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卒業後
508 星暦555年 藤の月 10日 俺はオマケです。(7)
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シェイラの視点です。
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>>>サイド シェイラ・オスレイダ
「大丈夫よ。
新鮮な死体は駄目な気がするけど、考古学で出てくる歴史的に価値のあるような古い死体だったら大学院の時の休みに手伝いで参加した発掘作業で墓周りの作業とかしているわ」
ちょっと心配そうにこちらを見るウィルに笑いかける。
そう、考古学では骨だって重要な研究対象なのだ。
骨や歯の発達・破損状態を調べる事でその時代の栄養状態とか戦争等の有無とかが推測出来るし、人種的に骨格が違う場合はそれも非常に興味深い情報となる。
大学時代の手伝いでは白骨死体は重要すぎて触らせて貰えなかったが、大学院時代の手伝いではそこそこの数の白骨体を預かって細心の注意を払って土を払い、傷やその他の特徴を分類・記録したものだ。
「そうか。
そうなると、俺よりも死体を見た数は多いのかもね」
小さく笑いながらウィルが魔術で生み出した光源を洞窟の奥へ動かした。
ゆっくりとその後に付いて行く。
さっきの洞窟と似たような造りで、こちらの洞窟も入り口の傍に厩の様なスペースがあった。
「これって馬具か?」
なにやらボロボロになった皮と金属の塊に顔を近づけながらウィルが呟いた。
「そうなのかも。
ハラファに見せたら喜ぶわよ~。
あの地下街の中では家畜類は飼っていなかったのか、そういう家畜を使うための馬具と言った様な物は見つかっていないらしいから」
自分でもかがみ込んで、ウィルが見つけた物体を観察する。
う~。触ってみたい!!
でも、下手に触って崩壊しちゃったりしたらハラファ達に謝っても謝りきれないから、固定化の術を掛けてしっかり記録を取るまでは我慢した方が良いだろう。
「まあ、幾ら換気と浄化機能が優れた術が掛けてあっても、家畜が糞とかしまくっていたら臭いだろうし、あの街の人口に足りるだけの家畜を地下の洞窟の中で世話するのは非現実的だよな」
肩を竦めながらウィルが答えた。
「だけど馬具らしき物だけが床に置いてあるって不思議ね」
まあ、単に片付けていなかっただけなのかも知れないが。
「中に閉じ込められた人間が窒息死しなかったんだったら、馬の肉は食べたんじゃ無いか?
食べきれなかった部分とか骨は入り口付近の土砂の中に埋めた可能性が高いな。
・・・とは言え、馬の死体があったところで出てこれなかったら寿命的には誤算の範囲内だが」
ウィルが身も蓋もないことを言った。
うわぁ~。
ちょっと考えるだけで頭が痛くなりそう。
洞窟に閉じ込められるだけでも嫌だけど、その中で自分の愛馬を殺して食べなくてはならなくなり、更にそれでも足りなくて飢え死にするなんて、悲惨すぎる・・・。
「まあ、馬の死体を処理する時間があったんだったら、何だってこの洞窟に閉じ込められる羽目になったのかもどこかに書き付けてあるかも知れないな。
奥を探してみよう」
洞窟の奥に進んだところ・・・どうもここは宿屋だったのかも知れない。
もしくは街道を見回る兵士の宿泊施設かも?
ベッドらしき家具が崩れたような物が複数入っている部屋が幾つかあった。
しかも白骨死体がベッドの残骸の上にあるので、中に閉じ込められた人間は独りではなかったようだ。
「オーバスタ神殿の時代は街道沿いの宿場もこんな感じに洞窟の中に作っていたのかね?
・・・だとしたら入り口の辺の崩落は何かの事故だったのか?
この文明の固定化の術はかなり優れものだからそう簡単に事故で崩れるとも思いにくいが」
周りを見回しながらウィルが呟いた。
通常はこういう遺跡を見つけた時も、術の状態などの確認は魔術院から派遣された魔術師にやってもらわなければならないので、中々詳細が分からないし、派遣その物の手配に時間が掛るので答えが分かるのにも下手をすると何ヶ月もかかる。
初めて中を探険しながら、そういうことを確認出来るなんて本当に便利だわ~。
「この洞窟にも固定化の術が掛っているの?」
崩落の危険があるのだったら、中にこれだけ進んでから確認するのではちょっと遅いが。
まあ、ウィルが居たら例えもう一度入り口近辺が崩落しても、アスカに助けて貰えるかな?
「ああ、しっかし天井や壁の固定化の術は生きているぜ。
使われていないせいか、あのハラファ達が働いている遺跡の固定化の術よりも状態が良いぐらいだ」
ウィルが答え、更に奥に行くと・・・初めて机に座った状態(だと思われる)白骨死体があった。
その前に、本の様な物がある。
「う~ん、これに説明が書いてありそうだけど、触ったら崩壊するよなぁ。
あ~~~~、こんなことなら転記《デュプラ》の術を使う道具を鞄に入れておけば良かった!!」
細心の注意を払いながら本に息を吹きかけないように屈み込んで本を覗いていたウィルが一歩下がって頭をかきむしった。
ふふふ。
意外にウィルもこういう考古学・・・というかミステリーが好きよね。
「というか、貴方オーバスタ神殿の時代の文字って読めたの?」
何度かハラファ達の手伝いに来たとは聞いたが・・・その合間にオーバスタ神殿文明の文字も勉強したのだろうか?
だとしたら、今度フォラスタ文明の文字とかも教えたらもっと更に色々と手伝って貰えるかも知れない。
「あ」
そんなことを考えながらウィルに尋ねたら・・・ウィルの動きが止った。
「読めないんだった・・・。
つまり、例えこれを手に取って中を見れても意味ないな。
さっさとハラファとアルマを連れてきて、これの解析をさせよう!!」
ちゃちゃっと本や死体に固定化の術を掛けたウィルは、早速ハラファ達のいる発掘現場へ戻ろうとせかし始めた。
折角ピクニック用にランチも持ってきているんだけどねぇ。
とは言え、流石に自分でも白骨とはいえ死体があちこちにある洞窟でピクニックはないかな。
今日は早起きした甲斐があって、本当に良い物が見つかったわ!
これからもウィルを誘って遺跡にいかなきゃ!
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考古学者にとっては理想的なパートナーなウィルですw
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>>>サイド シェイラ・オスレイダ
「大丈夫よ。
新鮮な死体は駄目な気がするけど、考古学で出てくる歴史的に価値のあるような古い死体だったら大学院の時の休みに手伝いで参加した発掘作業で墓周りの作業とかしているわ」
ちょっと心配そうにこちらを見るウィルに笑いかける。
そう、考古学では骨だって重要な研究対象なのだ。
骨や歯の発達・破損状態を調べる事でその時代の栄養状態とか戦争等の有無とかが推測出来るし、人種的に骨格が違う場合はそれも非常に興味深い情報となる。
大学時代の手伝いでは白骨死体は重要すぎて触らせて貰えなかったが、大学院時代の手伝いではそこそこの数の白骨体を預かって細心の注意を払って土を払い、傷やその他の特徴を分類・記録したものだ。
「そうか。
そうなると、俺よりも死体を見た数は多いのかもね」
小さく笑いながらウィルが魔術で生み出した光源を洞窟の奥へ動かした。
ゆっくりとその後に付いて行く。
さっきの洞窟と似たような造りで、こちらの洞窟も入り口の傍に厩の様なスペースがあった。
「これって馬具か?」
なにやらボロボロになった皮と金属の塊に顔を近づけながらウィルが呟いた。
「そうなのかも。
ハラファに見せたら喜ぶわよ~。
あの地下街の中では家畜類は飼っていなかったのか、そういう家畜を使うための馬具と言った様な物は見つかっていないらしいから」
自分でもかがみ込んで、ウィルが見つけた物体を観察する。
う~。触ってみたい!!
でも、下手に触って崩壊しちゃったりしたらハラファ達に謝っても謝りきれないから、固定化の術を掛けてしっかり記録を取るまでは我慢した方が良いだろう。
「まあ、幾ら換気と浄化機能が優れた術が掛けてあっても、家畜が糞とかしまくっていたら臭いだろうし、あの街の人口に足りるだけの家畜を地下の洞窟の中で世話するのは非現実的だよな」
肩を竦めながらウィルが答えた。
「だけど馬具らしき物だけが床に置いてあるって不思議ね」
まあ、単に片付けていなかっただけなのかも知れないが。
「中に閉じ込められた人間が窒息死しなかったんだったら、馬の肉は食べたんじゃ無いか?
食べきれなかった部分とか骨は入り口付近の土砂の中に埋めた可能性が高いな。
・・・とは言え、馬の死体があったところで出てこれなかったら寿命的には誤算の範囲内だが」
ウィルが身も蓋もないことを言った。
うわぁ~。
ちょっと考えるだけで頭が痛くなりそう。
洞窟に閉じ込められるだけでも嫌だけど、その中で自分の愛馬を殺して食べなくてはならなくなり、更にそれでも足りなくて飢え死にするなんて、悲惨すぎる・・・。
「まあ、馬の死体を処理する時間があったんだったら、何だってこの洞窟に閉じ込められる羽目になったのかもどこかに書き付けてあるかも知れないな。
奥を探してみよう」
洞窟の奥に進んだところ・・・どうもここは宿屋だったのかも知れない。
もしくは街道を見回る兵士の宿泊施設かも?
ベッドらしき家具が崩れたような物が複数入っている部屋が幾つかあった。
しかも白骨死体がベッドの残骸の上にあるので、中に閉じ込められた人間は独りではなかったようだ。
「オーバスタ神殿の時代は街道沿いの宿場もこんな感じに洞窟の中に作っていたのかね?
・・・だとしたら入り口の辺の崩落は何かの事故だったのか?
この文明の固定化の術はかなり優れものだからそう簡単に事故で崩れるとも思いにくいが」
周りを見回しながらウィルが呟いた。
通常はこういう遺跡を見つけた時も、術の状態などの確認は魔術院から派遣された魔術師にやってもらわなければならないので、中々詳細が分からないし、派遣その物の手配に時間が掛るので答えが分かるのにも下手をすると何ヶ月もかかる。
初めて中を探険しながら、そういうことを確認出来るなんて本当に便利だわ~。
「この洞窟にも固定化の術が掛っているの?」
崩落の危険があるのだったら、中にこれだけ進んでから確認するのではちょっと遅いが。
まあ、ウィルが居たら例えもう一度入り口近辺が崩落しても、アスカに助けて貰えるかな?
「ああ、しっかし天井や壁の固定化の術は生きているぜ。
使われていないせいか、あのハラファ達が働いている遺跡の固定化の術よりも状態が良いぐらいだ」
ウィルが答え、更に奥に行くと・・・初めて机に座った状態(だと思われる)白骨死体があった。
その前に、本の様な物がある。
「う~ん、これに説明が書いてありそうだけど、触ったら崩壊するよなぁ。
あ~~~~、こんなことなら転記《デュプラ》の術を使う道具を鞄に入れておけば良かった!!」
細心の注意を払いながら本に息を吹きかけないように屈み込んで本を覗いていたウィルが一歩下がって頭をかきむしった。
ふふふ。
意外にウィルもこういう考古学・・・というかミステリーが好きよね。
「というか、貴方オーバスタ神殿の時代の文字って読めたの?」
何度かハラファ達の手伝いに来たとは聞いたが・・・その合間にオーバスタ神殿文明の文字も勉強したのだろうか?
だとしたら、今度フォラスタ文明の文字とかも教えたらもっと更に色々と手伝って貰えるかも知れない。
「あ」
そんなことを考えながらウィルに尋ねたら・・・ウィルの動きが止った。
「読めないんだった・・・。
つまり、例えこれを手に取って中を見れても意味ないな。
さっさとハラファとアルマを連れてきて、これの解析をさせよう!!」
ちゃちゃっと本や死体に固定化の術を掛けたウィルは、早速ハラファ達のいる発掘現場へ戻ろうとせかし始めた。
折角ピクニック用にランチも持ってきているんだけどねぇ。
とは言え、流石に自分でも白骨とはいえ死体があちこちにある洞窟でピクニックはないかな。
今日は早起きした甲斐があって、本当に良い物が見つかったわ!
これからもウィルを誘って遺跡にいかなきゃ!
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考古学者にとっては理想的なパートナーなウィルですw
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