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魔術学院2年目
039 星暦550年 紺の月 16日 『いい子』
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禁じられたら余計やりたくなるのが子供・・・というか人間の性だと思う。
ある意味これって種族の生存には反すると思う本能だが、なんでこの習性はいまだに残っているんだろ?
シャルロの祖母の家・・・というか館は王都から転移門を使った後、更に馬車で半日かけて移動したところにあった。
レディ・トレンティスは先代のオレファーニ侯爵の妻で、夫に先立たれて息子が爵位を継いだ際に侯爵家の本邸を出てサンクタスにある別邸に引越したんだそうだ。
かなり不便な地域なのだが自然が美しく、気候も過ごしやすいのでシャルロは毎年遊びに来ているらしい。
園芸が侯爵夫人の趣味だそうで、館の庭は見事なものだった。
色とりどりの花に気持ちのよい木陰、絨毯のような芝生。
そして中は・・・別荘とは言え、流石侯爵家の持ち物だけあって置いてあるものはいいものばかりだった。
家具も重厚な高級品だし置いてある壺や絵画はどれも売ればかなりの金額になるものばかりだ。
しかも、見せびらかすことを重視した悪趣味な成り金テイストではなく、いいものを自分の好みで揃えた内装。
いいねぇ。
成り金趣味の家って入ると『見せびらかす為にしかいらないなら、貰ってやるよ』と思うけど、ちゃんといいものを好きだから持っている人の家は『俺もいつかこんな家に住みたい』と感じる。
ま、魔術師の才能が見出されたことで盗賊を続けなくても俺もそれなりにいい家に住めるようになるはず。今回の休みはノンビリ優雅な生活と遺跡の探検を楽しみながら、俺の将来のマイホームの参考にさせてもらおっと。
「ようこそ。半日も馬車に揺られて疲れたでしょ?
美味しいイチゴが旬なのよ。楽しんでちょうだい。」
レディ・トレンティスが態々我々を歓迎してくれた。
「わ~、イチゴ!楽しみにしてたんだ!!」
シャルロが嬉しそうに歓声を上げる。
「おばあさま、こちらの金髪がアレク・シェフィート、茶髪がウィル・ダントールです。
アレク、ウィル、こちらが僕のおばあさまのレディ・トレンティス・オレファーニ。美人でしょ?」
まあ、確かにね。
でも、紹介の時に言うセリフかねぇ・・・。
レディ・トレンティスはメインテナンスがいいのか、もう成人した孫がいるとは思えない程若々しく、美しかった。
アレクの話ではシャルロの祖父に結婚した頃、絶世の美女として大陸でも有名な女性だったらしい。
シャルロも天使系の見た目だからなぁ。
一度、こいつの姉妹を見てみたいかも。
メイドが入って来て紅茶を注ぐ。
サイドテーブルの上にイチゴとクッキーが出された。
イチゴか。
魔術学院に入るまで食べたことがなかったが、入学以来、旬の初めに食堂で出てきたのを食べた。
あれは美味しいよなぁ・・・。
何故か種が歯の間に挟まって困るけど。
「どうぞ。本当に美味しいのよ」
レディ・トレンティスが勧めてくれた。
孫の友人とは言え、タダの平民に気さくな人だよなぁ、この人。
ま、そう言うタイプの人間だからこんな田舎にリタイアして庭に情熱を注いでいるんだろうけど。
「ありがとうございます。では、遠慮なくいただきます。」
アレクが先に手を出した。
こういうところのマナーはこいつの方がよ~~~~~く分かっているからね。
アレクが手を出したと言うことは食べてもOKということだな。
「・・・く~~~~~~!美味しい!」
やべ。思わず奇声が出てしまった。
学食で出るようなイチゴとは同じ種類とは思えない位美味しい。
「ふふふ。美味しいでしょ?
私の自慢の菜園で育てた採れたてよ」
レディ・トレンティスが笑いながら自慢した。
すげえ。
自分で育てられるのか、これ。
王都でも育てられないかなぁ。
下町では皆、屋上にプランターで野菜を育てていたが、寮の屋上でイチゴを育てられないかな?
こういうのって水やりが命だと言うが、清早に手伝ってもらったらどうだろう?
水精なんだ、イチゴの苗が喜ぶ水具合なんて簡単に出来そうだが。
「おばあさま、今度こそあの遺跡に行くからね!
今回のお休みは、あの遺跡を踏破するんだ」
シャルロがレディ・トレンティスに宣言した。
・・・おや~?
何か、驚いているぞ。
「まあ、今まで行っていなかったの?」
「だって、危ないから大人になるまで絶対に!!!行っちゃいけないって言ったじゃない」
シャルロが不満げに答える。
「いつの世も、大人は危険な場所へ行くことを禁じ、子供はその言葉を無視して忍び込むものよ。
あなたのお兄さんや従兄弟たちと同じように、シャルロもとっくのとうに忍び込んでいたと思っていたわ」
「兄さんたち、忍び込んでいたの?!」
まあ、普通そうだろうね。
シャルロの顔見る限り『忍び込む』という選択肢は欠片とも浮かんでいなかったようだが。
「そう、アシャルもカダンもダルファスもヘネサンも皆、忍び込んで・・・出れなくなって捜索隊を出す羽目になったものだわ。
あなたは迷子にならなかったのかと思ったら、忍び込んでいなかったのね」
ま、忍び込んで迷っても蒼流がいるから無事に出て来られただろうけど。
出て来られない子供たちは言いつけを破って忍び込んだのに、唯一出て来られたであろう子供だけがいい子に忍び込むのを我慢していたなんて・・・皮肉というか、シャルロらしいというか。
「ま、3人でどうどうとお弁当を持って行った方が楽しいよ、きっと」
祖母の暴露した事実に茫然としているシャルロにアレクが慰めの言葉をかけた。
「・・・そうだね。
よし、明日の朝一番に行くよ!」
シャルロが復活した。
頑張って起きてくれよ。
お前が一番朝に弱いんだから。
ある意味これって種族の生存には反すると思う本能だが、なんでこの習性はいまだに残っているんだろ?
シャルロの祖母の家・・・というか館は王都から転移門を使った後、更に馬車で半日かけて移動したところにあった。
レディ・トレンティスは先代のオレファーニ侯爵の妻で、夫に先立たれて息子が爵位を継いだ際に侯爵家の本邸を出てサンクタスにある別邸に引越したんだそうだ。
かなり不便な地域なのだが自然が美しく、気候も過ごしやすいのでシャルロは毎年遊びに来ているらしい。
園芸が侯爵夫人の趣味だそうで、館の庭は見事なものだった。
色とりどりの花に気持ちのよい木陰、絨毯のような芝生。
そして中は・・・別荘とは言え、流石侯爵家の持ち物だけあって置いてあるものはいいものばかりだった。
家具も重厚な高級品だし置いてある壺や絵画はどれも売ればかなりの金額になるものばかりだ。
しかも、見せびらかすことを重視した悪趣味な成り金テイストではなく、いいものを自分の好みで揃えた内装。
いいねぇ。
成り金趣味の家って入ると『見せびらかす為にしかいらないなら、貰ってやるよ』と思うけど、ちゃんといいものを好きだから持っている人の家は『俺もいつかこんな家に住みたい』と感じる。
ま、魔術師の才能が見出されたことで盗賊を続けなくても俺もそれなりにいい家に住めるようになるはず。今回の休みはノンビリ優雅な生活と遺跡の探検を楽しみながら、俺の将来のマイホームの参考にさせてもらおっと。
「ようこそ。半日も馬車に揺られて疲れたでしょ?
美味しいイチゴが旬なのよ。楽しんでちょうだい。」
レディ・トレンティスが態々我々を歓迎してくれた。
「わ~、イチゴ!楽しみにしてたんだ!!」
シャルロが嬉しそうに歓声を上げる。
「おばあさま、こちらの金髪がアレク・シェフィート、茶髪がウィル・ダントールです。
アレク、ウィル、こちらが僕のおばあさまのレディ・トレンティス・オレファーニ。美人でしょ?」
まあ、確かにね。
でも、紹介の時に言うセリフかねぇ・・・。
レディ・トレンティスはメインテナンスがいいのか、もう成人した孫がいるとは思えない程若々しく、美しかった。
アレクの話ではシャルロの祖父に結婚した頃、絶世の美女として大陸でも有名な女性だったらしい。
シャルロも天使系の見た目だからなぁ。
一度、こいつの姉妹を見てみたいかも。
メイドが入って来て紅茶を注ぐ。
サイドテーブルの上にイチゴとクッキーが出された。
イチゴか。
魔術学院に入るまで食べたことがなかったが、入学以来、旬の初めに食堂で出てきたのを食べた。
あれは美味しいよなぁ・・・。
何故か種が歯の間に挟まって困るけど。
「どうぞ。本当に美味しいのよ」
レディ・トレンティスが勧めてくれた。
孫の友人とは言え、タダの平民に気さくな人だよなぁ、この人。
ま、そう言うタイプの人間だからこんな田舎にリタイアして庭に情熱を注いでいるんだろうけど。
「ありがとうございます。では、遠慮なくいただきます。」
アレクが先に手を出した。
こういうところのマナーはこいつの方がよ~~~~~く分かっているからね。
アレクが手を出したと言うことは食べてもOKということだな。
「・・・く~~~~~~!美味しい!」
やべ。思わず奇声が出てしまった。
学食で出るようなイチゴとは同じ種類とは思えない位美味しい。
「ふふふ。美味しいでしょ?
私の自慢の菜園で育てた採れたてよ」
レディ・トレンティスが笑いながら自慢した。
すげえ。
自分で育てられるのか、これ。
王都でも育てられないかなぁ。
下町では皆、屋上にプランターで野菜を育てていたが、寮の屋上でイチゴを育てられないかな?
こういうのって水やりが命だと言うが、清早に手伝ってもらったらどうだろう?
水精なんだ、イチゴの苗が喜ぶ水具合なんて簡単に出来そうだが。
「おばあさま、今度こそあの遺跡に行くからね!
今回のお休みは、あの遺跡を踏破するんだ」
シャルロがレディ・トレンティスに宣言した。
・・・おや~?
何か、驚いているぞ。
「まあ、今まで行っていなかったの?」
「だって、危ないから大人になるまで絶対に!!!行っちゃいけないって言ったじゃない」
シャルロが不満げに答える。
「いつの世も、大人は危険な場所へ行くことを禁じ、子供はその言葉を無視して忍び込むものよ。
あなたのお兄さんや従兄弟たちと同じように、シャルロもとっくのとうに忍び込んでいたと思っていたわ」
「兄さんたち、忍び込んでいたの?!」
まあ、普通そうだろうね。
シャルロの顔見る限り『忍び込む』という選択肢は欠片とも浮かんでいなかったようだが。
「そう、アシャルもカダンもダルファスもヘネサンも皆、忍び込んで・・・出れなくなって捜索隊を出す羽目になったものだわ。
あなたは迷子にならなかったのかと思ったら、忍び込んでいなかったのね」
ま、忍び込んで迷っても蒼流がいるから無事に出て来られただろうけど。
出て来られない子供たちは言いつけを破って忍び込んだのに、唯一出て来られたであろう子供だけがいい子に忍び込むのを我慢していたなんて・・・皮肉というか、シャルロらしいというか。
「ま、3人でどうどうとお弁当を持って行った方が楽しいよ、きっと」
祖母の暴露した事実に茫然としているシャルロにアレクが慰めの言葉をかけた。
「・・・そうだね。
よし、明日の朝一番に行くよ!」
シャルロが復活した。
頑張って起きてくれよ。
お前が一番朝に弱いんだから。
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