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魔術学院2年目
042 星暦550年 紺の月 17日 遺跡(2)
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俺は小さなゲテモノ類が苦手だ。
剣を持った人間の方が確実に俺の命にとっては危険性が高いにも関わらず、ゲテモノに襲われるよりは人間と戦う方が絶対にましだと俺は思っている。
・・・人間、誰にでも理不尽な恐怖ってあるもんさ。
遺跡の中央にあった広場に来てみた。
確かに、神殿と呼ばれるのも分かる気がする。
もしかしたら単に真ん中に清算用の台があるだけの中央市場の場所だったのかもしれないが、何とはなしに敬虔な気持ちが残っているような雰囲気の場所なのだ。
・・・何が言いたいのか自分でもわからないけど。
「で、どうしようか?」
一番熱意にあふれていたシャルロに尋ねる。
「真ん中から、螺旋状に外側へ出て行く感じで見ていこう。多分中央広場の傍の方が重要な場所だっただろうから、建築物とかも面白いものが多いと思うし」
おや、思いがけず現実的な提案。
小さいころから、ここに来たらどうやって探検するか考えてきたのかな?
最初に入った時には興奮して手当たり次第に見て回っていたけど。(笑)
「よし、じゃあここから行ってみよう!」
アレクが広場の後ろの建物へ入って行った。
大きな石造りの建物で、馬車が通れそうな巨大な正面玄関がある。
扉そのものは既に朽ち果てて無くなっているけど。
壁には細かい彫刻が成されていて、奇麗だった。
昔はこれって色がついたのだろうか?それとも素材の色のままだったのか・・・。
「これだけ奇麗に彫刻してあったら、今まで冒険者や研究者が剥がして持って帰っていないのが意外だな。」
思わず詳細な模様を手で撫でながらつぶやく。
「遺跡の壁は大抵固定化の魔術のお陰で形を保っているからな。持って帰る為に剥がしたら遺跡を出る前にボロボロの埃になっているよ」
アレクが答える。
なるほど。
考えてみたら、それなりの重さの壁や天井を支えているんだ、何千年も普通に保っている訳は無いか。
集中したら、壁に見慣れないタイプの固定化の魔術が掛かっているのが視える。
・・・面白い。
壁一面に一様にかかっているよ、この魔術。
建築物に対する固定化の魔術は現代では柱に核となる術をかけ、壁はそこから網を張るような感じで組み込まれている。
だから壁の一部を剥がすと固定化の魔術が解除されてしまう。
だが。
この遺跡の固定化の魔術は壁に一様にかかっている。
つまり、術を破損せずに一部だけ切り離せば実は壁を持って帰ることは可能かもしれない。
・・・ま、重いし、シャルロが反対しそうだからやらないけどさ。
流石にずっと近辺の若い者たちの冒険の地とされてきただけあって、持って帰れるサイズのモノは何も残っていない。だが、見たこともない建築様式と『何千年前の人間も俺たちと同じように朝食を食べ、仕事をし、寝ていたんだ・・・』と実感できるような何気ない部屋の様子をみて回るのは楽しかった。
あることに気付くまでは。
「ねえ。こんな感じの死体、あっちにもあったよね?」
足元に転がる比較的新しいキツネっぽい動物の残骸を見ながらシャルロに尋ねた。
「・・・そうだね?」
俺が何故そんなことを聞くのか不思議そうにシャルロが答える。
「これだけ大きな地下の洞窟モドキなんだ。近辺の動物のいい住処になっているんじゃないか?」
アレクが付け足す。
「キツネってこういう開拓された田舎の平地の自然ではかなり上の方の肉食動物だって言っていなかったっけ?」
以前、森の神殿に言った際の雑談で聞いたことを思い出しながら聞く。
森の中や山の中には熊が一番大きな野獣として存在するし、人間のあまり住んでいない地域では狼が一番危険な相手だと言われた。
だが、貴族の屋敷があるような開拓された農村地帯では森の中のクマの1、2匹はまだしも、狼は駆除されてしまっているからキツネは食物連鎖の三角のかなり上辺にいるらしい。
そんなキツネが2匹(最低でも)殺されている。
・・・何に?
「ここら辺で狐を殺すような捕食動物って・・・何?」
アレクとシャルロが顔を見合わせる。
「そう言えば・・・何だろう?」
「一匹ならキツネ狩りで怪我を負ったキツネがここで死んだと思えなくもないが・・・2匹っていうのはちょっと変な気がするな」
アレクが呟いた。
「一応、危険な魔物が巣籠ったりしないように、定期的に冒険者に中を見て回ってもらっているって聞いたんだけどね?」
シャルロが狐の残骸を見詰めながら言う。
「危険な魔物が実際に住み着いていたことってどのくらいの頻度であったんだ?」
微妙に嫌な予感を感じながら、シャルロに尋ねる。
狐の捕食が精一杯というサイズの魔物ならいいが、それよりも大きいとなったら・・・怖いことになる。
「小さな魔物だったら毎回って話。冒険者が梃子摺るようなのって何年かに一度程度らいしけど」
狐を殺せる魔物は小さいのだろうか・・・。
目を閉じて、心眼で生命反応を探す。
俺たちが3つ。
鼠とかいった類の小動物が・・・ごく僅か。
おいおい。
ごく僅か?
こう言うところって小動物が大量に住んでいるんじゃないの??
まあ、小動物を食べる程度の魔物なら俺たちを襲ってはこないかもしれないけど。
で、肝心の魔物はどこにいるんだ?
俺たちが立っているところを中心に、ぐるっと周囲を視回していく。
・・・?
いない?
餌となる小動物がいるのに狐が共食いするとも思いにくいが・・・。
更に集中して探していた時、それが視えた。
下だ。
下に降りる階段を見かけなかったのでこことその上にしか階が無いと思っていたのだが、更に下に層がある。
そしてそこから・・・小さな何かが大量に出てきていた。
「げ」
見たいような、見たくないような・・・。
「小さいだけど大量な何かが来る。
とりあえず、出口に向かわないか?
多分出る前に追い付かれると思うから、何なのかを見てから退治道具を持ってこよう」
無駄な文句を言わずに、アレクとシャルロが直ぐに出口に向かって早歩きで向かい始めた。
「走ろう!」
俺は小さいゲテモノ系が苦手なんだ!
サカサカサカ。
何か嫌な音が周りから聞こえてくる。
うううううううう。
嫌だ嫌だ嫌だ。
追いつくな!
冷や汗をかきながら出口へ向かって走る。
だが。
出口に着く前に横の通路から、それがでてきた。
サイズとしては鼠ぐらいか。
鼠ならいいのだが・・・。
鼠サイズのゴキブリ(のようなモノ)はグロい。
「バルネ!」
アレクが炎の術を放った。
あっさりゴキブリモドキが燃え尽きる。
だが更にその後からどんどん来るんだよ!!
「バルネ!」
俺も炎の術を放つ。
3人で術を放ちながら行けば何とか出口まで行けそうだ。
しっかし、こんな小さいとは言っても数の多い魔物がいたら、近所の子供が忍び込んできたら、危ないんじゃないか??
それともこいつらは奥の方から出てきたから、そこまでたどり着く前に迷子になって救出されていたのだろうか。
どうでもいいことを考えて何とか気を紛らわせながら出口に向かって走っていたら、突然天井からボトボトっとゴキブリモドキが何体か落ちてきた。
「げげ!」
慌ててナイフで自分の上に落ちてきたゴキブリモドキを払いのける。
アレクは手で払いのけていた。
知らないぞ、噛まれても。
シャルロが一番こう言うのに弱そうだから助けようとしたら瞬間、
「蒼流!!!助けて!」
シャルロの悲鳴が響いた。
ザバァァッァア!
一瞬、ものすごい勢いで水が俺らの周りを流れていったと思ったらゴキブリモドキが完全に消滅していた。
ははは。
無敵じゃん、シャルロ。
遺跡ハンターになるんだったら是非こいつを連れて行かなくっちゃな。
剣を持った人間の方が確実に俺の命にとっては危険性が高いにも関わらず、ゲテモノに襲われるよりは人間と戦う方が絶対にましだと俺は思っている。
・・・人間、誰にでも理不尽な恐怖ってあるもんさ。
遺跡の中央にあった広場に来てみた。
確かに、神殿と呼ばれるのも分かる気がする。
もしかしたら単に真ん中に清算用の台があるだけの中央市場の場所だったのかもしれないが、何とはなしに敬虔な気持ちが残っているような雰囲気の場所なのだ。
・・・何が言いたいのか自分でもわからないけど。
「で、どうしようか?」
一番熱意にあふれていたシャルロに尋ねる。
「真ん中から、螺旋状に外側へ出て行く感じで見ていこう。多分中央広場の傍の方が重要な場所だっただろうから、建築物とかも面白いものが多いと思うし」
おや、思いがけず現実的な提案。
小さいころから、ここに来たらどうやって探検するか考えてきたのかな?
最初に入った時には興奮して手当たり次第に見て回っていたけど。(笑)
「よし、じゃあここから行ってみよう!」
アレクが広場の後ろの建物へ入って行った。
大きな石造りの建物で、馬車が通れそうな巨大な正面玄関がある。
扉そのものは既に朽ち果てて無くなっているけど。
壁には細かい彫刻が成されていて、奇麗だった。
昔はこれって色がついたのだろうか?それとも素材の色のままだったのか・・・。
「これだけ奇麗に彫刻してあったら、今まで冒険者や研究者が剥がして持って帰っていないのが意外だな。」
思わず詳細な模様を手で撫でながらつぶやく。
「遺跡の壁は大抵固定化の魔術のお陰で形を保っているからな。持って帰る為に剥がしたら遺跡を出る前にボロボロの埃になっているよ」
アレクが答える。
なるほど。
考えてみたら、それなりの重さの壁や天井を支えているんだ、何千年も普通に保っている訳は無いか。
集中したら、壁に見慣れないタイプの固定化の魔術が掛かっているのが視える。
・・・面白い。
壁一面に一様にかかっているよ、この魔術。
建築物に対する固定化の魔術は現代では柱に核となる術をかけ、壁はそこから網を張るような感じで組み込まれている。
だから壁の一部を剥がすと固定化の魔術が解除されてしまう。
だが。
この遺跡の固定化の魔術は壁に一様にかかっている。
つまり、術を破損せずに一部だけ切り離せば実は壁を持って帰ることは可能かもしれない。
・・・ま、重いし、シャルロが反対しそうだからやらないけどさ。
流石にずっと近辺の若い者たちの冒険の地とされてきただけあって、持って帰れるサイズのモノは何も残っていない。だが、見たこともない建築様式と『何千年前の人間も俺たちと同じように朝食を食べ、仕事をし、寝ていたんだ・・・』と実感できるような何気ない部屋の様子をみて回るのは楽しかった。
あることに気付くまでは。
「ねえ。こんな感じの死体、あっちにもあったよね?」
足元に転がる比較的新しいキツネっぽい動物の残骸を見ながらシャルロに尋ねた。
「・・・そうだね?」
俺が何故そんなことを聞くのか不思議そうにシャルロが答える。
「これだけ大きな地下の洞窟モドキなんだ。近辺の動物のいい住処になっているんじゃないか?」
アレクが付け足す。
「キツネってこういう開拓された田舎の平地の自然ではかなり上の方の肉食動物だって言っていなかったっけ?」
以前、森の神殿に言った際の雑談で聞いたことを思い出しながら聞く。
森の中や山の中には熊が一番大きな野獣として存在するし、人間のあまり住んでいない地域では狼が一番危険な相手だと言われた。
だが、貴族の屋敷があるような開拓された農村地帯では森の中のクマの1、2匹はまだしも、狼は駆除されてしまっているからキツネは食物連鎖の三角のかなり上辺にいるらしい。
そんなキツネが2匹(最低でも)殺されている。
・・・何に?
「ここら辺で狐を殺すような捕食動物って・・・何?」
アレクとシャルロが顔を見合わせる。
「そう言えば・・・何だろう?」
「一匹ならキツネ狩りで怪我を負ったキツネがここで死んだと思えなくもないが・・・2匹っていうのはちょっと変な気がするな」
アレクが呟いた。
「一応、危険な魔物が巣籠ったりしないように、定期的に冒険者に中を見て回ってもらっているって聞いたんだけどね?」
シャルロが狐の残骸を見詰めながら言う。
「危険な魔物が実際に住み着いていたことってどのくらいの頻度であったんだ?」
微妙に嫌な予感を感じながら、シャルロに尋ねる。
狐の捕食が精一杯というサイズの魔物ならいいが、それよりも大きいとなったら・・・怖いことになる。
「小さな魔物だったら毎回って話。冒険者が梃子摺るようなのって何年かに一度程度らいしけど」
狐を殺せる魔物は小さいのだろうか・・・。
目を閉じて、心眼で生命反応を探す。
俺たちが3つ。
鼠とかいった類の小動物が・・・ごく僅か。
おいおい。
ごく僅か?
こう言うところって小動物が大量に住んでいるんじゃないの??
まあ、小動物を食べる程度の魔物なら俺たちを襲ってはこないかもしれないけど。
で、肝心の魔物はどこにいるんだ?
俺たちが立っているところを中心に、ぐるっと周囲を視回していく。
・・・?
いない?
餌となる小動物がいるのに狐が共食いするとも思いにくいが・・・。
更に集中して探していた時、それが視えた。
下だ。
下に降りる階段を見かけなかったのでこことその上にしか階が無いと思っていたのだが、更に下に層がある。
そしてそこから・・・小さな何かが大量に出てきていた。
「げ」
見たいような、見たくないような・・・。
「小さいだけど大量な何かが来る。
とりあえず、出口に向かわないか?
多分出る前に追い付かれると思うから、何なのかを見てから退治道具を持ってこよう」
無駄な文句を言わずに、アレクとシャルロが直ぐに出口に向かって早歩きで向かい始めた。
「走ろう!」
俺は小さいゲテモノ系が苦手なんだ!
サカサカサカ。
何か嫌な音が周りから聞こえてくる。
うううううううう。
嫌だ嫌だ嫌だ。
追いつくな!
冷や汗をかきながら出口へ向かって走る。
だが。
出口に着く前に横の通路から、それがでてきた。
サイズとしては鼠ぐらいか。
鼠ならいいのだが・・・。
鼠サイズのゴキブリ(のようなモノ)はグロい。
「バルネ!」
アレクが炎の術を放った。
あっさりゴキブリモドキが燃え尽きる。
だが更にその後からどんどん来るんだよ!!
「バルネ!」
俺も炎の術を放つ。
3人で術を放ちながら行けば何とか出口まで行けそうだ。
しっかし、こんな小さいとは言っても数の多い魔物がいたら、近所の子供が忍び込んできたら、危ないんじゃないか??
それともこいつらは奥の方から出てきたから、そこまでたどり着く前に迷子になって救出されていたのだろうか。
どうでもいいことを考えて何とか気を紛らわせながら出口に向かって走っていたら、突然天井からボトボトっとゴキブリモドキが何体か落ちてきた。
「げげ!」
慌ててナイフで自分の上に落ちてきたゴキブリモドキを払いのける。
アレクは手で払いのけていた。
知らないぞ、噛まれても。
シャルロが一番こう言うのに弱そうだから助けようとしたら瞬間、
「蒼流!!!助けて!」
シャルロの悲鳴が響いた。
ザバァァッァア!
一瞬、ものすごい勢いで水が俺らの周りを流れていったと思ったらゴキブリモドキが完全に消滅していた。
ははは。
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