火できるだろうし。
しっかし。
これ程強力な精霊の加護持ちがいない世代の時期はどうしているんだろう?
俺だって清早に頼んだらある程度のことは出来るが、王都全体のチェックなんて出来ないぜ?
人海戦術で魔術院を総動員して虱潰しに調べていくのかね?
・・・シャルロがいて本当に良かったぜ。
「結局、結婚式はいつになるんだ?
幾ら皆もうそろそろだと思って色々準備していたとは言っても、明日発表して10日後とかいう訳にはいかないだろ?」
それとも何とかなるのか??
流石に神殿とかは既に抑えてあるだろうし、パレードは予行演習を既に何度かしているらしいし、パーティの食事とかは1か月だろうか10日だろうが大して違いは無いだろうし。
ファルータの祭りの時のように虱潰しに危険物が無いか調べる必要が無いとしたら、意外と時間は必要ないのか?
まあでも、転移門を使うほど裕福ではないが一生に一度 (かもしれない)王太子の結婚式は是非見たいという地方の人間が王都まで出てくるのには時間が必要だよな?
それとも、そんな人間は治安的に面倒になるから邪魔なのか?
「光の神殿が青の月の20日から5日程抑えられているから、その時期だと思うよ?」
シャルロがあっさりと答えた。
え?
「なんだよ、これだけ機密保持っぽくやってるのに実は光の神殿の予約状況を調べれば結婚式の日付ってわかったの??」
思わず馬鹿らしくなって笑いが漏れた。
「まさか。
シェフィート商会だってそれなりに頑張って光の神殿の情報源に色々探らせたが、夏一杯の予定が不明だったぞ。
シャルロは自分の結婚式の予定があるからオレファーニ侯爵家のコネで分かったんじゃないか?」
アレクが言った。
「それこそまさかだよ。
侯爵家程度のコネで王太子の結婚式に関する情報が漏らされたりする訳ないよ~。
アファル王国に侯爵家や公爵家がいくつあると思ってるの。
貴族なんて自分にとって都合のいい機密管理しかしないんだから、情報を伝えたら商業ギルドのロビーで公表するのと同じことだよ?
今回は、蒼流にお仕事をお願いしたいって言ってきたから、光の神殿がいつなら開いているか教えて貰えないと結婚式の計画が色々固まらなくって忙しいからお仕事請けられないな~と言ったら教えてくれたの」
シャルロがにこやかに教えてくれた。
脅したのかよ!!??
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