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卒業後
519 星暦555年 赤の月 12日 汚染(7)
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ザルガ共和国のとあるお偉いさんの視点です。
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>>>サイド ???
「あの商会は本当に悪魔汚染の残る木材を態々木炭にしてアファル王国に輸出したのか??」
報告を聞き、思わず唖然として机の前に立つ部下を見上げた。
新しい盗聴器型魔道具が開発され、それを苦労してアファル王国やその他周辺国の中枢部や情報機関に設置したのだが、最近あまり情報が入ってきていなかったアファル王国担当の諜報部から気になる報告が上がってきたので詳細を調べるよう命じたのだが・・・。
そんな戦争の前準備と見なされかねないことをこの国の商会がやったと言うのか???
しかも、計画的に戦争特需を狙ってというのならまだしも、知らずにうっかり???
報告に来た部下が肩を竦めた。
「確認のために本国から命の神ハレフの神官を送った所、かなり古いもののまだ汚染状態が解消されていないとのことです。
古いからこそ、その森の木その物が全体的に汚染されているのでそれを木炭にするなんてとんでもないと神官は言っていたとの報告が上がってきています。
ガバタール商会の方は、まさか国教であるテリウス神殿の森が悪魔汚染をそのまま放置しているとは夢にも思っていなかったので確認することを考えつきもしなかったと言っています。
一応代官の方にも伐採と輸出の許可は取ったとも。
現地の人間も、森への立入りが禁じられていたのはテリウス神殿の傲慢さと強欲さの一部なだけだと思っていたらしいです」
一体どれ程昔に汚染されたんだ、その森は???
100歩譲って汚染された記録が残っていなかったとしても、悪魔に汚染された森なんぞ狩りに入った密猟者が魔獣化した動物に襲われるとか、こっそり地元の人間が採取した薬草を使って病気になるかで、大抵は周辺の人間が『あそこはヤバい』と知っているのに。
・・・まあ、あの国のテリウス神殿は『神殿』とは名ばかりの大都市の裏組織も顔負けな悪辣集団だったからなぁ。
神殿の立入禁止の地区に入った人間は即座に問答無用で奴隷として売られてしまうせいで情報が漏れなかったのかも知れない。
しかも恨みを買いまくっていたから、地元の人間に襲われるのを恐れて敗戦の話が流れた途端に神官はあっという間に姿を消したという話だし。
代官が各地の街に派遣された時点で、テリウス神殿はどこも人間も資産も何も無い空っぽな建物だけが残っている状態だったとの話があがってきている。
唯一残っていた売れそうな物が地元民が略奪するには大きすぎた森の木だった訳だが・・・。
それが汚染されていたとは。
頭が痛い。
アファル王国の盗聴機に関しては、どうも去年の暮れ近くに何やらちょっと怪しげな会話があった後から設置先が妙に静かになり、会話も役に立たないものが増えてきていたのに突然『ザルガ共和国が悪魔汚染された木炭を大量にアファル王国の王都に流してきた。戦争の前触れなのかもしれないから準備態勢に入れ』などという物騒な会議の報告が入ったので怪しみながらも確認のために調べさせていたのだが・・・。
盗聴機が何らかの理由で発覚したか否かに関わらず、宣戦布告と受け取られてもしょうが無いような行為を自国の中堅商会がしていたなんて悪夢だ。
しかも原因が木炭なんていう利幅の少ない商品だったなんて、統合委員会で報告したら皆が頭を抱えるだろう。
「国教だったのに、何だってそんな物騒な物を直轄領に抱えていたんだ、テリウス神殿は???」
思わずこめかみを指で揉みながら目の前の男に聞いた。
元々、ガルカ王国へ送られた代官の役割は前国王とテリウス神殿の搾取でボロボロになった民と経済を建て直しつつ、死なない程度に金を搾り取ることだ。
だから既に取り潰されたテリウス神殿の手つかずな直轄領の資源を売っぱらうことを許可するのは理にかなっているのだが・・・まさかそれが隣国への敵対行為になるなんて誰も想像すらしていなかった。
「あのバカを『神に選ばれた王』と讃え、そいつが邪魔になった奴を『神の意に逆らう不届き者』として『神罰』という名の暗殺行為を繰り返すことで国教になった神殿ですよ?
まともに浄化なんか出来る能力があったとは思えませんね」
肩を竦めながら部下が答えた。
まあ、そうだよなぁ・・・。
「全てのテリウス神殿の直轄領に確認の為に神官を送り、必要がある場合は浄化を依頼しろ」
「アファル王国に関してはどうしますか?」
部下が尋ねてきた。
ザルガ共和国の国是は『商売』と『利益』である。
情報収集に力を注ぎ、商売にプラスになりそうなことだったらそれなりに裏から手を回すこともあるが、実際に戦争をするなんて言うのは下の下な手段と見なされている。
その下の下である戦争を回避する為にもアファル王国を何とか宥めなければならないが・・・。
「『そちらを盗聴していて初めて知りました、ごめんなさい』と言う訳にもいかんだろう。
取り敢えず、ガバタール商会がちゃんと賠償責任を果たせるように資産の整理を始めさせろ。誰も資産を持ち逃げしないようにしっかり見張っておけ」
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敗戦が確定した時点で、現地民が各地のテリウス神殿を略奪しまくったので持ち出せる物は本や彫刻とかは勿論のこと、ベッドや箪笥まで全部取られていたんですね~。
当然、資料なんて物は使える形では残っていなかったし神官はとっくのとうに逃げていたし、地元の住民は搾取されまくって栄養状態が悪かったので平均寿命がかなり短かったので、誰も昔の事を知らなかったというw
ちなみに、アファル王国の方はそこそこ自力で調べた後、ザルガ共和国の反応を調べるために態と盗聴機のある部屋で物騒な会議を開きました。
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>>>サイド ???
「あの商会は本当に悪魔汚染の残る木材を態々木炭にしてアファル王国に輸出したのか??」
報告を聞き、思わず唖然として机の前に立つ部下を見上げた。
新しい盗聴器型魔道具が開発され、それを苦労してアファル王国やその他周辺国の中枢部や情報機関に設置したのだが、最近あまり情報が入ってきていなかったアファル王国担当の諜報部から気になる報告が上がってきたので詳細を調べるよう命じたのだが・・・。
そんな戦争の前準備と見なされかねないことをこの国の商会がやったと言うのか???
しかも、計画的に戦争特需を狙ってというのならまだしも、知らずにうっかり???
報告に来た部下が肩を竦めた。
「確認のために本国から命の神ハレフの神官を送った所、かなり古いもののまだ汚染状態が解消されていないとのことです。
古いからこそ、その森の木その物が全体的に汚染されているのでそれを木炭にするなんてとんでもないと神官は言っていたとの報告が上がってきています。
ガバタール商会の方は、まさか国教であるテリウス神殿の森が悪魔汚染をそのまま放置しているとは夢にも思っていなかったので確認することを考えつきもしなかったと言っています。
一応代官の方にも伐採と輸出の許可は取ったとも。
現地の人間も、森への立入りが禁じられていたのはテリウス神殿の傲慢さと強欲さの一部なだけだと思っていたらしいです」
一体どれ程昔に汚染されたんだ、その森は???
100歩譲って汚染された記録が残っていなかったとしても、悪魔に汚染された森なんぞ狩りに入った密猟者が魔獣化した動物に襲われるとか、こっそり地元の人間が採取した薬草を使って病気になるかで、大抵は周辺の人間が『あそこはヤバい』と知っているのに。
・・・まあ、あの国のテリウス神殿は『神殿』とは名ばかりの大都市の裏組織も顔負けな悪辣集団だったからなぁ。
神殿の立入禁止の地区に入った人間は即座に問答無用で奴隷として売られてしまうせいで情報が漏れなかったのかも知れない。
しかも恨みを買いまくっていたから、地元の人間に襲われるのを恐れて敗戦の話が流れた途端に神官はあっという間に姿を消したという話だし。
代官が各地の街に派遣された時点で、テリウス神殿はどこも人間も資産も何も無い空っぽな建物だけが残っている状態だったとの話があがってきている。
唯一残っていた売れそうな物が地元民が略奪するには大きすぎた森の木だった訳だが・・・。
それが汚染されていたとは。
頭が痛い。
アファル王国の盗聴機に関しては、どうも去年の暮れ近くに何やらちょっと怪しげな会話があった後から設置先が妙に静かになり、会話も役に立たないものが増えてきていたのに突然『ザルガ共和国が悪魔汚染された木炭を大量にアファル王国の王都に流してきた。戦争の前触れなのかもしれないから準備態勢に入れ』などという物騒な会議の報告が入ったので怪しみながらも確認のために調べさせていたのだが・・・。
盗聴機が何らかの理由で発覚したか否かに関わらず、宣戦布告と受け取られてもしょうが無いような行為を自国の中堅商会がしていたなんて悪夢だ。
しかも原因が木炭なんていう利幅の少ない商品だったなんて、統合委員会で報告したら皆が頭を抱えるだろう。
「国教だったのに、何だってそんな物騒な物を直轄領に抱えていたんだ、テリウス神殿は???」
思わずこめかみを指で揉みながら目の前の男に聞いた。
元々、ガルカ王国へ送られた代官の役割は前国王とテリウス神殿の搾取でボロボロになった民と経済を建て直しつつ、死なない程度に金を搾り取ることだ。
だから既に取り潰されたテリウス神殿の手つかずな直轄領の資源を売っぱらうことを許可するのは理にかなっているのだが・・・まさかそれが隣国への敵対行為になるなんて誰も想像すらしていなかった。
「あのバカを『神に選ばれた王』と讃え、そいつが邪魔になった奴を『神の意に逆らう不届き者』として『神罰』という名の暗殺行為を繰り返すことで国教になった神殿ですよ?
まともに浄化なんか出来る能力があったとは思えませんね」
肩を竦めながら部下が答えた。
まあ、そうだよなぁ・・・。
「全てのテリウス神殿の直轄領に確認の為に神官を送り、必要がある場合は浄化を依頼しろ」
「アファル王国に関してはどうしますか?」
部下が尋ねてきた。
ザルガ共和国の国是は『商売』と『利益』である。
情報収集に力を注ぎ、商売にプラスになりそうなことだったらそれなりに裏から手を回すこともあるが、実際に戦争をするなんて言うのは下の下な手段と見なされている。
その下の下である戦争を回避する為にもアファル王国を何とか宥めなければならないが・・・。
「『そちらを盗聴していて初めて知りました、ごめんなさい』と言う訳にもいかんだろう。
取り敢えず、ガバタール商会がちゃんと賠償責任を果たせるように資産の整理を始めさせろ。誰も資産を持ち逃げしないようにしっかり見張っておけ」
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敗戦が確定した時点で、現地民が各地のテリウス神殿を略奪しまくったので持ち出せる物は本や彫刻とかは勿論のこと、ベッドや箪笥まで全部取られていたんですね~。
当然、資料なんて物は使える形では残っていなかったし神官はとっくのとうに逃げていたし、地元の住民は搾取されまくって栄養状態が悪かったので平均寿命がかなり短かったので、誰も昔の事を知らなかったというw
ちなみに、アファル王国の方はそこそこ自力で調べた後、ザルガ共和国の反応を調べるために態と盗聴機のある部屋で物騒な会議を開きました。
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