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卒業後
433 星暦554年 紺の月 22日 新しいことだらけの開拓事業(5)
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「港の傍に倉庫と宿が必要ですね。
商店や宿屋も港に近いほうが便利だし。
反対に、一般市民は荒っぽい船乗りが歩き回る港の傍よりももっと奥に住む方が安心できるはずでしょう」
パストン島の地形図と、南側の港を作る地域の地図を船室で広げながら、ジャレットが部下や俺達と話し合いながら色々町の構造に関して計画していた。
取り敢えずは何をどこにするかを決めるために、木でできた建物っぽい何かを示すマーカーを港町のあちこちに置いている。
明日辺りに島に着くはずなので、色々と町の計画も詳細になってきている。
「島で農産物を生産するなら、それを受け入れるための倉庫を外側の傍にでも造る必要があるのでは?
島の住人もそういった農作物を利用するでしょうし、その分までも全部町を通って港の傍の倉庫に集めるのは非効率的です」
アレクが島の地図を示しながら提案した。
「確かに。
初期はそれこそ市民農園みたいのを街の外に造って各自で育てて物々交換してもらうのをメインにするとしても、畜産の方は現存する野原を使って比較的早い段階からそこそこの規模で始めることになっているはずだから、畜殺所や連れてきた家畜を入れておく場所も必要だし」
ジャレットが頷きながら袋の中をあさり、それらの設備を表しているらしきマーカーを取り出して、港の反対側に置いた。
「お祭りとかも出来るように、港からも住宅街からも来やすい場所に広場とか造った方がよくない?」
シャルロが声を上げた。
祭りを開く必要があるのかは知らないが、住民を集めて何か発表しなければならない場合もあるだろう。それに祭りだって経済効果は馬鹿に出来ない。
ある意味、祭りを面白いものにしたら観光地として客を呼び込めるかもしれないし。
もっとも、客を呼び込んで儲けるには食料自給率を上げたほうが良さそうだが。
一々船で不特定多数の観光客用の食糧まで輸送していたら高くつく。
・・・そうなると野菜用の畑も広げたほうが良いのかなぁ?
パストン島って危険な肉食獣はいたのか?いるとしたら畑を囲む塀が必要になるからかなり話が大きくなるかもしれない。
いや、掘と壁をセットで作ればあまり労力をかけずにアスカに頼めるか・・・。
「ちなみに、町や畑の周りに防壁は必要なのか?
俺達がいた時は特に危険な動物は見当たらなかったが、その後そういうのは発見された?」
俺の問いに、ジャレットが肩を竦めた。
「とりあえず危険な大型の肉食獣はいないらしいですが・・・なんといっても島には比較的簡単に上陸できる地形がいくつもありますからね。
島を攻められた時のことを考えて町は防壁で囲っておく必要があるでしょう」
あ~。
東大陸のどこかの国とか、海賊が略奪に来る危険があるのか。
「まあ、アスカに頼んで堀の分のへこました土を塀にする形で作業すれば、それなりに手間をかけずに防壁は出来ると思うから、その手間だけを考えて町を小さく設計しないで良いと思うぞ」
流石に、危険な動物がいないなら畑の部分は防壁の外にしてもらいたいが。
・・・つうか、こういう場合の防壁ってどの位の高さが必要なんだ??
大人の背の高さの倍以上で上に人が歩けるような壁なんてことになるとちょっと大変かも知れない。
「そう言えば、水は水源の泉のところから引いてくるの?
それとも井戸で全部賄う予定?」
シャルロが訊ねた。
折角島にはそこそこ大きな泉があるのだ。
ちょっと内陸なので傍に街を造るのはいまいち向いていないが、あれを何かに使わなければ勿体ないな。
まあ、いつの日かパストン島が大いに開拓されてにぎわってきたらあの泉の傍に第2の町を造っても良いかもしれないが。
ジャレットが苦笑いした。
「泉の水を街まで引けたら色々と便利だと思いますが、流石に用水路を造るのには時間と労力がかかりすぎますからね。
町での飲料水はそれこそ井戸の水が足りなければ魔道具を使って海水から抽出することも可能ですし。
用水路はもっとずっと後の代官が、王家から予算を貰ってやっていくことになると思います」
シャルロが首を傾げた。
「必要なの?
あった方が良いんだったら、蒼流に頼んで水を通してもらうよ?」
ははは。
水の力で用水路を削り出すか。
まあ、水には岩をも抉り抜く力があると言うからな。
アスカのとは違い、直接土に働きかけるのではない力だが、なんといっても蒼流の力は桁違いなのだ。水で地面を削って用水路を作るのも十分可能なのだろう。
水漏れしないように用水路に手を加える必要はあるだろうが。
それとも、ある程度は水漏れさせちゃってそれを畑にでも使うか?
いや、畑だってずっと水が漏れてきていたら植物が根腐れしそうだ。
ちゃんと用水路の設計を考えたほうが良いんだろうな。
・・・そこら辺のことも、ジャレットはちゃんと知っているんかね?
頑張ってくれよ、現場監督!
【後書き】
シャルロとウィル君が開拓無双中w
商店や宿屋も港に近いほうが便利だし。
反対に、一般市民は荒っぽい船乗りが歩き回る港の傍よりももっと奥に住む方が安心できるはずでしょう」
パストン島の地形図と、南側の港を作る地域の地図を船室で広げながら、ジャレットが部下や俺達と話し合いながら色々町の構造に関して計画していた。
取り敢えずは何をどこにするかを決めるために、木でできた建物っぽい何かを示すマーカーを港町のあちこちに置いている。
明日辺りに島に着くはずなので、色々と町の計画も詳細になってきている。
「島で農産物を生産するなら、それを受け入れるための倉庫を外側の傍にでも造る必要があるのでは?
島の住人もそういった農作物を利用するでしょうし、その分までも全部町を通って港の傍の倉庫に集めるのは非効率的です」
アレクが島の地図を示しながら提案した。
「確かに。
初期はそれこそ市民農園みたいのを街の外に造って各自で育てて物々交換してもらうのをメインにするとしても、畜産の方は現存する野原を使って比較的早い段階からそこそこの規模で始めることになっているはずだから、畜殺所や連れてきた家畜を入れておく場所も必要だし」
ジャレットが頷きながら袋の中をあさり、それらの設備を表しているらしきマーカーを取り出して、港の反対側に置いた。
「お祭りとかも出来るように、港からも住宅街からも来やすい場所に広場とか造った方がよくない?」
シャルロが声を上げた。
祭りを開く必要があるのかは知らないが、住民を集めて何か発表しなければならない場合もあるだろう。それに祭りだって経済効果は馬鹿に出来ない。
ある意味、祭りを面白いものにしたら観光地として客を呼び込めるかもしれないし。
もっとも、客を呼び込んで儲けるには食料自給率を上げたほうが良さそうだが。
一々船で不特定多数の観光客用の食糧まで輸送していたら高くつく。
・・・そうなると野菜用の畑も広げたほうが良いのかなぁ?
パストン島って危険な肉食獣はいたのか?いるとしたら畑を囲む塀が必要になるからかなり話が大きくなるかもしれない。
いや、掘と壁をセットで作ればあまり労力をかけずにアスカに頼めるか・・・。
「ちなみに、町や畑の周りに防壁は必要なのか?
俺達がいた時は特に危険な動物は見当たらなかったが、その後そういうのは発見された?」
俺の問いに、ジャレットが肩を竦めた。
「とりあえず危険な大型の肉食獣はいないらしいですが・・・なんといっても島には比較的簡単に上陸できる地形がいくつもありますからね。
島を攻められた時のことを考えて町は防壁で囲っておく必要があるでしょう」
あ~。
東大陸のどこかの国とか、海賊が略奪に来る危険があるのか。
「まあ、アスカに頼んで堀の分のへこました土を塀にする形で作業すれば、それなりに手間をかけずに防壁は出来ると思うから、その手間だけを考えて町を小さく設計しないで良いと思うぞ」
流石に、危険な動物がいないなら畑の部分は防壁の外にしてもらいたいが。
・・・つうか、こういう場合の防壁ってどの位の高さが必要なんだ??
大人の背の高さの倍以上で上に人が歩けるような壁なんてことになるとちょっと大変かも知れない。
「そう言えば、水は水源の泉のところから引いてくるの?
それとも井戸で全部賄う予定?」
シャルロが訊ねた。
折角島にはそこそこ大きな泉があるのだ。
ちょっと内陸なので傍に街を造るのはいまいち向いていないが、あれを何かに使わなければ勿体ないな。
まあ、いつの日かパストン島が大いに開拓されてにぎわってきたらあの泉の傍に第2の町を造っても良いかもしれないが。
ジャレットが苦笑いした。
「泉の水を街まで引けたら色々と便利だと思いますが、流石に用水路を造るのには時間と労力がかかりすぎますからね。
町での飲料水はそれこそ井戸の水が足りなければ魔道具を使って海水から抽出することも可能ですし。
用水路はもっとずっと後の代官が、王家から予算を貰ってやっていくことになると思います」
シャルロが首を傾げた。
「必要なの?
あった方が良いんだったら、蒼流に頼んで水を通してもらうよ?」
ははは。
水の力で用水路を削り出すか。
まあ、水には岩をも抉り抜く力があると言うからな。
アスカのとは違い、直接土に働きかけるのではない力だが、なんといっても蒼流の力は桁違いなのだ。水で地面を削って用水路を作るのも十分可能なのだろう。
水漏れしないように用水路に手を加える必要はあるだろうが。
それとも、ある程度は水漏れさせちゃってそれを畑にでも使うか?
いや、畑だってずっと水が漏れてきていたら植物が根腐れしそうだ。
ちゃんと用水路の設計を考えたほうが良いんだろうな。
・・・そこら辺のことも、ジャレットはちゃんと知っているんかね?
頑張ってくれよ、現場監督!
【後書き】
シャルロとウィル君が開拓無双中w
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