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魔術学院2年目
076 星暦550年 桃の月 6日 凍結庫《フリザー》
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一口で金持ちと言っても、歴史のある家は成り金に比べて子供へ経済観念を教える為のスタンスがしっかりしているようだ。
それでも、あれだけお菓子好きのシャルロが凍結庫を『自分で作りなさい』と貰えていなかったというのはちょっと意外・・・。お菓子が絡んだあいつのおねだりに負けないなんて、流石侯爵家!
◆◆◆
火器は特に問題なくあっさり完成した。
次は凍結庫だ。
「機能は・・・熱を抜き取る、魔石にエネルギーを蓄積させる、魔石の蓄積容量が限界に近づいたら熱を抜き取る機能を止める、の3つだな。とりあえず火器に繋ぐんだったらエネルギーはそのまま蓄積してもいいと。何か提案ある?」
教室の前に張り出してある術回路を見ながら二人に聞いた。
「急に凍結庫が止まったら困るから、魔石の蓄積容量がどの位使われているのか視えるようにしたいね」
シャルロが提案した。
確かに。
明日の朝ぐらいに限界に達すると分かっていたら夕食代わりに買いだめしておいたケーキを食べると言う選択肢もあるだろうし。(笑)
「凍結庫の術の強度もコントロール出来た方がいいかもしれない。何かを入れた時は強力に冷やす必要があるが、一旦中のモノが凍った後は術の威力がもう少し弱くていいだろう。夏と冬で必要な魔力も違うだろうし」
と、アレク。
おっと。俺も何かアイディアを出さなくては。
部屋で寝転がって本を読んでいる時なんかは色々『ああ、あれが欲しい』と言ったモノが思い浮かぶのに、いざ改めてアイディアを出そうと思うと中々難しい。
う~ん・・・。
そうだ!
「氷を作る棚を一番上にでも作らないか?飲み物を手軽に冷やせるように適当なサイズに区切った箱を乗せておいていつでも氷を出せるようにしておくと便利かも」
俺のアイディアは単に棚をつけるだけだから簡単だ。
アレクのアイディアも、火器のデザインと同じように発動する術回路の数をスイッチで選べるようにすればいいからそれ程難しくない。
問題は魔石の状態を視えるようにすること。
確かにいいアイディアなのだが、どうやって実現するか・・・。
「魔力の量に反応して色を変える魔石ってないかなぁ?」
「無いことは無いが・・・高価すぎてとても実習に使えるような代物ではないな」
アレクがシャルロの希望的観測を却下した。
まあ、竜の鱗を実習のランプ作りに使う人ですから?もしかしたらあっさり蒼流が持ってきてくれちゃうかもしれないけど。
だが、ここは折角だから工夫せねば!
「基本的に、魔力が溜まり過ぎた時に知りたい訳なんだから、ある程度魔力の圧力が上がったら少し魔力が別の術回路に漏れるようにしてそれを光らせるとか?」
魔石は基本的に術回路に繋いで繋ぐが、魔力が大量に入っていた場合は多少放電現象が起きて繋がっていない術回路をも稼働させることができる。
とは言っても極々僅かな距離なんだけど。
爪の厚さぐらいの距離っていうところかな?
アレクが頷いた。
「なるほど、放電させるか。
出来るだけすぐそばに置いて、放電の強さが判断できるようにだんだん色が濃くなるようなガラスを光源の上に置いたら、ガラスの色であとどのくらいなのかも判断出来るな」
「それ、扉に埋め込もう!そうすれば一目でわかるし」
嬉しそうにシャルロが提案する。
自分の凍結庫へ一歩近づくと思っているのか、やたらとハイだなぁ。
そんなにお菓子の保存で悔しい思いをしているんかね?
侯爵家の息子なんだから欲しければ凍結庫ぐらい買い与えてもらえそうなもんだが。
「なんか嬉しそうだねぇ、シャルロ」
思わずつぶやいてしまった。
「だって、『自分で作るんでしょ?』って言われて買ってもらえなかったんだ。お陰で折角王都には色んなお菓子があるのに、冷菓子はその場で食べるしか選択肢が無かったんだよ!」
シャルロが憤懣と愚痴る。
「ははは。まあ、最初の二年は焼き菓子を楽しむ期間だったと思えばいいじゃないか」
アレクが優しく言い聞かせる。
時々、アレクってお父さんみたいだよなぁ。特にシャルロの。(笑)
「ま、それはさておき。熱を奪う術回路を上下左右に前後で6つ、放電先の光源の術回路と魔石が一杯になったらスイッチを切る術回路か。後は本体とガラスカバーだな」
アレクが指を折りながら数えた。
「熱を奪う術回路は各自2個ずつ。シャルロがガラスカバーにアレクが本体、俺が光源と安全装置の術回路でどうだ?」
本当は得意では無いモノをもっと積極的にやるべきなんだろうが・・・。
本体作るよりも術回路をいじくる方が好きなんだよね、どうしても。
ま、ガラス作りはシャルロが一番得意だし。
苦手なモノの練習はグループ活動ではなく一人でやっている時でいいとしよう。
来年はそれこそ色々一人で研究する予定だし。
それでも、あれだけお菓子好きのシャルロが凍結庫を『自分で作りなさい』と貰えていなかったというのはちょっと意外・・・。お菓子が絡んだあいつのおねだりに負けないなんて、流石侯爵家!
◆◆◆
火器は特に問題なくあっさり完成した。
次は凍結庫だ。
「機能は・・・熱を抜き取る、魔石にエネルギーを蓄積させる、魔石の蓄積容量が限界に近づいたら熱を抜き取る機能を止める、の3つだな。とりあえず火器に繋ぐんだったらエネルギーはそのまま蓄積してもいいと。何か提案ある?」
教室の前に張り出してある術回路を見ながら二人に聞いた。
「急に凍結庫が止まったら困るから、魔石の蓄積容量がどの位使われているのか視えるようにしたいね」
シャルロが提案した。
確かに。
明日の朝ぐらいに限界に達すると分かっていたら夕食代わりに買いだめしておいたケーキを食べると言う選択肢もあるだろうし。(笑)
「凍結庫の術の強度もコントロール出来た方がいいかもしれない。何かを入れた時は強力に冷やす必要があるが、一旦中のモノが凍った後は術の威力がもう少し弱くていいだろう。夏と冬で必要な魔力も違うだろうし」
と、アレク。
おっと。俺も何かアイディアを出さなくては。
部屋で寝転がって本を読んでいる時なんかは色々『ああ、あれが欲しい』と言ったモノが思い浮かぶのに、いざ改めてアイディアを出そうと思うと中々難しい。
う~ん・・・。
そうだ!
「氷を作る棚を一番上にでも作らないか?飲み物を手軽に冷やせるように適当なサイズに区切った箱を乗せておいていつでも氷を出せるようにしておくと便利かも」
俺のアイディアは単に棚をつけるだけだから簡単だ。
アレクのアイディアも、火器のデザインと同じように発動する術回路の数をスイッチで選べるようにすればいいからそれ程難しくない。
問題は魔石の状態を視えるようにすること。
確かにいいアイディアなのだが、どうやって実現するか・・・。
「魔力の量に反応して色を変える魔石ってないかなぁ?」
「無いことは無いが・・・高価すぎてとても実習に使えるような代物ではないな」
アレクがシャルロの希望的観測を却下した。
まあ、竜の鱗を実習のランプ作りに使う人ですから?もしかしたらあっさり蒼流が持ってきてくれちゃうかもしれないけど。
だが、ここは折角だから工夫せねば!
「基本的に、魔力が溜まり過ぎた時に知りたい訳なんだから、ある程度魔力の圧力が上がったら少し魔力が別の術回路に漏れるようにしてそれを光らせるとか?」
魔石は基本的に術回路に繋いで繋ぐが、魔力が大量に入っていた場合は多少放電現象が起きて繋がっていない術回路をも稼働させることができる。
とは言っても極々僅かな距離なんだけど。
爪の厚さぐらいの距離っていうところかな?
アレクが頷いた。
「なるほど、放電させるか。
出来るだけすぐそばに置いて、放電の強さが判断できるようにだんだん色が濃くなるようなガラスを光源の上に置いたら、ガラスの色であとどのくらいなのかも判断出来るな」
「それ、扉に埋め込もう!そうすれば一目でわかるし」
嬉しそうにシャルロが提案する。
自分の凍結庫へ一歩近づくと思っているのか、やたらとハイだなぁ。
そんなにお菓子の保存で悔しい思いをしているんかね?
侯爵家の息子なんだから欲しければ凍結庫ぐらい買い与えてもらえそうなもんだが。
「なんか嬉しそうだねぇ、シャルロ」
思わずつぶやいてしまった。
「だって、『自分で作るんでしょ?』って言われて買ってもらえなかったんだ。お陰で折角王都には色んなお菓子があるのに、冷菓子はその場で食べるしか選択肢が無かったんだよ!」
シャルロが憤懣と愚痴る。
「ははは。まあ、最初の二年は焼き菓子を楽しむ期間だったと思えばいいじゃないか」
アレクが優しく言い聞かせる。
時々、アレクってお父さんみたいだよなぁ。特にシャルロの。(笑)
「ま、それはさておき。熱を奪う術回路を上下左右に前後で6つ、放電先の光源の術回路と魔石が一杯になったらスイッチを切る術回路か。後は本体とガラスカバーだな」
アレクが指を折りながら数えた。
「熱を奪う術回路は各自2個ずつ。シャルロがガラスカバーにアレクが本体、俺が光源と安全装置の術回路でどうだ?」
本当は得意では無いモノをもっと積極的にやるべきなんだろうが・・・。
本体作るよりも術回路をいじくる方が好きなんだよね、どうしても。
ま、ガラス作りはシャルロが一番得意だし。
苦手なモノの練習はグループ活動ではなく一人でやっている時でいいとしよう。
来年はそれこそ色々一人で研究する予定だし。
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