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卒業後
399 星暦554年 藤の月 20日 旅立ち?(40)
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取り敢えずは喫茶店だ。
そこへ向いながらバルダンに裏社会の事を尋ねる。
「この街の裏社会の構造ってどうなっているんだ?」
下っ端過ぎて顔役に存在すら知られていないだろうが、こいつが上のことは知っている可能性は高いだろう。
周りのことに注意を払って情報を集めるだけの知恵があるみたいだからな。
それだけ賢いのにあんな阿呆の当たり役と組んでいたことが不思議だが。
バルダンが肩を竦めた。
「どうって・・・。西と北には顔役がいて、南と東は勢力争いがしょっちゅう起きていて流動的っていうところ?」
おっとぉ。
職業的に分かれている訳じゃあ無いのか。
領事館がある西は顔役が決まっているのは良かった。一人に話を通せば済むなら早い。
「西の顔役ってどんな奴だ?
ここらが縄張りだと言うが、普通の商家とかとどう関わっているんだ?」
バルダンがわざとらしくため息をついて見せた。
「そんなもん、俺みたいな下っ端が関わっている訳ないだろ~」
知らないんだったらその差し出している左手は何なんだよ?
ため息をつきながら大銅貨を一枚放り投げる。
はっきり言って、これは俺たちの為と言うよりも、こいつがこれから役に立てるように手配するための情報だ。銀貨を払う価値はない。
銀貨を貰えなきゃ言わないと言うんだったら、さっきの当たり屋や他の裏社会の大人相手に頑張るんだな。
そう思っていたが、流石にバルダンもここで欲をかくべきでは無いと察したのか、大銅貨を懐にささっとしまい込んで話し始めた。
「西の顔役はゼブって言うんだ。
ゼブは基本的に出てこないで、右腕のダブと左腕のカダがゼブの命令を伝えるって話だ。
ゼブに金を払っておけば、他の人間が荒らしに来たら追い払ってくれる。
北のギュームは契約しない商家には組織の下っ端の人間を嫌がらせに送り込むらしいけど、ゼブはそこまではしない。
西の人間が契約していない商家を狙っても止めないけどね。
あと、荒らしが起きてからゼブに頼むと契約料が倍になるらしいぜ」
ふむ。
商家に契約するよう『説得』の為に下っ端を送り込まないとは良心的だな。
もっとも、アファル王国の領事館だったら別に店ではないから『荒らし』の心配は低いだろう。
嫌がらせを送り込まないタイプなら特に接触しておく必要はないか?
問題はバルダンの方だな。
「商家との関係は分かったが、裏社会の人間と顔役の関係はどうなってるんだ?
例えば、お前の当たり役の男はゼブに何か収めてるのか?」
あんな見る目のないスリの当たり屋からの上がりなんて大した額じゃあないだろうが、ゼブの下であると認識させるためにも上納金は取っているだろう。
「あいつか?
まあ、少しは治めているんだろうね。
部下だって自慢していたから」
肩を竦めながらバルダンが答える。
う~ん、こいつ、肝心の裏社会に関してちょっと疎くないか?
「お前、いつからスリ始めたんだ?
あまり裏社会に関して詳しくないみたいだが」
「去年の夏の終わりだよ。
借金が払えなくって親が姿を消したんだ。
街でゴミあさりやかっぱらいをしていたら、他の奴らにもっと良い方法があるって言われて着いていったらあいつの所だったんだ。
まあ、スリのやり方とか教えてくれるし標的の注意を逸らしてくれるから上がりの半分を取られてもしょうが無いと思っていたんだけど・・・。
あんたに捕まった時にあいつはさっさと逃げたからな。
あんた達から貰う金は俺のものだ」
ぺっ唾を地面に吐いてからバルダンが答えた。
親がとんずらして浮浪児になったのか。
珍しくない話だが・・・借金のカタに奴隷商人に売られなかったのは幸運だったな。
去年の夏の終わりにゴミあさりから始めたのだったら、確かにスリはまだ素人に毛が生えた程度でも不思議はない。
あの調子じゃあもっと上手くなる前にそのうち捕まった可能性の方が高かっただろうが。
それはともかく。
「じゃあ、西でスリや窃盗をしている人間でゼブに上がりを払っていない人間はどうなるんだ?」
「スリは知らないが、窃盗はゼブが契約している所をやったら1回目はぶちのめされて街の外に放り出される。
次にどこか契約している所をやったら2度と姿を見なくなるって話だぜ?」
なるほどね。
ある意味、上がりを払うことでゼブが『保護』している商家の情報へを貰うという所か。
そうすることで標的にしても安全な場所が分かる。
だったら、旅人を狙う限りスリだったら別に上がりを治めなくても大丈夫そうだな。
「情報屋はどうなんだ?」
「情報屋は店で物を高く売る代わりに情報を提供するんだ。
だから店を守る保護代を払っているんじゃないか?」
バルダンが肩を竦めて答え、声を上げた。
「シャルロ、そこの右にある店だ!」
お。
喫茶店か。
まずは茶葉だな。
こいつに関しては別に顔役に話を通さなくても良さげだが・・・このまま適当に領事館で情報を得るために使っていたら、そのうちあの当たり屋あたりにまた狙われるか?
ゼブに保護料を払うついでにこいつを使ってるから裏の奴らが手を出さないようにして欲しいと言っておくかね?
ナヴァールにそこら辺の出費をどう考えるか、聞いてみるか。
【後書き】
ウィルは領事館で継続的に安価な情報屋として使うなら裏に話を通すのを手伝おうと考えてます。
領事館が継続的に情報源として使うつもりがないなら・・・バルダンがまたスリに戻るしか無いと諦めてます。
そこへ向いながらバルダンに裏社会の事を尋ねる。
「この街の裏社会の構造ってどうなっているんだ?」
下っ端過ぎて顔役に存在すら知られていないだろうが、こいつが上のことは知っている可能性は高いだろう。
周りのことに注意を払って情報を集めるだけの知恵があるみたいだからな。
それだけ賢いのにあんな阿呆の当たり役と組んでいたことが不思議だが。
バルダンが肩を竦めた。
「どうって・・・。西と北には顔役がいて、南と東は勢力争いがしょっちゅう起きていて流動的っていうところ?」
おっとぉ。
職業的に分かれている訳じゃあ無いのか。
領事館がある西は顔役が決まっているのは良かった。一人に話を通せば済むなら早い。
「西の顔役ってどんな奴だ?
ここらが縄張りだと言うが、普通の商家とかとどう関わっているんだ?」
バルダンがわざとらしくため息をついて見せた。
「そんなもん、俺みたいな下っ端が関わっている訳ないだろ~」
知らないんだったらその差し出している左手は何なんだよ?
ため息をつきながら大銅貨を一枚放り投げる。
はっきり言って、これは俺たちの為と言うよりも、こいつがこれから役に立てるように手配するための情報だ。銀貨を払う価値はない。
銀貨を貰えなきゃ言わないと言うんだったら、さっきの当たり屋や他の裏社会の大人相手に頑張るんだな。
そう思っていたが、流石にバルダンもここで欲をかくべきでは無いと察したのか、大銅貨を懐にささっとしまい込んで話し始めた。
「西の顔役はゼブって言うんだ。
ゼブは基本的に出てこないで、右腕のダブと左腕のカダがゼブの命令を伝えるって話だ。
ゼブに金を払っておけば、他の人間が荒らしに来たら追い払ってくれる。
北のギュームは契約しない商家には組織の下っ端の人間を嫌がらせに送り込むらしいけど、ゼブはそこまではしない。
西の人間が契約していない商家を狙っても止めないけどね。
あと、荒らしが起きてからゼブに頼むと契約料が倍になるらしいぜ」
ふむ。
商家に契約するよう『説得』の為に下っ端を送り込まないとは良心的だな。
もっとも、アファル王国の領事館だったら別に店ではないから『荒らし』の心配は低いだろう。
嫌がらせを送り込まないタイプなら特に接触しておく必要はないか?
問題はバルダンの方だな。
「商家との関係は分かったが、裏社会の人間と顔役の関係はどうなってるんだ?
例えば、お前の当たり役の男はゼブに何か収めてるのか?」
あんな見る目のないスリの当たり屋からの上がりなんて大した額じゃあないだろうが、ゼブの下であると認識させるためにも上納金は取っているだろう。
「あいつか?
まあ、少しは治めているんだろうね。
部下だって自慢していたから」
肩を竦めながらバルダンが答える。
う~ん、こいつ、肝心の裏社会に関してちょっと疎くないか?
「お前、いつからスリ始めたんだ?
あまり裏社会に関して詳しくないみたいだが」
「去年の夏の終わりだよ。
借金が払えなくって親が姿を消したんだ。
街でゴミあさりやかっぱらいをしていたら、他の奴らにもっと良い方法があるって言われて着いていったらあいつの所だったんだ。
まあ、スリのやり方とか教えてくれるし標的の注意を逸らしてくれるから上がりの半分を取られてもしょうが無いと思っていたんだけど・・・。
あんたに捕まった時にあいつはさっさと逃げたからな。
あんた達から貰う金は俺のものだ」
ぺっ唾を地面に吐いてからバルダンが答えた。
親がとんずらして浮浪児になったのか。
珍しくない話だが・・・借金のカタに奴隷商人に売られなかったのは幸運だったな。
去年の夏の終わりにゴミあさりから始めたのだったら、確かにスリはまだ素人に毛が生えた程度でも不思議はない。
あの調子じゃあもっと上手くなる前にそのうち捕まった可能性の方が高かっただろうが。
それはともかく。
「じゃあ、西でスリや窃盗をしている人間でゼブに上がりを払っていない人間はどうなるんだ?」
「スリは知らないが、窃盗はゼブが契約している所をやったら1回目はぶちのめされて街の外に放り出される。
次にどこか契約している所をやったら2度と姿を見なくなるって話だぜ?」
なるほどね。
ある意味、上がりを払うことでゼブが『保護』している商家の情報へを貰うという所か。
そうすることで標的にしても安全な場所が分かる。
だったら、旅人を狙う限りスリだったら別に上がりを治めなくても大丈夫そうだな。
「情報屋はどうなんだ?」
「情報屋は店で物を高く売る代わりに情報を提供するんだ。
だから店を守る保護代を払っているんじゃないか?」
バルダンが肩を竦めて答え、声を上げた。
「シャルロ、そこの右にある店だ!」
お。
喫茶店か。
まずは茶葉だな。
こいつに関しては別に顔役に話を通さなくても良さげだが・・・このまま適当に領事館で情報を得るために使っていたら、そのうちあの当たり屋あたりにまた狙われるか?
ゼブに保護料を払うついでにこいつを使ってるから裏の奴らが手を出さないようにして欲しいと言っておくかね?
ナヴァールにそこら辺の出費をどう考えるか、聞いてみるか。
【後書き】
ウィルは領事館で継続的に安価な情報屋として使うなら裏に話を通すのを手伝おうと考えてます。
領事館が継続的に情報源として使うつもりがないなら・・・バルダンがまたスリに戻るしか無いと諦めてます。
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