シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

523 星暦555年 赤の月 30日 確認作業は重要です(2)

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俺達の屋敷船も完成していたので、本格的な試運転を兼ねてそれでパストン島に行くことになった。
俺はあまりちゃんと聞いていなかったのだが、藤の月にシェイラと王都を離れている間に納品されていたらしく、その後はアレクがパディン夫人に頼んでシーツやカーテン、それにその他必要な日常品を買いそろえていて貰っていた。

・・・そう言えば、これがあったよなぁ。
デザインや機能を考えている間は楽しかったので四六時中これのことを考えていたが、船大工のおっさんのところに任せてからはあまり考えることが無かったので忘れていた。

支払いも俺達の事業の口座にある製品販売からの利益や、沈没船絡みのオークションで得た資金から出て行ったのでイマイチ払った感覚が薄い。

俺の金に関しての感覚って、孤児院を逃げ出した後にその日の糧であるパンを買う為に銅貨を必死に盗んでいた記憶が一番鮮明なんだよね。お陰で大きすぎる金額の金って稼いでも使っても微妙に実感がない。

まあ、何にせよ、ちゃんと屋敷船が完成したんだったら試運転して活用しなくっちゃな。
結婚式の後に20日ほどノンビリ屋敷船で二人きり(プラス召使い)で旅行に行くシャルロとケレナのことを考えても、船の設備が全部問題無く動くのかちゃんと確認しておくべきだろう。

王都の港を出た後は蒼流の力で風のような速度で夜も休まずにすっ飛ばした屋敷船は、パストン島に2日で着いた。
うん、これだったら転移門を使って東の大陸に行き、そこで適当な船を見つけてパストン島に行くよりも早い。
無駄遣いにならなくって良かったぜ。
しかも島では宿屋に泊らなくて良いし。

別荘に遊びに行ったらそのまま別荘が行きたい所に移動しているような感じで、非常に快適だ。

パストン島に着いた俺達は、邪魔にならないようにちょっと沖合に船を係留して、自慢の小型船で港に入って行った。

「大分賑やかになってきた感じだね」
シャルロが周りを見回しながら言った。

俺達が建築を手伝った(土台を整えただけだけど)宿や倉庫、港湾事務所などがちゃんと壁も天井も出来上がり、窓にガラスも入って立派な感じになっている。

道沿いに色々と建物が建っているので酒場とか食事処とかも色々出来たんだろうな。

「まずは開発事務所に行こうか。
今回の訪問については連絡していないので待たされるかも知れないが」
アレクが大通りを北に向かって足を進め始めた。

おや?
効率の鬼であるアレクが前もって俺達が行くことを伝えておかないとは意外だ。
開発事務所に通信機があるはずだし、パストン島にはシェフィート商会の支店も開いたと聞いているから、そこと転移箱で色々連絡を取り合っているだろうに。

「抜き打ちテストだ~。
父上も時々抜き打ちテストって言って僕たちを色んな街に連れて行ってくれたんだよね。
考えてみたら今ぐらいの時期かもう少し早めが多かったかも?」
シャルロがケレナと手を繋いでニコニコしながらアレクの後を続いた。

なるほど。
開発局がずるをしていないか確認しに行くんだから、幾ら初日に待たされることになろうと前もって行く事を警告していては意味が無いよな。

「しっかしさぁ。
こういう場合に書類の何を調べれば良いの?
隠し金庫探しなら任せておけって所だけど、まだ二重帳簿を作る暇も無いんじゃ無い?」
色々出費の多い初期の開発時だ。
別に二重帳簿なんぞを作らなくても、資金を横領しようと思ったらいくらでもちょろまかせそうな気がする。

「取り敢えず、大きめな支出は建物や設備の建設費だろうから、どの程度何に支払が計上してあるかを確認して、後でその実物を確認に行こう。
一応港湾使用料や倉庫使用料の収入もあるはずだからそちらの使用率も調べたいところだ」
アレクが答えた。

使用率、ねぇ。
シェフィート商会の人間に聞けば港の賑わいに関する大体の感覚を聞けるだろうから、資料にある収益から分かる使用率と一致しているか確認するというところか?
でも、それよりも開発局の事務員に酒をしこたま奢って話を聞く方が早く無いか?

・・・取り敢えず、後で酒場にでも行ってちょっと酒を奢って話を聞いて回るか。
下の人間っていうのは、お偉いさんが怪しいことをやっていたら大抵は薄々分かっているもんだからな。

単なるやっかみでのえん罪モドキな噂も多いだろうけど。

 
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ちなみに、屋形船が完成した事とか、パストン島までの所要日数の話って今まで出てないですよね??
イマイチ確認が取れなくって(汗)
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