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魔術学院3年目
099 星暦551年 紺の月 17日 作戦会議
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俺たちって実は凄く運がいいのかもしれない。
去年の中休みにはシャルロの親戚の家の遺跡でも新しい部分を見つけたし、今回もかなり行き当たりばったりだったのにそれなりな船を発見した。
誰の日頃の行いがいいからなのか、興味が湧くところだ。
◆◆◆
船はイーザン号ではなく、200年ほど前に沈んだ豪華客船アルタルト号という名前の船のようだった。
シャルロが貨物フロアで最初に目撃した花瓶は確かに陶磁器だったのだが、貨物庫に入っていた物は陶磁器だけではなく麻袋に入った有機物や金属の武器・魔具といった様々な貨物の一つでしかなかったのだ。
ダメになっている物も多かったが色々な種類の貨物が十分利用可能な状態で残っていたのは嬉しい発見だった。
3刻かけて見て回ってもまだ貨物フロアの目録すら出来ていないぐらいだ。
何があるのか分かった状態で探した方が効率的なので、船の正体を調べる為に『どうやらイーサン号ではない』ということがはっきりした時点でシャルロだけ外に出て船首像をスケッチした。
俺の絵を描く才能はかなり寂しいものがあるし、アレクも俺よりほんの少しマシと言う程度。
消去法で嗜みとして習ってきたシャルロが抜擢された訳だ。
で、そのスケッチを持って夕方に引き揚げ屋協会に持ってきて資料を探したところ、船首像から見て豪華客船アルタルト号であるようだという結論に達した。
「この目録にあるものの半分しか残っていないにしても、あと2日でどうこう出来るレベルの発見じゃないね、これ」
ずっしりと分厚いアルタルト号積み荷目録をめくりながらシャルロがバタンとベッドに倒れ込む。
「しかも豪華客船というなら誰が乗っていたのかを調べてその連中が持っていたと推定される宝石とかもリストアップし始めたら更にきりが無くなるな」
不特定多数の金持ちが集まる場所で荒稼ぎする場合、参加者の持ち主を予め調べておくのが常道だ。
盗む訳じゃあないが船室に残っているかもしれない宝石とかを探すのだったらそれなりのリサーチが必要だ。
「私たちの手でとことん調べたいか、それともこの中休みの間だけ楽しんで後は人に任せるか、決める必要があるな」
アレクが冷静に指摘した。
「人に任せて希少価値の高い装飾品や骨董品をくすねられたら不愉快だが、俺たちがこれだけのサイズの船の中身を全部調べて回ろうと思ったら何年かかるか知れたものではないな」
ネックレスやピアス程度だったら容易にポケットに隠して持ち出せる。
だとしたら外部の人に頼んだら余程念入りに対応策を講じておかなければ確実にいくつかの装飾品は参加者のポケットに流れ込むだろう。
かなり不愉快だが・・・。
かといってこのサイズの船を俺たち3人で学生生活をちゃんと送りつつ調べるのは非現実的だろう。
そこまで興味がある訳でもないし。
現実的な話として、この船の発見は俺の経済的状況を一転させた。
引き揚げの法律として、200年も前の船から発見された物は全て俺たちに所有権が発する。家宝とかだったらその子孫が優先的に買う権利はあるものの、無料で引き渡しを請求することはできない。
見つかるであろう宝石を考えなくても既に今日見かけた陶磁器や貴金属の骨董品だけでもオークションにかけたらそれなりの価値がある。
一生左うちわで生きていける程ではないが、普通の家を一つ買って更に数年間分の生活費になるぐらいの資金は出来るだろう。
アレクとシャルロは元々金に困っていた訳ではないし、彼らが必要とする『生活費』のレベルは俺とは全然違うが、『自由に使える資金』が増えたことに変わりは無い。
「こういう時の手続きってどうするのか、知っている?」
シャルロが誰にともなく尋ねた。
なんか。
発見したことは凄く嬉しいしワクワクしたが・・・。
まさかこんな大きな船を本当に発見するとは思っていなかったのでこれからどうするのかを考えると疲れた感じがしてきた。
「どこかに倉庫を借りて船をそこに持って行く必要があるだろうな」
アレクが紙にリストを作り始めた。
「歴史学者でも頼んで船にあった物の目録を作る必要があるね」
「倉庫に術をかけてそこからは何も持ちだせないようにしよう」
ちなみに、最初の台詞はシャルロ、次が俺。
ま、想像は付くだろうけど。
「後はまとめてか定期的にか、それらの物を売りに出す、と」
アレクが紙に書き足していく。
「どうせなら休養日には自分で探索の手伝いもしたいから、倉庫も王都の方で借りた方がいいな」
「いいね。あと、警備員も雇わないと」
・・・意外なことに、この現実的な提案はシャルロからだった。
「倉庫って1日か2日で借りられるのか?
まあ、こんなところに沈んでいる限り俺たち以外には船の探索は出来ないだろうが、出来ればこの中休みの間に船を倉庫まで持って行ってしまいたいところだけど」
アレクが暫く考えてから頭を横に振った。
「厳しいな。しかも借りた後に持ちだし防止の術をかけ、警備員を雇うとなったら2日では絶対に無理だ。とりあえず、明日は1日探索を楽しんで、明後日は王都に戻ってそう言う手続きをしないか?次の休養日までには全部そろうだろうからその時に船を持ってこよう」
「そうだね」「ん」
ということで、明日は船の中をもっと調べるぞ~!
去年の中休みにはシャルロの親戚の家の遺跡でも新しい部分を見つけたし、今回もかなり行き当たりばったりだったのにそれなりな船を発見した。
誰の日頃の行いがいいからなのか、興味が湧くところだ。
◆◆◆
船はイーザン号ではなく、200年ほど前に沈んだ豪華客船アルタルト号という名前の船のようだった。
シャルロが貨物フロアで最初に目撃した花瓶は確かに陶磁器だったのだが、貨物庫に入っていた物は陶磁器だけではなく麻袋に入った有機物や金属の武器・魔具といった様々な貨物の一つでしかなかったのだ。
ダメになっている物も多かったが色々な種類の貨物が十分利用可能な状態で残っていたのは嬉しい発見だった。
3刻かけて見て回ってもまだ貨物フロアの目録すら出来ていないぐらいだ。
何があるのか分かった状態で探した方が効率的なので、船の正体を調べる為に『どうやらイーサン号ではない』ということがはっきりした時点でシャルロだけ外に出て船首像をスケッチした。
俺の絵を描く才能はかなり寂しいものがあるし、アレクも俺よりほんの少しマシと言う程度。
消去法で嗜みとして習ってきたシャルロが抜擢された訳だ。
で、そのスケッチを持って夕方に引き揚げ屋協会に持ってきて資料を探したところ、船首像から見て豪華客船アルタルト号であるようだという結論に達した。
「この目録にあるものの半分しか残っていないにしても、あと2日でどうこう出来るレベルの発見じゃないね、これ」
ずっしりと分厚いアルタルト号積み荷目録をめくりながらシャルロがバタンとベッドに倒れ込む。
「しかも豪華客船というなら誰が乗っていたのかを調べてその連中が持っていたと推定される宝石とかもリストアップし始めたら更にきりが無くなるな」
不特定多数の金持ちが集まる場所で荒稼ぎする場合、参加者の持ち主を予め調べておくのが常道だ。
盗む訳じゃあないが船室に残っているかもしれない宝石とかを探すのだったらそれなりのリサーチが必要だ。
「私たちの手でとことん調べたいか、それともこの中休みの間だけ楽しんで後は人に任せるか、決める必要があるな」
アレクが冷静に指摘した。
「人に任せて希少価値の高い装飾品や骨董品をくすねられたら不愉快だが、俺たちがこれだけのサイズの船の中身を全部調べて回ろうと思ったら何年かかるか知れたものではないな」
ネックレスやピアス程度だったら容易にポケットに隠して持ち出せる。
だとしたら外部の人に頼んだら余程念入りに対応策を講じておかなければ確実にいくつかの装飾品は参加者のポケットに流れ込むだろう。
かなり不愉快だが・・・。
かといってこのサイズの船を俺たち3人で学生生活をちゃんと送りつつ調べるのは非現実的だろう。
そこまで興味がある訳でもないし。
現実的な話として、この船の発見は俺の経済的状況を一転させた。
引き揚げの法律として、200年も前の船から発見された物は全て俺たちに所有権が発する。家宝とかだったらその子孫が優先的に買う権利はあるものの、無料で引き渡しを請求することはできない。
見つかるであろう宝石を考えなくても既に今日見かけた陶磁器や貴金属の骨董品だけでもオークションにかけたらそれなりの価値がある。
一生左うちわで生きていける程ではないが、普通の家を一つ買って更に数年間分の生活費になるぐらいの資金は出来るだろう。
アレクとシャルロは元々金に困っていた訳ではないし、彼らが必要とする『生活費』のレベルは俺とは全然違うが、『自由に使える資金』が増えたことに変わりは無い。
「こういう時の手続きってどうするのか、知っている?」
シャルロが誰にともなく尋ねた。
なんか。
発見したことは凄く嬉しいしワクワクしたが・・・。
まさかこんな大きな船を本当に発見するとは思っていなかったのでこれからどうするのかを考えると疲れた感じがしてきた。
「どこかに倉庫を借りて船をそこに持って行く必要があるだろうな」
アレクが紙にリストを作り始めた。
「歴史学者でも頼んで船にあった物の目録を作る必要があるね」
「倉庫に術をかけてそこからは何も持ちだせないようにしよう」
ちなみに、最初の台詞はシャルロ、次が俺。
ま、想像は付くだろうけど。
「後はまとめてか定期的にか、それらの物を売りに出す、と」
アレクが紙に書き足していく。
「どうせなら休養日には自分で探索の手伝いもしたいから、倉庫も王都の方で借りた方がいいな」
「いいね。あと、警備員も雇わないと」
・・・意外なことに、この現実的な提案はシャルロからだった。
「倉庫って1日か2日で借りられるのか?
まあ、こんなところに沈んでいる限り俺たち以外には船の探索は出来ないだろうが、出来ればこの中休みの間に船を倉庫まで持って行ってしまいたいところだけど」
アレクが暫く考えてから頭を横に振った。
「厳しいな。しかも借りた後に持ちだし防止の術をかけ、警備員を雇うとなったら2日では絶対に無理だ。とりあえず、明日は1日探索を楽しんで、明後日は王都に戻ってそう言う手続きをしないか?次の休養日までには全部そろうだろうからその時に船を持ってこよう」
「そうだね」「ん」
ということで、明日は船の中をもっと調べるぞ~!
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