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卒業後
528 星暦555年 紫の月 10日 確認作業は重要です(7)
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「東の大陸ってアファル王国にはないタイプの麻薬が一般的に出回っているんですねぇ。
知ってました?」
港町に居た麻薬販売に関係した人間を捕まえまくり、ついでにその後に街の外の畑整備を手伝って更に王都側の販売に関わる人間を捕まえるために警備兵と一緒に屋敷船で帰ってきた俺たちは、それぞれおまけ的な後始末に動くことになった。
シャルロは新しいタイプの麻薬に関して『ウォレン叔父さん』のところへ注意喚起を含めた情報共有。
アレクは商業ギルドへ。
なんといっても、新しいタイプなので『麻薬だとは知らなかった』と言い抜けられては困る。『麻薬である』と定めたパストン島の責任者(ジャレットね)の通達を渡して、軍でも麻薬として取り締まることになるのでどっかの商会が『うっかり』アファル王国の本土へ運び込まないようにくぎを刺しておくのだ。
通達を持っていってほしいとジャレットがアレクに頼んだ時に、ジャレットにそんな権限があるのかと俺は密かに驚いたのだが、新しい地域で育つ植物に関しては開発責任者が初期的危険物指定を出来るらしい。
勿論、後で専門家による検査を受けて正式指定されるのだが、こういった指定が覆されることはほぼないので初期的指定でも商業ギルドはちゃんと動くそうだ。
そして俺は裏の販売経路を潰しておくために盗賊《シーフ》ギルドへ。
別にここまで頑張らなくても良いかな~とも思わないでもなかったのだが、俺達のパストン島(厳密には『俺達の』じゃないけど気分的にはそんな感じなんだよね)経由で変な麻薬が蔓延したりしたら嫌だから、出来ることはしておこうということになったのだ。
「ほおう?
気候が違えば育つ麻薬もタイプが変わってくるだろうが・・・今まで香辛料の交易があってもこちらに流れて来なかったということはあまり効果が強くないか、湿気に弱いのか?」
長がグラスにワインを注ぎながら首をかすかに傾けた。
「まあ、アファル王国で使われる様なガチの麻薬もあるんでしょうが、あちらはもう少し効果が弱くて副作用もそれほど重くない葉を食べたり煙草のように吸ったりするのが人気らしくって。
雑草のように適当に撒いても育つみたいで地域によっては殆どワインと同じ感覚で流通しているので『麻薬』と認識しているかどうか、微妙なところらしいです。
とは言っても、こっそり隠れてパストン島の港町の外で栽培しようとしていたので、表立って栽培して流通できる物ではないようですけどね」
育てていた男たちから取り上げた麻薬の一部をサンプルとして長に差し出しながら答える。
「ふむ。
これか。
確かに中毒性は少ないが・・・気分が良くなって心配事を忘れさせてくれる『都合のいい薬』は結局のところは麻薬であることに変わりはない。
却って露骨に体がボロボロにならないから本人が『依存していない』と自分にも周りにも言い聞かせやすいから、一度嵌ったら抜け出しにくそうだな」
長は葉を小さくちぎって臭いをかぎ、舌の上に乗せて確認してから吐き出して言った。
おや。
これを知っているのか?
それこそ高級紅茶を運ぶ時に使う除湿魔道具でもなければ以前の南回りの航路ではアファル王国まで入ってこなかっただろうに。
まあ、どちらにせよ既に長がこれを知っていて『麻薬である』と認識しているんだったら話は簡単だ。
「どうやら新しい航路が出来たことで、高額な魔道具を使わなくてもアファル王国に売り込めると考える組織が幾つか出てきたようですね。
軍部にも情報共有するので、こちらで売っている奴がいたら潰しといたら感謝されるかも?」
別に俺が口をはさむ筋合いのことじゃあないんだけどね。
でも、王都での販路が潰されまくったらパストン島で育てたり、そこを経由してアファル王国に持ち込もうとする売人組織も減るだろう。
収拾がつかなくなったら蒼流か清早に『麻薬を載せてる船は全部王都の港の外で足止めして』と頼めば何とでもなるんだけどね。
だが、そこまで俺たちが関与しなくても問題にならないはず。
盗賊《シーフ》ギルドが麻薬の販売販路を見つけ次第潰しているのは、メンバーが麻薬に嵌った時の弊害が大きいからであって、『誰かからの依頼』や『王国の為』ではなく自己防衛の為だ。
だから新しい麻薬を販売しようとする組織が存在することを知らせておけば、それなりに目を光らせて要らないことをする奴らを自発的につぶす方向で動いてくれるはず。
これが下手に脅しとか依存させて言うことを聞かせるのに都合がいい薬だったりすると他の裏ギルドが販売側に協力しちゃって収拾がつかなくなることもあるが、今回のは大して即効的な依存性が無いからその心配もないだろう。
「分かった。
お前さんの大事なパストン島が麻薬紛争に巻き込まれないよう、こちらの販路は片っ端から潰していこう」
にやりと笑いながら長が答えた。
あらら。
なんで来たのかばれちゃってら。
「ところで。
実はちょっとした依頼がきているのだが。
小遣い稼ぎをしてはどうかね?」
長がワインを俺に注いで勧めながらにやりと笑った。
小遣いっていう年じゃないんだけどなぁ・・・。
------------------------------------------------------------------------------------
なんかあまり盛り上がらなかった・・・。
捻りが足りませんでしたね!
知ってました?」
港町に居た麻薬販売に関係した人間を捕まえまくり、ついでにその後に街の外の畑整備を手伝って更に王都側の販売に関わる人間を捕まえるために警備兵と一緒に屋敷船で帰ってきた俺たちは、それぞれおまけ的な後始末に動くことになった。
シャルロは新しいタイプの麻薬に関して『ウォレン叔父さん』のところへ注意喚起を含めた情報共有。
アレクは商業ギルドへ。
なんといっても、新しいタイプなので『麻薬だとは知らなかった』と言い抜けられては困る。『麻薬である』と定めたパストン島の責任者(ジャレットね)の通達を渡して、軍でも麻薬として取り締まることになるのでどっかの商会が『うっかり』アファル王国の本土へ運び込まないようにくぎを刺しておくのだ。
通達を持っていってほしいとジャレットがアレクに頼んだ時に、ジャレットにそんな権限があるのかと俺は密かに驚いたのだが、新しい地域で育つ植物に関しては開発責任者が初期的危険物指定を出来るらしい。
勿論、後で専門家による検査を受けて正式指定されるのだが、こういった指定が覆されることはほぼないので初期的指定でも商業ギルドはちゃんと動くそうだ。
そして俺は裏の販売経路を潰しておくために盗賊《シーフ》ギルドへ。
別にここまで頑張らなくても良いかな~とも思わないでもなかったのだが、俺達のパストン島(厳密には『俺達の』じゃないけど気分的にはそんな感じなんだよね)経由で変な麻薬が蔓延したりしたら嫌だから、出来ることはしておこうということになったのだ。
「ほおう?
気候が違えば育つ麻薬もタイプが変わってくるだろうが・・・今まで香辛料の交易があってもこちらに流れて来なかったということはあまり効果が強くないか、湿気に弱いのか?」
長がグラスにワインを注ぎながら首をかすかに傾けた。
「まあ、アファル王国で使われる様なガチの麻薬もあるんでしょうが、あちらはもう少し効果が弱くて副作用もそれほど重くない葉を食べたり煙草のように吸ったりするのが人気らしくって。
雑草のように適当に撒いても育つみたいで地域によっては殆どワインと同じ感覚で流通しているので『麻薬』と認識しているかどうか、微妙なところらしいです。
とは言っても、こっそり隠れてパストン島の港町の外で栽培しようとしていたので、表立って栽培して流通できる物ではないようですけどね」
育てていた男たちから取り上げた麻薬の一部をサンプルとして長に差し出しながら答える。
「ふむ。
これか。
確かに中毒性は少ないが・・・気分が良くなって心配事を忘れさせてくれる『都合のいい薬』は結局のところは麻薬であることに変わりはない。
却って露骨に体がボロボロにならないから本人が『依存していない』と自分にも周りにも言い聞かせやすいから、一度嵌ったら抜け出しにくそうだな」
長は葉を小さくちぎって臭いをかぎ、舌の上に乗せて確認してから吐き出して言った。
おや。
これを知っているのか?
それこそ高級紅茶を運ぶ時に使う除湿魔道具でもなければ以前の南回りの航路ではアファル王国まで入ってこなかっただろうに。
まあ、どちらにせよ既に長がこれを知っていて『麻薬である』と認識しているんだったら話は簡単だ。
「どうやら新しい航路が出来たことで、高額な魔道具を使わなくてもアファル王国に売り込めると考える組織が幾つか出てきたようですね。
軍部にも情報共有するので、こちらで売っている奴がいたら潰しといたら感謝されるかも?」
別に俺が口をはさむ筋合いのことじゃあないんだけどね。
でも、王都での販路が潰されまくったらパストン島で育てたり、そこを経由してアファル王国に持ち込もうとする売人組織も減るだろう。
収拾がつかなくなったら蒼流か清早に『麻薬を載せてる船は全部王都の港の外で足止めして』と頼めば何とでもなるんだけどね。
だが、そこまで俺たちが関与しなくても問題にならないはず。
盗賊《シーフ》ギルドが麻薬の販売販路を見つけ次第潰しているのは、メンバーが麻薬に嵌った時の弊害が大きいからであって、『誰かからの依頼』や『王国の為』ではなく自己防衛の為だ。
だから新しい麻薬を販売しようとする組織が存在することを知らせておけば、それなりに目を光らせて要らないことをする奴らを自発的につぶす方向で動いてくれるはず。
これが下手に脅しとか依存させて言うことを聞かせるのに都合がいい薬だったりすると他の裏ギルドが販売側に協力しちゃって収拾がつかなくなることもあるが、今回のは大して即効的な依存性が無いからその心配もないだろう。
「分かった。
お前さんの大事なパストン島が麻薬紛争に巻き込まれないよう、こちらの販路は片っ端から潰していこう」
にやりと笑いながら長が答えた。
あらら。
なんで来たのかばれちゃってら。
「ところで。
実はちょっとした依頼がきているのだが。
小遣い稼ぎをしてはどうかね?」
長がワインを俺に注いで勧めながらにやりと笑った。
小遣いっていう年じゃないんだけどなぁ・・・。
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なんかあまり盛り上がらなかった・・・。
捻りが足りませんでしたね!
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