シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

501 星暦554年 桃の月 30日 どうしようか?(8)

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「と言うわけで、魔力探知の魔道具と魔術回路は全部情報部に回収されちゃった。
シェイラ達が遺跡で固定化の術とか、人避けの術を見つけるのに役に立つかも~と思ってプレゼントしようと思っていたんだけどねぇ」
年末に家族と会うために王都に戻ってきたシェイラと街の中を歩き回りながら今回の開発の顛末を話した。

早いもんで、もう年末だ。
俺の方からヴァルージャまで行こうと思って居たのだが、シェイラの兄貴がやっと戻ってきたという事もあり、シェイラが王都に来たのでデートを兼ねて骨董市をふらふらと歩き回っている。

シェイラの兄貴はガルカ王国が負けたら直ぐに帰ってくるかと思っていたら、どうやらザルガ共和国への権力の移行プロセスで引き継ぎが後回しにされたらしく、なんと桃の月になってやっと戻って来たらしい。

しかも遅れた分の生活費まで請求されたそうだ。帰ってきたら売上ゼロどころか借金漬けだったので、完全に後継者レースからは脱落したそうだ。
まあ、シェイラの親父さんに身代金を払って貰うよりは安く上がったらしいが。

どちらにせよ、父親の決断を無視して勝手に南航路へ出て行った時点で見切りを付けられていたらしいからお先は真っ暗だな。
この後どうするんだろうね、あの兄貴?
弟の下で大人しく働けるタイプでもない気がするが、自分で事業を始めようにも元となる金がないし、既に借金があるのに更に家族が金を貸してくれるとも思えないが。
・・・取り敢えず父親が商会のトップである間に大人しく働いて、独り立ちできるぐらい金を貯めるんかな?
シェイラにウザいことを言ってこないよう、ちゃんと借金を返して将来に向けて貯金が出来ることを祈っておこう。

「へぇ~。
魔力探知機ねぇ。
それが一般的に知られるようになったら、商会とかにも需要が出てきそうね。
その頃にまた特許権を返して貰えないか交渉しておいたら?」
シェイラが何やらボロい木の置物(?)を手に取りながらコメントした。

なるほどね。
商会同士の情報戦にも役に立つか。
だけどなぁ。
ずっと誰かが張り付いて話を聞いているんでは、人件費が凄いことになりそうな気がする。

「微妙なところだな。
勝手に盗聴機なんぞ設置して話を盗み聞きする輩が横行したら問題だろうから、王宮の方で政府関係以外の使用は禁止する規制を作るんじゃ無いか?」
物を盗むのは違法なのだ。
情報を盗む道具を勝手に設置するのも違法にしなければ、それこそ娼館にでもこれを設置して脅迫のネタに使う奴も出てくるだろう。
王家にしたって、王宮とかプライベートな場所に盗聴機を付けられたとして、それを見つけても設置した人間を罰せられなかったら大変すぎるだろうし。

「まあ、確かにねぇ。
そうじゃなくても商業ギルドの方で会員に国内での使用を禁じるかも。
お互いに盗聴しまくるなんてことになったら面倒なだけですもの」
手に取った物を戻しながら、シェイラが足を進めた。

「まあ、取り敢えず思いがけず大金が一気に手に入ったから、また暫く遊ぼうかという話になっているんだ。
と言うか、王太子の結婚式のお祝い騒ぎでの売上アップに対応する為にアレクはシェフィート商会で手伝うことになっているし、王太子の結婚式が終わったらシャルロが自分の結婚式をして新居へ引っ越すことになるからどちらも忙しいんだよね。
だから来年の赤の月の終わりぐらいまで、適当に遊んでろって言われたからシェイラの手伝いをしようかと思って」
下手に王都に居て軍なり盗賊《シーフ》ギルドなりから依頼を受ける羽目になったら面倒だしね。

「あら。
それは嬉しいわね~。
どこで手伝って貰うか、良~く考えておかないと!」
嬉しげに笑いながらシェイラが俺の手を取った。

・・・俺と一緒に居られるのが嬉しいんだよな?
手伝い要員が増えたことに関してより喜ばれているような気がしないでも無いが・・・そこは考えないでおこう。


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これで今回の魔力探知機の話は終わりです。

早いものでもう卒業後3年目が終わりです。
現実と季節がずれまくっているせいで年末感が全然無いんですけどね~。
これからもよろしくお願い致しますw
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