447 / 1,038
卒業後
446 星暦554年 青の月 6日 新しいことだらけの開拓事業(18)
しおりを挟む
「そういえば、休みの間はラフェーンと一緒に島を廻って薬草探ししていたんじゃなかったのか?」
ふと、休み前のアレクの予定を思い出して尋ねてみた。
「母から通信機に呼び出しが入ってね。
結局船で領事館へ行って転移門で戻ることになった。
『折角の休みなんだから、転移門を使えるアレクにちょっとやって欲しいことがあるの』と言われて国中どころか国外まで飛ぶ羽目になって大変だったよ・・・」
げっそりとした顔をしながらアレクが答えた。
うへぇ~。
流石セビウス氏の母君。
情報収集はセビウス氏の担当だと思ったが、何か母君が危機感を抱くようなことを聞いたのかな?
「シャルロに頼んで、パストン島に船が近づいたら問答無用で港の沖へ動かすようにして貰っている。
この島に来たことがあって蒼流がマーカーを付けたアファル王国の船長が乗っていたらそのまま入港出来るが、知らない船長の場合は確認が取れるまで足止めと言うことになっているので、船が乗っ取られて船長が脅されているとでも言う場合じゃない限り、この島は大丈夫だと思う。
アレグ島に関しては・・・どうするかちょっと悩ましい」
ため息をつきながらアレクが付け加えた。
おっとぉ。
既に早期警戒に関しては手を打ってあるんだな。
「アレグ島は2刻ぐらいでたどり着く距離まで船が近づいたら警告するという形にすれば、それで良いんじゃないか?
あそこは軍艦が待機しているんだろ?」
警告そのものをどうやってするかが微妙な所だが。
「大きな銅鑼でも港に吊して貰っておいたらどうかな?
船が近づいたらそれを蒼流が鳴らすことにすれば良いんじゃない?」
シャルロが提案した。
「蒼流がアレグ島の回りを警戒しているんだったら、パストン島は清早に頼んでおこうか?」
蒼流の能力だったら両方をやっても全く負担にならないのかも知れないが。
どうなのかな?
そんなことを考えていたら、突然蒼流がシャルロの横に現れた。
『問題無い。
シャルロの身を守るための警戒なのだ。私がやっておく』
おう。
そうですか。
『俺だって出来るよ~~!!』
清早が負けじと姿を現して主張した。
「アレグ島は蒼流に頼んで、パストン島はシャルロかウィルの港に近い方の精霊に頼んだら良いんじゃないか?
こちらは入港した船の対応をする必要があるかも知れないから、港から離れていた場合は他の人間が待たされることになる」
ちょっと話し合った結果、アレクの提案で話が纏まった。
蒼流がシャルロに関してこの上なく過保護なのは知っていたが、清早もここまで熱心に俺を守ろうとしてくれるとは知らなかった。
ちょっとくすぐったい気分だ。
しっかし。
戦争かぁ・・・。
「何とも迷惑な話だな。
ガルカ王国なんかと戦争した所で、勝っても補償金なんぞあの国が払えるとは思えないし、かといって国土の一部をこちらに譲られたところでそんな住民が飢えている様な土地ではあまり得るものは無いんじゃないのか?
それとも、アファル王国寄りに何か使い勝手のいい鉱山でもあったりしたっけ?」
イマイチ地理は興味が無かったのでアファル王国内のことならまだしも、周辺国の事なんぞ何も憶えていない。
アレクが肩を竦めた。
「ガルカ王国の資金源の殆どは南方航路を使った交易だ。
だからこそ、アファル王国がこの新しい航路を本格的に使い始めたら戦争をふっかけざるを得ないんじゃないか?」
シャルロが首をかしげながら尋ねた。
「だけど、戦争を仕掛けたところでアファル王国を完全に征服できるなんて事は絶対に無いよね?
例えよっぽど悪どい事でもして南部の領地を占領したところで、この新しい航路は王都から出ているんだから新規航路の交易は影響を受けないし。
戦争しても意味は無くない?」
「内乱が起きそうなら、取り敢えず内部の不満を外に向けさせるために戦争をするんだろうよ。
それで不満をため込んだ平民の数を削れば王族の支配が強まる可能性もあるし」
時間さえあれば、タレスの涙を作って金儲けも出来なくは無いしな。
シャルロが眉をひそめた。
「迷惑だね~。
取り敢えず、こっちに来にくいように、ガルカ王国の北へ進む街道近辺で雨を降らして泥だらけにして兵を動かしにくいようにしておく?」
おい。
国境を雨で塞ぐつもりかよ???
流石に雨が降った程度で戦争をふっかける相手を変えさせるのは無理じゃないか?
常にアファル王国との間の道沿いで雨が降っているので兵を動かし難いということが『常識』ならまだしも、向こうの人間にとっては『偶々偶然』雨が降っているだけという状況だったら、無視して兵を動かすだろう。
しっかし。
上級精霊の力って凄すぎる・・・。
「実際にアファル王国に攻め込んできたという知らせが入ったら、援軍が来れないようにガルカ王国内で雨を降らしまくるというのも手だと思う。
だが、現時点では下手に手を出して余計ガルカ王国の貧窮状態を悪化させない方が良いだろうな。
きっと軍の情報部がガルカ王国のターゲットを他の国にさせるよう頑張ってくれているだろうさ」
少なくとも、そう願いたいね。
【後書き】
シャルロ君が何気に無敵で怖いw
ふと、休み前のアレクの予定を思い出して尋ねてみた。
「母から通信機に呼び出しが入ってね。
結局船で領事館へ行って転移門で戻ることになった。
『折角の休みなんだから、転移門を使えるアレクにちょっとやって欲しいことがあるの』と言われて国中どころか国外まで飛ぶ羽目になって大変だったよ・・・」
げっそりとした顔をしながらアレクが答えた。
うへぇ~。
流石セビウス氏の母君。
情報収集はセビウス氏の担当だと思ったが、何か母君が危機感を抱くようなことを聞いたのかな?
「シャルロに頼んで、パストン島に船が近づいたら問答無用で港の沖へ動かすようにして貰っている。
この島に来たことがあって蒼流がマーカーを付けたアファル王国の船長が乗っていたらそのまま入港出来るが、知らない船長の場合は確認が取れるまで足止めと言うことになっているので、船が乗っ取られて船長が脅されているとでも言う場合じゃない限り、この島は大丈夫だと思う。
アレグ島に関しては・・・どうするかちょっと悩ましい」
ため息をつきながらアレクが付け加えた。
おっとぉ。
既に早期警戒に関しては手を打ってあるんだな。
「アレグ島は2刻ぐらいでたどり着く距離まで船が近づいたら警告するという形にすれば、それで良いんじゃないか?
あそこは軍艦が待機しているんだろ?」
警告そのものをどうやってするかが微妙な所だが。
「大きな銅鑼でも港に吊して貰っておいたらどうかな?
船が近づいたらそれを蒼流が鳴らすことにすれば良いんじゃない?」
シャルロが提案した。
「蒼流がアレグ島の回りを警戒しているんだったら、パストン島は清早に頼んでおこうか?」
蒼流の能力だったら両方をやっても全く負担にならないのかも知れないが。
どうなのかな?
そんなことを考えていたら、突然蒼流がシャルロの横に現れた。
『問題無い。
シャルロの身を守るための警戒なのだ。私がやっておく』
おう。
そうですか。
『俺だって出来るよ~~!!』
清早が負けじと姿を現して主張した。
「アレグ島は蒼流に頼んで、パストン島はシャルロかウィルの港に近い方の精霊に頼んだら良いんじゃないか?
こちらは入港した船の対応をする必要があるかも知れないから、港から離れていた場合は他の人間が待たされることになる」
ちょっと話し合った結果、アレクの提案で話が纏まった。
蒼流がシャルロに関してこの上なく過保護なのは知っていたが、清早もここまで熱心に俺を守ろうとしてくれるとは知らなかった。
ちょっとくすぐったい気分だ。
しっかし。
戦争かぁ・・・。
「何とも迷惑な話だな。
ガルカ王国なんかと戦争した所で、勝っても補償金なんぞあの国が払えるとは思えないし、かといって国土の一部をこちらに譲られたところでそんな住民が飢えている様な土地ではあまり得るものは無いんじゃないのか?
それとも、アファル王国寄りに何か使い勝手のいい鉱山でもあったりしたっけ?」
イマイチ地理は興味が無かったのでアファル王国内のことならまだしも、周辺国の事なんぞ何も憶えていない。
アレクが肩を竦めた。
「ガルカ王国の資金源の殆どは南方航路を使った交易だ。
だからこそ、アファル王国がこの新しい航路を本格的に使い始めたら戦争をふっかけざるを得ないんじゃないか?」
シャルロが首をかしげながら尋ねた。
「だけど、戦争を仕掛けたところでアファル王国を完全に征服できるなんて事は絶対に無いよね?
例えよっぽど悪どい事でもして南部の領地を占領したところで、この新しい航路は王都から出ているんだから新規航路の交易は影響を受けないし。
戦争しても意味は無くない?」
「内乱が起きそうなら、取り敢えず内部の不満を外に向けさせるために戦争をするんだろうよ。
それで不満をため込んだ平民の数を削れば王族の支配が強まる可能性もあるし」
時間さえあれば、タレスの涙を作って金儲けも出来なくは無いしな。
シャルロが眉をひそめた。
「迷惑だね~。
取り敢えず、こっちに来にくいように、ガルカ王国の北へ進む街道近辺で雨を降らして泥だらけにして兵を動かしにくいようにしておく?」
おい。
国境を雨で塞ぐつもりかよ???
流石に雨が降った程度で戦争をふっかける相手を変えさせるのは無理じゃないか?
常にアファル王国との間の道沿いで雨が降っているので兵を動かし難いということが『常識』ならまだしも、向こうの人間にとっては『偶々偶然』雨が降っているだけという状況だったら、無視して兵を動かすだろう。
しっかし。
上級精霊の力って凄すぎる・・・。
「実際にアファル王国に攻め込んできたという知らせが入ったら、援軍が来れないようにガルカ王国内で雨を降らしまくるというのも手だと思う。
だが、現時点では下手に手を出して余計ガルカ王国の貧窮状態を悪化させない方が良いだろうな。
きっと軍の情報部がガルカ王国のターゲットを他の国にさせるよう頑張ってくれているだろうさ」
少なくとも、そう願いたいね。
【後書き】
シャルロ君が何気に無敵で怖いw
0
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる