515 / 1,038
卒業後
514 星暦555年 藤の月 30日 汚染(2)
しおりを挟む
「ここ1月の間に、何か今までに無かった問い合わせとか苦情って来てないか?」
まずは魔術師の方が何かに気が付いた、もしくは何とかしろと話が来る可能性が高いと思って魔術院に戻ってアンディに尋ねてみた。
「変な問い合わせとか苦情?
年初のパーティで魔術師が酔っ払って変な術を放っちまった事に関する苦情以外、特に耳には入ってないが・・・」
首を傾げながらアンディが答えた。
まあ、普段よりも王都の空気がほこりっぽいって住民が思ってもそれに関して魔術院に相談に来る可能性は低いよな。
魔術師でも誰も気が付いていなかったというのは残念だが。
「暫くシェイラと遺跡発掘の手伝いに王都から離れていて、帰ってきたら王都の空気が妙に濁っているんで驚いたんだが・・・。
心眼《サイト》で視てみると幻想界で空気が輝いていたのと反対に暗くなっているように見えるだろ?」
アンディは妖精の森に行った際についてきて、あちらの空気が輝いていたのを視ている。
今の王都の空気の状態も単なる埃では無い事を理解してくれると思いたいが・・・。
「えぇ?
ちょっと待って。
心眼《サイト》で空気を視るのってコツがあって意外と大変なんだよ」
何やらブツブツ呟きながらアンディがこめかみに手を当てて空を睨み始めた。
そんなに難しいかねぇ?
魔術回路を心眼《サイト》で視るのと同じ感じに、空気を視れば良いだけなのに。
まあ、そこら辺は文句を言ってもしょうが無いので根気よく待っていたら、突然アンディが肩を揺らした。
「何だこれ?
薄暗いんだけど??!!!」
「だろ?
健康に良いとは思えないから、何か異変が出てないかと思ったんだが・・・」
ゆっくりと周りを見回した後に、アンディは目をつむってまたこめかみの辺を擦った。
「う~ん、確かに空気が変に濁った感じになっているのは分かったが・・・最近は空気を心眼《サイト》で視ようとしていなかったからなぁ。
今の状態が一時的に起きた異変なのか、王都では良くある事なのかも分からん」
思わずため息が漏れた。
心眼《サイト》で幻想界の空気が輝いているのを視てはしゃいでいたアンディですらやっていないとなると、心眼《サイト》で空気を常時(もしくは定期的にでも)視ているのって俺ぐらいらしい。
1月のいつに異変が起き始めたのか確認出来たら異変の原因も突き止めやすいと思ったのだが・・・どうやら駄目っぽいな。
もしも禁呪が関係しているのだったら学院長にでも相談しようと思っていたが、いつ始まったのかもどこが中心地なのかも分からないとなると何を相談したら良いのかも分からない。
しかも、同じ魔術師でも集中して心眼《サイト》で空気を意識的に視ない限り認識できない問題だとすると、危機感を訴えようにも中々難しいし。
幻想界で煌めく空気を視た事があり、幻想界の空気とこちらの空気の煌めき具合の違いを比較するために王都でも空気を心眼《サイト》で視たことのあるアンディだからこそ、今の濁った王都の空気がおかしいと納得してくれたが、普通の魔術師では『こんな物なんじゃないのか?』で終わってしまいそうだ。
流石に学生時代に遭遇した禁呪をやっていた屋敷の空気ほどどぎつく赤黒く染まっていれば何らかの異常を他の魔術師でも関知するだろうが、この程度では難しいんだろうなぁ。
実害が本当にあるのかも分からないし。
取り敢えず、王都を歩き回って濁りの濃い地域を探すしか無さそうだな。
面倒だ・・・。
これで単なる珍しい自然現象だなんて結果だったら俺は泣くぞ。
「王都の外ではこの空気の濁りはほぼ無いから、取り敢えず王都の中を歩き回ってどこが大元なのか探すか。
頭が痛い・・・」
ため息をつきながら髪の毛をかきむしったら、アンディが肩を竦めた。
「この際、清早に聞いてみたらどうだ?
水が原因だったら直ぐに分かるだろうし、そうじゃなくても他の精霊に聞くことも出来ないか?」
確かに。
王都にはあまり噴水はないし、存在する噴水はこの濁りの薄い王宮近辺に集中しているので水から空気の濁りが発生しているとは思えないが、清早の知り合いに風の精霊だっているだろう。
「清早。
ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど、お願いして良い?」
-----------------------------------------------------------------------
久しぶりの頼まれ事で、清早クンが張り切りそうw
まずは魔術師の方が何かに気が付いた、もしくは何とかしろと話が来る可能性が高いと思って魔術院に戻ってアンディに尋ねてみた。
「変な問い合わせとか苦情?
年初のパーティで魔術師が酔っ払って変な術を放っちまった事に関する苦情以外、特に耳には入ってないが・・・」
首を傾げながらアンディが答えた。
まあ、普段よりも王都の空気がほこりっぽいって住民が思ってもそれに関して魔術院に相談に来る可能性は低いよな。
魔術師でも誰も気が付いていなかったというのは残念だが。
「暫くシェイラと遺跡発掘の手伝いに王都から離れていて、帰ってきたら王都の空気が妙に濁っているんで驚いたんだが・・・。
心眼《サイト》で視てみると幻想界で空気が輝いていたのと反対に暗くなっているように見えるだろ?」
アンディは妖精の森に行った際についてきて、あちらの空気が輝いていたのを視ている。
今の王都の空気の状態も単なる埃では無い事を理解してくれると思いたいが・・・。
「えぇ?
ちょっと待って。
心眼《サイト》で空気を視るのってコツがあって意外と大変なんだよ」
何やらブツブツ呟きながらアンディがこめかみに手を当てて空を睨み始めた。
そんなに難しいかねぇ?
魔術回路を心眼《サイト》で視るのと同じ感じに、空気を視れば良いだけなのに。
まあ、そこら辺は文句を言ってもしょうが無いので根気よく待っていたら、突然アンディが肩を揺らした。
「何だこれ?
薄暗いんだけど??!!!」
「だろ?
健康に良いとは思えないから、何か異変が出てないかと思ったんだが・・・」
ゆっくりと周りを見回した後に、アンディは目をつむってまたこめかみの辺を擦った。
「う~ん、確かに空気が変に濁った感じになっているのは分かったが・・・最近は空気を心眼《サイト》で視ようとしていなかったからなぁ。
今の状態が一時的に起きた異変なのか、王都では良くある事なのかも分からん」
思わずため息が漏れた。
心眼《サイト》で幻想界の空気が輝いているのを視てはしゃいでいたアンディですらやっていないとなると、心眼《サイト》で空気を常時(もしくは定期的にでも)視ているのって俺ぐらいらしい。
1月のいつに異変が起き始めたのか確認出来たら異変の原因も突き止めやすいと思ったのだが・・・どうやら駄目っぽいな。
もしも禁呪が関係しているのだったら学院長にでも相談しようと思っていたが、いつ始まったのかもどこが中心地なのかも分からないとなると何を相談したら良いのかも分からない。
しかも、同じ魔術師でも集中して心眼《サイト》で空気を意識的に視ない限り認識できない問題だとすると、危機感を訴えようにも中々難しいし。
幻想界で煌めく空気を視た事があり、幻想界の空気とこちらの空気の煌めき具合の違いを比較するために王都でも空気を心眼《サイト》で視たことのあるアンディだからこそ、今の濁った王都の空気がおかしいと納得してくれたが、普通の魔術師では『こんな物なんじゃないのか?』で終わってしまいそうだ。
流石に学生時代に遭遇した禁呪をやっていた屋敷の空気ほどどぎつく赤黒く染まっていれば何らかの異常を他の魔術師でも関知するだろうが、この程度では難しいんだろうなぁ。
実害が本当にあるのかも分からないし。
取り敢えず、王都を歩き回って濁りの濃い地域を探すしか無さそうだな。
面倒だ・・・。
これで単なる珍しい自然現象だなんて結果だったら俺は泣くぞ。
「王都の外ではこの空気の濁りはほぼ無いから、取り敢えず王都の中を歩き回ってどこが大元なのか探すか。
頭が痛い・・・」
ため息をつきながら髪の毛をかきむしったら、アンディが肩を竦めた。
「この際、清早に聞いてみたらどうだ?
水が原因だったら直ぐに分かるだろうし、そうじゃなくても他の精霊に聞くことも出来ないか?」
確かに。
王都にはあまり噴水はないし、存在する噴水はこの濁りの薄い王宮近辺に集中しているので水から空気の濁りが発生しているとは思えないが、清早の知り合いに風の精霊だっているだろう。
「清早。
ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど、お願いして良い?」
-----------------------------------------------------------------------
久しぶりの頼まれ事で、清早クンが張り切りそうw
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる