シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

449 星暦554年 翠の月 20日 新しいことだらけの開拓事業(21)

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港に現れた船の船長の視点です。

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>>とある私掠船の船長

「島だ~~!!!」
マストの上の見張り役からの声が響き渡った。

「本当にこんなところに島があるんでやすね。
しっかし、こんな今まで誰も知らなかった発見されたばかりの島じゃあ幾ら開拓に頑張っていたとしても大した獲物は期待できないんじゃ無いですか?」
甲板長が声を掛けてきた。

双眼鏡を取り出して島の様子をうかがいながら肩を竦める。
「アファル王国にとっては南を経由しない新しい航路の重要な補給所らしいからな。
開拓団には政府が関わっているだろうから身代金は政府が払ってくれるだろうさ」

「もう一つの島には軍艦が2隻もいやしたからね。
アファル王国もそれなりに力を入れているということですか・・・。
ガルカ王国の上の奴らはここの開拓を遅らせたいと言うことなんでしょうね。
・・・今更、競争相手がどうなろうとあいつらには関係ないだろうに」
呆れたようにため息をつきながら甲板長が呟いた。

元々、今回の遠征は政府からの裏の依頼で行われている。
競争相手であるアファル王国の新規航路の開拓を出来るだけ邪魔するために、その補給所の開拓団を殺すか人質にとって身代金を要求することでこれからの開拓を阻害しろという依頼だった。

今までにもガルカ王国の命令で特定の港町や船を狙ったことはあったが・・・実は甲板長の予想とは違い、今回の依頼主はガルカ王国では無い。
甲板長も言っているように、既にガルカ王国は終わっている。今更その上層部の依頼なんぞ請けて他の国と敵対するのは愚の骨頂だ。

ほとぼりが冷めるまで適当にどこか違う場所に移動しておこうと思っていたら、ザルガ共和国の有力な商会から密かに連絡が入ったのだ。

アファル王国の新規航路を潰す・・・とまで言わなくてもその補給所の開拓を妨害すれば、今までにガルカ王国の下で行ってきた略奪行為を許し、戦争が終わったらザルガ共和国の私掠船として働くことを許すと持ちかけられた。

勿論、今回の略奪行為が『ガルカ王国の指示』の下で行った事にするのも密約の条件の一つだ。
どうやら、ザルガ共和国はガルカ王国を打ち破ってそこを占領する羽目になった以上、交易の経済的競争力をどさくさ紛れに出来るだけ高めるつもりらしい。

己からは攻め込まないのに周辺国から恐れられるザルガ共和国の怖さの一片が見えた気がする。
これで失敗してザルガ共和国の関与を漏らしたら、密かに殺されちまうんだろうなぁ・・・。
そんなことを考えて、思わずため息をつきながら甲板長に襲撃の準備をするように伝えた。


まだ西の大陸では眉唾な噂としか流れていないこの新航路の新規補給島は、思ったよりも開発が進んでいるようだった。

既に町らしき形が出来上がっており、町の周りには防御壁が設置され、どうやら用水路らしき水の流れも見える。
「一体いつからここは開拓されているんだ??」
双眼鏡で見回しながら思わず疑問がこぼれた。

「ここ数ヶ月ほど、アファル王国からの船が減っていたのってガルカ王国との関係がきな臭くなってきたからだと思っていたんでやすが、新規航路とこの島が見つかったからだったんですかね?」
甲板長が肩を竦めながら質問を返してきた。

あんな防御壁や用水路を完成するには何ヶ月というよりは数年かかりそうなものだが・・・。
短期間で工事を終わらせるために大がかりにやっているにしては、港に中型の交易船1隻しか見当たらないのは意外だ。
人海戦術でやったのだとしたらそれだけの人数を食わせる為にもっと輸送船が必要になるはず。
それとも、偶々補給の船が出たタイミングなのだろうか?
あまりにも働いている人間の数が多すぎたら、それを人質に取るのも補給が問題になってくる。

頭が痛い・・・。

「渡された大型弩砲を使うぞ!
火を準備しろ!」
投石機をちょっと工夫して船に搭載できるようにしたような大型弩砲に、今回使うよう渡されたタレスの涙を入れた小さな壺を設置して飛ばす準備を始める。

ザルガ共和国も大したもんだ。
ガルカ王国の仕業だと思わせるために、態々高額のタレスの涙まで入手して渡してくるのだから。

「準備できやした~!」
「こっちもです!」
「・・・出来ました!!」

3機の大型弩砲の準備が整った。
「よ~し、もう少し進んで港が射程距離に入ったら打つぞ!
命令を待て!」

風を受けて船がゆっくりと湾の中に入っていく。
偶々かも知れないが、中々良い感じに風が吹く。
港として、悪くない地形だ。
折角開拓し始めた町を焼き払うのは残念だと思うが・・・これも生きるためにはしょうが無いことなのだ。
出来るだけ、人質にして身代金を請求するから開拓民達は殺すなとは言ってある。
タレスの涙の直撃を受けたりしなければ、港町なのだ。町が火に飲まれても死なない可能性は高いだろう。

「よ~し、あと・・・」
10メタ進んだら放て!と言おうとしたところで、突然船がガクンと止った。




【後書き】
入港してきた船の視点です。
ザルガ共和国は交易に頼るので他の国を侵攻したりはしないけど、金儲けのためならそれなりに悪辣なことを平気でします。

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