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卒業後
365 星暦553年 桃の月 8日 旅立ち?(6)
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学院長の視点です。
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>>>サイド アイシャルヌ・ハートネット
「おはようございます、学院長。
今度東の大陸に行くんですが、何かお土産でご希望あります?
前回の俺のセレクションが微妙だったようなので」
昼過ぎに姿を現した若い魔術師がにこやかに聞いてきた。
東の大陸に行く??
随分と唐突だな。
この男はそれ程旅行好きという訳ではないと思っていたが。
恋人が出来たとも聞いたし、態々長期の航海に出るなんて・・・シェフィート商会の新しい事業に関してシャルロと一緒に頼み込まれたのか?
「そうだな・・・。
あそこだったらそれこそ現地で飲んでいる飲み物や珍しい茶葉が欲しいな」
大陸が違うのだ。
全然違う飲み物が一般的に飲まれている可能性は高いから、それを試してみるのも面白いだろう。
「俺がこないだお土産で持ってきたときは大分ご不満だったようなのに・・・」
ちょっと不満げにウィルがつぶやいた。
そりゃあねぇ。
伝説の幻想界の土産だぞ?
1月か2月で消えてしまうにしても、もっと研究に使える物とか、幻想的な美しい細工物とかを期待するのが当然だろうが!
だが、東の大陸は単に異なる国の人間が住んでいるだけの場所だ。
特に魔術や芸術が突出しているという話も聞かないし、それだったら茶葉やその代替品を希望するのはおかしくなかろう?
「シェフィート商会の新規事業にでも協力するのか?」
折角2人も水精霊の加護持ちと縁があるんだ。
シャルロが結婚して長期の遠出を嫌がるようになる前に、最大限に利用するというのも手だろうな。
・・・アレクがそれを嫌がらなかったのは意外だったが。
あいつは冷徹な事業家でありながら、個人としての伝手を使うことを嫌がる傾向がある。
「政府の方ですよ。
商業省が、南を経由しない新しい航路を開拓するのに魔術院の協力を求めたらしくって。
向こうで転移門を設定するのにハルツァ・ウォルバが同行するんですが、航海の助けにシャルロが指名を受けた感じですね。
俺とアレクはオマケの空滑機乗り要員みたいなもの?
実際の作業は楽そうですが、1月の拘束ということで金貨30枚の報酬と、一発で成功した場合は追加で金貨30枚だそうです。
ただ、長期的に留守にしますからね。
シェイラに詳細を伝えていいのか確認しようと思ったら、商業省の人に連絡が取れなくって。
学院長、お土産買ってきますから特級魔術師の名前を貸してくれません?」
お茶を受け取りながら、ウィルが答えた。
金貨30枚??
「ちょっと待て。
お前たち二人はまだしも、シャルロは若手魔術師としてではなく、上位水精霊の加護を持つ人間として雇われるのだろう?
金貨30枚なんてありえないぞ」
紅茶を飲もうとしていたウィルの手が止まった。
「ありゃ。
今まで精霊の加護持ちとしての契約ってしたことが無かったんですが・・・幾らぐらいが相場なんです?」
「こう言っては何だが、お前の中位の水精霊でも海の航海には非常に役に立つ。
1月も拘束するのだったら金貨50枚は要求してもおかしくはないだろう。
シャルロのような上位精霊の話になったら、ある意味他に代替できる者はいないに等しいからな。
状況によるが金貨100枚でも200枚でもおかしくはないぞ?
まあ、今回は単に新規航路の開発だからな。上位精霊が絶対に必要という訳ではないから、精霊の加護持ちとしての報酬が金貨50枚といったところかな」
自分のように炎精霊の加護の場合、攻撃魔術で効果は代替できるので、特別に精霊の加護持ちということで報酬が出ることは少ない。
せいぜい大規模な山火事に対応する場合とか、活火山を抑える場合に協力を頼まれる可能性がある程度か。
だが、海の航海に関しては水精霊の力は魔術では代替できない、遙かに大きな効果がある。
中位でない、普通の小さな低位水精霊の加護持ちですら、引く手あまたな程なのだ。
シャルロほどの精霊の加護持ちを若手魔術師の値段で雇うなんて、おかしいだろう。
商業省はアレクが不慣れなことを承知でこの値段を取り決めたのか?
第一、間に魔術院が入ったのだったら魔術院だって精霊の加護持ちの報酬のことなど分かっているだろうに。
・・・一体、何が起きているんだ?
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【後書き】
誰かの悪巧みか、単なるうっかりか。
どちらでしょうね?
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>>>サイド アイシャルヌ・ハートネット
「おはようございます、学院長。
今度東の大陸に行くんですが、何かお土産でご希望あります?
前回の俺のセレクションが微妙だったようなので」
昼過ぎに姿を現した若い魔術師がにこやかに聞いてきた。
東の大陸に行く??
随分と唐突だな。
この男はそれ程旅行好きという訳ではないと思っていたが。
恋人が出来たとも聞いたし、態々長期の航海に出るなんて・・・シェフィート商会の新しい事業に関してシャルロと一緒に頼み込まれたのか?
「そうだな・・・。
あそこだったらそれこそ現地で飲んでいる飲み物や珍しい茶葉が欲しいな」
大陸が違うのだ。
全然違う飲み物が一般的に飲まれている可能性は高いから、それを試してみるのも面白いだろう。
「俺がこないだお土産で持ってきたときは大分ご不満だったようなのに・・・」
ちょっと不満げにウィルがつぶやいた。
そりゃあねぇ。
伝説の幻想界の土産だぞ?
1月か2月で消えてしまうにしても、もっと研究に使える物とか、幻想的な美しい細工物とかを期待するのが当然だろうが!
だが、東の大陸は単に異なる国の人間が住んでいるだけの場所だ。
特に魔術や芸術が突出しているという話も聞かないし、それだったら茶葉やその代替品を希望するのはおかしくなかろう?
「シェフィート商会の新規事業にでも協力するのか?」
折角2人も水精霊の加護持ちと縁があるんだ。
シャルロが結婚して長期の遠出を嫌がるようになる前に、最大限に利用するというのも手だろうな。
・・・アレクがそれを嫌がらなかったのは意外だったが。
あいつは冷徹な事業家でありながら、個人としての伝手を使うことを嫌がる傾向がある。
「政府の方ですよ。
商業省が、南を経由しない新しい航路を開拓するのに魔術院の協力を求めたらしくって。
向こうで転移門を設定するのにハルツァ・ウォルバが同行するんですが、航海の助けにシャルロが指名を受けた感じですね。
俺とアレクはオマケの空滑機乗り要員みたいなもの?
実際の作業は楽そうですが、1月の拘束ということで金貨30枚の報酬と、一発で成功した場合は追加で金貨30枚だそうです。
ただ、長期的に留守にしますからね。
シェイラに詳細を伝えていいのか確認しようと思ったら、商業省の人に連絡が取れなくって。
学院長、お土産買ってきますから特級魔術師の名前を貸してくれません?」
お茶を受け取りながら、ウィルが答えた。
金貨30枚??
「ちょっと待て。
お前たち二人はまだしも、シャルロは若手魔術師としてではなく、上位水精霊の加護を持つ人間として雇われるのだろう?
金貨30枚なんてありえないぞ」
紅茶を飲もうとしていたウィルの手が止まった。
「ありゃ。
今まで精霊の加護持ちとしての契約ってしたことが無かったんですが・・・幾らぐらいが相場なんです?」
「こう言っては何だが、お前の中位の水精霊でも海の航海には非常に役に立つ。
1月も拘束するのだったら金貨50枚は要求してもおかしくはないだろう。
シャルロのような上位精霊の話になったら、ある意味他に代替できる者はいないに等しいからな。
状況によるが金貨100枚でも200枚でもおかしくはないぞ?
まあ、今回は単に新規航路の開発だからな。上位精霊が絶対に必要という訳ではないから、精霊の加護持ちとしての報酬が金貨50枚といったところかな」
自分のように炎精霊の加護の場合、攻撃魔術で効果は代替できるので、特別に精霊の加護持ちということで報酬が出ることは少ない。
せいぜい大規模な山火事に対応する場合とか、活火山を抑える場合に協力を頼まれる可能性がある程度か。
だが、海の航海に関しては水精霊の力は魔術では代替できない、遙かに大きな効果がある。
中位でない、普通の小さな低位水精霊の加護持ちですら、引く手あまたな程なのだ。
シャルロほどの精霊の加護持ちを若手魔術師の値段で雇うなんて、おかしいだろう。
商業省はアレクが不慣れなことを承知でこの値段を取り決めたのか?
第一、間に魔術院が入ったのだったら魔術院だって精霊の加護持ちの報酬のことなど分かっているだろうに。
・・・一体、何が起きているんだ?
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【後書き】
誰かの悪巧みか、単なるうっかりか。
どちらでしょうね?
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