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卒業後
486 星暦554年 橙の月 14~16日 明朗会計は大切です(11)
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「国税局?」
アンディが首を傾げた。
「国民の資産は国税局の管轄なのさ。
なんと言っても、正確な資産の額の情報は正確な課税に繋がるからね。
国民や商会の資産額の把握の為にそれなりに人材を割いている役所があるんだ。態々別に資産関係の問題を管理する役所開く必要も無いだろう?
確かに名称的には微妙だが」
アレクが肩を竦めながら答えた。
へぇ~。
確かに脱税している人間がいたとしても、財産が妙に多かったら脱税が疑われるよな。
また、税金を払わずに逃げようとする人間がいたら資産差し押さえも必要な場合もあるだろうし。
債務関係の資産差し押さえまで国税局の管轄になるというのはちょっと微妙な感覚だが。
「20年近くの過払い利息の請求額なので全額はまだ完全には把握出来ていないが、金貨500枚ぐらいにはなると思う。
だからウドウ商会が破綻するとか、夜逃げするとかを心配しているのだが・・・この金額ならその緊急差し押さえ要請って出せるか?」
アンディが身を乗り出してアレクに尋ねた。
「20年前の借金の過払い利息はもう手遅れだよ。
元々債務の時効が5年だからね。
ずっと10年間利息を払い続けているという継続的債務の場合なら時効は10年まで延長されるけど。
取り敢えず、5年分の過払い利息は幾らになりそうなんだ?
金貨300枚の緊急差し押さえ要請要件を満たすのなら、要請だけ出しておいて国税局が差し押さて清算の書類確認をしている間に継続債務の10年遡る分を追加要求すれば良いと思う」
アレクがお茶のお代わりを注ぎながら答えた。
うへ~。
時効なんて物があるんだ。
じゃあ、爺さんとか父親が貸した金ってもう帰ってこないんだ??
契約書を交わしても帰ってこないなんて可哀想に。
アンディが頭を抱えた。
「マジか・・・。
ここ5年の分だけでも金貨300枚は超えると思うが、書類を見直して再計算しないと」
◆◆◆◆
「ウドウ商会!
国税局による緊急差し押さえである!」
だだだだ!と役人が先月イリスターナが飛び出してきたウドウ商会の本店に駆け込んでいった。
ウドウ商会の会頭の自宅はこの本店の奥にあるらしいので、そちらも裏から役人が回って抑えているはず。
ぼ~と見ている間に、魔術院から協力するために派遣された魔術師が敷地に結界を張り始めた。
ふ~ん。
『取り押さえ』ってまず結界を張って何も持ち出せないようにするんだ。
まあそうだよな。
一々出て行く人間の身体検査をするのは大変だ。
代わりに、出て行く人間は自分が身につけている装飾品が自分の物であることを証明出来ないと持ち出せなそうだが。
ちょうど魔術師が結界を貼り終えた所でウドウ商会の会頭が姿を現した。
「何事だ!」
国税局の役人が書類を差し出した。
「魔術院が取りまとめた魔術師による過払い金の返済要求額が金貨300枚を超えたので、緊急差し押さえ要請に基づき取り押さえを行う。
過払い金返済に使うだけの金額に相当する資産を差し押さえるが、10日以内に別の資産を提出した場合はそちらと変更出来るので変更を要求したい場合は国税局まで出頭するように」
国税局の書類と魔術院から提出された大量の過払い金返済要請書を渡されて、会頭が呆気にとられて口をパクパクしている間に俺は役人の後を追って奥に進んで行った。
「国税局の差し押さえだ!
金庫を開けるように!」
経理室らしき部屋に入った役人が身分証明の書類と記章を掲げながら大きな声で命令している。
ふ~ん。
あの程度の書類と記章があれば差し押さえって出来るんだ?
『差し押さえ詐欺』みたいので根こそぎ資産を日中に堂々と盗めそうだな。
まあ、ある意味国の権威を虚仮にするんだから、やっちまったらさっさと国を出る必要はあるだろうが。
店員達が慌てて金庫を開けているのを眺めた後、部屋の中を視て回る。
宝石って魔力が籠もって居ないことが多いので探しにくいんだけど、隠し金庫探しならば慣れたものだ。
なので店員が開けた金庫の中身を役人が確認している間に、別の中堅どころっぽい店員を捕まえて隠し金庫の前に連れて行く。
「ここも開けてくれ」
「・・・何のことでしょう?」
店員は唾を飲み込んだ後、しらを切ろうとしたが・・・俺が薄笑いを浮かべながらじっとそいつを見つめて待っていたら、諦めたように壁の横の蝋燭立てを引っ張り、飛び出してきた出っ張りに奥の机の引き出しから取り出した鍵を刺して回した。
「ほおう。
中々粒が良いのが揃っているな」
いつの間にか傍に来ていた国税局の役人が隠し金庫にあった宝石をのぞき込み、査定用に連れてきたらしき職人を呼びつけた。
一緒に入っていた書類は手に取って調べていたが。
あ~あ。
どうやら店員の顔色から鑑みるに、二重帳簿か何か、国税局の役人に見られたら都合の悪い物らしい。
こういう緊急差し押さえで脱税がばれた場合、国税局が毟り取る追加の税金や罰金って最初に差し押さえを要求した方の資産を確保してから取るんだろうか?
下手して、国税局に優先権があるとか言われるんだったら、書類が入っている隠し金庫は見つけない方が良いのか?
しまったなぁ。
先にアレクに確認しておくべきだった・・・。
【後書き】
国税局が緊急差し押さえに協力的なのは、こういう風に二重帳簿がどさくさ紛れに見つかることがあるからですw
アンディが首を傾げた。
「国民の資産は国税局の管轄なのさ。
なんと言っても、正確な資産の額の情報は正確な課税に繋がるからね。
国民や商会の資産額の把握の為にそれなりに人材を割いている役所があるんだ。態々別に資産関係の問題を管理する役所開く必要も無いだろう?
確かに名称的には微妙だが」
アレクが肩を竦めながら答えた。
へぇ~。
確かに脱税している人間がいたとしても、財産が妙に多かったら脱税が疑われるよな。
また、税金を払わずに逃げようとする人間がいたら資産差し押さえも必要な場合もあるだろうし。
債務関係の資産差し押さえまで国税局の管轄になるというのはちょっと微妙な感覚だが。
「20年近くの過払い利息の請求額なので全額はまだ完全には把握出来ていないが、金貨500枚ぐらいにはなると思う。
だからウドウ商会が破綻するとか、夜逃げするとかを心配しているのだが・・・この金額ならその緊急差し押さえ要請って出せるか?」
アンディが身を乗り出してアレクに尋ねた。
「20年前の借金の過払い利息はもう手遅れだよ。
元々債務の時効が5年だからね。
ずっと10年間利息を払い続けているという継続的債務の場合なら時効は10年まで延長されるけど。
取り敢えず、5年分の過払い利息は幾らになりそうなんだ?
金貨300枚の緊急差し押さえ要請要件を満たすのなら、要請だけ出しておいて国税局が差し押さて清算の書類確認をしている間に継続債務の10年遡る分を追加要求すれば良いと思う」
アレクがお茶のお代わりを注ぎながら答えた。
うへ~。
時効なんて物があるんだ。
じゃあ、爺さんとか父親が貸した金ってもう帰ってこないんだ??
契約書を交わしても帰ってこないなんて可哀想に。
アンディが頭を抱えた。
「マジか・・・。
ここ5年の分だけでも金貨300枚は超えると思うが、書類を見直して再計算しないと」
◆◆◆◆
「ウドウ商会!
国税局による緊急差し押さえである!」
だだだだ!と役人が先月イリスターナが飛び出してきたウドウ商会の本店に駆け込んでいった。
ウドウ商会の会頭の自宅はこの本店の奥にあるらしいので、そちらも裏から役人が回って抑えているはず。
ぼ~と見ている間に、魔術院から協力するために派遣された魔術師が敷地に結界を張り始めた。
ふ~ん。
『取り押さえ』ってまず結界を張って何も持ち出せないようにするんだ。
まあそうだよな。
一々出て行く人間の身体検査をするのは大変だ。
代わりに、出て行く人間は自分が身につけている装飾品が自分の物であることを証明出来ないと持ち出せなそうだが。
ちょうど魔術師が結界を貼り終えた所でウドウ商会の会頭が姿を現した。
「何事だ!」
国税局の役人が書類を差し出した。
「魔術院が取りまとめた魔術師による過払い金の返済要求額が金貨300枚を超えたので、緊急差し押さえ要請に基づき取り押さえを行う。
過払い金返済に使うだけの金額に相当する資産を差し押さえるが、10日以内に別の資産を提出した場合はそちらと変更出来るので変更を要求したい場合は国税局まで出頭するように」
国税局の書類と魔術院から提出された大量の過払い金返済要請書を渡されて、会頭が呆気にとられて口をパクパクしている間に俺は役人の後を追って奥に進んで行った。
「国税局の差し押さえだ!
金庫を開けるように!」
経理室らしき部屋に入った役人が身分証明の書類と記章を掲げながら大きな声で命令している。
ふ~ん。
あの程度の書類と記章があれば差し押さえって出来るんだ?
『差し押さえ詐欺』みたいので根こそぎ資産を日中に堂々と盗めそうだな。
まあ、ある意味国の権威を虚仮にするんだから、やっちまったらさっさと国を出る必要はあるだろうが。
店員達が慌てて金庫を開けているのを眺めた後、部屋の中を視て回る。
宝石って魔力が籠もって居ないことが多いので探しにくいんだけど、隠し金庫探しならば慣れたものだ。
なので店員が開けた金庫の中身を役人が確認している間に、別の中堅どころっぽい店員を捕まえて隠し金庫の前に連れて行く。
「ここも開けてくれ」
「・・・何のことでしょう?」
店員は唾を飲み込んだ後、しらを切ろうとしたが・・・俺が薄笑いを浮かべながらじっとそいつを見つめて待っていたら、諦めたように壁の横の蝋燭立てを引っ張り、飛び出してきた出っ張りに奥の机の引き出しから取り出した鍵を刺して回した。
「ほおう。
中々粒が良いのが揃っているな」
いつの間にか傍に来ていた国税局の役人が隠し金庫にあった宝石をのぞき込み、査定用に連れてきたらしき職人を呼びつけた。
一緒に入っていた書類は手に取って調べていたが。
あ~あ。
どうやら店員の顔色から鑑みるに、二重帳簿か何か、国税局の役人に見られたら都合の悪い物らしい。
こういう緊急差し押さえで脱税がばれた場合、国税局が毟り取る追加の税金や罰金って最初に差し押さえを要求した方の資産を確保してから取るんだろうか?
下手して、国税局に優先権があるとか言われるんだったら、書類が入っている隠し金庫は見つけない方が良いのか?
しまったなぁ。
先にアレクに確認しておくべきだった・・・。
【後書き】
国税局が緊急差し押さえに協力的なのは、こういう風に二重帳簿がどさくさ紛れに見つかることがあるからですw
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