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魔術学院2年目
081 星暦550年 桃の月 7日 成功!
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ふふふ。
今度の夏が楽しみだ。今迄に比べてダントツに快適になる・・・はず!
◆◆◆
「やはり赤いな」
凍結庫からのエネルギーを蓄積させた魔石にガラスを繋いで魔力を放出させた結果を見て、アレクがコメントした。
「そんでもってこっちはウィルが言った通り、灰色だね」
先日作った保存庫の術回路にガラスをあてて色を確かめていたシャルロが報告する。
「問題は、いかにしてこの赤を無色か灰色に変えるか・・・だな」
作業机の上には色んな属性を付与する術回路が置いてある。
(緑色のも保健室にあった殺菌用の魔具についていた術回路を参考したら出来た;探すのに苦労したけど)
だが、属性を削除する術回路は見つかっていない。
「理論的には属性を付与できるんだから削除することだって出来そうなものだよな」
試しに熱の属性を加える術回路を逆向きに魔石に繋ぎ、ガラスで魔力を放出してみる。
「・・・ま、そこまで容易に出来るとは思わなかったが」
赤さが却って増したように見えるガラスを見てアレクが苦笑いした。
停止系の属性を付与する術回路を繋ぐと・・・魔力が混ざり合った変な色になった。
「うまい具合に属性が変化しないようだね。もっと沢山属性を付与する術回路を使ったらどうなるのかな?」
属性を付与する術回路は単純かつ短い。これを沢山繋げても対して魔力の浪費にはならないかもしれない。3人で一つずつ術回路を作り、4つほど繋げてみたが・・・。
「奇麗に染まらないな」
ため息をつきながら俺がコメントした。
大分灰色の割合が増えるものの、まだ3分の1ぐらいは赤な印象だ。
「じゃあ、他の属性も全部足してみたら?全部で打ち消し合ったりしないかな?」
シャルロの提案に青(移動系)と緑(生命系)の属性付与の術回路も足してみたが・・・。
「不気味な色になっただけだな」
殆ど黒に見える不気味な光り方をしているガラスを見てアレクがため息をついた。
「絵具って黄色と青を足すと緑になるし、赤と青を足すと奇麗な紫になるのにねぇ」
残念そうにシャルロが呟いた。
「紫だとどうなるか、やってみるか」
半ば自棄になりながら移動系の属性付与の術回路を最初の魔石に繋いでガラスに放出させてみる。
意外と奇麗な紫になった。
「もう少し青の属性付与の術回路を作って繋いでみよう」
アレクの提案通り、更に3つほど青の術回路を繋いでみる。
「意外とかなり素直に青になってきたね。これだったら夏にウィルが作った送風機に使えそうじゃない?」
シャルロが興味深げにガラスの様子を見ながらコメントした。
俺はそれ程魔力の出力が無い。だからシャルロのように冷却術を一晩中部屋にかけるのは無理だし、アレクのように凍結庫を買ってきて部屋で開けっ放しにしておく資金力も無い。
だから夏に、あまりの暑さに送風機を作ろうと扇を自動的に仰ぐ魔具を作ってみたのだ。
それなりに魔力を食うので日中かなりの時間を魔石に魔力を注ぎ込む羽目になったモノだ。
あれを凍結庫と繋いで使ったら凍結庫の魔石だけで一石二鳥になるかも?
「ちょっと取ってくるから適当に続けてくれ」
思わず部屋まで走って送風機を取りに戻った。
だって、夏は暑いんだよ!
今は冬だが、あと数カ月したらまた暑くなる。
凍結庫のエネルギーで送風機も動かせるとなったら保存庫を動かせるよりも俺にとっては重要かもしれない。
理想としてはどっちにもつなげることだけど。
一番暑い時には送風機に、それ以外の時は保存庫にって感じに臨機応変に変えられることが理想だな。
送風機を持って帰ってきたら、ガラスの色がかなり灰色に近い色になっていた。
「お!!どうやったんだ?」
にやりとアレクが得意そうに笑った。
「青に変えた後に灰色の属性付与を繋いでみると3つほどでこんな感じになった。熱系統が停止系と特に相性が悪かったみたいだな。一度移動系に変えるとそこまで絶望的に悪くないみたいだ」
まず、移動系の属性付与の回路を3つほど繋いでから送風機へ魔力を供給させてみた。
・・・動く。
ふふふふ。
いい感じじゃないか。
魔力の消費もそれ程悪くない。
よし、次の夏はこれで決まりだな!
「悪くない感じじゃないか」
送風機の風を手に当てながら、アレクがコメントした。
「じゃあ、次はこれね!」
シャルロがさっさと送風機を外して停止系の属性付与の術回路と保存庫を繋ぐ。
待ちきれないみたいだねぇ。
◆◆◆
結論としては・・・中々いい感じに動いた。
比較する為に直接普通に保存庫を凍結庫に繋いだところ、3倍以上魔石がもった。
早速シャルロは術回路を固定して部屋に保存庫《フリッジ》・凍結庫を設置。
ちなみにアレクのアドバイスで、この保存庫・凍結庫と俺の保存庫・送風機のアイディアは魔術院へ特許申請してみた。ま、実際にはシェフィート商会が俺たちの代理でやってくれたんだけどさ。
単純な工夫なので完全な独占は出来ないが、アイディアを利用する場合は多少の手数料は貰えるらしい。
シェフィート商会では需要が特に大きくなる夏に向けて本格的な商品化を始めるそうだ。
俺たち3人組の、初の商業的成功かも?
今度の夏が楽しみだ。今迄に比べてダントツに快適になる・・・はず!
◆◆◆
「やはり赤いな」
凍結庫からのエネルギーを蓄積させた魔石にガラスを繋いで魔力を放出させた結果を見て、アレクがコメントした。
「そんでもってこっちはウィルが言った通り、灰色だね」
先日作った保存庫の術回路にガラスをあてて色を確かめていたシャルロが報告する。
「問題は、いかにしてこの赤を無色か灰色に変えるか・・・だな」
作業机の上には色んな属性を付与する術回路が置いてある。
(緑色のも保健室にあった殺菌用の魔具についていた術回路を参考したら出来た;探すのに苦労したけど)
だが、属性を削除する術回路は見つかっていない。
「理論的には属性を付与できるんだから削除することだって出来そうなものだよな」
試しに熱の属性を加える術回路を逆向きに魔石に繋ぎ、ガラスで魔力を放出してみる。
「・・・ま、そこまで容易に出来るとは思わなかったが」
赤さが却って増したように見えるガラスを見てアレクが苦笑いした。
停止系の属性を付与する術回路を繋ぐと・・・魔力が混ざり合った変な色になった。
「うまい具合に属性が変化しないようだね。もっと沢山属性を付与する術回路を使ったらどうなるのかな?」
属性を付与する術回路は単純かつ短い。これを沢山繋げても対して魔力の浪費にはならないかもしれない。3人で一つずつ術回路を作り、4つほど繋げてみたが・・・。
「奇麗に染まらないな」
ため息をつきながら俺がコメントした。
大分灰色の割合が増えるものの、まだ3分の1ぐらいは赤な印象だ。
「じゃあ、他の属性も全部足してみたら?全部で打ち消し合ったりしないかな?」
シャルロの提案に青(移動系)と緑(生命系)の属性付与の術回路も足してみたが・・・。
「不気味な色になっただけだな」
殆ど黒に見える不気味な光り方をしているガラスを見てアレクがため息をついた。
「絵具って黄色と青を足すと緑になるし、赤と青を足すと奇麗な紫になるのにねぇ」
残念そうにシャルロが呟いた。
「紫だとどうなるか、やってみるか」
半ば自棄になりながら移動系の属性付与の術回路を最初の魔石に繋いでガラスに放出させてみる。
意外と奇麗な紫になった。
「もう少し青の属性付与の術回路を作って繋いでみよう」
アレクの提案通り、更に3つほど青の術回路を繋いでみる。
「意外とかなり素直に青になってきたね。これだったら夏にウィルが作った送風機に使えそうじゃない?」
シャルロが興味深げにガラスの様子を見ながらコメントした。
俺はそれ程魔力の出力が無い。だからシャルロのように冷却術を一晩中部屋にかけるのは無理だし、アレクのように凍結庫を買ってきて部屋で開けっ放しにしておく資金力も無い。
だから夏に、あまりの暑さに送風機を作ろうと扇を自動的に仰ぐ魔具を作ってみたのだ。
それなりに魔力を食うので日中かなりの時間を魔石に魔力を注ぎ込む羽目になったモノだ。
あれを凍結庫と繋いで使ったら凍結庫の魔石だけで一石二鳥になるかも?
「ちょっと取ってくるから適当に続けてくれ」
思わず部屋まで走って送風機を取りに戻った。
だって、夏は暑いんだよ!
今は冬だが、あと数カ月したらまた暑くなる。
凍結庫のエネルギーで送風機も動かせるとなったら保存庫を動かせるよりも俺にとっては重要かもしれない。
理想としてはどっちにもつなげることだけど。
一番暑い時には送風機に、それ以外の時は保存庫にって感じに臨機応変に変えられることが理想だな。
送風機を持って帰ってきたら、ガラスの色がかなり灰色に近い色になっていた。
「お!!どうやったんだ?」
にやりとアレクが得意そうに笑った。
「青に変えた後に灰色の属性付与を繋いでみると3つほどでこんな感じになった。熱系統が停止系と特に相性が悪かったみたいだな。一度移動系に変えるとそこまで絶望的に悪くないみたいだ」
まず、移動系の属性付与の回路を3つほど繋いでから送風機へ魔力を供給させてみた。
・・・動く。
ふふふふ。
いい感じじゃないか。
魔力の消費もそれ程悪くない。
よし、次の夏はこれで決まりだな!
「悪くない感じじゃないか」
送風機の風を手に当てながら、アレクがコメントした。
「じゃあ、次はこれね!」
シャルロがさっさと送風機を外して停止系の属性付与の術回路と保存庫を繋ぐ。
待ちきれないみたいだねぇ。
◆◆◆
結論としては・・・中々いい感じに動いた。
比較する為に直接普通に保存庫を凍結庫に繋いだところ、3倍以上魔石がもった。
早速シャルロは術回路を固定して部屋に保存庫《フリッジ》・凍結庫を設置。
ちなみにアレクのアドバイスで、この保存庫・凍結庫と俺の保存庫・送風機のアイディアは魔術院へ特許申請してみた。ま、実際にはシェフィート商会が俺たちの代理でやってくれたんだけどさ。
単純な工夫なので完全な独占は出来ないが、アイディアを利用する場合は多少の手数料は貰えるらしい。
シェフィート商会では需要が特に大きくなる夏に向けて本格的な商品化を始めるそうだ。
俺たち3人組の、初の商業的成功かも?
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