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久しぶりの三人
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あれからエインは持ち場に戻り俺は新米騎士から騎士団長の補佐となった為、シアの仕事をそばで手伝った。この仕事変更は朝にシアから言われたがその時はそんな勝手が許されるのかと俺は思った。だがシアについてこの執務室に着いた時、彼は俺の処遇を決めれる立場だったと思い出し、その瞬間をシアにも見られ笑われた。
そんな朝からもう今は夕方で、仕事は終わり俺とシアは食堂にいた。この食堂は上位の騎士が使う事が多く、新米騎士の使う食堂と変わってとても静かだった。俺も前世はここの食堂でシアとエインの三人で食事をとっていたので懐かしいといえる。
「やっときたか、本当にお前ら二人は遅いな」
「時間通りだよ」
エインに声をかけられ、俺はそう言いながら彼がとっていた席に座った。シアは俺の隣に座り、四人席は一席残し埋まる。
「ところでさ、視線が集まるのは分かってたけどなんでここまですごいの?」
静かだが周りの視線は俺達に集中しているのが気になり俺はエインに訊くも彼はシアを見た。
「それはこいつが滅多に食堂に来ないのに加えてお前もいるからだよ」
「来てるだろう」
「月一に来るか来ないかの奴が何言ってるんだ」
理由は分かったがここを利用しなければシアは外食なのかと思うも彼が高頻度に行く程、外食好きだった記憶が俺にはない。
「シア、きちんと食べてる?」
「食べてるよ」
「食べてねーよ。フィーロ、こいつ本当にたまにしか食べないから」
やはり食べていない様だったが体つきを見るに痩せ細ってはいないので何か理由があるのだろう。それにこの世界では魔力の多い者は食事をそれほどとらなくても魔力で補える事が多く、シアもその類とみる。
「そうなんだ、まあ難しいお年頃なんだよ。気長にいこう」
「確かに病んでたしな。そうかスタシア、お前難しいお年頃だったのか」
結局のところ人の体について触れるのは時に爆弾に当たるので俺があまり触れずに流そうと思ったがエインはシアを煽った。
「フィーは許すがエイン、お前は後で裏に来るといい」
「シア、お母さんいじめたら駄目だろう。エインママ、俺、早くご飯食べたいな」
するとシアを見ていたエインがいい笑顔で俺の方を向き、恐ろしく低い声で言った。
「フィーロ、お前も後で裏に来い」
「なんでさ、俺、エイン助けただけじゃない?」
本当になんで巻き込まれたのか納得のいかない俺だったがそんな時、頭上から声がかけられる。
「フィーロじゃん、なんで生きてんの?」
誰かと見れば金髪をオールバックにした前世の同期だった。
「久しぶりだね、ウェンリー」
「ああ、久しぶり。で、これ本物? 魔力もないけど」
ウェンリーは俺ではなくエインを見て問うと俺の隣に空く椅子に座った。
「本物だ、俺が魂も見たから確かだと言っていい」
「じじいの力使ったって、痛っ、痛いんですけど」
ウェンリーの話している途中に机の間から見えた凄まじいエインの蹴りが彼の脛に入っていた。
「てめえも後で裏に来い」
「分かるよ、言っちゃうよね。じじいって、俺も朝言った」
怒るエインをよそに俺はウェンリーの言葉に同意した。すると本当に食らったら痛いはずだが魔法で対処したのか軽く脛をさするだけで元気なウェンリーの表情と声が返ってくる。
「だよな。それにしてもよかったな、スタシア。戻ってきて」
「ああ」
「これはエインのあだ名が一つ消えるぞ、スタシアの母さんがな」
ウェンリーの言葉に周りの者が数名吹き出していたが俺も笑った。
「はは、やっぱり言われてるんだ。知らない俺が見ても思ったよ」
「こんな母親は嫌なんだが?」
シアが不満そうに言うもエインも不機嫌に返す。
「俺もお前みたいな息子、嫌に決まってるだろ」
「親子喧嘩も程々にな。で、戻ったなら飲みにでも行こ、フィーロ」
「俺がめちゃくちゃ弱いの忘れた?」
前世の俺はすぐ酔うのだが、今世も同じで飲めないに等しい。
「だから、隣の旦那連れてこればいいんじゃない? フィーロの旦那ざるじゃん」
「俺が飲みつぶれてシアに運ばれる恒例の流れじゃないか、それ」
毎回、俺がお酒で潰れると帰る部屋が同じで酔う様子がない元気なシアが俺を連れて帰っていた。着替えなどの面倒もしてくれ、次の朝は彼に感謝して何かお礼をするのがセットだった。
「それがいいんだよ、よし! 今度の飲み会行く人、この紙に名前書いといて! スタシアの奢りだから!」
俺が少し昔を思い出している間にウェンリーはどこからか紙を出し、そう言いながら紙を食堂の扉横に貼りに行ってしまった。ついでにエインも一緒に行っていたので飲み会へ行く気があるのだろう。
「なんで私が払うんだ」
完全に巻き込まれただけのシアが呆れたように言うのを聞き、俺は謝った。
「ごめん、シア、巻き込んで。こうなったら一緒に楽しもうね」
本当にシアには悪いが実のところ俺は昔の仲間と飲めるのは嬉しくとても楽しみだった。今はどうか知らないが昔は、飲み会に俺もシアも進んで参加していたので彼もこういった行事は嫌いではないのではと俺は思っている。だから昔のように俺とシア、そして他の仲間と飲むこの機会はきっと楽しいはずだよというように隣の彼に微笑む。それにシアは気づくと呆れていた表情から控えめだが笑みに変わる。
「……そうだな、一緒に楽しもう」
そんな朝からもう今は夕方で、仕事は終わり俺とシアは食堂にいた。この食堂は上位の騎士が使う事が多く、新米騎士の使う食堂と変わってとても静かだった。俺も前世はここの食堂でシアとエインの三人で食事をとっていたので懐かしいといえる。
「やっときたか、本当にお前ら二人は遅いな」
「時間通りだよ」
エインに声をかけられ、俺はそう言いながら彼がとっていた席に座った。シアは俺の隣に座り、四人席は一席残し埋まる。
「ところでさ、視線が集まるのは分かってたけどなんでここまですごいの?」
静かだが周りの視線は俺達に集中しているのが気になり俺はエインに訊くも彼はシアを見た。
「それはこいつが滅多に食堂に来ないのに加えてお前もいるからだよ」
「来てるだろう」
「月一に来るか来ないかの奴が何言ってるんだ」
理由は分かったがここを利用しなければシアは外食なのかと思うも彼が高頻度に行く程、外食好きだった記憶が俺にはない。
「シア、きちんと食べてる?」
「食べてるよ」
「食べてねーよ。フィーロ、こいつ本当にたまにしか食べないから」
やはり食べていない様だったが体つきを見るに痩せ細ってはいないので何か理由があるのだろう。それにこの世界では魔力の多い者は食事をそれほどとらなくても魔力で補える事が多く、シアもその類とみる。
「そうなんだ、まあ難しいお年頃なんだよ。気長にいこう」
「確かに病んでたしな。そうかスタシア、お前難しいお年頃だったのか」
結局のところ人の体について触れるのは時に爆弾に当たるので俺があまり触れずに流そうと思ったがエインはシアを煽った。
「フィーは許すがエイン、お前は後で裏に来るといい」
「シア、お母さんいじめたら駄目だろう。エインママ、俺、早くご飯食べたいな」
するとシアを見ていたエインがいい笑顔で俺の方を向き、恐ろしく低い声で言った。
「フィーロ、お前も後で裏に来い」
「なんでさ、俺、エイン助けただけじゃない?」
本当になんで巻き込まれたのか納得のいかない俺だったがそんな時、頭上から声がかけられる。
「フィーロじゃん、なんで生きてんの?」
誰かと見れば金髪をオールバックにした前世の同期だった。
「久しぶりだね、ウェンリー」
「ああ、久しぶり。で、これ本物? 魔力もないけど」
ウェンリーは俺ではなくエインを見て問うと俺の隣に空く椅子に座った。
「本物だ、俺が魂も見たから確かだと言っていい」
「じじいの力使ったって、痛っ、痛いんですけど」
ウェンリーの話している途中に机の間から見えた凄まじいエインの蹴りが彼の脛に入っていた。
「てめえも後で裏に来い」
「分かるよ、言っちゃうよね。じじいって、俺も朝言った」
怒るエインをよそに俺はウェンリーの言葉に同意した。すると本当に食らったら痛いはずだが魔法で対処したのか軽く脛をさするだけで元気なウェンリーの表情と声が返ってくる。
「だよな。それにしてもよかったな、スタシア。戻ってきて」
「ああ」
「これはエインのあだ名が一つ消えるぞ、スタシアの母さんがな」
ウェンリーの言葉に周りの者が数名吹き出していたが俺も笑った。
「はは、やっぱり言われてるんだ。知らない俺が見ても思ったよ」
「こんな母親は嫌なんだが?」
シアが不満そうに言うもエインも不機嫌に返す。
「俺もお前みたいな息子、嫌に決まってるだろ」
「親子喧嘩も程々にな。で、戻ったなら飲みにでも行こ、フィーロ」
「俺がめちゃくちゃ弱いの忘れた?」
前世の俺はすぐ酔うのだが、今世も同じで飲めないに等しい。
「だから、隣の旦那連れてこればいいんじゃない? フィーロの旦那ざるじゃん」
「俺が飲みつぶれてシアに運ばれる恒例の流れじゃないか、それ」
毎回、俺がお酒で潰れると帰る部屋が同じで酔う様子がない元気なシアが俺を連れて帰っていた。着替えなどの面倒もしてくれ、次の朝は彼に感謝して何かお礼をするのがセットだった。
「それがいいんだよ、よし! 今度の飲み会行く人、この紙に名前書いといて! スタシアの奢りだから!」
俺が少し昔を思い出している間にウェンリーはどこからか紙を出し、そう言いながら紙を食堂の扉横に貼りに行ってしまった。ついでにエインも一緒に行っていたので飲み会へ行く気があるのだろう。
「なんで私が払うんだ」
完全に巻き込まれただけのシアが呆れたように言うのを聞き、俺は謝った。
「ごめん、シア、巻き込んで。こうなったら一緒に楽しもうね」
本当にシアには悪いが実のところ俺は昔の仲間と飲めるのは嬉しくとても楽しみだった。今はどうか知らないが昔は、飲み会に俺もシアも進んで参加していたので彼もこういった行事は嫌いではないのではと俺は思っている。だから昔のように俺とシア、そして他の仲間と飲むこの機会はきっと楽しいはずだよというように隣の彼に微笑む。それにシアは気づくと呆れていた表情から控えめだが笑みに変わる。
「……そうだな、一緒に楽しもう」
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