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卒業後
160 星暦552年 青の月 25日 飛ぶ?(9)
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「ほほう、空を飛ぶ魔具か。面白そうじゃないか」
お茶を淹れながら学院長が笑った。
「是非、試乗させてもらいたいものだな」
「結構ですよ。ついでに、何か改善点に気が付いたら言って下さい。伯爵令嬢に試乗させる前に、何も知らない人にも試乗してもらいたかったし。学院長だったら何かがあっても安心ですしね」
カップに注いだお茶を俺に渡しながら学院長がソファに座った。
「で?何が問題なんだ?」
・・・考えてみたら、俺って問題があるかアドバイスが欲しい時しかここに来ないよなぁ。
「実は、安全装置として上空で何かあっても無事降りられるベルトを作ろうと思うんです。1回落下用の使い切り分だけの魔力が入った魔石をつけるつもりなのですが・・・考えみたら、意図的に空滑機から飛び降りて王宮などへの不法侵入をするのに使われる危険があるかな?と思いまして」
にやり。
学院長が笑った。
「ちゃんと、歴史の授業も聞いておけという良い教訓だな。アレクやシャルロが気がつかなかったのは意外だが」
??
全く話が見えていない俺に、小さくため息をついて学院長が説明を始める。
「魔術の神は?」
「ダルファーナ神ですね」
一応、全ての魔術師はダルファーナ神に加護を与えられて生まれてきたと言われている。本当かどうかは知らないが。そりゃあ、かなり能力がある魔術師は神から認識されているかもしれないが、平均レベルの魔術師まで全部把握しているとは考えにくい。
第一、全部把握しているならもっとしっかり国家レベルで危険な禁呪とかを完全に禁じるんじゃないかね?
もっとも、人類があれだけ色々と危険な魔術に手を出してきながらも滅んでいないことが神の干渉の証拠なのかもしれないが。
「ダルファーナ神の神殿長は?」
神殿長というのは世俗的な影響力があることから、各国に一人ずつはいる。理想としては神が選ぶのだが、選ばれるような人材がいない場合は神官や世俗の権力者が神殿長を決めている。
場合によっては神によって選ばれた都合の悪い人間を禁固したり殺したりした為、神に見捨てられた神殿もある。
そんな汚職に関係の無い一般人としては、そう言う人間を罰して欲しいところなのだが、大抵の神は自分のお気に入りの神官だけを助けてその神殿の祈りに二度と耳を貸さなくなってしまうらしい。
神罰が下って神殿の建物が砕け散ることも偶にはあるけど。
その方が俺たち一般人にとっては有難いんだけどね。
二度と耳を貸さないなら、一般市民に『家主不在』と知らしめてくれないと困る。
はっきり言って、単に人材がいないから神に選ばれた神殿長が不在な『時には耳を傾けてもらえる神殿』と、過去に神の怒りに触れた『完全に無視される神殿』の違いが分からないのは非常に不都合なのだ。
お陰で俺みたいな、神の加護に懐疑的な人間が増えてくる訳だ。
ま、それは良いとして。
魔術の神の、神殿長。
誰だったっけ?
授業でやったはずだが・・・。
「考えてみたら、神殿ってどこにあるんでしたっけ?」
はぁ。
学院長が深くため息をついた。
「もう少し歴史と教養の授業に耳を傾けてもらえるよう、授業を工夫させねばな。
この国の神殿長は必ず王家の血を引く人間なんだ。神に愛された家系だからこそ、王座につけたと言ってもいい」
そうだったけ?
言われてみれば、そんなことを聞いた気がしないでもない。
だが、単なる上へのゴマスリだと思って聞き流していたのだが、実は本当のことだったのか。
「初代の国王のように神の愛しい子である神殿長は少ないが、それでもこの王国は魔術の神の加護が豊かだ。その加護の一つが、王城の結界だ。これは授業でやったぞ?」
おやおや。
失礼しました。
「これは国の防衛に係わることだから公にはされていないが、あの王城の周囲にはそれなりのサイズで魔術が使えないフィールドが結界として張りめぐらされている。上空もカバーされているから、お前さんたちの道具を使ったところで落ちてぺっちゃんこになるだけだ」
他言するなよ、と睨みながら学院長が説明してくれた。
なるほど。
初代国王とかが優れた魔術師だというのは聞いていたが、魔術の神と直接話ができる程の神官だったとは知らんかったぞ。
「ダルファーナ神の神殿ってもしかして王城にあるんですか?」
お茶のお代わりを淹れに立ち上がりながら、学院長が首を横に振った。
「一応、神に祈りをする為の祈祷の場はあるが、元々ダルファーナ神は信仰を求めない神だからな。神殿と言うモノ自体が存在しない」
「・・・神殿が存在する他の神って信仰を求めているんですか?」
思わず、聞いてしまった。
光や闇の神殿長と仲良さげだった学院長なら本当のところを聞いているかもしれない・・・なんて思って。
「さあな。別に、自然の営みを歪めることさえしなければ、神々は人間が勝手に生きていても気にしていないようだがな。まあ、自分に話しかけてくるお気に入りがいる場所の祈りの方が、気まぐれでも耳を傾ける確率が高いらしい」
そうでっか。
ま、神にとっての俺たちなんて、俺たちにとっての蟻・・・かせいぜいペットぐらいのものなんだろうな。
気にもしないか。
「とりあえず、安全ベルトやらは作っても構わんぞ。どうせ悪事に手を染める魔術師はいつの世にだって存在するんだ、魔具でそれを多少しやすくしたところで、大きな違いはないだろう」
まあそうだよな。
別に画期的に新しいアイディアではないんだから、本当にどこかに侵入するのに上空からが一番の方法だったらその為の魔具を作った人間だって今までにいるだろうし。
「分かりました。今度、よろしかったらお好きな時に試乗に来てください」
出来れば早い目に来てくれる方がいいんだけどね。
お茶を淹れながら学院長が笑った。
「是非、試乗させてもらいたいものだな」
「結構ですよ。ついでに、何か改善点に気が付いたら言って下さい。伯爵令嬢に試乗させる前に、何も知らない人にも試乗してもらいたかったし。学院長だったら何かがあっても安心ですしね」
カップに注いだお茶を俺に渡しながら学院長がソファに座った。
「で?何が問題なんだ?」
・・・考えてみたら、俺って問題があるかアドバイスが欲しい時しかここに来ないよなぁ。
「実は、安全装置として上空で何かあっても無事降りられるベルトを作ろうと思うんです。1回落下用の使い切り分だけの魔力が入った魔石をつけるつもりなのですが・・・考えみたら、意図的に空滑機から飛び降りて王宮などへの不法侵入をするのに使われる危険があるかな?と思いまして」
にやり。
学院長が笑った。
「ちゃんと、歴史の授業も聞いておけという良い教訓だな。アレクやシャルロが気がつかなかったのは意外だが」
??
全く話が見えていない俺に、小さくため息をついて学院長が説明を始める。
「魔術の神は?」
「ダルファーナ神ですね」
一応、全ての魔術師はダルファーナ神に加護を与えられて生まれてきたと言われている。本当かどうかは知らないが。そりゃあ、かなり能力がある魔術師は神から認識されているかもしれないが、平均レベルの魔術師まで全部把握しているとは考えにくい。
第一、全部把握しているならもっとしっかり国家レベルで危険な禁呪とかを完全に禁じるんじゃないかね?
もっとも、人類があれだけ色々と危険な魔術に手を出してきながらも滅んでいないことが神の干渉の証拠なのかもしれないが。
「ダルファーナ神の神殿長は?」
神殿長というのは世俗的な影響力があることから、各国に一人ずつはいる。理想としては神が選ぶのだが、選ばれるような人材がいない場合は神官や世俗の権力者が神殿長を決めている。
場合によっては神によって選ばれた都合の悪い人間を禁固したり殺したりした為、神に見捨てられた神殿もある。
そんな汚職に関係の無い一般人としては、そう言う人間を罰して欲しいところなのだが、大抵の神は自分のお気に入りの神官だけを助けてその神殿の祈りに二度と耳を貸さなくなってしまうらしい。
神罰が下って神殿の建物が砕け散ることも偶にはあるけど。
その方が俺たち一般人にとっては有難いんだけどね。
二度と耳を貸さないなら、一般市民に『家主不在』と知らしめてくれないと困る。
はっきり言って、単に人材がいないから神に選ばれた神殿長が不在な『時には耳を傾けてもらえる神殿』と、過去に神の怒りに触れた『完全に無視される神殿』の違いが分からないのは非常に不都合なのだ。
お陰で俺みたいな、神の加護に懐疑的な人間が増えてくる訳だ。
ま、それは良いとして。
魔術の神の、神殿長。
誰だったっけ?
授業でやったはずだが・・・。
「考えてみたら、神殿ってどこにあるんでしたっけ?」
はぁ。
学院長が深くため息をついた。
「もう少し歴史と教養の授業に耳を傾けてもらえるよう、授業を工夫させねばな。
この国の神殿長は必ず王家の血を引く人間なんだ。神に愛された家系だからこそ、王座につけたと言ってもいい」
そうだったけ?
言われてみれば、そんなことを聞いた気がしないでもない。
だが、単なる上へのゴマスリだと思って聞き流していたのだが、実は本当のことだったのか。
「初代の国王のように神の愛しい子である神殿長は少ないが、それでもこの王国は魔術の神の加護が豊かだ。その加護の一つが、王城の結界だ。これは授業でやったぞ?」
おやおや。
失礼しました。
「これは国の防衛に係わることだから公にはされていないが、あの王城の周囲にはそれなりのサイズで魔術が使えないフィールドが結界として張りめぐらされている。上空もカバーされているから、お前さんたちの道具を使ったところで落ちてぺっちゃんこになるだけだ」
他言するなよ、と睨みながら学院長が説明してくれた。
なるほど。
初代国王とかが優れた魔術師だというのは聞いていたが、魔術の神と直接話ができる程の神官だったとは知らんかったぞ。
「ダルファーナ神の神殿ってもしかして王城にあるんですか?」
お茶のお代わりを淹れに立ち上がりながら、学院長が首を横に振った。
「一応、神に祈りをする為の祈祷の場はあるが、元々ダルファーナ神は信仰を求めない神だからな。神殿と言うモノ自体が存在しない」
「・・・神殿が存在する他の神って信仰を求めているんですか?」
思わず、聞いてしまった。
光や闇の神殿長と仲良さげだった学院長なら本当のところを聞いているかもしれない・・・なんて思って。
「さあな。別に、自然の営みを歪めることさえしなければ、神々は人間が勝手に生きていても気にしていないようだがな。まあ、自分に話しかけてくるお気に入りがいる場所の祈りの方が、気まぐれでも耳を傾ける確率が高いらしい」
そうでっか。
ま、神にとっての俺たちなんて、俺たちにとっての蟻・・・かせいぜいペットぐらいのものなんだろうな。
気にもしないか。
「とりあえず、安全ベルトやらは作っても構わんぞ。どうせ悪事に手を染める魔術師はいつの世にだって存在するんだ、魔具でそれを多少しやすくしたところで、大きな違いはないだろう」
まあそうだよな。
別に画期的に新しいアイディアではないんだから、本当にどこかに侵入するのに上空からが一番の方法だったらその為の魔具を作った人間だって今までにいるだろうし。
「分かりました。今度、よろしかったらお好きな時に試乗に来てください」
出来れば早い目に来てくれる方がいいんだけどね。
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