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閑古鳥が六羽
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笑みを貼り付け、カウンターへ向かうクランは自分を呼びつけた人物を目に入れ、思わず体が強ばる。
その人物は見るからに歴戦の冒険者のような風貌をした隻眼の男だ。名は嫌でもギルドマスター同士の定期報告で顔を合わせる為に知っている、ギベルである。クランと同じ街で何とも羨ましい中堅なギルドを経営するギルドマスターだ。
「いったい、どうなさいましたか?」
この潰れかけたギルドに何の用だと丁寧に包んだ言い方で問うクランだが、ギベルは僅かに唯一の片目を細めた。それはまるで信じられないと言った呆れた表情である。
クランの気に障る態度だったがこのギベル、滅茶苦茶に強い男であった。魔法も剣もへっぽこなクランが横柄な態度をとったが最後、死ぬ……。
「すっすみません! 今、用件を思い出しますのでっ」
プライドなどかなぐり捨て、頭を下げるクランを傍観する男とギベルの視線を旋毛に受ける中で低い声がクランの耳に届く。
「クエスト見回り交代の書類諸々を俺の所へ取りに来るはずが待てども来ないが為に非常時かとこちらに来たが……」
ギベルの言葉につい目線を上げたクランだったがジッと鋭い視線で見下ろすギベルと目が合い、喉から悲鳴が小さく溢れる。
「ここのギルドが潰れようが構わないが他を巻き込むのは迷惑だ」
「すっすみません……! 本当にすみません。以後、気をつけます」
ペコペコと頭を下げて謝るクランに冷たい視線を送るギベルはカウンターへ持ってきた書類を置くと踵を返し、この場から出て行った。
嵐が去ったような感覚に陥るクランはバクバクと脈打つ心臓を手で押さえ、「はあ……怖かった」と息を吐く。
もう嫌だ、一生部屋で寝てたいと内心の駄々が膨らむクランだったが、そんな時、存在を忘れていた男から声がかかる。
「大丈夫ですか?」
「ははっ、何とか……」
どうしてギルドの総本家に何度も恥ずかしい所を見られないといけないんだと思うクランは情け無さに目の前が僅かに潤む。
しかし、ギベルが置いていった書類を視界に入れた瞬間に涙は引き、現実の問題に頭を抱えた。
「まずいっ、見回り頼める人いないじゃん!」
いつもは戦えるリドが行うクエストの見回りなのだが、色々と手が回らない今、リドには別の件を頼むつもりでいた。
リドはこの世に二人もいないのでクエスト見回りは誰かがやるしかないのだが、見回りは相応の戦闘スキルがいるのだ。へっぽこなクランは戦力外も甚だしい。
それに自分のギルドに所属する冒険者達のレベルでは厳しい……。
「詰んだ」
クランはヨロヨロとカウンターに倒れ込む。
どうか神の慈悲を、と信者でもない神に都合よく祈る。願いが通じるなど思いもしていなかったクランだが思いの外、神はいたらしい。
「見回りなら私が行きますよ。その前にこちらのギルドに所属する登録が先ですけれど」
相変わらず、軽く微笑を浮かべるだけの男だったがクランには神の有り難い微笑みに見えた。
「神がいた……!」
目を見開き、奇跡の瞬間を体験するクラン。そんな中、男は一度瞬くも微笑を継続して言った。
「神ではありません、ティガです」
クランは思った、この男は冗談が通じないタイプだと。
その人物は見るからに歴戦の冒険者のような風貌をした隻眼の男だ。名は嫌でもギルドマスター同士の定期報告で顔を合わせる為に知っている、ギベルである。クランと同じ街で何とも羨ましい中堅なギルドを経営するギルドマスターだ。
「いったい、どうなさいましたか?」
この潰れかけたギルドに何の用だと丁寧に包んだ言い方で問うクランだが、ギベルは僅かに唯一の片目を細めた。それはまるで信じられないと言った呆れた表情である。
クランの気に障る態度だったがこのギベル、滅茶苦茶に強い男であった。魔法も剣もへっぽこなクランが横柄な態度をとったが最後、死ぬ……。
「すっすみません! 今、用件を思い出しますのでっ」
プライドなどかなぐり捨て、頭を下げるクランを傍観する男とギベルの視線を旋毛に受ける中で低い声がクランの耳に届く。
「クエスト見回り交代の書類諸々を俺の所へ取りに来るはずが待てども来ないが為に非常時かとこちらに来たが……」
ギベルの言葉につい目線を上げたクランだったがジッと鋭い視線で見下ろすギベルと目が合い、喉から悲鳴が小さく溢れる。
「ここのギルドが潰れようが構わないが他を巻き込むのは迷惑だ」
「すっすみません……! 本当にすみません。以後、気をつけます」
ペコペコと頭を下げて謝るクランに冷たい視線を送るギベルはカウンターへ持ってきた書類を置くと踵を返し、この場から出て行った。
嵐が去ったような感覚に陥るクランはバクバクと脈打つ心臓を手で押さえ、「はあ……怖かった」と息を吐く。
もう嫌だ、一生部屋で寝てたいと内心の駄々が膨らむクランだったが、そんな時、存在を忘れていた男から声がかかる。
「大丈夫ですか?」
「ははっ、何とか……」
どうしてギルドの総本家に何度も恥ずかしい所を見られないといけないんだと思うクランは情け無さに目の前が僅かに潤む。
しかし、ギベルが置いていった書類を視界に入れた瞬間に涙は引き、現実の問題に頭を抱えた。
「まずいっ、見回り頼める人いないじゃん!」
いつもは戦えるリドが行うクエストの見回りなのだが、色々と手が回らない今、リドには別の件を頼むつもりでいた。
リドはこの世に二人もいないのでクエスト見回りは誰かがやるしかないのだが、見回りは相応の戦闘スキルがいるのだ。へっぽこなクランは戦力外も甚だしい。
それに自分のギルドに所属する冒険者達のレベルでは厳しい……。
「詰んだ」
クランはヨロヨロとカウンターに倒れ込む。
どうか神の慈悲を、と信者でもない神に都合よく祈る。願いが通じるなど思いもしていなかったクランだが思いの外、神はいたらしい。
「見回りなら私が行きますよ。その前にこちらのギルドに所属する登録が先ですけれど」
相変わらず、軽く微笑を浮かべるだけの男だったがクランには神の有り難い微笑みに見えた。
「神がいた……!」
目を見開き、奇跡の瞬間を体験するクラン。そんな中、男は一度瞬くも微笑を継続して言った。
「神ではありません、ティガです」
クランは思った、この男は冗談が通じないタイプだと。
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