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魔術学院3年目
088 星暦551年 赤の月 9日 本家
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・・・俺も老後の趣味に関してそれなりに考えておこっと。
生きるのが嫌になって緩慢な自殺を選ぶのはちょっと哀しいぞ。
◆◆◆
ガイフォード本家の邸宅は大きかった。
バカみたいに。
庭は訓練用なスペースが殆どで庭園はお情け程度にしかないし、中も居住用が殆どらしくあまり華美な装飾はしていなかったが・・・。
何だってこんなに大きい訳?
「・・・大きいですね」
思わず、感想がこぼれ出た。
「軍人生活は移動や移転が多いからな。一々個人の屋敷を構えても住めなくなることが多い。だからここに住む一族の人間が多いんだ」
軍人が多いから集団生活も気にならないんかね?
とりあえず、邪魔をされないようにと言うことでダレンの部屋に肖像画を持ち込み、その弱った従兄弟に来てもらうことにした。
「ちょっと生命力を吸われると思うんですが、暫く我慢してもらえると思いますか?命にかかわりそうでしたら直ぐに出て行ってもらいますが、出来れば術を起動させておきたいので」
その従兄弟の部屋にダレンと行って説明した。
つうか、怪我・病人の部屋に赤の他人を連れていくか?
ちょっと無神経な気がするぞ。
「分かった。死ぬのは困るが少し弱る程度であの絵の問題が分かるなら我慢しよう」
従兄弟どのが承諾した。
流石、軍属一族。のりが違うね~。
先にまずダレンに肖像画の傍に立ってもらった。
心眼で見ていると、微かに絵から魔力が漏れてくる。
・・・保護の術?
蜘蛛の糸のように薄く細い術ながらダレンに保護の術が掛けられていく。
生命力を吸い取ると言うのはまだしも、保護の術をかける呪なんて初めて視たぞ。
「すいません、従兄弟さんを呼ぶ前に、誰か一族では無い人間を呼んでいただけます?
普通の健康状態なのと風邪をひいている人とがいたら一番良いんですけど」
少し難しい顔をしたものの、ダレンが執事と相談し、メイドを一人と、住み込みの下男で風邪で休んでいた男を一人連れてきた。
流石、巨大邸宅。風邪をひいた人間なんて言う条件で探してもちゃんと当てはまる人がいるんだねぇ。
メイドと下男はダレンの部屋に呼び出され、肖像画に触るように言われて不思議そうな顔をしていたが何も言わずに大人しく触れてくれた。
何も起きない。
ふむ。
2人を帰してから集中して術を読んでみた。
・・・やっぱり、かな?
「従兄弟どのに生贄実験をしてもらわないと確実には言えませんが、この肖像画には特殊な術がかかっているようですね。
弱った一族の生命力を吸い取って、健康な一族の人間へ保護の術をかけているようです。だから怪我や年で一線を引いた一族の人間が早く亡くなるんだと思います。その代わり、現役の人間は戦場で死ににくくなるんでしょうね。
・・・解除しちゃっていいんですか?」
ある意味、ガイフォード家の人間にとっては理想的な術と言えなくもない。
体が自由に動かなくなったら人生の楽しみなんて無いと思う武芸バカが多いらしいし。
ダレンは一瞬、あっけにとられたように俺を見てから、肖像画を凝視した。
「一族の弱った人間を糧にして現役の人間を守っていたのか、これは??」
「だと思います。一族以外の人間を糧にしようとしないだけ良心的だと思いますし、もしかしたら最初は一族全員の人間が合意していたのかも知れませんよ?老いて自由にならない体を引きずりながら長生きなんてしたくないという希望をした人間だけが本家に老後も住むというような決まりになっているのかもしれませんし」
勝手に若いダレンが解除するのもどうかという気がしてきた。
ま、俺の依頼主は彼だから解けって言うなら解除するけどさ。
つうか、一族の中でもリタイヤしたら教わる秘密だったりして。
「どのくらいの保護なんだ?普通に俺やお前が誰かにかけるよりも強いものなのか?」
「まさか。極々弱いモノですよ。自分や家族に掛けられているのにあなたが気付かない程度なんですから。
だから、ある意味保護の術そのものは大したことは無いんです。ちょっとお金を払えば簡単に同様以上の保護の術を魔術師に掛けてもらえるでしょう」
貴族になったガイフォードの初代がそんな魔術師に払う金をケチって肖像画にこれほど複雑な術をかけさせたとは考えにくい。
となると、この肖像画の本当の目的は一族の保護よりも老後を短くする選択肢という気がしてきた。
魔術師や学者ならかなり充実した老後が送れるだろうが、自分の武勇が自慢なタイプの軍人には体がだんだん自由が効かなくなってくる老いと言うのは耐え難いものがあるのかもしれない。
難しい顔をして考え込んでいたダレンが立ち上がった。
「悪いが、今日は帰ってくれないか?父と祖父に、このことを知っていたのか確認してこれをどうするのか相談したい」
「明日の休養日を過ぎたら、次の休養日かその前日まで待ってもらうことになりますよ?」
「構わん」
ま、確かにね。今まで何百年も飾ってあった絵なんだ。急がなくてもいいだろう。
健康なダレンの部屋に置いておく分には誰も生命力を吸われないだろうし。
生きるのが嫌になって緩慢な自殺を選ぶのはちょっと哀しいぞ。
◆◆◆
ガイフォード本家の邸宅は大きかった。
バカみたいに。
庭は訓練用なスペースが殆どで庭園はお情け程度にしかないし、中も居住用が殆どらしくあまり華美な装飾はしていなかったが・・・。
何だってこんなに大きい訳?
「・・・大きいですね」
思わず、感想がこぼれ出た。
「軍人生活は移動や移転が多いからな。一々個人の屋敷を構えても住めなくなることが多い。だからここに住む一族の人間が多いんだ」
軍人が多いから集団生活も気にならないんかね?
とりあえず、邪魔をされないようにと言うことでダレンの部屋に肖像画を持ち込み、その弱った従兄弟に来てもらうことにした。
「ちょっと生命力を吸われると思うんですが、暫く我慢してもらえると思いますか?命にかかわりそうでしたら直ぐに出て行ってもらいますが、出来れば術を起動させておきたいので」
その従兄弟の部屋にダレンと行って説明した。
つうか、怪我・病人の部屋に赤の他人を連れていくか?
ちょっと無神経な気がするぞ。
「分かった。死ぬのは困るが少し弱る程度であの絵の問題が分かるなら我慢しよう」
従兄弟どのが承諾した。
流石、軍属一族。のりが違うね~。
先にまずダレンに肖像画の傍に立ってもらった。
心眼で見ていると、微かに絵から魔力が漏れてくる。
・・・保護の術?
蜘蛛の糸のように薄く細い術ながらダレンに保護の術が掛けられていく。
生命力を吸い取ると言うのはまだしも、保護の術をかける呪なんて初めて視たぞ。
「すいません、従兄弟さんを呼ぶ前に、誰か一族では無い人間を呼んでいただけます?
普通の健康状態なのと風邪をひいている人とがいたら一番良いんですけど」
少し難しい顔をしたものの、ダレンが執事と相談し、メイドを一人と、住み込みの下男で風邪で休んでいた男を一人連れてきた。
流石、巨大邸宅。風邪をひいた人間なんて言う条件で探してもちゃんと当てはまる人がいるんだねぇ。
メイドと下男はダレンの部屋に呼び出され、肖像画に触るように言われて不思議そうな顔をしていたが何も言わずに大人しく触れてくれた。
何も起きない。
ふむ。
2人を帰してから集中して術を読んでみた。
・・・やっぱり、かな?
「従兄弟どのに生贄実験をしてもらわないと確実には言えませんが、この肖像画には特殊な術がかかっているようですね。
弱った一族の生命力を吸い取って、健康な一族の人間へ保護の術をかけているようです。だから怪我や年で一線を引いた一族の人間が早く亡くなるんだと思います。その代わり、現役の人間は戦場で死ににくくなるんでしょうね。
・・・解除しちゃっていいんですか?」
ある意味、ガイフォード家の人間にとっては理想的な術と言えなくもない。
体が自由に動かなくなったら人生の楽しみなんて無いと思う武芸バカが多いらしいし。
ダレンは一瞬、あっけにとられたように俺を見てから、肖像画を凝視した。
「一族の弱った人間を糧にして現役の人間を守っていたのか、これは??」
「だと思います。一族以外の人間を糧にしようとしないだけ良心的だと思いますし、もしかしたら最初は一族全員の人間が合意していたのかも知れませんよ?老いて自由にならない体を引きずりながら長生きなんてしたくないという希望をした人間だけが本家に老後も住むというような決まりになっているのかもしれませんし」
勝手に若いダレンが解除するのもどうかという気がしてきた。
ま、俺の依頼主は彼だから解けって言うなら解除するけどさ。
つうか、一族の中でもリタイヤしたら教わる秘密だったりして。
「どのくらいの保護なんだ?普通に俺やお前が誰かにかけるよりも強いものなのか?」
「まさか。極々弱いモノですよ。自分や家族に掛けられているのにあなたが気付かない程度なんですから。
だから、ある意味保護の術そのものは大したことは無いんです。ちょっとお金を払えば簡単に同様以上の保護の術を魔術師に掛けてもらえるでしょう」
貴族になったガイフォードの初代がそんな魔術師に払う金をケチって肖像画にこれほど複雑な術をかけさせたとは考えにくい。
となると、この肖像画の本当の目的は一族の保護よりも老後を短くする選択肢という気がしてきた。
魔術師や学者ならかなり充実した老後が送れるだろうが、自分の武勇が自慢なタイプの軍人には体がだんだん自由が効かなくなってくる老いと言うのは耐え難いものがあるのかもしれない。
難しい顔をして考え込んでいたダレンが立ち上がった。
「悪いが、今日は帰ってくれないか?父と祖父に、このことを知っていたのか確認してこれをどうするのか相談したい」
「明日の休養日を過ぎたら、次の休養日かその前日まで待ってもらうことになりますよ?」
「構わん」
ま、確かにね。今まで何百年も飾ってあった絵なんだ。急がなくてもいいだろう。
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