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卒業後
384 星暦554年 藤の月 13日 旅立ち?(26)
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結局、予算の話もあるので空滑機を新規航路開拓船団が買うかレンタルするかは王都に帰ってから本格的に相談することになった。
ただ、普通の船員でも乗りこなせるのか、もしくは特殊な技能を持った人間として別に雇う必要があるのか、また魔術師ではない人間が海上で飛ばすとどのくらい魔石を消費するのかを知りたいと言うことだったので、副長と立候補した船員何名かに空滑機の飛ばし方を教えることになった。
「こういう上昇気流を見つけたら、その中をぐるぐるっと回って高度を上げると魔石を節約できるから、お勧め。
陸上とか岸の近くで鳥がいたら、鳥がゆっくりと周りながら上がっていく所が上昇気流がある可能性が高いから鳥の動きに注意を払うとお得だね」
取り敢えず、普通の船員は臭いのでまず体を洗え!!!と主張し、先に副長に飛び方を教えている。
最近はレンタルした人に教えるのも雇った若いのに任せているから、素人に空滑機の飛ばし方を説明するのは久しぶりだ。
「上昇気流?」
操作舵をちょこちょこ動かしながら、副長が聞き返す。
「あ~。
操作舵はちょこちょこ動かすよりも、ゆっくりどこに行きたいかを考えながらノンビリ動かす方が効率的。
船の舵と似たような感じかも?船と違って小さくちょこちょこ動かしても反応するけど、無駄な動きは魔石を消耗しているから避けた方が良い。
そんでもって上昇気流は何かと言うと・・・風は東西南北だけじゃなくって上や下にも吹いている。その上に向いて流れている空気の事を、上昇気流って俺たちは呼んでる」
ある意味、航海中の空滑機の使い方はゆったりと大きめな円状に船の周りを動いて周囲を探すことなので、操作舵を動かす必要も殆どない。
時々位置追跡装置を見て船の位置を確認しながら大雑把な円で動けば良いだけなので、操作は簡単だし殆ど無いに等しい。
せいぜい、上昇気流に当たったらそれを使って高度を稼ぐぐらいのことだ。
取り敢えず今は魔石をあまり使わない飛び方をマスターして貰っておいて、次の島が見つかった際にもう少し細かく操作する飛び方を教えれば良いだろう。
そんなことを考えながら副長の質問に答えつつ飛ばし方を教えていたら、やがて前方に小さな岩みたいな島が見えてきた。
「島かっ!痛て!!!」
副長が興奮したように声を上げ、身を乗り出そうとして頭を空滑機の天井部にぶつけた。
おっと。
空滑機の中は狭いのであまり体を動かさない方が良いぜ。
取り敢えず、この小島の周りを動かして練習するかぁ。
水がある島は明後日にならないとたどり着かないらいしから、ここら辺のは見て回ってもあまり意味は無いんだけどね。
「なるほど、鳥が上に舞い上がっているな」
太陽に温められた島が上昇気流を作っているのか、海鳥がくるくると宙を回りながら高度を上げているのを見て副長が呟いた。
「こんな小さな島でも鳥が巣を作っているんかぁ。
これも海図に載せておく?」
載せるならば位置追跡装置に同期させた魔石を置いていくが。
「ここが船なのだろう?場所は大体分かるから、態々魔石を置かなくても良い。
このまま進もう」
位置追跡装置を指さしながら、副長が首を横に振って答えた。
「そんじゃあまあ、そこの鳥が回っている辺に割り込んで、高度をとってみよう」
副長に操作梶を動かすよう、促す。
いざとなったら浮遊《レヴィア》をかけて空滑機を浮かせられるし、海に落ちても清早が助けてくれるので問題は無いのだが、やはり動かし方をよく分かっていない人間に操作舵を任せて飛ぶというのはちょっと怖い。
さっきちょくちょく操作舵を動かしていた時なんて、変に動かしたせいで速度が落ちて高度まで下がってぎょっとしたし。
でも、下手に地上で飛ばすよりも海上で練習する方が、何かがあった時に清早が助けやすいからな。
頑張って副長に腕を上げて貰おう。
・・・でも、考えてみたら副長は色々責務がある。中継地になるような島が見つかった際にはそれの探索で空滑機を飛ばすかも知れないが、普通に行き当たりばったりに周りを探す際の探索はしないだろうなぁ。
となると、今体を洗っている船員の誰かが飛ばすことになるから・・・適性がある人間が探せるまで、一体何人教える羽目になるんだろう?
ちょっとうんざりしてきた。
しっかり教え込むんじゃなくって、飛ぶのが怖くなくってそれなりに出来そうなのが見つかったら、本格的な訓練は本国のレンタル業を回している奴に任せよう。
「ちなみに、空滑機乗り要員になれるかどうか試す人数って何人になりそうなんだっけ?」
上昇気流に乗ろうとして突っ切ってしまい戻ってくる羽目になっている副長をノンビリと眺めながら尋ねる。
「王国の新規航路開拓船団に専属している船員だけを対象にしているからな。
50人というところか?」
あっさりと帰ってきた答えに一瞬息が止る。
「50人????!!!!」
副長がにやりと笑った。
「マストに登って見張り当番が出来ないような奴は遠海に出る船乗りになんぞ、なれん。
つまり、高いところが怖い奴はいない訳だから、こんな面白いことに立候補しないわけがないだろ?
しかも今なら漏れなく無料で体を洗えるし」
うへぇぇ。
臭いのが嫌だからと体を洗うことを主張したのは間違いだった??
いやでも、空滑機にむさい上に臭い男と一緒に乗るのなんて嫌だ!!!
「いやいやいや。
そんなに教えている暇は無いっしょ」
「・・・良し!なるほど、確かに上昇気流に乗ると勝手に機体が持ち上げられるのだな。
大したもんだ」
俺の言葉を気にすることなく、副長はやっと乗れた上昇気流の効果に魅了されたようだった。
確かにさ、地上(船上でも)では1人で持ち上げるのも中々大変なこの空滑機の機体がふわっと持ち上げられるのってびっくりするのは分かるけど。
俺の言葉にも耳を傾けてくれよ~。
「まあ、流石に50人が訓練するのは無理だからな。
くじ引きで毎日数人ずつ教えて貰っていきたい。
帰路も含めれば、それなりの人数が試せるだろう?」
かなり高度を稼いだことに満足した副長がやっと俺の言葉に応えた。
まあねぇ。
でも、そうなると島がないと分かっている時に適当に清早と遊びながら飛ばすことが出来なくなるなぁ。
ちょっと残念。
----------------------------------------------------------------
【後書き】
特に飛ぶことに興味がない船員も、折角体を綺麗に洗える機会なので立候補しちゃいましたw
まあ、くじ引きで人数を削っているのでウィル達が教える人数は変わりませんが。
ただ、普通の船員でも乗りこなせるのか、もしくは特殊な技能を持った人間として別に雇う必要があるのか、また魔術師ではない人間が海上で飛ばすとどのくらい魔石を消費するのかを知りたいと言うことだったので、副長と立候補した船員何名かに空滑機の飛ばし方を教えることになった。
「こういう上昇気流を見つけたら、その中をぐるぐるっと回って高度を上げると魔石を節約できるから、お勧め。
陸上とか岸の近くで鳥がいたら、鳥がゆっくりと周りながら上がっていく所が上昇気流がある可能性が高いから鳥の動きに注意を払うとお得だね」
取り敢えず、普通の船員は臭いのでまず体を洗え!!!と主張し、先に副長に飛び方を教えている。
最近はレンタルした人に教えるのも雇った若いのに任せているから、素人に空滑機の飛ばし方を説明するのは久しぶりだ。
「上昇気流?」
操作舵をちょこちょこ動かしながら、副長が聞き返す。
「あ~。
操作舵はちょこちょこ動かすよりも、ゆっくりどこに行きたいかを考えながらノンビリ動かす方が効率的。
船の舵と似たような感じかも?船と違って小さくちょこちょこ動かしても反応するけど、無駄な動きは魔石を消耗しているから避けた方が良い。
そんでもって上昇気流は何かと言うと・・・風は東西南北だけじゃなくって上や下にも吹いている。その上に向いて流れている空気の事を、上昇気流って俺たちは呼んでる」
ある意味、航海中の空滑機の使い方はゆったりと大きめな円状に船の周りを動いて周囲を探すことなので、操作舵を動かす必要も殆どない。
時々位置追跡装置を見て船の位置を確認しながら大雑把な円で動けば良いだけなので、操作は簡単だし殆ど無いに等しい。
せいぜい、上昇気流に当たったらそれを使って高度を稼ぐぐらいのことだ。
取り敢えず今は魔石をあまり使わない飛び方をマスターして貰っておいて、次の島が見つかった際にもう少し細かく操作する飛び方を教えれば良いだろう。
そんなことを考えながら副長の質問に答えつつ飛ばし方を教えていたら、やがて前方に小さな岩みたいな島が見えてきた。
「島かっ!痛て!!!」
副長が興奮したように声を上げ、身を乗り出そうとして頭を空滑機の天井部にぶつけた。
おっと。
空滑機の中は狭いのであまり体を動かさない方が良いぜ。
取り敢えず、この小島の周りを動かして練習するかぁ。
水がある島は明後日にならないとたどり着かないらいしから、ここら辺のは見て回ってもあまり意味は無いんだけどね。
「なるほど、鳥が上に舞い上がっているな」
太陽に温められた島が上昇気流を作っているのか、海鳥がくるくると宙を回りながら高度を上げているのを見て副長が呟いた。
「こんな小さな島でも鳥が巣を作っているんかぁ。
これも海図に載せておく?」
載せるならば位置追跡装置に同期させた魔石を置いていくが。
「ここが船なのだろう?場所は大体分かるから、態々魔石を置かなくても良い。
このまま進もう」
位置追跡装置を指さしながら、副長が首を横に振って答えた。
「そんじゃあまあ、そこの鳥が回っている辺に割り込んで、高度をとってみよう」
副長に操作梶を動かすよう、促す。
いざとなったら浮遊《レヴィア》をかけて空滑機を浮かせられるし、海に落ちても清早が助けてくれるので問題は無いのだが、やはり動かし方をよく分かっていない人間に操作舵を任せて飛ぶというのはちょっと怖い。
さっきちょくちょく操作舵を動かしていた時なんて、変に動かしたせいで速度が落ちて高度まで下がってぎょっとしたし。
でも、下手に地上で飛ばすよりも海上で練習する方が、何かがあった時に清早が助けやすいからな。
頑張って副長に腕を上げて貰おう。
・・・でも、考えてみたら副長は色々責務がある。中継地になるような島が見つかった際にはそれの探索で空滑機を飛ばすかも知れないが、普通に行き当たりばったりに周りを探す際の探索はしないだろうなぁ。
となると、今体を洗っている船員の誰かが飛ばすことになるから・・・適性がある人間が探せるまで、一体何人教える羽目になるんだろう?
ちょっとうんざりしてきた。
しっかり教え込むんじゃなくって、飛ぶのが怖くなくってそれなりに出来そうなのが見つかったら、本格的な訓練は本国のレンタル業を回している奴に任せよう。
「ちなみに、空滑機乗り要員になれるかどうか試す人数って何人になりそうなんだっけ?」
上昇気流に乗ろうとして突っ切ってしまい戻ってくる羽目になっている副長をノンビリと眺めながら尋ねる。
「王国の新規航路開拓船団に専属している船員だけを対象にしているからな。
50人というところか?」
あっさりと帰ってきた答えに一瞬息が止る。
「50人????!!!!」
副長がにやりと笑った。
「マストに登って見張り当番が出来ないような奴は遠海に出る船乗りになんぞ、なれん。
つまり、高いところが怖い奴はいない訳だから、こんな面白いことに立候補しないわけがないだろ?
しかも今なら漏れなく無料で体を洗えるし」
うへぇぇ。
臭いのが嫌だからと体を洗うことを主張したのは間違いだった??
いやでも、空滑機にむさい上に臭い男と一緒に乗るのなんて嫌だ!!!
「いやいやいや。
そんなに教えている暇は無いっしょ」
「・・・良し!なるほど、確かに上昇気流に乗ると勝手に機体が持ち上げられるのだな。
大したもんだ」
俺の言葉を気にすることなく、副長はやっと乗れた上昇気流の効果に魅了されたようだった。
確かにさ、地上(船上でも)では1人で持ち上げるのも中々大変なこの空滑機の機体がふわっと持ち上げられるのってびっくりするのは分かるけど。
俺の言葉にも耳を傾けてくれよ~。
「まあ、流石に50人が訓練するのは無理だからな。
くじ引きで毎日数人ずつ教えて貰っていきたい。
帰路も含めれば、それなりの人数が試せるだろう?」
かなり高度を稼いだことに満足した副長がやっと俺の言葉に応えた。
まあねぇ。
でも、そうなると島がないと分かっている時に適当に清早と遊びながら飛ばすことが出来なくなるなぁ。
ちょっと残念。
----------------------------------------------------------------
【後書き】
特に飛ぶことに興味がない船員も、折角体を綺麗に洗える機会なので立候補しちゃいましたw
まあ、くじ引きで人数を削っているのでウィル達が教える人数は変わりませんが。
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