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卒業後
356 星暦553年 橙の月 25日 これも後始末?(16)
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ガルカ王国側の魔術師の話です。
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>>>サイド ???
「アジャール。準備は出来たか?」
朝食を食べに降りてきたら、テリウス神官のデズバが声を掛けてきた。
出来ている訳がないだろうが。
今起きてきたところで、朝食も食べていないんだ。
日も上がっていないし、まだ十分時間があるのに何をこいつは焦っているんだ。
「これから朝食です。
いくら祭りの当日とは言え、屋台を開くと言った準備行動をしないのに日が出る前から出歩くと変に注意を引きかねませんから、これから朝食を食べたら丁度良い時間に準備が完了する予定です」
思わず漏らしたくなったため息を飲み込み、穏やかに答える。
「・・・ああ、そうだな。
だが、分かっているだろうが失敗は許されない。急げ」
自分がデズバの言葉に従ってさっさと走り出さないのに不満でも感じたのか、イライラしながら神官は命令を吐き捨て、階段を上っていった。
幾らテリウス教徒の人間が経営している宿とは言え、宿にはアファル王国の人間もいるのだ。何を落ち着かない行動をしているんだか。
失敗するとしたらあんたのせいなんじゃ無いのか?
良い迷惑だ。
若手とは言え、ガルカ王国の王宮魔術師である自分が下っ端の神官に顎でこき使われるような現状は、本当に苛立つ。
アジャールの師匠などはそれが嫌で去年退職して国を出てしまった。
そのとばっちりで今回の攻撃への参加を命じられた身としては、自分も国を捨てようかと真剣に考えたくなってきている。
「よう。
神官殿から急かされたようだな?」
食堂に入ったら、既に茶を飲んでいた同僚のダリューンが声を掛けてきた。
テーブルの皿を見る限り、既にもう朝食は食べ終わっているらしい。
はぁぁ。
「こんなに朝早くから、飯なんぞ食いたくない・・・」
だが、食べねば後で魔力切れでも起こしたら困る。
第一、違法な破壊行動に参加するのだ。アファル王国の衛兵に追われて走る羽目になるかも知れないから、ちゃんとエネルギー補給をしておかないと不味い。
「祭りが夜じゃなくって残念だったな」
笑いながらダリューンが茶を注いでくれた。
宿の人間が何も言わずに朝食の皿を持ってくる。
アファル王国側で今回の案件に関係している人間は全てテリウス教の信徒なので、基本的にデズバが対応してきた。
だから自分は彼らがどの位今回の計画について知っているのかは分からない。
だが、この街に何年も住んでいるのだ。
実質彼らの知り合いの家を焼き払うような今回の計画に、本当に賛同しているのだろうか?
無理矢理朝食を口の中に突っ込んで飲み込んでいると、ダリューンが頭を寄せてきた。
「知っているか?
この国のテリウス教神殿長は、神の声を聞けるらしいぞ」
ガルカ王国では賢王と有名だった先々代の後を継いだ先王の時代から、テリウス教が国教となり、その権力と富を増やしてきた。
『テリウス教の神の導きと助けを王が感謝して国教とした』とされているが、実際の所はテリウス神殿が信徒を使って様々な情報を集め、王にとって都合の悪い人間を王の手を汚さずに暗殺や破壊行動で排除してきたことに対する対価だと師匠は言っていた。
当然のことながら、そのような行動を神が喜ぶはずも無く、もう何十年もガルカ王国のテリウス教神殿では神の声を聞こえる者は出てきていない。
もしくは、聞こえる者がいるとしても、それを秘密にしている。
どう考えても、現在の神殿の上層部にとっては神の意図なんぞ伝えられても迷惑なだけであり、それを伝えられる人間が出てきたらさっさと始末してしまうだろう。
既にテリウス教の神は人を見捨てたと思っていたのだが・・・。
そうか、この国ではまだ見捨てられていなかったのか。
皮肉なものだ。
国教とし、『テリウス教の本神殿』と広く世界中に主張しているガルカ王国の神殿ではなく、宗教としてはマイナーな宗派と見なされているアファル王国の神殿の方が神の意にかなっているなんて。
宗教には興味が無い。
だが、いい加減宗教関係者の非現実的で攻撃的な行動に振り回されるのは終わりにしたいものだ。
何とか朝食を飲み込み、席を立つ。
「どうせなら、神官を全て神罰で寝込ませて欲しいものだな。
そうしたら実行不能でしたと本国に報告できるのに」
ダリューンが肩を竦めた。
「なんだ、無事に本国に帰れると思っているのか?
街中軍人だらけじゃ無いか。
どう考えても、今回の計画は漏れてるぞ?」
「腹が痛い・・・」
魔道具の起動及び公爵への攻撃には魔術師が必要だ。
なので今回の攻撃には自分とダリューン、そして他に3人の魔術師が参加しているのだが、当然のことながら主導権は神官側にあり、魔術師達は外を歩く時は神殿の人間に『護衛』されている。
失敗すると分かっている攻撃でも、命令に背くそぶりを見せたら殺されるので逃げられない。
「知っているか?
アファル王国では最近物理的攻撃にもある程度効果がある可動式結界の魔道具が売りに出されたらしい」
ダリューンがニヤニヤしながら言ってきた。
ほおう?
つまり、それがあったら『護衛』からの攻撃をいなしてあいつらを無力化出来るのか?
近距離攻撃はどうしても魔術より物理的攻撃の方が早い。
だから護衛から逃げようと思ったら最初の一撃だけでも何とか身を守る必要があるのだが・・・それが出来る魔道具があったら、可能かも知れない。
とは言え、今日が実行日なので既に入手は絶望的だが。
・・・今更言ってきたと言うことは、ダリューンは入手できたのか?
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>>>サイド ???
「アジャール。準備は出来たか?」
朝食を食べに降りてきたら、テリウス神官のデズバが声を掛けてきた。
出来ている訳がないだろうが。
今起きてきたところで、朝食も食べていないんだ。
日も上がっていないし、まだ十分時間があるのに何をこいつは焦っているんだ。
「これから朝食です。
いくら祭りの当日とは言え、屋台を開くと言った準備行動をしないのに日が出る前から出歩くと変に注意を引きかねませんから、これから朝食を食べたら丁度良い時間に準備が完了する予定です」
思わず漏らしたくなったため息を飲み込み、穏やかに答える。
「・・・ああ、そうだな。
だが、分かっているだろうが失敗は許されない。急げ」
自分がデズバの言葉に従ってさっさと走り出さないのに不満でも感じたのか、イライラしながら神官は命令を吐き捨て、階段を上っていった。
幾らテリウス教徒の人間が経営している宿とは言え、宿にはアファル王国の人間もいるのだ。何を落ち着かない行動をしているんだか。
失敗するとしたらあんたのせいなんじゃ無いのか?
良い迷惑だ。
若手とは言え、ガルカ王国の王宮魔術師である自分が下っ端の神官に顎でこき使われるような現状は、本当に苛立つ。
アジャールの師匠などはそれが嫌で去年退職して国を出てしまった。
そのとばっちりで今回の攻撃への参加を命じられた身としては、自分も国を捨てようかと真剣に考えたくなってきている。
「よう。
神官殿から急かされたようだな?」
食堂に入ったら、既に茶を飲んでいた同僚のダリューンが声を掛けてきた。
テーブルの皿を見る限り、既にもう朝食は食べ終わっているらしい。
はぁぁ。
「こんなに朝早くから、飯なんぞ食いたくない・・・」
だが、食べねば後で魔力切れでも起こしたら困る。
第一、違法な破壊行動に参加するのだ。アファル王国の衛兵に追われて走る羽目になるかも知れないから、ちゃんとエネルギー補給をしておかないと不味い。
「祭りが夜じゃなくって残念だったな」
笑いながらダリューンが茶を注いでくれた。
宿の人間が何も言わずに朝食の皿を持ってくる。
アファル王国側で今回の案件に関係している人間は全てテリウス教の信徒なので、基本的にデズバが対応してきた。
だから自分は彼らがどの位今回の計画について知っているのかは分からない。
だが、この街に何年も住んでいるのだ。
実質彼らの知り合いの家を焼き払うような今回の計画に、本当に賛同しているのだろうか?
無理矢理朝食を口の中に突っ込んで飲み込んでいると、ダリューンが頭を寄せてきた。
「知っているか?
この国のテリウス教神殿長は、神の声を聞けるらしいぞ」
ガルカ王国では賢王と有名だった先々代の後を継いだ先王の時代から、テリウス教が国教となり、その権力と富を増やしてきた。
『テリウス教の神の導きと助けを王が感謝して国教とした』とされているが、実際の所はテリウス神殿が信徒を使って様々な情報を集め、王にとって都合の悪い人間を王の手を汚さずに暗殺や破壊行動で排除してきたことに対する対価だと師匠は言っていた。
当然のことながら、そのような行動を神が喜ぶはずも無く、もう何十年もガルカ王国のテリウス教神殿では神の声を聞こえる者は出てきていない。
もしくは、聞こえる者がいるとしても、それを秘密にしている。
どう考えても、現在の神殿の上層部にとっては神の意図なんぞ伝えられても迷惑なだけであり、それを伝えられる人間が出てきたらさっさと始末してしまうだろう。
既にテリウス教の神は人を見捨てたと思っていたのだが・・・。
そうか、この国ではまだ見捨てられていなかったのか。
皮肉なものだ。
国教とし、『テリウス教の本神殿』と広く世界中に主張しているガルカ王国の神殿ではなく、宗教としてはマイナーな宗派と見なされているアファル王国の神殿の方が神の意にかなっているなんて。
宗教には興味が無い。
だが、いい加減宗教関係者の非現実的で攻撃的な行動に振り回されるのは終わりにしたいものだ。
何とか朝食を飲み込み、席を立つ。
「どうせなら、神官を全て神罰で寝込ませて欲しいものだな。
そうしたら実行不能でしたと本国に報告できるのに」
ダリューンが肩を竦めた。
「なんだ、無事に本国に帰れると思っているのか?
街中軍人だらけじゃ無いか。
どう考えても、今回の計画は漏れてるぞ?」
「腹が痛い・・・」
魔道具の起動及び公爵への攻撃には魔術師が必要だ。
なので今回の攻撃には自分とダリューン、そして他に3人の魔術師が参加しているのだが、当然のことながら主導権は神官側にあり、魔術師達は外を歩く時は神殿の人間に『護衛』されている。
失敗すると分かっている攻撃でも、命令に背くそぶりを見せたら殺されるので逃げられない。
「知っているか?
アファル王国では最近物理的攻撃にもある程度効果がある可動式結界の魔道具が売りに出されたらしい」
ダリューンがニヤニヤしながら言ってきた。
ほおう?
つまり、それがあったら『護衛』からの攻撃をいなしてあいつらを無力化出来るのか?
近距離攻撃はどうしても魔術より物理的攻撃の方が早い。
だから護衛から逃げようと思ったら最初の一撃だけでも何とか身を守る必要があるのだが・・・それが出来る魔道具があったら、可能かも知れない。
とは言え、今日が実行日なので既に入手は絶望的だが。
・・・今更言ってきたと言うことは、ダリューンは入手できたのか?
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