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卒業後
401 星暦554年 藤の月 21日 旅立ち?(42)
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「一応領事館として、ゼブとやらに話を通すことになった。
案内してくれ」
早朝に姿を現したバルダンに今日の予定を話す。
と言っても、こいつのレベルではどう話を付けるかなんて分かってないだろうけど。
「え??」
面食らったようにこちらを見つめるバルダンのおでこを指ではたく。
「ほら、目を覚ませ。
お前の当たり役がぎゃあぎゃあ言ってこないように、ついでに話も通しておいてやるからゼブに繋ぎを取りたい時に行くような酒場なり店なりへ連れて行け」
まあ、顔役の繋ぎだったら酒場だろうなぁ。
それともこの街だったら香辛料の店だったりする可能性もあるか?
流石に情報に聡いだけあって、バルダンもここまで説明すると何を求められているのか分かったようだ。
「こっちの酒場で右腕のダブに連絡が取れるって話だぜ」
さっと歩き始める。
朝っぱらから酒場に人が居るのかは不明だが。
まあ、誰かはいるだろう。
顔役との繋ぎとしての役割があるのだったら、『夜にならないと連絡取れない』では話にならない。
「お前さんがそれなりに見所があると思うから態々話を通すんだからな?
ちゃんと恩に着て、誠実に俺たちや他の領事館の人間と対応していけよ?」
ここまでやって、あの当たり役みたいな大人になられたら話にならんからな。
「誠実にって・・・どういうこと?」
バルダンが微妙に困った顔をしてこちらを見た。
おいおい。
去年までは親元にいたんだろう?
『誠実』の意味ぐらい分かっていても良いと思うが。
もっとも、借金を払えなくなったら子供を捨てて逃げるような親だからな。『誠実』なんてものと全く縁が無かったのかもしれない。
「俺たちに嘘をつくな。
無理なことは無理と言って良い。知り合いに儲け話を持って行くのも構わん。
だが、繋ぐ相手がお前にとっての身内だとちゃんと前もってこちらにも伝えろ。
誰かが領事館の人間を騙そうとか害そうとしているのに気が付いたら、教えろ。
そんなところかな?
ぼろ儲けに繋がる話を見つけたら高めの報酬を請求しても良いが、お前が騙されたことで俺たちまで損をしないように、うまい話っていうのは疑ってかかれよ」
まあ、こんなガキが持ってくる情報だ。
そうそう美味しい話なんて無いってことは交易に来る人間だって分かっているだろうが。
それでも、ある意味ガキだからこそ、大人を騙すような知恵が無いと決めつける阿呆もいるからな。
「ふうん。
その程度で良いんだ。
だったらまあ、あんたの言う『セイジツ』な対応をしてやるよ」
肩を竦めながらバルダンが答えた。
・・・本当に誠実と言う言葉と縁が無かったようだな。
まあ、裏社会の場合は『誠実』なんて小っ恥ずかしい言葉は使わないか。
「ここだぜ」
街中に溶け込んだ酒場の前でバルダンが足を止めた。
一見普通の店だが、壁と扉はかなり頑丈に出来ている。
入ろうとするバルダンの肩に手を置いて引き留め、心眼(しんがん)で建物をじっくりと観察する。
ふむ。
奥の部屋が隣の服屋に繋がっているのか。
地下にあるのは・・・隠し部屋だが金庫と机だけで地下道とかには繋がっていないな。
・・・というか、考えてみたらこの街であまり地下道って見ないな。下水の整備がそこまでされていないのか?
保管用に地下室がある家は多いし、隣同士の家の地下室を繋いでいる場所も多いが、大々的な地下通路や下水道の様な設備は見当たらない。
建物も2階建てかせいぜい3階建てなので、屋根の上を歩き回ってもそれなりに目立つ。
人口密度がそこまで高くないのか、街が横に広がっているせいで密かに誰かの後をつけたり組織の隠れ家に忍び込んだりするのにはあまり向いてない街だ。
「どうすんだよ?」
黙ってじっと立っている俺に待ちくたびれたのか、バルダンが声を掛けてくる。
まあ、これ以上見ていてもしょうが無いな。
別に今晩忍び込んで金庫の中身を確認する必要もなさそうだし。
「入ろう」
明らかに営業はしていないものの、酒場の扉は押したら開いた。
「開店してないよ」
無愛想な声が中から聞こえてきた。
「先日船で西の大陸から来た一団の者だ。
ダゲル家が抑えていた物件を借り上げて領事館として長期的にこちらの街で交易をする予定なのでな。
ゼブに話を通しておこうと思ったのだが・・・不要だったか?」
バーの酒の確認をしていたらしき男が、こちらを振り返った。
「・・・入って扉を閉めな」
まあ、そうだよな。
逆光になってそちらからじゃあ俺の顔が見えないだろう。
さて、何人に話をしたらゼブまでたどり着くんだろうね?
【後書き】
アファル王国の王都はそれなりに古いし人口密度も高いので色々と抜け道や地下道やがある上に、建物も上にも広がっていて身軽な人間には人目に付かずに動きやすい場所なんですね~。
それに慣れてるウィル君としては、こちらの街はちょっと動きづらいです。
案内してくれ」
早朝に姿を現したバルダンに今日の予定を話す。
と言っても、こいつのレベルではどう話を付けるかなんて分かってないだろうけど。
「え??」
面食らったようにこちらを見つめるバルダンのおでこを指ではたく。
「ほら、目を覚ませ。
お前の当たり役がぎゃあぎゃあ言ってこないように、ついでに話も通しておいてやるからゼブに繋ぎを取りたい時に行くような酒場なり店なりへ連れて行け」
まあ、顔役の繋ぎだったら酒場だろうなぁ。
それともこの街だったら香辛料の店だったりする可能性もあるか?
流石に情報に聡いだけあって、バルダンもここまで説明すると何を求められているのか分かったようだ。
「こっちの酒場で右腕のダブに連絡が取れるって話だぜ」
さっと歩き始める。
朝っぱらから酒場に人が居るのかは不明だが。
まあ、誰かはいるだろう。
顔役との繋ぎとしての役割があるのだったら、『夜にならないと連絡取れない』では話にならない。
「お前さんがそれなりに見所があると思うから態々話を通すんだからな?
ちゃんと恩に着て、誠実に俺たちや他の領事館の人間と対応していけよ?」
ここまでやって、あの当たり役みたいな大人になられたら話にならんからな。
「誠実にって・・・どういうこと?」
バルダンが微妙に困った顔をしてこちらを見た。
おいおい。
去年までは親元にいたんだろう?
『誠実』の意味ぐらい分かっていても良いと思うが。
もっとも、借金を払えなくなったら子供を捨てて逃げるような親だからな。『誠実』なんてものと全く縁が無かったのかもしれない。
「俺たちに嘘をつくな。
無理なことは無理と言って良い。知り合いに儲け話を持って行くのも構わん。
だが、繋ぐ相手がお前にとっての身内だとちゃんと前もってこちらにも伝えろ。
誰かが領事館の人間を騙そうとか害そうとしているのに気が付いたら、教えろ。
そんなところかな?
ぼろ儲けに繋がる話を見つけたら高めの報酬を請求しても良いが、お前が騙されたことで俺たちまで損をしないように、うまい話っていうのは疑ってかかれよ」
まあ、こんなガキが持ってくる情報だ。
そうそう美味しい話なんて無いってことは交易に来る人間だって分かっているだろうが。
それでも、ある意味ガキだからこそ、大人を騙すような知恵が無いと決めつける阿呆もいるからな。
「ふうん。
その程度で良いんだ。
だったらまあ、あんたの言う『セイジツ』な対応をしてやるよ」
肩を竦めながらバルダンが答えた。
・・・本当に誠実と言う言葉と縁が無かったようだな。
まあ、裏社会の場合は『誠実』なんて小っ恥ずかしい言葉は使わないか。
「ここだぜ」
街中に溶け込んだ酒場の前でバルダンが足を止めた。
一見普通の店だが、壁と扉はかなり頑丈に出来ている。
入ろうとするバルダンの肩に手を置いて引き留め、心眼(しんがん)で建物をじっくりと観察する。
ふむ。
奥の部屋が隣の服屋に繋がっているのか。
地下にあるのは・・・隠し部屋だが金庫と机だけで地下道とかには繋がっていないな。
・・・というか、考えてみたらこの街であまり地下道って見ないな。下水の整備がそこまでされていないのか?
保管用に地下室がある家は多いし、隣同士の家の地下室を繋いでいる場所も多いが、大々的な地下通路や下水道の様な設備は見当たらない。
建物も2階建てかせいぜい3階建てなので、屋根の上を歩き回ってもそれなりに目立つ。
人口密度がそこまで高くないのか、街が横に広がっているせいで密かに誰かの後をつけたり組織の隠れ家に忍び込んだりするのにはあまり向いてない街だ。
「どうすんだよ?」
黙ってじっと立っている俺に待ちくたびれたのか、バルダンが声を掛けてくる。
まあ、これ以上見ていてもしょうが無いな。
別に今晩忍び込んで金庫の中身を確認する必要もなさそうだし。
「入ろう」
明らかに営業はしていないものの、酒場の扉は押したら開いた。
「開店してないよ」
無愛想な声が中から聞こえてきた。
「先日船で西の大陸から来た一団の者だ。
ダゲル家が抑えていた物件を借り上げて領事館として長期的にこちらの街で交易をする予定なのでな。
ゼブに話を通しておこうと思ったのだが・・・不要だったか?」
バーの酒の確認をしていたらしき男が、こちらを振り返った。
「・・・入って扉を閉めな」
まあ、そうだよな。
逆光になってそちらからじゃあ俺の顔が見えないだろう。
さて、何人に話をしたらゼブまでたどり着くんだろうね?
【後書き】
アファル王国の王都はそれなりに古いし人口密度も高いので色々と抜け道や地下道やがある上に、建物も上にも広がっていて身軽な人間には人目に付かずに動きやすい場所なんですね~。
それに慣れてるウィル君としては、こちらの街はちょっと動きづらいです。
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