361 / 1,077
卒業後
360 星暦553年 桃の月 5日 旅立ち?
しおりを挟む
「ウィル~、アレク~、ちょっと魔術院から依頼がきたんだけど」
朝食の後にノンビリと工房でお茶を飲んでいたら、何やら通信機で呼び出されていたシャルロが帰ってきて不穏なことを告げた。
「魔術院から依頼って今度は何だい?
こないだの王太子婚約祝いの祭りに動員された分で今年の義務は全て果たしたはずだが?」
アレクが何やら不機嫌そうに答えた。
俺はファルータの街で忙しくて大変だったが、アレク達も王都の守りのために色々とこき使われたようだな。
「なんか、ガルカ王国経由で流通している東大陸の調味料とか薬の材料を自力で入手するために、新しく取引ルートを探すのを手伝って欲しいって」
はぁ?
新しい取引ルートって?
全く何のことか分からなかった俺と違い、アレクにはシャルロが言っていることの意味が分かったらしい。
「ああ、船の新しい航路を探したい訳か。
と言うことは、とうとうガルカ王国との関係を断絶する決断を下したのかな?
そうなると航路開拓の為に水の精霊の加護があるシャルロに協力して欲しいという事か」
・・・航路か。
俺たちがいる大陸の南の先端の方に島が集まっているところがあって、船での交易はそこを通って別の大陸へ航海できるって聞いたことがある。
その為に南の諸島地域へ行く途中にあるガルカ王国の交易船から仕入れたり、アファル王国の船だとしてもガルカ王国で補給を受ける。
これが現在の交易航路なのだが、ガルカ王国があれだけ変な方向に傾いているのに関係を持ち続けていたのってこの交易航路が重要だかららしい。
ガルカ王国との関係が断絶することを想定するなら、南周りでは無い交易用のルートが必要になる。
東側の大陸も、俺たちがいる大陸の南端から島を伝ってたどり着いた後は北にそれなりに延びているので、南経由ではなくても交易が出来るはずとの話らしい。
ただし、どこで補給できるのかも、海流がどう流れているかも分からぬ未知の海へ出て行くのはあまりにもリスクが高すぎるため、シャルロの手伝いが欲しいのだろう。
「じゃあ、暫くシャルロは留守ってことか?」
シャルロの分のお茶を注ぎながら尋ねる。
「いや、向こうで転移門を設置したいから魔術院から専門家が一人来るらしいんだけど、それの手伝い兼その他諸々の要員としてウィルとアレクにも来てって」
ええ~?
何週間か何ヶ月か知らないけど、船の中での生活なんて嫌なんだけど。
「確かに、空滑機《グライダー》を持って行けば周辺の探索も早く済むだろうな。
だが、私も同行するとなったらシェフィート商会が他の商会に先んじることになるが、良いのか?」
アレクが首をかしげながら尋ねた。
「さぁ?
詳しいことは商業省の人と魔術院でこれから話し合うらしいからその時に聞いてみてよ」
シャルロは肩を竦めた。
ふうん。
まだ、魔術院そのものが商業省と話し合う段階なのか?
それにしてはあっという間にシャルロに指名が来ているが。
いや、水の精霊の加護持ちで長期に出られるほど若くて健康なのってシャルロしか居ないか。
・・・これって俺も行く必要、あるんかなぁ?
---------------------------------------------------------------------------------
年末に向けてお祭りでシェイラとデートしようと思っていたのに、下手をしたら年末に国に居ないかも??
朝食の後にノンビリと工房でお茶を飲んでいたら、何やら通信機で呼び出されていたシャルロが帰ってきて不穏なことを告げた。
「魔術院から依頼って今度は何だい?
こないだの王太子婚約祝いの祭りに動員された分で今年の義務は全て果たしたはずだが?」
アレクが何やら不機嫌そうに答えた。
俺はファルータの街で忙しくて大変だったが、アレク達も王都の守りのために色々とこき使われたようだな。
「なんか、ガルカ王国経由で流通している東大陸の調味料とか薬の材料を自力で入手するために、新しく取引ルートを探すのを手伝って欲しいって」
はぁ?
新しい取引ルートって?
全く何のことか分からなかった俺と違い、アレクにはシャルロが言っていることの意味が分かったらしい。
「ああ、船の新しい航路を探したい訳か。
と言うことは、とうとうガルカ王国との関係を断絶する決断を下したのかな?
そうなると航路開拓の為に水の精霊の加護があるシャルロに協力して欲しいという事か」
・・・航路か。
俺たちがいる大陸の南の先端の方に島が集まっているところがあって、船での交易はそこを通って別の大陸へ航海できるって聞いたことがある。
その為に南の諸島地域へ行く途中にあるガルカ王国の交易船から仕入れたり、アファル王国の船だとしてもガルカ王国で補給を受ける。
これが現在の交易航路なのだが、ガルカ王国があれだけ変な方向に傾いているのに関係を持ち続けていたのってこの交易航路が重要だかららしい。
ガルカ王国との関係が断絶することを想定するなら、南周りでは無い交易用のルートが必要になる。
東側の大陸も、俺たちがいる大陸の南端から島を伝ってたどり着いた後は北にそれなりに延びているので、南経由ではなくても交易が出来るはずとの話らしい。
ただし、どこで補給できるのかも、海流がどう流れているかも分からぬ未知の海へ出て行くのはあまりにもリスクが高すぎるため、シャルロの手伝いが欲しいのだろう。
「じゃあ、暫くシャルロは留守ってことか?」
シャルロの分のお茶を注ぎながら尋ねる。
「いや、向こうで転移門を設置したいから魔術院から専門家が一人来るらしいんだけど、それの手伝い兼その他諸々の要員としてウィルとアレクにも来てって」
ええ~?
何週間か何ヶ月か知らないけど、船の中での生活なんて嫌なんだけど。
「確かに、空滑機《グライダー》を持って行けば周辺の探索も早く済むだろうな。
だが、私も同行するとなったらシェフィート商会が他の商会に先んじることになるが、良いのか?」
アレクが首をかしげながら尋ねた。
「さぁ?
詳しいことは商業省の人と魔術院でこれから話し合うらしいからその時に聞いてみてよ」
シャルロは肩を竦めた。
ふうん。
まだ、魔術院そのものが商業省と話し合う段階なのか?
それにしてはあっという間にシャルロに指名が来ているが。
いや、水の精霊の加護持ちで長期に出られるほど若くて健康なのってシャルロしか居ないか。
・・・これって俺も行く必要、あるんかなぁ?
---------------------------------------------------------------------------------
年末に向けてお祭りでシェイラとデートしようと思っていたのに、下手をしたら年末に国に居ないかも??
1
お気に入りに追加
501
あなたにおすすめの小説
ある、義妹にすべてを奪われて魔獣の生贄になった令嬢のその後
オレンジ方解石
ファンタジー
異母妹セリアに虐げられた挙げ句、婚約者のルイ王太子まで奪われて世を儚み、魔獣の生贄となったはずの侯爵令嬢レナエル。
ある夜、王宮にレナエルと魔獣が現れて…………。
婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話
Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」
「よっしゃー!! ありがとうございます!!」
婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。
果たして国王との賭けの内容とは――
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな
こうやさい
ファンタジー
わたくしは婚約者や義妹に断罪され、学園から追放を命じられました。
これが「ざまぁ」されるというものなんですのね。
義妹に冤罪着せられて殿下に皆の前で婚約破棄のうえ学園からの追放される令嬢とかいったら頑張ってる感じなんだけどなぁ。
とりあえずお兄さま頑張れ。
PCがエラーがどうこうほざいているので消えたら察してください、どのみち不定期だけど。
やっぱスマホでも更新できるようにしとかないとなぁ、と毎度の事を思うだけ思う。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
思わず呆れる婚約破棄
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある国のとある夜会、その場にて、その国の王子が婚約破棄を言い渡した。
だがしかし、その内容がずさんというか、あまりにもひどいというか……呆れるしかない。
余りにもひどい内容に、思わず誰もが呆れてしまうのであった。
……ネタバレのような気がする。しかし、良い紹介分が思いつかなかった。
よくあるざまぁ系婚約破棄物ですが、第3者視点よりお送りいたします。
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる