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卒業後
364 星暦553年 桃の月 8日 旅立ち?(5)
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ウィルの視点に戻ります。
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「アレク~。
商業省のナヴァールの通信先を持ってたら使わせてくれ。
今回の依頼のこと、外部の人間にも話しても良いのか確認しようとして商業省に連絡したんだけど、通信では全然らちがあかないから態々転移門を使って行ったのに、散々たらい回しされたあげくに『アポをまず取れ』って言われてさ。
しかも、『ザルガ氏はただ今忙しいので、時間が空くのは2週間後です』なんて言われちゃって」
昨日は東大陸への新航路の事業に関係しない相手にも今回の依頼の件を話しても良いのかを確認する為に、まずは通信機で確認しようとしたところ、考えてみたらナヴァールの通信先を貰っていなかったことに気が付いた。
つうか、商業省そのものへの通信方法も分からなかった。
結局、かなりの魔力を使って魔術院経由で通信したのだが、散々たらい回しされた。こりゃ駄目だと諦めて転移門を使って直に行ったのに、更にたらい回しされたあげく、2週間後だったら会えるなんて馬鹿なことを言われた。
ハルツァなら通信先を持っているだろうと思って探したら、彼も今度の長期依頼に備えて家族サービスをしているのか、休暇中とのことで居なかった。
だぁぁぁぁ。
魔術院の中でもどの程度今回の依頼のことをオープンに話して良いのかも分からなかったので、あまり強硬に魔術院に協力を頼むわけにもいかず、しかも大元の理由が『恋人に話してもいいかの確認』という微妙な内容なので、昨日一日色々頑張ったあげく、諦めてアレクに相談することにした。
「ナヴァールのか?
考えてみたら、私も持っていないな。
何を確認したいんだ?」
俺にお茶を勧めてくれながらアレクが尋ねてきた。
「シェイラが、実家の連中が大損しないように一応釘を刺しておきたいんだが、大丈夫かって」
アレクが首を少し左にかしげた。
「シェフィート商会に話して事業に参画する準備をして良いと言われたんだから、オスレイダ商会を引き込んでも問題はないのでは?」
そうなんだよねぇ。
俺も最初にナヴァールの通信先が分からない事に気が付いた段階でシェイラにそう言ったんだよ。
「シェイラは別に、実家に今回の商機を紹介するつもりは無いんだと。
変に今後のことも期待されたら面倒だから。
だけど、流石に実家が傾くほど大損しても困るから、南航路に資金を投入しているならそろそろ引揚げるよう警告したいらしいんだ」
そう。
単純に新航路へ参加すると言う話を振るだけだったら多分確認しなくてもOKだと思う。
だが、シェイラは実家に『俺との付き合いは金になる』と思われて今後のことも期待されたくないんだと。
確かに、商会の連中に『うまい話を持ってくる人間』だと思われたら面倒そうだよな。
「ああ、成る程ね。
で、しょうが無いから商業省に連絡を取ろうとしてみたら、ナヴァールが意外にもお偉いさんで単なる若手魔術師では中々会えないことが判明したと?」
アレクが苦笑しながら尋ねた。
「そんなところ。
もうすぐ年末だから誰もが色々と忙しそうなのも一因な気もする」
年末までに片付けなければいけない案件が無い人間は、さっさと休暇を取るために仕事を前倒しで終わらせるのに忙しい。
年末までに片付けなければいけない案件がある人間は、必死に年末までに終わらせる為に働いている。
という感じで、どこもかしこも忙しい人間ばかりで誰も俺にまともに対応する暇も意思もない感じだった。
暫く考え込んでから、アレクがため息をついた。
「確かに、どの位今回の案件をオープンにして良いのか確認しておかなかったのは失敗だったね。
商会関係の話だったら出来るだけ他の競争相手に悟られないようにするのが普通だから、確認する必要性を忘れていたよ。
・・・この際、学院長に頼ってみたら?
特級魔術師ならば商業省のお偉いさんにもあっさり連絡が取れるだろうし、東大陸のお土産に何が良いか、聞いておけば?
前回のお土産は不評だったらしいし」
軽く笑いながらアレクが提案した。
え~?
幻想界の物がお土産に向いてないのはアレクだって分かっているだろうに。
まあ、確かに学院長はちょっと失望したっぽかったな。
助けを頼むついでに確認しておくか。
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【後書き】
特級魔術師様をそんなに気軽に使って良いのかという気もしないでもないですが、学院長はウィルにとって親しい後見人のおじさんといったところなのかも?
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「アレク~。
商業省のナヴァールの通信先を持ってたら使わせてくれ。
今回の依頼のこと、外部の人間にも話しても良いのか確認しようとして商業省に連絡したんだけど、通信では全然らちがあかないから態々転移門を使って行ったのに、散々たらい回しされたあげくに『アポをまず取れ』って言われてさ。
しかも、『ザルガ氏はただ今忙しいので、時間が空くのは2週間後です』なんて言われちゃって」
昨日は東大陸への新航路の事業に関係しない相手にも今回の依頼の件を話しても良いのかを確認する為に、まずは通信機で確認しようとしたところ、考えてみたらナヴァールの通信先を貰っていなかったことに気が付いた。
つうか、商業省そのものへの通信方法も分からなかった。
結局、かなりの魔力を使って魔術院経由で通信したのだが、散々たらい回しされた。こりゃ駄目だと諦めて転移門を使って直に行ったのに、更にたらい回しされたあげく、2週間後だったら会えるなんて馬鹿なことを言われた。
ハルツァなら通信先を持っているだろうと思って探したら、彼も今度の長期依頼に備えて家族サービスをしているのか、休暇中とのことで居なかった。
だぁぁぁぁ。
魔術院の中でもどの程度今回の依頼のことをオープンに話して良いのかも分からなかったので、あまり強硬に魔術院に協力を頼むわけにもいかず、しかも大元の理由が『恋人に話してもいいかの確認』という微妙な内容なので、昨日一日色々頑張ったあげく、諦めてアレクに相談することにした。
「ナヴァールのか?
考えてみたら、私も持っていないな。
何を確認したいんだ?」
俺にお茶を勧めてくれながらアレクが尋ねてきた。
「シェイラが、実家の連中が大損しないように一応釘を刺しておきたいんだが、大丈夫かって」
アレクが首を少し左にかしげた。
「シェフィート商会に話して事業に参画する準備をして良いと言われたんだから、オスレイダ商会を引き込んでも問題はないのでは?」
そうなんだよねぇ。
俺も最初にナヴァールの通信先が分からない事に気が付いた段階でシェイラにそう言ったんだよ。
「シェイラは別に、実家に今回の商機を紹介するつもりは無いんだと。
変に今後のことも期待されたら面倒だから。
だけど、流石に実家が傾くほど大損しても困るから、南航路に資金を投入しているならそろそろ引揚げるよう警告したいらしいんだ」
そう。
単純に新航路へ参加すると言う話を振るだけだったら多分確認しなくてもOKだと思う。
だが、シェイラは実家に『俺との付き合いは金になる』と思われて今後のことも期待されたくないんだと。
確かに、商会の連中に『うまい話を持ってくる人間』だと思われたら面倒そうだよな。
「ああ、成る程ね。
で、しょうが無いから商業省に連絡を取ろうとしてみたら、ナヴァールが意外にもお偉いさんで単なる若手魔術師では中々会えないことが判明したと?」
アレクが苦笑しながら尋ねた。
「そんなところ。
もうすぐ年末だから誰もが色々と忙しそうなのも一因な気もする」
年末までに片付けなければいけない案件が無い人間は、さっさと休暇を取るために仕事を前倒しで終わらせるのに忙しい。
年末までに片付けなければいけない案件がある人間は、必死に年末までに終わらせる為に働いている。
という感じで、どこもかしこも忙しい人間ばかりで誰も俺にまともに対応する暇も意思もない感じだった。
暫く考え込んでから、アレクがため息をついた。
「確かに、どの位今回の案件をオープンにして良いのか確認しておかなかったのは失敗だったね。
商会関係の話だったら出来るだけ他の競争相手に悟られないようにするのが普通だから、確認する必要性を忘れていたよ。
・・・この際、学院長に頼ってみたら?
特級魔術師ならば商業省のお偉いさんにもあっさり連絡が取れるだろうし、東大陸のお土産に何が良いか、聞いておけば?
前回のお土産は不評だったらしいし」
軽く笑いながらアレクが提案した。
え~?
幻想界の物がお土産に向いてないのはアレクだって分かっているだろうに。
まあ、確かに学院長はちょっと失望したっぽかったな。
助けを頼むついでに確認しておくか。
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【後書き】
特級魔術師様をそんなに気軽に使って良いのかという気もしないでもないですが、学院長はウィルにとって親しい後見人のおじさんといったところなのかも?
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