シーフな魔術師

極楽とんぼ

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魔術学院3年目

097 星暦551年 紺の月 17日 追い剥ぎ注意

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商船で見つけた古貨幣は引き揚げ屋サルベージャー協会に持っていったらそれなりの値段で売れた。
本当は売らないで記念に持っていても良かったのだが・・・鑑定を頼んだら相手がかなり興奮しちゃって売らないとは言えない雰囲気になってしまった。
その後はどこであれを入手したのかとひたすら煩く聞かれたし。

思っていたよりも昔の船だったようだ。
最近は目新しい引き揚げ屋サルベージャーも無く、協会としては新しい船が発見されたかと興奮した訳だ。
だけどねぇ。
普通の人には取りに行けないところにあるから、喜んでもしょうがないがないんだけど。
説明するのも面倒だったので適当に誤魔化して出てきたら・・・。

なんか怪しげな連中に後をつけられた。
宿までつけられたので、寝る際にはそれなりに念入りに結界を張ったが寝込みは襲われなかった。
代わりに今朝もつけられている。

引き揚げ屋サルベージャーって漁師の副業なんじゃなかったのか。海賊とか強盗の副業だとは聞いていなかったぞ。

「昨日、引き揚げ屋サルベージャー協会の後からつけてきた連中がまだ付いてきているんだが・・・俺たちが魔術師だと分かっても追い剥ぎしようとするかな?」

これが下町で、それなりに価値があるモノを持っていると思われたら、ガキの魔術師なんか当然襲われる。
幾ら魔術師に色んな能力があるとは言っても、経験の無いガキなんて接近戦に持ち込めばあっと言うまに頭を殴って終わりだ。
殺したら後々面倒だが、後がつかないように強盗するぐらいのことは当然行われる。

問題は、港町のダッチャスも下町と同じぐらい危険かというところだ。

「協会からつけてきているのか?」
アレクが顔をしかめた。

「昨日襲ってくるかと思ってそれなりに念入りに結界と罠を張っていたんだけどね。どうやら俺たちが何かを見つけたらそれを頂戴しようと思っているんじゃないか?」

「しまったね。距離が短くてもアレクかウチの家紋入りの馬車を使うべきだった」
シャルロがため息をつく。

「つまり、貴族や大商人を襲うことは無いが魔術師の卵ならターゲットになるんだ?」

アレクが頷く。
「これで超一流の宿にでも泊っていたら金持ちの道楽として警戒したかもしれないんだがね。なまじ実用的な場所に泊ってしまったのも仇になったかもしれないな」

「じゃあ、今日は探索が終わったら街の中心部の傍から出ることにしよう。変な注目を集めるかもしれないが追い剥ぎに合うよりはましだろう。明日はアレクの馬車を使えば大分リスクは下がるんだろ?」

「ああ」

ここが沖合の探索ポイントから宿への一番短距離ルートなんだが、しょうがない。
無駄な戦闘に体力・魔力を削ぐのはバカらしいし、乱闘騒ぎで逮捕されても困る。

◆◆◆ 


時間がもったいなかったのでズルをして昨日の船のところまで一気に清早に連れて行って貰い、探索を始めた。

昨日の船の経験から、実は船は俺たちが無意識に考えていたよりも大きいはずということで、『異物』ではなく単なる『地形』かもしれないものでも出っ張っているモノには全て水打ヒタンで表面を確認することにした。

一々出っ張っている場所全てに術をかけ、砂埃モドキが収まるのを待つ訳だから時間がかかってしょうがない。

でも、大きな船を見つけようと思ったらそのくらいはしかたがない。
・・・見つかればいいんだけどね。

昼食までにまたもう一つ小さめの船を見つけたがやはりあまり得るものは無かった。
小さい船は短距離の食料関係の輸送に使われているみたいだ。

ま、あまり得るものは無かったもののそれなりに面白いからいいんだけどね。

昼食を終わらせ、一度海面まで上がって現在地を確認して更に北西へ進む。
気分的にはそこそこ進み、いい加減その方角を諦めて違う方向へ向かおうかと相談し始めた時。
岩陰と思っていたモノに当てた水打ヒタンの下から船首像が出てきた。


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