77 / 1,077
魔術学院2年目
076 星暦550年 桃の月 6日 凍結庫《フリザー》
しおりを挟む
一口で金持ちと言っても、歴史のある家は成り金に比べて子供へ経済観念を教える為のスタンスがしっかりしているようだ。
それでも、あれだけお菓子好きのシャルロが凍結庫を『自分で作りなさい』と貰えていなかったというのはちょっと意外・・・。お菓子が絡んだあいつのおねだりに負けないなんて、流石侯爵家!
◆◆◆
火器は特に問題なくあっさり完成した。
次は凍結庫だ。
「機能は・・・熱を抜き取る、魔石にエネルギーを蓄積させる、魔石の蓄積容量が限界に近づいたら熱を抜き取る機能を止める、の3つだな。とりあえず火器に繋ぐんだったらエネルギーはそのまま蓄積してもいいと。何か提案ある?」
教室の前に張り出してある術回路を見ながら二人に聞いた。
「急に凍結庫が止まったら困るから、魔石の蓄積容量がどの位使われているのか視えるようにしたいね」
シャルロが提案した。
確かに。
明日の朝ぐらいに限界に達すると分かっていたら夕食代わりに買いだめしておいたケーキを食べると言う選択肢もあるだろうし。(笑)
「凍結庫の術の強度もコントロール出来た方がいいかもしれない。何かを入れた時は強力に冷やす必要があるが、一旦中のモノが凍った後は術の威力がもう少し弱くていいだろう。夏と冬で必要な魔力も違うだろうし」
と、アレク。
おっと。俺も何かアイディアを出さなくては。
部屋で寝転がって本を読んでいる時なんかは色々『ああ、あれが欲しい』と言ったモノが思い浮かぶのに、いざ改めてアイディアを出そうと思うと中々難しい。
う~ん・・・。
そうだ!
「氷を作る棚を一番上にでも作らないか?飲み物を手軽に冷やせるように適当なサイズに区切った箱を乗せておいていつでも氷を出せるようにしておくと便利かも」
俺のアイディアは単に棚をつけるだけだから簡単だ。
アレクのアイディアも、火器のデザインと同じように発動する術回路の数をスイッチで選べるようにすればいいからそれ程難しくない。
問題は魔石の状態を視えるようにすること。
確かにいいアイディアなのだが、どうやって実現するか・・・。
「魔力の量に反応して色を変える魔石ってないかなぁ?」
「無いことは無いが・・・高価すぎてとても実習に使えるような代物ではないな」
アレクがシャルロの希望的観測を却下した。
まあ、竜の鱗を実習のランプ作りに使う人ですから?もしかしたらあっさり蒼流が持ってきてくれちゃうかもしれないけど。
だが、ここは折角だから工夫せねば!
「基本的に、魔力が溜まり過ぎた時に知りたい訳なんだから、ある程度魔力の圧力が上がったら少し魔力が別の術回路に漏れるようにしてそれを光らせるとか?」
魔石は基本的に術回路に繋いで繋ぐが、魔力が大量に入っていた場合は多少放電現象が起きて繋がっていない術回路をも稼働させることができる。
とは言っても極々僅かな距離なんだけど。
爪の厚さぐらいの距離っていうところかな?
アレクが頷いた。
「なるほど、放電させるか。
出来るだけすぐそばに置いて、放電の強さが判断できるようにだんだん色が濃くなるようなガラスを光源の上に置いたら、ガラスの色であとどのくらいなのかも判断出来るな」
「それ、扉に埋め込もう!そうすれば一目でわかるし」
嬉しそうにシャルロが提案する。
自分の凍結庫へ一歩近づくと思っているのか、やたらとハイだなぁ。
そんなにお菓子の保存で悔しい思いをしているんかね?
侯爵家の息子なんだから欲しければ凍結庫ぐらい買い与えてもらえそうなもんだが。
「なんか嬉しそうだねぇ、シャルロ」
思わずつぶやいてしまった。
「だって、『自分で作るんでしょ?』って言われて買ってもらえなかったんだ。お陰で折角王都には色んなお菓子があるのに、冷菓子はその場で食べるしか選択肢が無かったんだよ!」
シャルロが憤懣と愚痴る。
「ははは。まあ、最初の二年は焼き菓子を楽しむ期間だったと思えばいいじゃないか」
アレクが優しく言い聞かせる。
時々、アレクってお父さんみたいだよなぁ。特にシャルロの。(笑)
「ま、それはさておき。熱を奪う術回路を上下左右に前後で6つ、放電先の光源の術回路と魔石が一杯になったらスイッチを切る術回路か。後は本体とガラスカバーだな」
アレクが指を折りながら数えた。
「熱を奪う術回路は各自2個ずつ。シャルロがガラスカバーにアレクが本体、俺が光源と安全装置の術回路でどうだ?」
本当は得意では無いモノをもっと積極的にやるべきなんだろうが・・・。
本体作るよりも術回路をいじくる方が好きなんだよね、どうしても。
ま、ガラス作りはシャルロが一番得意だし。
苦手なモノの練習はグループ活動ではなく一人でやっている時でいいとしよう。
来年はそれこそ色々一人で研究する予定だし。
それでも、あれだけお菓子好きのシャルロが凍結庫を『自分で作りなさい』と貰えていなかったというのはちょっと意外・・・。お菓子が絡んだあいつのおねだりに負けないなんて、流石侯爵家!
◆◆◆
火器は特に問題なくあっさり完成した。
次は凍結庫だ。
「機能は・・・熱を抜き取る、魔石にエネルギーを蓄積させる、魔石の蓄積容量が限界に近づいたら熱を抜き取る機能を止める、の3つだな。とりあえず火器に繋ぐんだったらエネルギーはそのまま蓄積してもいいと。何か提案ある?」
教室の前に張り出してある術回路を見ながら二人に聞いた。
「急に凍結庫が止まったら困るから、魔石の蓄積容量がどの位使われているのか視えるようにしたいね」
シャルロが提案した。
確かに。
明日の朝ぐらいに限界に達すると分かっていたら夕食代わりに買いだめしておいたケーキを食べると言う選択肢もあるだろうし。(笑)
「凍結庫の術の強度もコントロール出来た方がいいかもしれない。何かを入れた時は強力に冷やす必要があるが、一旦中のモノが凍った後は術の威力がもう少し弱くていいだろう。夏と冬で必要な魔力も違うだろうし」
と、アレク。
おっと。俺も何かアイディアを出さなくては。
部屋で寝転がって本を読んでいる時なんかは色々『ああ、あれが欲しい』と言ったモノが思い浮かぶのに、いざ改めてアイディアを出そうと思うと中々難しい。
う~ん・・・。
そうだ!
「氷を作る棚を一番上にでも作らないか?飲み物を手軽に冷やせるように適当なサイズに区切った箱を乗せておいていつでも氷を出せるようにしておくと便利かも」
俺のアイディアは単に棚をつけるだけだから簡単だ。
アレクのアイディアも、火器のデザインと同じように発動する術回路の数をスイッチで選べるようにすればいいからそれ程難しくない。
問題は魔石の状態を視えるようにすること。
確かにいいアイディアなのだが、どうやって実現するか・・・。
「魔力の量に反応して色を変える魔石ってないかなぁ?」
「無いことは無いが・・・高価すぎてとても実習に使えるような代物ではないな」
アレクがシャルロの希望的観測を却下した。
まあ、竜の鱗を実習のランプ作りに使う人ですから?もしかしたらあっさり蒼流が持ってきてくれちゃうかもしれないけど。
だが、ここは折角だから工夫せねば!
「基本的に、魔力が溜まり過ぎた時に知りたい訳なんだから、ある程度魔力の圧力が上がったら少し魔力が別の術回路に漏れるようにしてそれを光らせるとか?」
魔石は基本的に術回路に繋いで繋ぐが、魔力が大量に入っていた場合は多少放電現象が起きて繋がっていない術回路をも稼働させることができる。
とは言っても極々僅かな距離なんだけど。
爪の厚さぐらいの距離っていうところかな?
アレクが頷いた。
「なるほど、放電させるか。
出来るだけすぐそばに置いて、放電の強さが判断できるようにだんだん色が濃くなるようなガラスを光源の上に置いたら、ガラスの色であとどのくらいなのかも判断出来るな」
「それ、扉に埋め込もう!そうすれば一目でわかるし」
嬉しそうにシャルロが提案する。
自分の凍結庫へ一歩近づくと思っているのか、やたらとハイだなぁ。
そんなにお菓子の保存で悔しい思いをしているんかね?
侯爵家の息子なんだから欲しければ凍結庫ぐらい買い与えてもらえそうなもんだが。
「なんか嬉しそうだねぇ、シャルロ」
思わずつぶやいてしまった。
「だって、『自分で作るんでしょ?』って言われて買ってもらえなかったんだ。お陰で折角王都には色んなお菓子があるのに、冷菓子はその場で食べるしか選択肢が無かったんだよ!」
シャルロが憤懣と愚痴る。
「ははは。まあ、最初の二年は焼き菓子を楽しむ期間だったと思えばいいじゃないか」
アレクが優しく言い聞かせる。
時々、アレクってお父さんみたいだよなぁ。特にシャルロの。(笑)
「ま、それはさておき。熱を奪う術回路を上下左右に前後で6つ、放電先の光源の術回路と魔石が一杯になったらスイッチを切る術回路か。後は本体とガラスカバーだな」
アレクが指を折りながら数えた。
「熱を奪う術回路は各自2個ずつ。シャルロがガラスカバーにアレクが本体、俺が光源と安全装置の術回路でどうだ?」
本当は得意では無いモノをもっと積極的にやるべきなんだろうが・・・。
本体作るよりも術回路をいじくる方が好きなんだよね、どうしても。
ま、ガラス作りはシャルロが一番得意だし。
苦手なモノの練習はグループ活動ではなく一人でやっている時でいいとしよう。
来年はそれこそ色々一人で研究する予定だし。
1
お気に入りに追加
501
あなたにおすすめの小説
ある、義妹にすべてを奪われて魔獣の生贄になった令嬢のその後
オレンジ方解石
ファンタジー
異母妹セリアに虐げられた挙げ句、婚約者のルイ王太子まで奪われて世を儚み、魔獣の生贄となったはずの侯爵令嬢レナエル。
ある夜、王宮にレナエルと魔獣が現れて…………。
婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話
Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」
「よっしゃー!! ありがとうございます!!」
婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。
果たして国王との賭けの内容とは――
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな
こうやさい
ファンタジー
わたくしは婚約者や義妹に断罪され、学園から追放を命じられました。
これが「ざまぁ」されるというものなんですのね。
義妹に冤罪着せられて殿下に皆の前で婚約破棄のうえ学園からの追放される令嬢とかいったら頑張ってる感じなんだけどなぁ。
とりあえずお兄さま頑張れ。
PCがエラーがどうこうほざいているので消えたら察してください、どのみち不定期だけど。
やっぱスマホでも更新できるようにしとかないとなぁ、と毎度の事を思うだけ思う。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
思わず呆れる婚約破棄
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある国のとある夜会、その場にて、その国の王子が婚約破棄を言い渡した。
だがしかし、その内容がずさんというか、あまりにもひどいというか……呆れるしかない。
余りにもひどい内容に、思わず誰もが呆れてしまうのであった。
……ネタバレのような気がする。しかし、良い紹介分が思いつかなかった。
よくあるざまぁ系婚約破棄物ですが、第3者視点よりお送りいたします。
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる