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卒業後
357 星暦553年 橙の月 25日 これも後始末?(17)
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もう一人のガルカ王国側魔術師の視点です。
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>>>サイド ダリューン
「分かっていると思うが、各自担当地域の魔道具を起動したら直ぐさま中央広場へ集まれ。
公爵夫妻への攻撃はゼダラとダルーンが担当だが、中央広場についたら各自その他の商店や設備への攻撃を行うのだ!」
デズバが偉そうに食堂に集まった俺たちに命じてきた。
ふん!
たかが生臭神官の癖に。
何を偉そうに命令をしているんだか。
だが、ここで反抗的な態度を取って変に目を付けられては困る。
いつも通り、興味のなさげな薄笑いを浮かべておいた。
朝に弱いアジャールもやっとちゃんと目が覚めたのか、真面目に頷いていたが相変わらず憂鬱そうな顔をしている。
あいつは真面目だからな~。
魔術院で外れクジを引いて王宮魔術師への『志願』をするは目になった自分とは違い、アジャールは王宮魔術師に弟子入りして学んできた純粋培養の魔術師だ。
なまじ『王宮魔術師』という存在について色々夢を持っていた為に、現在の状況がかなりストレスになっているだろう。
神官に顎でこき使われるだけならまだしも、他国でとは言っても何の罪も無い市民の家を焼き払って命を奪う活動をするなんて、『王宮魔術師』のやるべき仕事ではない。
あいつの師匠も、どうせ国に見切りを付けて捨てるならアジャールも連れて行ってやれば良かったのに。
じゃなきゃ、最初から『王宮魔術師なんぞ、ならんほうが良い』と言い聞かせてやるか。
先々代の国王にあの爺さんが仕えた時代は『王宮魔術師』とは魔術師の中でも一握りの選りすぐりの人間が選ばれてなる存在だった。
だが、先代の時代にテリウス教の怪しげな行動に異を唱えた王宮魔術師が次々と解職されたり姿を消し、今となっては完全に『王宮魔術師』はテリウス教の言いなりになっている国王とテリウス教の神官の使い走り的な存在だ。
別に、魔術師になるの必要な努力は変わらないのだ。
当然のことながら苦労して魔術師になった人間は『王宮魔術師』になることを避けるようになる。
全く『王宮魔術師』が居ないのでは不便だし外見が悪いと言うことで、現国王になってから魔術院へ『王宮魔術師』になる人間を出すよう命令が来て、何人かが『志願』する羽目になった。
ふだんからチャランポランな俺が王宮入りを命じられるとは思わなかったんだけどな~。
まあ、チャランポランだからこそ殺されたり、アジャールの師匠みたいに国を出てしまっても魔術院への損害が少ないと思われたのか。
どちらにせよ。
折角国を出られたのだ。
遠慮無く、姿を消させて貰おう。
可哀想だからアジャールにも声を掛けてやろう。
デズバ達神官どもは『神の加護がある自分達の行動は当然上手くいく』と信じ切っているが、街中に溢れる軍人や捜し物をしているっぽい裏社会の奴らを見る限り、アファル王国は国を挙げて今回の攻撃に備えている。
第一、神が加護を与えるとしたら、既に己の声を聞こうともしないガルカ王国の神官ではなく、未だに神の声を聞こえる神殿長がいるアファル王国を助けるだろう。
阿呆にも程がある。
まあ、神に頼らなくてもあれだけの人数を動員しているのだ、設置した魔道具はそれなりの数が既に見つけられて無効化されているだろう。
こんな状況で攻撃を開始したって、あっという間に捕まって他国の破壊工作員として縛り首だ。
神官どもは秘蔵のタレスの涙を大量に放出することでファルータを焼き尽くすと言っている。
上手くいく可能性もゼロではないかも知れないが、失敗した場合はあれだけ大量のタレスの涙が市場に出回ることになり、価格が暴落してテリウス教の重要な収入源が失われることになるだろう。
ざまあみろ。
心の中でそんなことを考えながら、担当地区へ移動した。
◆◆◆◆
自分の役割は、工房が多く集まる地区で『護衛』達が火を付けている間に上水道の分岐点の幾つかに設置した魔道具を起動させることになっている。
さて。
自分は心眼《サイト》の能力がそれ程優れている訳では無いが、設置してあった魔道具が無くなっている事ぐらいは分かる。
やはり見つかっているか。
と言うことは、実際に火を付けに来る犯人がいるか、見張りや消火用人員も控えているだろう。
タレスの涙を工房の扉の前に置いた『荷物』に見せた可燃物の入った箱へかけて、火を付けてようとしている『護衛』の後ろにそっと近づく。
幸いにも、3人いた『護衛』達はそれぞれ担当する工房へ火を付けに行っているので今は『護衛』が一人しか居ない。
「悪いな」
軽く声を掛けて、ちょうど着火に成功した『護衛』の背中を『荷物』へ蹴り込んだ。
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
タレスの焔が燃え上がり始めた『荷物』へ突っ込んだ『護衛』にもタレスの焔が燃え移り、壮絶な悲鳴を上げ始めた。
すでに工房の扉には火除けの術を掛けてあるので、火事は広がらない。
護衛が助かるかどうかは知らないが、まあ何かあったら自分を殺すよう命じられている相手なのだ。
死んだところでお互い様だ。
「あそこにも放火犯がいるぞ!!」
直ぐさま消火に姿を現した人々に、もう一人の『護衛』が居る方を指さす。
最後の一人は既に買収済なので、そいつはとうに姿を消しているだろう。
アジャールは下町担当だったはず。
あちらは全て魔道具で火を付けることになっているから、護衛が離れない。
前もって入手しておいた結界魔道具に役に立ってもらわないと。
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>>>サイド ダリューン
「分かっていると思うが、各自担当地域の魔道具を起動したら直ぐさま中央広場へ集まれ。
公爵夫妻への攻撃はゼダラとダルーンが担当だが、中央広場についたら各自その他の商店や設備への攻撃を行うのだ!」
デズバが偉そうに食堂に集まった俺たちに命じてきた。
ふん!
たかが生臭神官の癖に。
何を偉そうに命令をしているんだか。
だが、ここで反抗的な態度を取って変に目を付けられては困る。
いつも通り、興味のなさげな薄笑いを浮かべておいた。
朝に弱いアジャールもやっとちゃんと目が覚めたのか、真面目に頷いていたが相変わらず憂鬱そうな顔をしている。
あいつは真面目だからな~。
魔術院で外れクジを引いて王宮魔術師への『志願』をするは目になった自分とは違い、アジャールは王宮魔術師に弟子入りして学んできた純粋培養の魔術師だ。
なまじ『王宮魔術師』という存在について色々夢を持っていた為に、現在の状況がかなりストレスになっているだろう。
神官に顎でこき使われるだけならまだしも、他国でとは言っても何の罪も無い市民の家を焼き払って命を奪う活動をするなんて、『王宮魔術師』のやるべき仕事ではない。
あいつの師匠も、どうせ国に見切りを付けて捨てるならアジャールも連れて行ってやれば良かったのに。
じゃなきゃ、最初から『王宮魔術師なんぞ、ならんほうが良い』と言い聞かせてやるか。
先々代の国王にあの爺さんが仕えた時代は『王宮魔術師』とは魔術師の中でも一握りの選りすぐりの人間が選ばれてなる存在だった。
だが、先代の時代にテリウス教の怪しげな行動に異を唱えた王宮魔術師が次々と解職されたり姿を消し、今となっては完全に『王宮魔術師』はテリウス教の言いなりになっている国王とテリウス教の神官の使い走り的な存在だ。
別に、魔術師になるの必要な努力は変わらないのだ。
当然のことながら苦労して魔術師になった人間は『王宮魔術師』になることを避けるようになる。
全く『王宮魔術師』が居ないのでは不便だし外見が悪いと言うことで、現国王になってから魔術院へ『王宮魔術師』になる人間を出すよう命令が来て、何人かが『志願』する羽目になった。
ふだんからチャランポランな俺が王宮入りを命じられるとは思わなかったんだけどな~。
まあ、チャランポランだからこそ殺されたり、アジャールの師匠みたいに国を出てしまっても魔術院への損害が少ないと思われたのか。
どちらにせよ。
折角国を出られたのだ。
遠慮無く、姿を消させて貰おう。
可哀想だからアジャールにも声を掛けてやろう。
デズバ達神官どもは『神の加護がある自分達の行動は当然上手くいく』と信じ切っているが、街中に溢れる軍人や捜し物をしているっぽい裏社会の奴らを見る限り、アファル王国は国を挙げて今回の攻撃に備えている。
第一、神が加護を与えるとしたら、既に己の声を聞こうともしないガルカ王国の神官ではなく、未だに神の声を聞こえる神殿長がいるアファル王国を助けるだろう。
阿呆にも程がある。
まあ、神に頼らなくてもあれだけの人数を動員しているのだ、設置した魔道具はそれなりの数が既に見つけられて無効化されているだろう。
こんな状況で攻撃を開始したって、あっという間に捕まって他国の破壊工作員として縛り首だ。
神官どもは秘蔵のタレスの涙を大量に放出することでファルータを焼き尽くすと言っている。
上手くいく可能性もゼロではないかも知れないが、失敗した場合はあれだけ大量のタレスの涙が市場に出回ることになり、価格が暴落してテリウス教の重要な収入源が失われることになるだろう。
ざまあみろ。
心の中でそんなことを考えながら、担当地区へ移動した。
◆◆◆◆
自分の役割は、工房が多く集まる地区で『護衛』達が火を付けている間に上水道の分岐点の幾つかに設置した魔道具を起動させることになっている。
さて。
自分は心眼《サイト》の能力がそれ程優れている訳では無いが、設置してあった魔道具が無くなっている事ぐらいは分かる。
やはり見つかっているか。
と言うことは、実際に火を付けに来る犯人がいるか、見張りや消火用人員も控えているだろう。
タレスの涙を工房の扉の前に置いた『荷物』に見せた可燃物の入った箱へかけて、火を付けてようとしている『護衛』の後ろにそっと近づく。
幸いにも、3人いた『護衛』達はそれぞれ担当する工房へ火を付けに行っているので今は『護衛』が一人しか居ない。
「悪いな」
軽く声を掛けて、ちょうど着火に成功した『護衛』の背中を『荷物』へ蹴り込んだ。
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
タレスの焔が燃え上がり始めた『荷物』へ突っ込んだ『護衛』にもタレスの焔が燃え移り、壮絶な悲鳴を上げ始めた。
すでに工房の扉には火除けの術を掛けてあるので、火事は広がらない。
護衛が助かるかどうかは知らないが、まあ何かあったら自分を殺すよう命じられている相手なのだ。
死んだところでお互い様だ。
「あそこにも放火犯がいるぞ!!」
直ぐさま消火に姿を現した人々に、もう一人の『護衛』が居る方を指さす。
最後の一人は既に買収済なので、そいつはとうに姿を消しているだろう。
アジャールは下町担当だったはず。
あちらは全て魔道具で火を付けることになっているから、護衛が離れない。
前もって入手しておいた結界魔道具に役に立ってもらわないと。
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