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卒業後
368 星暦553年 桃の月 10日 旅立ち?(9)
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「そう言えばシャルロ、精霊の加護持ちって加護を目当てに雇われる場合は基本的に技能報酬として金貨50枚付くんだって。
そんでもってシャルロの精霊じゃ無いと駄目っていうような案件だと更に値をつり上げられるみたい」
朝食に姿を現したシャルロに声を掛けた。
ケレナの所か実家に居るかと思っていたら、夜はこちらに戻っていることが多いとパディン夫人に聞いたので俺はヴァルージャに戻らずに待っていたのだ。
ちなみに、ナヴァールからは俺が家に帰り着く前に通信機の方へ連絡が来た。
流石、大臣への通信。
対応が早いね~。
最初から新しい案件の関係者が来たら直ぐに連絡を取れるようにしておけば、大臣からの呼び出しなんて無かったのにね。
今後は気をつけてくれたまえという所だな。
『特級魔術師の教え子』と言うことで妙にかしこまっていたような気がしたが・・・気のせいに違いない(笑)。
なんと言っても若手魔術師って言うのは基本的に魔術院の卒業者なんだから、全員が学院長の教え子だ。
そして生徒の誰が泣き付いたって学院長は助けてくれる。
まあ、気楽に泣き付けるほど面の皮が厚いのはあまりいないかも知れないが。
「え、そうなんだ?」
お茶を注ぎながらシャルロが驚いたように聞き返してきた。
丁度部屋に入ってきたアレクも驚いたように目を丸くしていた。
「基本的にって・・・報酬の話し合いの時には出てこなかったが」
「精霊の加護持ちにとっては『常識』らしいぜ?
だから妻が妊娠して浮ついていたハルツァは『うっかり』言い忘れたんだってさ」
肩を竦めて朝食にフォークを突き刺しながら答える。
うむ。
パディン夫人の卵焼きは相変わらず、美味しいぜ。
いつも使っているヴァルージャの宿って朝食はちょっと冷めてて、ソーセージはともかく卵は微妙なんだよなぁ。
「・・・『うっかり』ねぇ。
まあ、良いことを教えてくれた。
知らなかったとは言え、悪かったな、シャルロ」
アレクが何やら考え込みながら茶を注ぎ、シャルロに軽く頭を下げた。
なんか、これから精霊加護持ちの報酬に関してリサーチでもしにいきそうな雰囲気だな。
まあ、実家の方での話し合いが無いんだったらそれなりに暇なんだろうが。
「そう言えば、シェイラの家族に話しても大丈夫そう?」
シャルロが席に着きながら聞いてきた。
「おう。
ガルカ王国にまで話が流れたら、現在南回りの航路を使っている船に被害が出るかも知れないからあまり言いふらすなとは言われたけど、親しい人間の親族の商会に話す程度だったら良いってさ」
これでシェイラも一安心だろう。
「ちなみに、今回の依頼の話をして良いかっていうことを確認しようとしていたと聞いたのに、どういう流れで精霊加護持ちの技能報酬の話になったの?」
シャルロが首を軽くかしげながら聞いてきた。
「・・・そう言えば、何でだっけ?
商業省の方でたらい回しにされたあげくに2週間は会うための予約すら取れないって突っぱねられたんだよ。
ハルツァも休み取ってて魔術院に来ていなかったし。
しょうがないから学院長にお土産のリクエストを聞くついでにナヴァールに連絡付けるのを助けてくれって泣き付いたんだけど・・・何で報酬の話なんて出たんだっけ?
まあ、適当な雑談の流れで報酬の話が出たんだろうな。そうしたら学院長がおかしいって言い出して調べてくれた
あ、アレク。東の大陸の飲み物の事とかちょっと調べたいんだけど、誰かそう言うのをよく知っている人を紹介してくれない?」
で、結局ナヴァールの連絡先を聞き忘れて大臣に通信する羽目になってるんだから、学院長もちょっとうっかりなんだけどね。
でも助けてくれたんだから、お礼の土産はしっかり選ばないと。
◆◆◆◆
「家族に知らせても良いってさ。
だがあまりに話が広まって肝心のガルカ王国まで伝わると、南回りの航路を使っている商船に被害が及ぶかも知れないから気をつけてくれって」
ヴァルージャに着いて直ぐにシェイラを捕まえて伝えたら、ほっとしたように息を吐かれた。
「良かった。
私の方も一応探りを入れてみたら、それなりに南回りの航路で取引しているようなのよね。
取り敢えず、ガルカ王国がきな臭くなってきているから別の航路なり商品を探す方が良いかもねって父に警告しておくわ」
「で、親父さんは警告に耳を傾けそうなのか?」
そんなに簡単に別の商売って見つかるとも思えんが。
今現在儲かっている事業を、学者になって家業を離れた娘からの漠然とした警告だけで止めるかね?
シェイラが肩を竦めた。
「幸い、ヴァルージャは南の国境であるファルータ領にあるからね。
前回の祭りの際にちょっと怪しげな騒ぎがあった話は王都にも流れているから、あの騒ぎの元がガルカ王国だったらしいってファルータの警備兵が話していたとでも言えば、それなりに真剣に受け止めるでしょうよ。
戦争になった時に一番のとばっちりを受けるのは何も知らなかった商人ですからね」
いや、一番とばっちりを受けるのは戦場に住んでいる農民とかだと思うけど。
国外での紛争が起きた時だったら被害を受けるのはアファル王国の人間としては商人かもな。
まあ、願わくはそこまでは事態が進まないことを期待しておこう。
取り敢えず、今できることは。
「折角の休養日だから、ファルージャの街にでも遊びに行かないか?」
こないだの祭りで遊べなかった分の埋め合わせだ。
そんでもってシャルロの精霊じゃ無いと駄目っていうような案件だと更に値をつり上げられるみたい」
朝食に姿を現したシャルロに声を掛けた。
ケレナの所か実家に居るかと思っていたら、夜はこちらに戻っていることが多いとパディン夫人に聞いたので俺はヴァルージャに戻らずに待っていたのだ。
ちなみに、ナヴァールからは俺が家に帰り着く前に通信機の方へ連絡が来た。
流石、大臣への通信。
対応が早いね~。
最初から新しい案件の関係者が来たら直ぐに連絡を取れるようにしておけば、大臣からの呼び出しなんて無かったのにね。
今後は気をつけてくれたまえという所だな。
『特級魔術師の教え子』と言うことで妙にかしこまっていたような気がしたが・・・気のせいに違いない(笑)。
なんと言っても若手魔術師って言うのは基本的に魔術院の卒業者なんだから、全員が学院長の教え子だ。
そして生徒の誰が泣き付いたって学院長は助けてくれる。
まあ、気楽に泣き付けるほど面の皮が厚いのはあまりいないかも知れないが。
「え、そうなんだ?」
お茶を注ぎながらシャルロが驚いたように聞き返してきた。
丁度部屋に入ってきたアレクも驚いたように目を丸くしていた。
「基本的にって・・・報酬の話し合いの時には出てこなかったが」
「精霊の加護持ちにとっては『常識』らしいぜ?
だから妻が妊娠して浮ついていたハルツァは『うっかり』言い忘れたんだってさ」
肩を竦めて朝食にフォークを突き刺しながら答える。
うむ。
パディン夫人の卵焼きは相変わらず、美味しいぜ。
いつも使っているヴァルージャの宿って朝食はちょっと冷めてて、ソーセージはともかく卵は微妙なんだよなぁ。
「・・・『うっかり』ねぇ。
まあ、良いことを教えてくれた。
知らなかったとは言え、悪かったな、シャルロ」
アレクが何やら考え込みながら茶を注ぎ、シャルロに軽く頭を下げた。
なんか、これから精霊加護持ちの報酬に関してリサーチでもしにいきそうな雰囲気だな。
まあ、実家の方での話し合いが無いんだったらそれなりに暇なんだろうが。
「そう言えば、シェイラの家族に話しても大丈夫そう?」
シャルロが席に着きながら聞いてきた。
「おう。
ガルカ王国にまで話が流れたら、現在南回りの航路を使っている船に被害が出るかも知れないからあまり言いふらすなとは言われたけど、親しい人間の親族の商会に話す程度だったら良いってさ」
これでシェイラも一安心だろう。
「ちなみに、今回の依頼の話をして良いかっていうことを確認しようとしていたと聞いたのに、どういう流れで精霊加護持ちの技能報酬の話になったの?」
シャルロが首を軽くかしげながら聞いてきた。
「・・・そう言えば、何でだっけ?
商業省の方でたらい回しにされたあげくに2週間は会うための予約すら取れないって突っぱねられたんだよ。
ハルツァも休み取ってて魔術院に来ていなかったし。
しょうがないから学院長にお土産のリクエストを聞くついでにナヴァールに連絡付けるのを助けてくれって泣き付いたんだけど・・・何で報酬の話なんて出たんだっけ?
まあ、適当な雑談の流れで報酬の話が出たんだろうな。そうしたら学院長がおかしいって言い出して調べてくれた
あ、アレク。東の大陸の飲み物の事とかちょっと調べたいんだけど、誰かそう言うのをよく知っている人を紹介してくれない?」
で、結局ナヴァールの連絡先を聞き忘れて大臣に通信する羽目になってるんだから、学院長もちょっとうっかりなんだけどね。
でも助けてくれたんだから、お礼の土産はしっかり選ばないと。
◆◆◆◆
「家族に知らせても良いってさ。
だがあまりに話が広まって肝心のガルカ王国まで伝わると、南回りの航路を使っている商船に被害が及ぶかも知れないから気をつけてくれって」
ヴァルージャに着いて直ぐにシェイラを捕まえて伝えたら、ほっとしたように息を吐かれた。
「良かった。
私の方も一応探りを入れてみたら、それなりに南回りの航路で取引しているようなのよね。
取り敢えず、ガルカ王国がきな臭くなってきているから別の航路なり商品を探す方が良いかもねって父に警告しておくわ」
「で、親父さんは警告に耳を傾けそうなのか?」
そんなに簡単に別の商売って見つかるとも思えんが。
今現在儲かっている事業を、学者になって家業を離れた娘からの漠然とした警告だけで止めるかね?
シェイラが肩を竦めた。
「幸い、ヴァルージャは南の国境であるファルータ領にあるからね。
前回の祭りの際にちょっと怪しげな騒ぎがあった話は王都にも流れているから、あの騒ぎの元がガルカ王国だったらしいってファルータの警備兵が話していたとでも言えば、それなりに真剣に受け止めるでしょうよ。
戦争になった時に一番のとばっちりを受けるのは何も知らなかった商人ですからね」
いや、一番とばっちりを受けるのは戦場に住んでいる農民とかだと思うけど。
国外での紛争が起きた時だったら被害を受けるのはアファル王国の人間としては商人かもな。
まあ、願わくはそこまでは事態が進まないことを期待しておこう。
取り敢えず、今できることは。
「折角の休養日だから、ファルージャの街にでも遊びに行かないか?」
こないだの祭りで遊べなかった分の埋め合わせだ。
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