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卒業後
387 星暦554年 藤の月 18日 旅立ち?(29)
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沖に停泊した船から、港に行くためのボートが副長を乗せて降ろされていく。
「港になっているんだから、ボートなんぞ使わずに直接入港すれば良いのに」
シャルロがボートを眺めながら呟いた。
「一応、入港しても戦争になったり何か理由をでっち上げて拘束されないことを確認しないと不味いからね。
まあ、東の大陸で主な取引先である国の旗が揚がっていると言っていたから、それ程話がこじれることは無いとは思うが」
アレクが肩を竦めながら答える。
もっとも、戦争行為になるような攻撃を港の連中がこの船に仕掛けてきたら、港そのものが蒼流の報復で壊滅する可能性が高いが。
取引先としてこれから色々交易を増やしていきたい相手との関係だ。
この島が重要な拠点か否かは不明だとしても、領地である島を壊滅させるのは幸先が悪いだろう。ここはそこそこ用心深く動くのが正解だろうな。
・・・考えてみたら、船長やナヴァール達は蒼流の攻撃力の高さを知らないだろうし。
つうか、俺だってはっきりと言われた訳では無い。
でも、学生の頃にあっさり清流が遺跡にいた黒いカサカサした連中を始末してくれたことを考えると、蒼流の力は更に凄いと想像出来るし、魔術学院の図書館にあった禁書には上位精霊と契約した人間が戦争で行った攻撃の記録もあった。
精霊が自発的にやる報復と、精霊の契約者が頼んでやって貰った攻撃との威力の違いは分からないが、どちらにせよこの島程度だったら跡形も無く沈められるのは間違いないと思う。
今回の島は、俺が船員に空滑機の乗り方を教えている間に発見された。
どうせ発見したところで権利が生じるわけでは無いのが分かっていたので、今回は船員が見つけるまで何も口に出さなかった。
空滑機を売りつけたのに、肝心の船員が飛ばすことに気を取られすぎて海に浮かぶ島影を見落とすようでは、意味が無いからね。
幸い、船員は島が水平線に現れてから比較的直ぐに気が付いていたから、新規航路の開拓で空滑機を使うという考えも、実用性がありそうだった。
もうそろそろ東大陸に着くと思っていたらしく、最初は船員は大陸に着いたと勘違いしていたようで島だと分かってちょっとがっかりしていた。
しかも人が住んでいて交易船が港に停泊していたからボーナスが出ないのは分かっていたし。
まあ、島の発見そのものは航路の利用には重要なんだから、ボーナスそのものは出るのかも知れない。
一応島にどの位の武力があるのかを確認する為に島の上を飛んだら、何やら大きな建物から出てきた人がこちらを見て大きく口を開けていた。
もしかしたら、東大陸の金持ち相手に空滑機が売れるかも?
でも、こっちまで売り込むのは大変だしなぁ・・・。
シェフィート商会に売って貰えば、間接的に俺たちの懐が温かくなると考えれば良いか。
いや、アファル王国以外の国には意図的に売らないようにしているってアレクの兄さんが言っていたっけ?何か、軍部にそれとなく要請されたって。
だとしたら大洋のこちらがわでも売らない方が良いのかな?
そんなことを考えていたら、ハルツァが甲板に上がってきた。
考えてみたら、航海の間殆ど見なかったが、やっと船に慣れてきたのかな?
予定では夕食も一緒のはずだったのに、殆ど姿を現さなかった。
やっと船酔いがマシになってきたのにもうすぐ陸に着くなんて、可哀想に。
「どんな感じだ?」
「さあ。
ただ、港に入港している船を見る限り、東大陸はもうすぐのようですね」
アレクが答える。
アレクの言葉に、改めて港に停泊している船を見てみる。
確かに、近海用の中型ぐらいの船が多い。
そうか、港にある船を見れば大陸からの距離も大体推測出来るのか。
ふぅぅ。
ハルツァが深くため息をついた。
「転移門を設置したら、それのテストも兼ねて私は直接帰る。
何かがあった時の為に書類を渡しておくから、よろしく頼む」
おいおい。
そりゃあ、自分が設置するんだから自信があるだろうし、自分が設置した転移門が誤作動して誰かを殺すなんてあっちゃあいけないことだろうけど。
それでもここまで長距離の転移門のテストは、普通は罪人や軍人を使うことが多いと聞いたぞ?
「大丈夫ですか?」
シャルロが冷たい水を差し出しながら尋ねる。
「大分慣れたが・・・船旅というのがこうも辛いとは知らなかった。
今までは転移門で最寄りの都市まで飛んでそこからは馬車だったから、船の方がガタガタしないと言われたナヴァールの言葉を信じて楽しみにしていたのが失敗だった。
二度と船には乗らんぞ!!」
水を一気に飲み干しながら、ハルツァが深く息をついた。
いやいやいや。
魔術院の命令で来てるんでしょ?
まだ中堅どころでしょう?船が嫌だからって拒否できる立場なの?
まあ俺の知ったこっちゃないけどさ。
そんなことを考えながらアレクとハルツァの雑談を聞いていたら、副長を乗せていたボートが戻ってきた。
「お。
今日は岸の宿に泊まれるかな?」
ハルツァがニコニコしている副長を見て、希望的観測を口にした。
どうだろうね?
もうすぐ東大陸だろうから、このまま直行って事もあるんじゃ無いのかなぁ?
清早の話だとあと半日ちょっとぐらいらしいから、態々この港で泊まるよりも東大陸の本国へ行っちゃう方が効率的な気がするぞ。
---------------------------------------------------------------------------------
【後書き】
ハルツァ氏の希望は叶わず、大陸まで半日と港の役人に教わった結果この後船は直ぐに出航しましたw
別に補給は必要なかったし、直接取引を始めるにはまず本国と話を付ける必要があるので、ここで停泊する理由が無かったんですね~。
「港になっているんだから、ボートなんぞ使わずに直接入港すれば良いのに」
シャルロがボートを眺めながら呟いた。
「一応、入港しても戦争になったり何か理由をでっち上げて拘束されないことを確認しないと不味いからね。
まあ、東の大陸で主な取引先である国の旗が揚がっていると言っていたから、それ程話がこじれることは無いとは思うが」
アレクが肩を竦めながら答える。
もっとも、戦争行為になるような攻撃を港の連中がこの船に仕掛けてきたら、港そのものが蒼流の報復で壊滅する可能性が高いが。
取引先としてこれから色々交易を増やしていきたい相手との関係だ。
この島が重要な拠点か否かは不明だとしても、領地である島を壊滅させるのは幸先が悪いだろう。ここはそこそこ用心深く動くのが正解だろうな。
・・・考えてみたら、船長やナヴァール達は蒼流の攻撃力の高さを知らないだろうし。
つうか、俺だってはっきりと言われた訳では無い。
でも、学生の頃にあっさり清流が遺跡にいた黒いカサカサした連中を始末してくれたことを考えると、蒼流の力は更に凄いと想像出来るし、魔術学院の図書館にあった禁書には上位精霊と契約した人間が戦争で行った攻撃の記録もあった。
精霊が自発的にやる報復と、精霊の契約者が頼んでやって貰った攻撃との威力の違いは分からないが、どちらにせよこの島程度だったら跡形も無く沈められるのは間違いないと思う。
今回の島は、俺が船員に空滑機の乗り方を教えている間に発見された。
どうせ発見したところで権利が生じるわけでは無いのが分かっていたので、今回は船員が見つけるまで何も口に出さなかった。
空滑機を売りつけたのに、肝心の船員が飛ばすことに気を取られすぎて海に浮かぶ島影を見落とすようでは、意味が無いからね。
幸い、船員は島が水平線に現れてから比較的直ぐに気が付いていたから、新規航路の開拓で空滑機を使うという考えも、実用性がありそうだった。
もうそろそろ東大陸に着くと思っていたらしく、最初は船員は大陸に着いたと勘違いしていたようで島だと分かってちょっとがっかりしていた。
しかも人が住んでいて交易船が港に停泊していたからボーナスが出ないのは分かっていたし。
まあ、島の発見そのものは航路の利用には重要なんだから、ボーナスそのものは出るのかも知れない。
一応島にどの位の武力があるのかを確認する為に島の上を飛んだら、何やら大きな建物から出てきた人がこちらを見て大きく口を開けていた。
もしかしたら、東大陸の金持ち相手に空滑機が売れるかも?
でも、こっちまで売り込むのは大変だしなぁ・・・。
シェフィート商会に売って貰えば、間接的に俺たちの懐が温かくなると考えれば良いか。
いや、アファル王国以外の国には意図的に売らないようにしているってアレクの兄さんが言っていたっけ?何か、軍部にそれとなく要請されたって。
だとしたら大洋のこちらがわでも売らない方が良いのかな?
そんなことを考えていたら、ハルツァが甲板に上がってきた。
考えてみたら、航海の間殆ど見なかったが、やっと船に慣れてきたのかな?
予定では夕食も一緒のはずだったのに、殆ど姿を現さなかった。
やっと船酔いがマシになってきたのにもうすぐ陸に着くなんて、可哀想に。
「どんな感じだ?」
「さあ。
ただ、港に入港している船を見る限り、東大陸はもうすぐのようですね」
アレクが答える。
アレクの言葉に、改めて港に停泊している船を見てみる。
確かに、近海用の中型ぐらいの船が多い。
そうか、港にある船を見れば大陸からの距離も大体推測出来るのか。
ふぅぅ。
ハルツァが深くため息をついた。
「転移門を設置したら、それのテストも兼ねて私は直接帰る。
何かがあった時の為に書類を渡しておくから、よろしく頼む」
おいおい。
そりゃあ、自分が設置するんだから自信があるだろうし、自分が設置した転移門が誤作動して誰かを殺すなんてあっちゃあいけないことだろうけど。
それでもここまで長距離の転移門のテストは、普通は罪人や軍人を使うことが多いと聞いたぞ?
「大丈夫ですか?」
シャルロが冷たい水を差し出しながら尋ねる。
「大分慣れたが・・・船旅というのがこうも辛いとは知らなかった。
今までは転移門で最寄りの都市まで飛んでそこからは馬車だったから、船の方がガタガタしないと言われたナヴァールの言葉を信じて楽しみにしていたのが失敗だった。
二度と船には乗らんぞ!!」
水を一気に飲み干しながら、ハルツァが深く息をついた。
いやいやいや。
魔術院の命令で来てるんでしょ?
まだ中堅どころでしょう?船が嫌だからって拒否できる立場なの?
まあ俺の知ったこっちゃないけどさ。
そんなことを考えながらアレクとハルツァの雑談を聞いていたら、副長を乗せていたボートが戻ってきた。
「お。
今日は岸の宿に泊まれるかな?」
ハルツァがニコニコしている副長を見て、希望的観測を口にした。
どうだろうね?
もうすぐ東大陸だろうから、このまま直行って事もあるんじゃ無いのかなぁ?
清早の話だとあと半日ちょっとぐらいらしいから、態々この港で泊まるよりも東大陸の本国へ行っちゃう方が効率的な気がするぞ。
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【後書き】
ハルツァ氏の希望は叶わず、大陸まで半日と港の役人に教わった結果この後船は直ぐに出航しましたw
別に補給は必要なかったし、直接取引を始めるにはまず本国と話を付ける必要があるので、ここで停泊する理由が無かったんですね~。
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